Odoo導入を成功させるポイント|「入れてよかった」と言える会社の7つの共通点

同業の社長から「Odooを入れて、月末の転記作業がなくなった」と聞いた。

ところが別の会合では「作り込みすぎて、もう身動きが取れない」という声も耳にした。

同じ製品なのに、なぜ結果が分かれるのか。分かれ目は製品の性能ではなく、導入の進め方です。

うまくいった会社には、はっきりした共通点が7つありました。しかも、そのうち6つは稼働より前に決まっています。

たとえば目的を「受注から請求までの転記を、月40時間から0にする」のように数字にします。すると「この機能は必要か」を、その数字が動くかで決められます(目的を1つの数字にしていた)。

7つを押さえると、たとえば次のことが変わります。

  • 部門の合意者がその場で決められ、「持ち帰ります」が減る
  • 少人数の有償ライセンスで試し、間違いに早く気づける
  • 作り込みが絞られ、バージョンアップのたびの確認と修正が減る
  • 稼働後に、現場がExcelでの二重管理に戻りにくい

ただし、Odooが合わない会社もあります。規模が大きく伸びる見込みなら、NetSuiteも比較の候補です。パッケージに乗らない業務が中心ならAIスクラッチ開発も選べますが、開発費と保守費が別途かかります(製品の話より先に確かめること)。

では、いまの自社はいくつ決まっていて、どこから手をつければよいのか。答えは自社の点検と優先順位にあります。進め方の良い点と負担は、良い点と、気をつけることに並べました。

前提の確認:この記事は主に有償のEnterprise版を前提としています。無料のCommunity版はオープンソースとして利用できますが、サーバーの用意と保守を自社で行う必要があり、公式サポートの対象外です。版による違いはCommunity版とEnterprise版の違いをご覧ください。

目次

Odoo導入で「よかった」とは何を指すのか

「入れてよかった」と言えている会社は、たいてい次のどれかを具体的に説明できます。

  • 以前は手作業だった処理が、実際になくなった
  • 月次の数字が出るまでの日数が、実際に短くなった
  • 誰かに聞かないと分からなかったことが、画面で分かるようになった

3つとも、変化を数字か事実で言えているのが特徴です。

「なんとなく便利になった」で止まっている会社は、効果を測る基準を最初から持っていなかった可能性があります。

つまり最初の分かれ目は、稼働の前にあります。

Odoo導入がうまくいった会社に共通する7つのポイント

7つを時期で分けると、導入を決める前に4つ、導入の最中に2つ、稼働の後に1つです。

うまくいった会社の7つの共通点 7つの共通点を、導入を決める前(4つ)、導入の最中(2つ)、稼働の後(1つ)の3つの時期に分けた図。7つのうち6つは稼働より前に決まっている。 うまくいった会社の7つの共通点 6つは導入の前と最中に決まっている 稼働後にできることは1つだけ 導入を決める前 ① 目的を1つの数字にした 測れない目的は流される ② 合わない可能性を検討した Odooありきで始めない ③ 決める人を決めた 権限の範囲まで明示する ④ 標準に合わせる範囲を決めた 経営者が線を引く 導入の最中 ⑤ 小さく始めて広げた 全部を同時に切り替えない ⑥ 作り込みを絞った 競争力のある業務だけ 稼働の後 ⑦ 稼働後を計画に入れた 3〜6か月の予算と体制 7つのうち6つは、稼働より前に決まる 成否の大半は、システムを触る前の判断で決まる 作成:ベンチャーネット「Odooの教科書」
うまくいった会社の7つの共通点(時期別)

① 目的を1つの数字にしていた

うまくいった会社は、目的を測れる形にしていました。

「DXを進める」ではなく、こう言い換えていました。

  • 受注から請求までの転記を、月40時間から0にする
  • 月次の締めを、翌月15日から翌月5日にする
  • 在庫の棚卸差異を、半分にする

数字にすれば、それが判断の基準です。

「この機能は必要か」と迷ったら、その数字が動くかどうかで決められます。基準がないと、声の大きい要望が通ります。

② 「合わない可能性」を最初に検討していた

7つの中で、もっとも見落とされる共通点です。

うまくいった会社は、Odooありきで検討を始めていません。最初に「自社の規模と業務に、そもそも合うのか」を確かめていました。

具体的には、次のような問いを先に置いていました。

  • 規模が大きくなったとき、この製品で足りるのか
  • 業務がパッケージの型に乗るのか、乗らないのか
  • 乗らない部分は、どれくらいあるのか

違いを先に確かめておけば、導入後に「思っていたのと違う」となる心配は小さくなります。

自社に合うかどうかの目安はOdooが向いている企業・向いていない企業に整理しています。規模が上回りそうな場合の判断材料はOdooとNetSuiteの違いです。業務が型に乗らない場合はパッケージERPかスクラッチ開発かをご覧ください。

③ 決める人を決めていた

「これは誰が決めるのか」が曖昧なプロジェクトでは、会議の回数だけが増えます。

うまくいった会社は、次の3つを名前で決めていました。

  • 最終判断をする人(多くは経営者本人)
  • 部門ごとに仕様へ合意する人
  • 進行を管理し、社内を調整する人

効いているのは、2つ目の人の権限範囲まで明示している点です。

どこまでをその場で決めてよいのか。ここが曖昧だと「持ち帰ります」が毎回起き、意思決定の速度が半分以下に落ちます。

④ 標準に合わせる範囲を、経営者が決めていた

Odooは自由に作り替えられる製品です。だからこそ、どこまで変えないかを先に決めた会社が伸びています。

要件の議論で必ず出るのが、「基本は現行踏襲で」という言葉です。安全に見えますが、実際は古いやり方を新しい画面に移すだけになります。

うまくいった会社は、この線引きを現場任せにせず、経営者が方針を示していました。

判断の問いは1つです。

「そのやり方は、うちの競争力になっているか」

競争力になっているなら、残す価値があります。昔からそうしているだけなら、標準に寄せる候補です。

この考え方はOdooとFit to Standardで詳しく扱っています。

⑤ 小さく始めて、広げていた

全部門を同時に切り替えた会社より、範囲を絞って始めた会社のほうが、結果として早く定着しています。

始め方は、たとえば次の3つです。

  • 会計と販売購買だけを先に切り替える
  • 1つの拠点から始めて、他へ広げる
  • 少人数の有償ライセンスで本番と同じ環境を試す

3つ目は、Odooの課金がユーザー単位である利点を活かした進め方です。最初から全社分を契約する必要はありません。

小さく始めて得られるのは、費用の節約より、間違いに早く気づけることです。

⑥ 作り込みを、競争力のある業務だけに絞っていた

作り込んだ部分は、バージョンアップのたびに確認と修正が要ります。導入時だけでなく、その後も続く負担です。

うまくいった会社は、追加の要望が出たとき、この順序で検討していました。

  1. 標準機能の設定で対応できないか
  2. 業務のやり方を変えれば済まないか
  3. それでも必要なら、作り込みを検討する

拡張モジュールを選ぶときも、機能だけで判断していません。対応バージョン、提供元、保守が続くかどうかまで確認しています。

⑦ 稼働後3〜6か月を、計画に入れていた

ERPのゴールは稼働日ではありません。現場に定着し、業務が正常に回り始めた日です。

うまくいった会社は、稼働後の予算と体制をあらかじめ確保していました。

  • 操作研修を、稼働後も続ける
  • マニュアルとFAQを整備する
  • 運用ルールを文書にする
  • 実際に使われているかを見る

ここが薄いと、現場は「前のやり方のほうが早い」と感じ、Excelでの二重管理に戻ります。システムは動いているのに、効果が出ない状態です。

定着の進め方はOdooを社内に定着させる方法にまとめています。

Odoo導入の失敗パターンとの対応

7つの共通点は、そのまま失敗の裏返しでもあります。並べると、対応は次のとおりです。

失敗の裏返しが、成功の共通点になる つまずいた会社の7つの状態と、うまくいった会社の7つの共通点を1組ずつ対応させた図。どの組にも製品の機能の話は出てこない。 失敗の裏返しが、成功の共通点になる 上段:つまずいた会社 下段:うまくいった会社 目的が「DXのため」で止まっていた → 目的を1つの数字にしていた 無料版だけを見て判断した → 合わない可能性を先に検討した 誰が決めるかが曖昧だった → 決める人と権限範囲を決めた 現行業務をそのまま再現した → 標準に合わせる範囲を経営者が決めた 全部門を一度に切り替えた → 小さく始めて広げた モジュールを入れすぎた → 作り込みを競争力のある業務に絞った 稼働をゴールにした → 稼働後3〜6か月を計画に入れた 作成:ベンチャーネット「Odooの教科書」
つまずいた会社とうまくいった会社の対応

7組を見比べても、製品の機能の話は1つも出てきません。

差がついているのは、決め方と進め方です。つまずきの具体例はOdoo導入の失敗パターンと回避策で扱っています。製品を問わないクラウドERP全般のつまずき方は、NetSuiteの教科書のクラウドERPの失敗事例と回避策が参考になります。

自社はいくつ決まっているか、どこから手をつけるか

次の7項目に、自社を当てはめてみてください。経営会議でそのまま読み上げられる形にしています。

  • □ 導入で変えたいことを、1つの数字で言える
  • □ Odooが合わない場合の選択肢も、検討の机に載っている
  • □ 最終判断者と部門の合意者を、名前で言える
  • □ 部門の合意者が、その場で決めてよい範囲が決まっている
  • □ 標準に寄せる業務と、残す業務の線引きを経営者が示した
  • □ 最初に切り替える範囲を、全社ではなく絞っている
  • □ 稼働後3〜6か月の予算と担当者が決まっている

□が埋まらない項目が、次に手をつける場所です。7つを同時には整えられないので、次の順序を目安にしてください。

優先やることかかる期間の目安
1目的を1つの数字にする数日
2合わない可能性を検討する1〜2週
3決める人と権限範囲を決める数日
4標準に合わせる範囲の方針を出す2〜4週
5最初に切り替える範囲を絞る1週
6作り込みの候補を一覧にする2週
7稼働後の予算と体制を確保する稼働の2か月前まで

1と3は、今日から始められます。 どちらも会議室で決められることで、システムに触る必要がありません。

最初の90日をどう組むかはOdoo導入 最初の90日プランに週単位でまとめています。

この進め方の良い点と、気をつけること

7つの共通点に沿って進めると、得られることがあります。一方で、先に覚悟しておきたい負担もあります。

良い点は、次の5つです。

  • 迷ったときの基準ができる:目的を数字にすれば、「この機能は必要か」をその数字が動くかで決められる
  • 意思決定が速くなる:合意者が決めてよい範囲を明示すれば、「持ち帰ります」が毎回起きる状態を避けやすい
  • 小さく試してから広げられる:Odooはユーザー単位の課金なので、少人数の有償ライセンスで本番と同じ環境を試せる
  • バージョンアップの負担が軽くなる:作り込みを競争力のある業務に絞るほど、確認と修正が要る部分が減る
  • 合わないことに先に気づける:合わない可能性を先に確かめるので、導入後に「思っていたのと違う」となる心配が小さい

気をつけることは、次の4つです。

  • 経営者の時間が要る:標準に合わせる範囲は現場任せにせず、経営者が方針を示す
  • 今のやり方を変える場面が出る:「基本は現行踏襲で」という声と向き合い、標準に寄せる業務を決める
  • 製品選定の前に準備の期間が要る:たとえば標準に合わせる範囲の方針だけでも、目安は2〜4週
  • 稼働後の予算と体制が要る:稼働後3〜6か月の研修・マニュアル整備・利用状況の確認を見込む
この進め方の良い点と、気をつけること 良い点は、迷ったときの基準ができる、意思決定が速くなる、小さく試してから広げられる、バージョンアップの負担が軽くなる、合わないことに先に気づけること。気をつけることは、経営者の時間が要る、今のやり方を変える場面が出る、製品選定の前に準備の期間が要る、稼働後の予算と体制が要ること。 この進め方の良い点と注意点 良い点 迷ったときの基準ができる 目的の数字が動くかで決める 意思決定が速くなる 合意者が決めてよい範囲を明示 小さく試してから広げられる 少人数の有償ライセンスで試す バージョンアップの負担が軽い 作り込みを競争力のある業務に絞る 合わないことに先に気づける 合わない可能性を先に検討する 気をつけること 経営者の時間が要る 標準に合わせる範囲は経営者が示す 今のやり方を変える場面が出る 「基本は現行踏襲で」と向き合う 製品選定の前に準備が要る 標準に合わせる範囲の方針に2〜4週 稼働後の予算と体制が要る 稼働後3〜6か月を見込む 作成:ベンチャーネット「Odooの教科書」
この進め方の良い点と、気をつけること

どこから手をつけるかは、上の優先順位の表を目安にしてください。

ベンチャーネットが製品の話より先に確かめること

ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。特定の製品に誘導する必要がないので、②の「合わない可能性」から一緒に検討するのが基本です。

ご相談を受けたら、製品の説明より先に、次の順で確かめています。

  1. 変えたい数字は何か:転記の時間、締めの日数など、①の数字を一緒に言葉にします。ここが決まらないうちは、機能の比較に入りません。
  2. 3〜5年後、会社はどんな姿か:人数や拠点、事業の広がりから逆算します。規模が大きく伸びる見込みなら、NetSuiteも比較の候補に入れます。
  3. 型に乗らない業務はどれくらいか:標準機能で回る業務と、競争力として残す業務を分けます。
  4. 誰が決め、稼働後に誰が回すか:③の決める人と、⑦の稼働後の担当者を確かめます。

この順で見て、Odooが合わないと判断すれば、その旨をお伝えします。パッケージに乗らない業務が中心なら、AIスクラッチ開発も選択肢です。ただし、その場合はライセンス費用の代わりに開発費と保守費が別途かかります。

基幹システムの導入はITではなく、経営のプロジェクトです。だから製品の選定は、この4つがそろってからにしています。

うまくいかなかった会社との違いは、結局1つ

7つを並べましたが、突き詰めると違いは1つです。

システムを決める前に、業務と体制を決めていたかどうか。

つまずいた会社の多くは、製品の比較から始めています。機能表を並べ、価格を比べ、それから導入に入る流れです。

うまくいった会社は、逆の順で進めています。何を解決したいのかを数字にし、誰が決めるのかを決め、どこまで自社を変えるかを決める。製品の選定はその後です。

基幹システムの導入がITプロジェクトではなく経営プロジェクトだと言われるのは、この順序のためです。

この順序で進めた会社は、たとえ結論がOdooでなかったとしても、判断としては正しい場所に着地しています。

Odoo導入の成功についてよくある質問

Q1. 7つすべてを満たさないと、うまくいきませんか?

7つ全部がそろっていなくても、うまくいく会社はあります。

ただし、①目的を数字にすることと、③決める人を決めることは、ほぼ前提条件です。この2つが欠けていると、残りの5つを決めようとしても議論がまとまりません。

逆に言えば、この2つは費用もかからず、今日から着手できます。

Q2. すでに導入が進んでいます。いまからでも間に合いますか?

間に合うことが多いです。稼働前か稼働後かで、手をつけられる項目が変わります。

とくに⑦の稼働後の計画は、いまからでも加えられる項目です。⑥の作り込みも、次のバージョンアップの前に整理する機会があります。

早く気づくほど、選択肢は多く残ります。

Q3. Odooの評判が両極端なのは、なぜですか?

自由度が高い製品だからです。

作り替えられる範囲が広いため、進め方の差がそのまま結果の差になります。標準に寄せた会社と、要望に応え続けた会社では、3年後の状態がまったく変わります。

製品の評判というより、進め方の評判が混ざって流通していると考えるほうが、実態に近いはずです。

Odooがこの先どう変わっていくかは2026〜2028年のロードマップで扱っています。

Q4. Odoo導入を成功させるポイントは何ですか?

システムを決める前に業務と体制を決めることです。

7つの共通点のうち6つは、稼働より前に決まっています。目的を1つの数字にし、決める人と権限範囲を決め、どこまで自社を変えるかを決める。製品の選定はその後です。7つの中身はうまくいった会社に共通する7つのポイントにまとめました。

まとめ:Odoo導入の成否は進め方で分かれる

Odooの導入がうまくいった会社に共通するのは、次の7つです。

  • 目的を1つの数字にしていた
  • 「合わない可能性」を最初に検討していた
  • 決める人と、その権限範囲を決めていた
  • 標準に合わせる範囲を、経営者が決めていた
  • 小さく始めて、広げていた
  • 作り込みを、競争力のある業務だけに絞っていた
  • 稼働後3〜6か月を、計画に入れていた

7つのうち6つは、システムを触る前に決まっています。

共通点の中に、製品の機能の話は1つもありません。差がつくのは決め方と進め方です。

1年後の月次会議で、担当者が「転記の40時間は、もうゼロです」と数字で報告する。あなたはその場で、次に標準へ寄せる業務を指名している。その光景は、稼働前にこの7つをいくつ決めたかで、ほぼ決まっています。

もう少し詳しく知りたい方へ

ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、製品の比較から入らず、目的の言語化と体制づくりからご相談を承っています。

チェックリストで□が埋まらなかった項目から、一緒に整理してみませんか。検討の結果、Odooが合わないと判断した場合は、その旨を正直にお伝えします。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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