分かっているつもりで、13枚を書き出した——見ることをサボった影響は、もう現実に出ていた

前の記事「易は『人生の構造』を読む地図である」で、無意識は過酷な自然と同じで、制御はできないと書きました。特性を知って、上手に付き合うしかない。そして占いは、見たくない現実を直視するための便法にすぎず、本来は目の前の事実をちゃんと見ればよい、とも。

ただ、地図を持っていても、自分の現在地は自分では見えません。目の前の事実を見ればよいと分かっていて、見ない。それが無意識の仕事だからです。

去年の11月、私は三日間のセミナーで、自分の現在地を書き出しました。あうんの岡本吏郎先生の「無意識セミナー」です。手元に残ったのは、手書きの紙が何十枚か。今回はその紙を読み返しながら、分かっているつもりの自分に何が出てきたかを書きます。

目次

「あ〜、私は」から始まった

最初の課題は、いま気になっていることを、自分の人生において13枚のラベルに書き出すことでした。仕事も家庭も健康も、区別しません。気になっているなら、なんでも書く。

書き出したものを似たもの同士で束ね、束をさらに束ねて、一枚の図にします。先生はこれを統合図と呼びました。頂点には、13枚全部をまとめる一行が来ます。

私の頂点に来た一行は、こうでした。

「あ〜、私は家庭も仕事も、ごまかしながらやってきたから、中身が薄っぺらくなってしまったなぁ」

書き出す前の私なら、こう答えていたと思います。仕事は回っている。家族とも大きな問題はない。健康も、まあ大丈夫。分かっている、と。

ところが13枚を束ねると、個別の項目ではなく、それらに共通する一枚が上に残りました。ごまかしていることに、困っている。分かっている風で、細部を見ていない。

心当たりはありました。以前の私は、本を読み、人に会い、インプットを大切にしていました。それが、生成AIを使い、読み飛ばし、雰囲気で分かったことにする時間が増えていた。楽をしていることを、自分でも薄々知っていた。

このときテーマ欄に書いた一行が、記事の題になりました。

「見ることをサボった影響が、現実として出てきたぞ」

自我は、全力で正当化する

なぜ、分かっているつもりの人ほど、書き出すと違うものが出るのか。先生の説明は、私のメモではこうなっています。

あうんの岡本吏郎先生によれば、これは見たくない現実を見ていく作業であり、自我は全力で正当化してくるし、見ないようにしてくる。だから、頭で考えるのではなく、いったん紙に出して、脳をゆさぶる。案件設定は毎月やってほしい、とも言われました。

先生はもう一つ、時代の話をしていました。これからは疑問を持つ能力の時代で、答えはAIが出す。AIから得られるのは機械の情報までで、感覚の情報は自分の脳を使ってやっていくしかない、と。

私の統合図の頂点は、まさにここに当たっていました。答えをAIに出させ、感覚の側を怠っていた。分かっている風というのは、機械の情報で止まっている状態のことでした。

セミナーの三日間は、この「書き出して、観る」を起点に組まれています。

三日間の流れ——観る、先を見る、手を打つ ① 観る 案件設定 気になることを13枚 現状把握 変わったものを認める 自我が隠すものを 紙に出して束ねる 頂点に「ごまかし」が出た ② 先を見る 未来探求 このままなら/こうありたい 予悔充足 あの時これをしなかったから 二つの未来を見比べて 先に悔いておく 悪い反応は、複利で来る ③ 手を打つ 方法立案 9マスに整理 計画 一年余りの線表 三か月ごとに 振り返りを入れる 私はこの途中にいる 全てはフィードバックへの対応——観て、先を見て、手を打つを繰り返す

図1 三日間の流れ——観る、先を見る、手を打つ。自我が隠すものを紙に出すところから始まる

二つの未来のあいだに、予悔を置く

書き出しは、案件設定で終わりません。二日目は、同じやり方で、二つの未来を書きます。

一つは、正面未来。いま気になっていることを、そのままにしておいたらどうなるか。私の頂点は、一つひとつ先を見越して手を打たないと、人生をかけて作ってきたと信じていたものを全て失う、というものでした。

もう一つは、上極未来。こうありたい、を書き出して束ねます。私の頂点は、家族にもお客様にも恵まれて、仕事も楽しくて、毎日が幸せだ、でした。

そのうえで、二つを見比べます。ここに置くのが、予悔です。

予悔とは、先に悔いておくことです。上極の未来から正面の未来を見下ろして、あの時これをしなかったから、こうなってしまったんだな、と先に言ってしまう。私の頂点はこうなりました。

「あ〜、私はひとつひとつのフィードバックを軽視してしまった結果、大事な土台を失ってしまい、幸せになれなかったんだなぁ」

テーマ欄には、こう書いています。「未来の自分を今の自分がサポートする」。

二つの未来のあいだに、予悔を置く 上極未来 こうありたい 正面未来 このままなら 予悔 あの時これをしなかったから こうなったんだな、と先に言う 手を打った先 放っておいた先 二つの未来を見比べたときに出る言葉が、今の自分に打つべき手を教える

図2 二つの未来のあいだに、予悔を置く——上から下を見下ろして、先に悔いておく

フィードバックも複利なのだと、私はこのとき紙に書きつけています。良い反応も悪い反応も、放っておくと増えていく。だから悪い反応は早めに止める。私が予悔で書いた「フィードバックを軽視した」は、そのまま複利の話でした。

一日一日を振り返り、このままだと悪い反応が来そうなことはないかを考える。見つけたら、意図的に手を打つ。知らないふりをしていること、無視していること、自分では面白くないと見えること、怒りが出てくること。そういうものを冷静に見つめる。先を見越したうえでなら、いま嫌だと思えることも、納得して動けるようになる。二日目の紙には、そう書いてありました。

書き出すことをめぐる、三つの誤解

三日間を経て、私がつまずいた場所を三つ書きます。書き出す作業そのものは簡単です。つまずくのは、その前後です。

一つめは、書き出せば済む、という誤解です。

  • 気になることを並べて、満足する
  • 束ねて図にしたところで、手が止まる
  • 頂点の一行を、読んで終わりにする

先生は、ラベルを出して「なぜ」を問うことで自在になれる、と言っていました。なぜを問わないことで現代人は自由になったが、自在ではなくなった、とも。書き出しは、問いの入口にすぎません。私の場合、頂点の「ごまかし」に、なぜと問うところからが本番でした。

二つめは、良い未来だけを描く、という誤解です。

  • 目標を立てるときは、こうなりたいから入る
  • このままならどうなるか、は考えない
  • だから、失うものの大きさが分からない

上極未来だけを書いても、予悔は出てきません。正面未来を先に書き、失うものを見たうえで上極を書くから、二つの差が見える。私が「全て失う」と自分で書いたのは、放っておいた先を、先に見に行ったからです。

三つめは、予悔を後悔で終わらせる、という誤解です。

  • 反省はする。紙にも書く
  • ただし、いつまでに何をするかは決めない
  • 三か月後には、同じ反省を書いている

三日目は、予悔で出たものを9マスに整理し、一年余りの線表に落とすところまでやります。三か月ごとに振り返りの印を入れる。予悔は、線表になってはじめて手になります。

自分で見えている問題と、自我が隠している問題は、出てくる場所が違います。

観点自分で見えている問題自我が隠している問題
出てくる場所会議・数字・相談の場13枚を束ねた統合図の頂点
言葉の形「売上が」「人が」と主語が外にある「あ〜、私は」と主語が自分になる
気づき方指摘される・数字に出る書き出して、束ねて、なぜと問う
扱い方対策を打てば減る先に悔いて、線表に落とさないと戻る
向いている人問題が外にあると思っている段階うまくいっているはずなのに違和感がある段階

まとめ——幸せの構造は、意図して作る

  • 分かっているつもりで13枚を書き出したら、頂点に「ごまかし」が出た
  • 自我は見たくない現実を全力で正当化する。だから頭ではなく、紙に出して観る
  • 正面未来と上極未来を書き、そのあいだに予悔を置く。悪い反応は複利で来るので、先に手を打つ
  • 書き出しは入口。なぜと問い、線表に落としてはじめて手になる

二日目に、私は上極未来のテーマとして、幸せも意図して作っていくのだ、と書きました。偶然の産物ではなく、目標として掲げて、そこへ一手一手を打つ。

稲盛和夫さんは「心を高める、経営を伸ばす」と説きました(稲盛和夫『心を高める、経営を伸ばす』)。自分の幸せの構造を意図して作る作業は、経営を伸ばす側の手前にある、心の側の作業だったと思います。見たくない現実を紙に出すことは、その最初の一手でした。

先生のまとめを、私のメモから引きます。時代の流れに沿って、妄想せずに、現実を観て、欲望を動かす。そして実行とフィードバックを繰り返して、自分の人生を生き抜く。

私はいま、一年余りの線表の途中にいます。うまくいったかどうかは、まだ書けません。ただ、見ることをサボった影響が現実に出ていたことは、書き出したから分かりました。書かなければ、今も分かっているつもりのままでした。

では、なぜ書くと、頭の中では出てこないものが出てくるのか。書くことと無意識の関係は、それだけで一本の記事になります。稿を改めて書きます。

よくある質問

Q1. 無意識セミナーとは、どのようなセミナーですか。

あうんの岡本吏郎先生が主宰する、三日間のセミナーです。

自分の人生で気になっていることを13枚のラベルに書き出し、束ねて統合図にするところから始まります。そのうえで、このままならどうなるか(正面未来)と、こうありたい(上極未来)を書き、二つのあいだに予悔を置きます。最後に、打つべき手を9マスに整理し、一年余りの線表に落とします。無意識を操作する技法ではなく、自我が隠しているものを紙に出して観るための三日間です。

Q2. 忙しくて三日間も取れません。何から始めればよいですか。

気になっていることを13枚に書き出す、この一つだけで始められます。

先生は、案件設定は毎月やってほしいと言っていました。仕事も家庭も健康も区別せず、気になることをなんでも書く。似たものを束ねて、頂点に一行を置く。ここまでなら、一人でも始められます。私の場合は、この一行に「ごまかし」が出た時点で、三日間の価値はほぼ回収していました。

Q3. 書き出した結果は、経営にどう効きますか。

問題の主語が、外から自分に移ります。

会議や数字に出てくる問題は、売上や人が主語です。統合図の頂点に出てくる一行は、「あ〜、私は」で始まります。主語が自分になると、打つ手も自分の側に置けるようになります。私はまだ線表の途中なので、成果は書けません。ただ、見ることをサボっていた自分を知ったうえで判断するのと、知らずに判断するのとでは、同じではないはずです。

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この記事を書いた人

Takuomi Mochidaのアバター Takuomi Mochida 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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