クラウドERPの失敗事例と回避策|導入前に知っておくべき5つのリスク

「失敗とは、プロジェクトが途中で止まることだ」

クラウドERPの失敗と聞くと、多くの経営者がそう考えます。

実際には、もっと静かな失敗のほうが多く起きています。

稼働はした。毎日入力もしている。

それでも経営会議の資料は、毎月Excelで作り直している。

クラウドERPの失敗とは、導入した仕組みが、期待した経営の改善を生まない状態のことです。

頓挫だけでなく、「動いているが活用できていない」状態も含みます。

失敗の多くは、製品ではなく導入の進め方から生まれます。

そして、導入時・保守・運用の3つの場面で起き、後の場面ほど気づきにくくなります。

では、気づきにくい失敗は、どうすれば早く見つけて立て直せるのか。

先に失敗の形を知っておけば、避ける設計も、途中からの立て直しもできます。

クラウドERPの基本は、クラウドERPとは?仕組み・オンプレミスとの違い・経営者が知るべき3つの判断軸【2026年版】にまとめています。

目次

この記事で分かること

  • クラウドERPの失敗が「静かに、見えにくい形」で起こる理由
  • 失敗が現れる3つの場面(導入時・保守・運用)と、早めに出るサイン
  • 検討段階で知っておきたい5つの失敗リスクと、その避け方
  • クラウドERPが合う会社・まだ早い会社の条件
  • 導入済みで「効果が見えない」会社の立て直し方

言葉の整理

  • クラウドERP:会計・販売・在庫などの業務を一つにまとめるERPを、インターネット経由で使う形のものです
  • SaaS:ソフトを買い切らず、インターネット経由で月額などで使う提供形態です

失敗は「静かに、見えにくい形」で起こる

「動いている」と「活用できている」は別

ERPは、入れただけで価値が出るシステムではありません。

仕事の流れを整え、数字を見えるようにし、判断を速くする。

そこまで進んで、ようやく経営の武器になります。

導入から1年以上たっても、月次決算の速さが変わらない。

経営判断に使えるデータが出てこない。

「ERPを入れたのに、何が変わったのか分からない」。

どれも、れっきとした失敗です。

ただ派手な頓挫ではないため、社内で失敗と認識されにくいのです。

検討段階で「失敗の形」を知る価値

検討段階なら、失敗を避ける設計ができます。

導入後は起きた問題への対応になり、費用も時間も膨らみます。

観点事前に避ける(検討段階で気づく)事後に対応する(失敗の後で直す)
費用目的の明確化と体制の設計のみ要件の定義のやり直し・パートナーの変更・場合により再導入
時間の目安検討の期間が1〜2か月ほど延びる半年〜2年ほどの追加の期間
機会の損失小さい経営判断の遅れが、事業の成長を直接止める
社内の負担落ち着いて検討できる頓挫・社内の信頼の低下

時間の目安は、ベンチャーネットの考え方としての目安です。

会社の規模と、失敗の深さで変わります。

よくある失敗の典型

特定の会社の事例ではなく、よくある典型を3つ挙げます。

典型1:要件が決まらないまま1年がたつ

各部門の要望を集めた結果、要件の一覧が膨らみ続けた。

経営者は「現場で決めて」と任せ、止める人がいなかった。

稼働の予定を2回延ばし、費用は当初の見込みを大きく超えた。

典型2:小さな改修のたびに待たされる

稼働後、帳票の小さな直しにも見積と数週間の待ちが続いた。

保守の窓口が導入した会社とは別で、話がなかなか通じない。

現場は、直せない部分をExcelで補い始めた。

典型3:動いているのに経営会議はExcelのまま

入力はERPで行っているが、会議の資料は毎月Excelで作り直している。

数字の定義が部門ごとに違い、ERPの数字をそのまま使えないためです。

誰も「失敗」とは言わないまま、2年がたった。

3つとも、製品の欠陥ではありません。

目的・体制・定着という、進め方の問題です。

進め方の問題なら、進め方を変えれば直せます。

失敗が現れる3つの場面|導入時・保守・運用

場面失敗の見え方気づきやすさ主な原因
導入時プロジェクトが迷走し、本番稼働にたどり着けない分かりやすい目的があいまい/要件の膨張/パートナーの力量不足
保守制度の変更や業務の変化への対応が遅い。追加の費用が膨らむやや気づきにくい保守の契約の範囲外の問題/窓口の分散
運用動いてはいるが、活用できていない状態が続く最も気づきにくい定着の軽視/伴走の不足

導入時は、要件の定義が何か月も決まらない、開発の途中で変更が相次ぐ、といった形で表れます。

お金も時間もかけた後なので、「ここで止めるわけにはいかない」と引きずりがちです。

保守では、「その対応は契約の範囲外です」と言われる場面が増えます。

一つひとつは小さな不満でも、積み重なると社内の信頼が下がり、活用が止まります。

運用の失敗は、「一応、動いている」ため表に出ません。

「ERPを入れたのだから十分」という空気の中で、改善の機会を逃し続けます。

クラウドERPの失敗が現れる3つの場面 失敗は導入時・保守・運用の3つの場面で起き、後の場面ほど気づきにくい。運用の失敗は、動いているため表に出にくい。 失敗が現れる3つの場面 導入時|分かりやすい要件が決まらず、稼働にたどり着けない 保守|やや気づきにくい小さな改修も遅く、追加の費用が膨らむ 運用|最も気づきにくい動いているが、経営の数字が出てこない 後の場面ほど、表に出にくい
クラウドERPの失敗が現れる3つの場面

早く気づくためのサイン

場面ごとに、早めに表れるサインがあります。

経営者が月に一度、次の点を見るだけでも、気づくのが早くなります。

場面早めに表れるサイン経営者が見ること
導入時要件の一覧が増え続け、決まった項目が減らない追加の要望を、誰が、何を基準に止めているか
導入時会議で「現行と同じに」という言葉が増えるその業務を変えられない理由が説明できるか
保守小さな改修にも見積と時間がかかる保守の契約の範囲と、窓口が一つか
運用経営会議の資料が、ERPの外のExcelで作られているERPから直接出ている数字はどれか
運用現場から「前のほうが早い」という声が出る定着の支援が、稼働後も続いているか

導入時の失敗だけを警戒すると、その先の保守・運用を見落とします。

3つの場面すべてに、目を配ってください。

知っておきたい5つの失敗リスク

クラウドERPの導入でよく起きる5つのリスクを、1枚で並べます。

リスク主に表れる場面最初に打つ手
1. 目的が「業務効率化」止まり導入時測れる目標を1行で書く
2. いまの業務をそのままシステム化導入時・保守特殊な業務と変えられる業務を仕分ける
3. パートナーを価格と知名度で選ぶ保守・運用稼働後の支援の範囲を契約の前に聞く
4. 本番稼働の日をゴールにする運用稼働後3〜6か月の予算と担当を決める
5. 動いているから大丈夫と見逃す運用稼働1年後の点検の日と見る数字を決める

自社に当てはまりそうなものから、読み進めてください。

リスク1:目的を「業務効率化」止まりで言葉にする

起きること:「業務効率化のため」「DX推進のため」という漠然とした目的のまま、検討が始まる。

経営の課題と切り離されてIT部門や現場の主導で進み、使わない機能に大きな投資をする。

原因:ERPは手段です。

どんな効果を生みたいかが言葉になっていないと、投資の判断の軸がベンダー任せになります。

後から「この機能は要らなかった」「要る機能が抜けていた」と気づくことになります。

避け方:具体的で、測れる目標を最初に決めます。

  • 「在庫回転率を1.5倍にする」
  • 「月次決算を5営業日短くする」

目標の数字は例です。自社の課題に合わせて決めてください。

ERPを「コストの削減」より「経営判断を速くする仕組み」と捉えると、目的の質が上がります。

経営者への問い:その目標は、導入の1年後に数字で点検できるか。

リスク2:いまの業務をそのままシステム化し、作り込みが過剰になる

起きること:「今の業務を変えたくない」という現場の声を、そのまま要件にする。

「うちは特殊だから」と、標準の機能を使わずに作り込みを重ねる。

いまのシステムの仕様書がないまま、「今と同じ動きを」と要望が積み上がる。

原因:クラウドERPは、標準的な業務の流れを前提に作られたSaaSです。

いまの業務をそのまま再現しようとすると、作り込みが膨らみ、費用もリスクも上がります。

SaaSの強みである「提供元の定期的な更新」の恩恵も、受けにくくなります。

仕様書がないまま積み上げれば、誰も全体を知らない仕組みがまた生まれます。

ブラックボックスの再生産です。

避け方:次の2つの考え方で進めます。

  • Fit to Standard:業務を、パッケージの標準の機能に合わせる考え方
  • クリーンコア:ERP本体の作り込みや追加の開発を、最小限に抑える考え方

「本当に特殊な部分」と「変えられる部分」を切り分けます。

惰性で続けている業務は、この機会に捨てる発想を持ちます。

切り分け方は、NetSuite導入のFit&Gap分析で詳しく扱っています。

経営者への問い:作り込む業務は、本当に自社の強みの源泉か。

リスク3:パートナーを「価格」と「知名度」で選ぶ

起きること:価格の安さや「大手だから安心」で、パートナーを決める。

契約後に「想定外の追加の費用」「対応の範囲外です」と言われ続ける。

原因:価格や知名度では、業務の理解の深さや、改善の提案の力は測れません。

特に問題になりやすいのが、稼働後の体制です。

導入だけの契約で稼働後の支援が別の会社になると、窓口が分かれ、責任の所在があいまいになります。

避け方:価格の前に、支援のスタイルを聞きます。

  • 稼働後の支援は、同じ会社・同じ担当が続けるか
  • 「このやり方では難しい」と判断した過去の例を、説明できるか
  • 作り込みを減らすために、どんな提案をするか

答えが具体的な相手ほど、支援のスタイルがはっきりしています。

選び方の視点は、第6章にまとめています。

リスク4:本番稼働の日をゴールにし、定着を軽視する

起きること:本番稼働の日を最終のゴールにし、稼働後の支援に予算も人も割かない。

操作の研修、マニュアル、運用のルールづくりが後回しになる。

原因:稼働の直後は、最も不安定な時期です。

現場の質問が集中し、入力の漏れが起き、データの信頼性が揺らぎます。

ここを軽く見ると「前のやり方のほうが早い」という声が上がり、Excelとの併用に戻ります。

避け方:ゴールを「現場に定着し業務が回り始めた日」に置きます。

稼働後3〜6か月の計画を、プロジェクトの開始の時点から組み込みます。

操作の研修、マニュアル・よくある質問の整備、運用のルールの明文化、定着の度合いの確認。

この4つを、予算と担当者つきで計画に書きます。

経営者への問い:稼働後の予算と担当者が、計画に書かれているか。

リスク5:「動いているから大丈夫」と、運用の問題を見逃す

起きること:「一応、動いている」ため、問題が表に出ない。

導入から1年以上たっても、データの活用が進まない。

経営者が見たい数字も、現場が動ける指標も出てこない。

原因:「動いている」段階で止まったまま、改善の機会を手放しています。

外から見ると失敗に見えない、内側だけの静かな失敗です。

避け方:導入から1年たっても活用が進まないなら、パートナーの伴走の力を点検する時期です。

クラウドERPを続けたまま、パートナーだけを見直す道もあります。

NetSuiteの公式サイトには、導入を支援するパートナー(Solution Providerなど)を探す窓口があります。

(出典:Oracle NetSuite公式「Partners」、2026年9月確認)

見直すときは、いまの契約の解約・引継ぎの条件を先に確かめます。

経営者への問い:ERPを入れてから、判断が速くなった場面を挙げられるか。

パートナーの変更は、ERP導入失敗の原因はパートナーにあり?「パートナー変更(リプレイス)」という選択肢で詳しく扱っています。

失敗を分ける本質|ITプロジェクトではなく経営プロジェクト

5つのリスクには、共通する根っこがあります。

クラウドERPの導入を、ITプロジェクトとして扱ってしまうことです。

ERPの導入は、業務の流れを見直し、部門の壁を外し、会社の情報を一本につなぐ取り組みです。

組織と業務の形を変えるので、経営層の関与が欠かせません。

それでも「ITのことはIT部門に任せる」と、丸投げになる例は少なくありません。

最初に確保したいのは、次の3つです。

  • 専任のプロジェクトマネージャー:兼務ではなく、業務とシステムの両方を理解できる人
  • 経営層のオーナーとしての関与:投資の判断だけでなく、重要な意思決定の場に出る
  • 社内の人の確保:担当者が本業に追われたまま進めない体制

PMがいないと、決めるべきことが先送りになります。

経営層がいないと、部門の利害がぶつかったときに決められません。

これらはコストではなく、導入後の数年を支える投資です。

そして成否を最も分けるのは、経営者自身が目的を語れるかです。

「在庫の見える化で、機会の損失を年間○千万円減らす」。

「部門ごとに分かれた顧客の情報を統合し、営業の生産性を上げる」。

自社の課題と結びついた言葉で語れることが、経営プロジェクトの第一歩です。

判断の物差し|クラウドERPが合う会社・まだ早い会社

失敗を避ける最初の判断は、「そもそも、いまクラウドERPが要るか」です。

合う会社・まだ早い会社

合う会社まだ早い会社
販売・在庫・会計の数字が部門ごとに分かれ、つなぐ手間が大きい社員が少なく、一人が全体を把握できている
拠点や事業が増え、会社全体の数字を早く見たい困りごとが経理など一つの業務に限られる
経営者が導入の目的を具体的に語れる目的が「DXのため」から先に進まない
社内に推進役を置ける業務の流れと担当が、まだ決まっていない

特に相性が良いのは、販売・在庫の管理が経営の中心の会社(「モノの管理」)です。

プロジェクトの管理が中心の会社(「ヒトの管理」)も、同じく合いやすいタイプです。

クラウドERP以外が合う場合

状況合いやすい選択肢
部門・拠点をまたいで、一つの数字で経営を見たいNetSuiteなどの統合型クラウドERP
費用を抑え、必要な業務から組み合わせたいOdoo
業界の慣習に合わせた機能を、国内の製品で選びたい国産の業種向けERP
独自の業務が強みの源泉で、パッケージに合わないAIスクラッチ開発(作った後の保守の体制が要る)
目的と業務の流れが、まだ固まっていないいまは入れない

NetSuiteは、統合型のクラウドERPです。

世界220地域・44,000社以上で使われています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。

費用はミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。

会計まで一気に入れるか、段階的に入れるか

ベンチャーネットが本来お勧めしたいのは、会計まで含めて一気に導入する進め方です。

会計まで含めると、いまの業務を一気通貫で見直す機会が生まれます。

会計を切り離したままでは、ERPの価値の半分しか得られません。

ただ、条件によっては段階的に進めるほうが合います。

進め方合う条件
会計まで一気に導入経営者が業務全体を変える覚悟を持てる。経理の体制に余裕がある。いまの会計の仕組みを続ける理由がない
財務会計はフェーズ2以降いまの会計ソフトを急いで替える必要がない。経理の負担を抑えたい。税理士との連携を先に確かめたい

2つの進め方の分かれ目を図にすると、次のとおりです。

会計まで一気に入れるか、段階的に入れるかの分かれ目 経理の体制に余裕があり、業務全体を変える覚悟を持てるなら、会計まで一気に導入する。そうでなければ、販売・在庫やプロジェクトの管理から始め、安定してから財務に広げる。 会計まで一気か、段階的か 経理の体制に余裕があり、 業務全体を変える覚悟を持てるか はい いいえ 会計まで一気に 業務を一気通貫で 見直す機会が生まれる 財務は段階的に 販売・在庫や プロジェクト管理から 安定してから財務へ ベンチャーネットの本来のお勧めは、一気に導入
会計まで一気に入れるか、段階的に入れるかの分かれ目

日本特有の会計の要件には、一定のハードルがあります。

たとえば三分法(仕入を記帳する方法の一つ)への対応や、税理士が対応できるかどうか。

国内の会計ソフトとの操作の違いもあります。

段階的に進めるなら、販売・在庫やプロジェクトの管理から始め、安定してから財務に広げます。

失敗を避けるパートナーの選び方

パートナーは、業者ではなく伴走者です。

次の3つの視点で選びます。

視点1:周辺の領域までカバーできる技術力があるか

いまの業務システムは、ERPだけで完結することはまれです。

RPA・BI・AI・eコマース・倉庫管理・CRMなどと連携して、初めて業務が整います。

周辺の仕組みとつなぐ開発に対応できるかを聞いてください。

視点2:業務の整理から定着まで、一貫して伴走するか

支援の範囲は、導入の作業の完了まで、稼働後3〜6か月の定着まで、その後の運用の伴走まで、と相手によって違います。

中堅・中小企業の多くは、専任の情報システムの担当を置けません。

本業と兼ねながら進めるからこそ、業務の整理から定着まで伴走する相手が要ります。

視点3:対等な関係で、リスクを正直に伝えてくれるか

良いパートナーは、「合わないこともある」「このやり方では難しい」と言えます。

「何でもできます」「ご要望どおりに対応します」と言う相手には注意が要ります。

希望をすべて受け入れる姿勢は、作り込みの過剰や要件の膨張の温床になります。

伴走型の支援の考え方は、伴走型のNetSuite導入支援とは?丸投げ型との違いと、中小企業にとって重要な理由で詳しく扱っています。

選定の全体の流れは、NetSuite導入で失敗しないERP選定ガイド|選び方・導入事例・パートナー選びまで【2026年版】にまとめています。

導入済みで「効果が見えない」会社の立て直し

失敗に気づいても、そこで終わりではありません。

まず、3つの場面のどこで止まっているかを見ます。

追加の費用や対応の遅さへの不満が続くなら、保守。

動いてはいるが経営の数字が出てこないなら、運用です。

次に、原因を切り分けます。

原因立て直し方
社内の体制推進役を置き直し、目標の数字と点検の日を決め直す
パートナーの伴走の不足製品を続けたまま、パートナーを見直す
製品と業務が合っていない基幹システムのリプレイスを検討する

場面と原因から立て直し方を選ぶ流れを図にすると、次のとおりです。

立て直しの逆引き:止まっている場面と原因から まず、止まっている場面が保守か運用かを見る。次に原因を切り分け、社内の体制なら推進役と目標を決め直し、パートナーの伴走の不足なら製品を続けたままパートナーを見直し、製品と業務が合っていなければリプレイスを検討する。 立て直しの逆引き ①止まっている場面を見る 保守 費用や対応の遅さへの 不満が続く 運用 動いているが経営の 数字が出てこない ②原因を切り分けて選ぶ 社内の体制 推進役を置き直し、 目標と点検の日を決め直す パートナーの 伴走の不足 製品を続けたまま、 パートナーを見直す 製品と業務が 合っていない 基幹システムの リプレイスを検討する いきなり製品を替えるより、 パートナーの見直しで立て直せる場合も
立て直しの逆引き:止まっている場面と原因から

いきなり製品を替えるより、パートナーの見直しで立て直せる場合もあります。

その場合は、次の順番で進めます。

  1. いまの保守契約について、範囲・期間・解約の条件を確かめる
  2. いまの設定や作り込みの一覧を、手元にそろえる
  3. 新しい候補に、立て直しの計画と引き継ぎの進め方を聞く

作り込みの一覧がないと、引き継ぎに時間がかかります。

見直しを決める前から、一覧を整えておくと安心です。

保守・サポートの選び方は、NetSuiteのサポート・保守はどう選ぶ?失敗しない3つの見極めポイントで扱っています。

ベンチャーネットならこう見る|100点より、まず回す

ベンチャーネットが大切にしているのは、「100点を目指すより、まず回す」という考え方です。

失敗しやすい会社ほど、すべてを満たす要件の定義を目指します。

全業務を洗い出し、すべての要件を満たす設計をしようとする。

定義に何か月も使ううちに、現場の状況は変わってしまいます。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入に限りません。

他社のあとの引き継ぎや立て直しが、多くを占めます。

その中で使っている型は、次の2つです。

型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

立て直しでも、新しく入れる場合でも、同じ順番で進めます。

  1. 業務の見える化:いまの業務の流れを、現場に聞いて描く
  2. 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
  3. Fit&Gap:残った業務を、製品の標準機能と照らし合わせる

Fit&Gapは、業務と機能の合う・合わないを一つずつ見る作業のことです。

合わなかった業務は、標準に合わせる・開発する・残すのどれかに決めます。

リスク2の作り込みの過剰は、この順番を飛ばすと起きやすくなります。

ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択 業務の見える化、整理整頓、移る先の製品の標準機能とのFit&Gap、そして標準に合わせる・開発する・残すの3択で決める。 ベンチャーネットの進め方業務の見える化いまの業務フローを現場に聞いて描く整理整頓やめる・まとめる・そろえる業務を決めるFit&Gap移る先の製品の標準機能と照らし合わせる3つの選択標準に合わせる/開発する/残す製品が決まっていても、見える化から始める
ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

型2:定着の4手順

リスク4・5の静かな失敗は、稼働後の定着で防ぎます。

  • データ整理を最初に:移す前に、マスターと数字の定義をそろえる
  • 段階的に導入:一度に全部を切り替えない
  • 研修・サポートを徹底:稼働後の質問に、すぐ答えられる体制を置く
  • 操作はシンプルに:使わない機能を盛らない

最初の打ち合わせでは、次の3つを伺います。

  1. 経営者が語れる目的は、測れる目標で1行に書けるか
  2. 最初の範囲を、会計まで一気に置くか、段階的に置くか
  3. 稼働後の3〜6か月を、社内の誰が支えるか

1が言葉にならない段階なら、製品を選ぶ前に課題の整理から始めます。

「いまは入れない」も、正直な答えの一つです。

今日できること|3つの場面の自己点検

1時間で、次の表に答えてみてください。

場面問いはい/いいえ
導入時導入の目的を、測れる目標で1行に書けるか
導入時「今と同じ動き」を求める要望が、要件の半分を超えていないか
保守稼働後の支援の範囲と費用が、契約に書かれているか
保守制度の変更や追加の開発の窓口が、一つに決まっているか
運用稼働1年後に効果を点検する日と、見る数字が決まっているか
運用経営会議の数字が、ERPから直接出ているか

検討中の会社にとって、「いいえ」の項目は導入前に手を打つ場所です。

導入済みの会社なら、「いいえ」が多い場面が、いま止まっている場所です。

よくある質問

Q1. クラウドERPの導入の失敗率はどのくらいですか

明確な失敗率の統計はありません。

参考になる数字として、キーマンズネットが2024年3月に行ったアンケート調査があります。

従業員1000人以下の中堅・中小企業で、導入しているERPの満足度は42.9%でした。

(出典:キーマンズネット「ERPの利用状況(2024年)/後編」、2026年9月確認)

満足していない側には、「動いてはいるが活用できていない」静かな失敗も入っているはずです。

背景は、ERP導入はなぜ失敗するのかでも扱っています。

Q2. 失敗しないために、最初に決めるべきことは何ですか

経営課題から逆算した測れる目的です。

「業務効率化のため」では足りません。

「月次決算を5営業日短くする」のように、達成したい状態を数字で書きます。

この目的が、要件を決めるときも、パートナーや投資を選ぶときも、判断の軸になります。

Q3. 中小企業でも本格的なクラウドERPを導入できますか

できます。

NetSuiteの場合、必要な機能から小さく始め、会社の成長に合わせて広げられます。

費用はミニマム構成で月額20万円〜が出発点で、構成により数百万円規模になることもあります。

最終的な金額は、Oracle社の営業を通じて示されます。

Q4. 失敗を避けるには、どんなパートナーを選べばよいですか

リスクを正直に伝えてくれる相手を選びます。

周辺の領域までの技術力と、定着まで伴走するかも見てください(第6章)。

「何でもできます」と言う相手には注意が必要です。

Q5. 導入の途中や稼働後に、パートナーを変えられますか

契約の条件を確かめたうえで検討できます。

NetSuiteの公式サイトには、導入を支援するパートナーを探す窓口があります。

見直すときは、いまの契約の解約・引継ぎの条件と、データや設定の資料の受け渡しを先に確かめます(第7章)。

Q6. 会計まで一気に導入すべきですか

経理の体制に余裕があれば一気に、急いで替える理由がなければ段階的に進めます。

会計まで含めると、業務を一気通貫で見直す機会が生まれます。

いまの会計ソフトを急いで替える必要がない場合や、経理の負担を抑えたい場合は、販売・在庫から始めます(第5章5-3)。

Q7. 導入済みですが、効果が見えません。どうすればよいですか

止まっている場面と原因の切り分けが先です。

原因が社内の体制か、パートナーか、製品かで、立て直し方が変わります。

製品を続けたまま、パートナーの見直しで立て直せる場合もあります(第7章)。

まとめ

  • クラウドERPの失敗は、頓挫よりも静かな失敗のほうが見逃されやすい
  • 失敗は、導入時・保守・運用の3つの場面で起き、後の場面ほど気づきにくい
  • 5つのリスクの根っこは、ERPの導入をITプロジェクトとして扱うこと
  • 最初に決めるのは、経営者が語れる測れる目的
  • 導入済みでも立て直せる。止まっている場面と原因を切り分け、見える化から進め直す

毎月Excelで作り直している会議の資料。

それがERPから直接出るようになったとき、静かな失敗は終わります。

最初の一歩は、目的を1行で書くことです。

もう少し詳しく知りたい方へ

検討の入り口からでも、導入済みの立て直しからでも、中立の立場で一緒に整理します。

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

目次