依頼の抜け漏れを減らす線引き|OdooのDiscuss×Projectの使いどころ

「あの件、やっといてね」。すれ違いざまに頼んだ一言が、1週間後に何も動いていない。心当たりのある経営者は多いはずです。

頼んだ側は伝えたつもり、受けた側は聞いたつもり。チャットを入れても、会話が流れる場所に依頼を投げれば、翌日には押し流されます。

Odoo(オドゥー)なら、これを置き場所の線引きで解けます。相談は社内のやり取り(Discuss)に、期限と担当がつくものはプロジェクト・タスク管理(Project)に置く。Odooでは社内のやり取りと業務データが同じ仕組みの中にあるので、どちらも顧客・案件に紐づけて残せます。DiscussとProjectは、無料のCommunity版でも使えます(タスク管理と社内チャットの対応範囲)。

線を引くと、たとえば次のことが変わります。

  • 頼んだ仕事が、担当と期限つきで誰かの一覧に載る
  • 案件を開けば経緯と未完了の作業が一緒に見え、前置きの説明が要らない
  • 迷ったときは「期限と担当を言えるか」の1点で置き場所が決まる
  • 朝礼で、期限を過ぎたタスクだけを画面で確かめられる

ただし、雑談まで全部タスクにすると、今度は誰も開かなくなります。決まった手続きを回す承認アプリは、有償のEnterprise版が前提です。

難しいのは、この線を社内で守り続けることのほうです。では、誰から変えれば定着するのか。答えは連絡とタスクの線を引くまでの進め方にあります。

CommunityとEnterpriseの区別について

Discuss(社内のやり取り)とプロジェクト・タスク管理は、無料のCommunity版でも有償のEnterprise版でも使えます。ただし、決まった手続きを回す承認(Approvals)アプリはEnterprise版が前提です。

目次

こんな場面はありませんか

朝礼で「今週中にお願いします」と伝えた案件。週末に聞くと、担当者は別の急ぎ仕事に追われて手つかずでした。誰が悪いのでもなく、依頼が誰の一覧にも載っていなかっただけです。

チャットに書いた依頼を後から探すのも、一苦労です。雑談や日報に埋もれて見つからず、同じ説明をもう一度やり直すことになります。

依頼は「会話」に置くか「一覧」に置くか いまの状態は、口頭やチャットで依頼が流れ、期限も担当もあいまいなまま、1週間後に「まだでした」となる。つながった状態は、相談は会話、決まった依頼は一覧へ置き、期限と担当が付いた形で残るので、聞かなくても進捗が見える。 依頼は「会話」に置くか「一覧」に置くか いまの状態 口頭・チャットで依頼が流れる 期限も担当もあいまいなまま 1週間後に「まだでした」 つながった状態 相談は会話、決まった依頼は一覧へ 期限と担当が付いた形で残る 聞かなくても進捗が見える 流れてよいものと、残すべきものを 分けるだけで抜け漏れは減る
依頼は「会話」に置くか「一覧」に置くか

なぜ頼んだ仕事が消えるのか

理由1:依頼が記録として残らない

口頭やチャットの依頼は、その場では伝わっています。ただ、後から一覧にして見返す手段がありません。思い出せた依頼だけが進む状態です。

理由2:期限と担当を決めずに頼んでいる

「なるべく早く」という頼み方は、相手にとって着手日のない依頼です。誰がいつまでにやるか決まっていないものは、決まっている仕事に後回しにされます。

理由3:連絡と業務データが別の場所にある

チャットには、顧客名や案件番号が入っていません。毎回「A社の見積の件で」と、前置きから説明し直すことになる。この説明のやり直しに、いちばん時間がかかっています。

OdooのDiscussとProjectでこう変わる

Odooでは、社内のやり取りと業務データが同じ仕組みの中にあります。会話とタスクを切り分けたうえで、どちらも案件に紐づけて残せます。

相談と確認はDiscussに置く

判断が固まっていない話や、確認したいだけの質問は、Discussで交わします。ここは流れてよい場所と割り切ります。詳しくはOdooの社内チャット(Discuss)で整理しています。

期限と担当がつくものはタスクにする

「誰が」「いつまでに」が言えるものは、その場でタスクに登録します。担当と期限を入れる時点で、あいまいな依頼はふるいにかけられる。全体像はOdooのプロジェクト管理(Project)にまとめています。

やり取りを業務データに紐づける

Odooでは、会話もタスクも、顧客・案件・受注といったデータの上に残ります。案件を開けば、経緯と未完了の作業が一緒に見える。前置きの説明は要らなくなります。

会話からタスクへ、線を引く3ステップ やり取りを会話としてDiscussで始め、担当と期限が決まった時点でタスクとして登録し、顧客・案件に紐づけて経緯ごと残す流れ。流れるDiscussと、残るProjectを分けるのが出発点。 会話からタスクへ、線を引く3ステップ ①話す 相談・確認はDiscussで 流れてよい話と割り切る ②決まったら移す 担当と期限を入れて タスクとして登録する ③案件に残す 顧客・案件に紐づけ 経緯ごと引き継げる 流れるDiscussと、残るProject この2つを分けるのが出発点
会話からタスクへ、線を引く3ステップ

AIで代替できるのは、やり取りの内容から、やるべきことと期限の候補を拾う工程です。AIによる読み取りと下書き生成で、タスク化の人手を減らせる余地があります。頼んだ仕事の行方をAIに追わせる考え方は、頼んだ仕事は、いま誰の手元にあるかで紹介しています。

迷ったときの判断表

よくある依頼の置き場所を、会議でそのまま使える表にしました。基準は「期限と担当を言えるか」の1点です。

よくあるやり取り置き場所理由
「この件、どう思う?」という相談Discuss結論が出ておらず、期限も担当もない
「在庫あるか確認して」程度の質問Discussその場で答えが返れば終わる
「金曜までにA社の見積を作って」タスク担当と期限が言える
会議で決まった宿題タスク決めた場で担当と期限までつける
毎日の進捗報告・雑談Discuss一件ずつ管理すると一覧があふれる
取引条件の変更など決裁が要る手続き承認(Enterprise版)またはタスク誰で止まっているかを残したい

タスク管理と社内チャットの対応範囲(C/E別)

機能Community版(無料)Enterprise版(有償)
Discuss(社内のやり取り)利用できる利用できる
プロジェクト・タスク管理利用できる利用できる
顧客・案件への紐づけ利用できる利用できる
承認(Approvals)アプリ対象外利用できる
公式サポート・ホスティング自社で用意公式サポートを含む。ホスティングはOdooオンライン・Odoo.sh・自社サーバーから選べる

版ごとの対応範囲は、改定されることがあります。導入を検討する段階で、Odoo公式のエディション比較ページで最新の内容をご確認ください。

連絡とタスクを分ける良い点と、気をつけること

DiscussとProjectで線を引いたときの良い点と注意点は、次のとおりです。使える版は、項目ごとに添えています。

良い点

  • 頼んだ仕事が消えにくい:期限と担当がつくものをタスクにすれば、依頼が誰かの一覧に載る
  • 前置きの説明が要らない:会話もタスクも顧客・案件・受注の上に残り、案件を開けば経緯と未完了の作業が一緒に見える
  • 線引きの基準が1つで済む:迷ったら「期限と担当を言えるか」で置き場所を決める
  • 基本の仕組みは両版で使える:Discuss・プロジェクト・タスク管理・顧客や案件への紐づけは、Community版でも使える

気をつけること

  • 全部をタスクにしない:雑談や進捗報告まで入れると、一覧があふれて誰も開かなくなる
  • 依頼する側から変える:管理職が口頭依頼を続けると、現場は元に戻る
  • 承認アプリはEnterprise版が前提:Community版では、タスクの進行段階で簡易的に代替する形になる
  • 連絡だけが課題なら大きすぎることもある:販売や在庫と紐づける必要がなければ、ERPを入れるほどではない場合もある

両方を並べると、次の図のとおりです。

連絡とタスクを分ける良い点と、気をつけること 良い点は、頼んだ仕事が一覧に載って消えにくい、案件に紐づいて前置きの説明が要らない、線引きの基準が「期限と担当を言えるか」の1つで済む、基本の仕組みは両版で使えること。気をつけることは、全部をタスクにしない、依頼する側から変える、承認アプリはEnterprise版が前提、連絡だけが課題ならERPは大きすぎることもあること。 連絡とタスクを分ける良い点と注意点 良い点 頼んだ仕事が消えにくい 担当と期限つきで一覧に載る 前置きの説明が要らない 会話もタスクも案件の上に残る 線引きの基準が1つで済む 期限と担当を言えるか 基本の仕組みは両版で使える Discuss・Project・案件への紐づけ 気をつけること 全部をタスクにしない 雑談まで入れると一覧があふれる 依頼する側から変える 口頭依頼が続くと現場は元に戻る 承認アプリはEnterprise版 Community版はタスクで簡易的に代替 連絡だけならERPは大きすぎることも 販売や在庫と紐づけるかで決める 難しいのは、線を社内で守り続けること
連絡とタスクを分ける良い点と、気をつけること

注意点への手の打ち方は連絡とタスクの線を引くまでの進め方で、置き場所の決め方は迷ったときの判断表で説明しています。

連絡とタスクの線を引くまでの進め方

ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、このテーマで相談を受けると、ツールの設定より先に次の順番で確かめます。

ステップ1:消えた依頼を数える

直近1か月で「言ったのに進んでいなかった」依頼を、管理職に挙げてもらいます。見るのは件数より、どこで頼んだか(口頭・チャット・会議)です。消える場所が、最初に手を入れる場所になります。

ステップ2:基準を1行で決める

「期限と担当を言えるものはタスク、それ以外はDiscuss」のように、部署ごとに1行で決めて掲示します。「Aさんはチャット、Bさんはタスク」と人で分かれると、探す場所が人ごとに変わるためです。考え方はグループウェアとはでも触れています。

ステップ3:最初は絞って始める

雑談や進捗報告までタスクにすると、一覧があふれて誰も開かなくなります。最初は1部署、「期限と担当を言えるものだけ」に絞る。設定は標準機能のまま始め、業務の側を合わせます(Fit to Standard)。

ステップ4:依頼する側から先に変える

定着を左右するのは、現場より依頼する側です。朝礼や会議で決めた宿題を、その場でタスクにする習慣から始めます。

社内の連絡だけが課題で、販売や在庫と紐づける必要がないなら、ERPを入れるほどではない場合もあります。その場合は、そうお伝えするのがベンチャーネットの方針です。

よくある質問

Discussだけで運用してはいけませんか?

問題ありません。ただ、期限のある依頼が増えると埋もれ始めます。抜けが目立ってきた時点が、タスク側へ移す合図です。

全員がパソコンを使わない職場でも運用できますか?

閲覧中心なら、負担は小さく済みます。現場が見るのは、自分の担当分だけだからです。まずは1部署に限って試すと、無理なく始められます。

承認のような手続きも同じ仕組みで回せますか?

専用の承認(Approvals)アプリで回すなら、Enterprise版が前提です。Community版では、タスクの進行段階で簡易的に代替する形になります。詳しくはOdooの承認ワークフローをご覧ください。規模が大きく、上場準備などで内部統制まで求められる場合は、NetSuiteの承認ワークフロー実装ガイドも比べる材料になります。

導入したのに使われない、を避けるには何が必要ですか?

依頼する側が、例外なく同じ場所に書くことです。管理職が口頭依頼を続けると、現場は元に戻ります。教育の進め方はOdooを社内に定着させる方法で扱っています。

タスク管理と社内チャットを分けるメリットと注意点は何ですか?

頼んだ仕事が一覧に残り前置きの説明が要らなくなることです。

期限と担当がつくものはタスクにし、会話もタスクも顧客・案件に紐づけて残します。案件を開けば、経緯と未完了の作業が一緒に見えます。 一方で、雑談や進捗報告までタスクにすると一覧があふれます。管理職が口頭依頼を続けると、現場は元に戻ります(良い点と気をつけること)。

まとめ:タスクと社内チャットは置き場所で分ける

「言ったのに進んでいない」の多くは、人の問題ではなく置き場所の問題です。

  • 口頭やチャットの依頼は記録に残らず、思い出せたものしか進まない
  • 期限と担当が決まっていない依頼は、決まっている仕事に後回しにされる
  • 相談・確認はDiscuss、期限と担当がつくものはProjectという線を引く
  • Odooではやり取りが顧客・案件に紐づいて残るため、前置きの説明が減る

まずは1部署で線引きを決めて、3か月ほど回してみてください。

1年後の朝礼では、「あの件どうなった?」と一人ずつ聞いて回る代わりに、期限を過ぎたタスクだけを画面で確かめて数分で終わる。そんな朝を目指せます。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「社内の連絡とタスク管理の線引きを、どこに引くべきか」という整理から、ご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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