バーチャル経営実践編~バーチャル経営流 アジャイルな組織「バーチャルチーム」

バーチャル経営では、損失を最小限にしつつチャレンジを繰り返せるような組織体制を推奨しています。何が成功するかわからない、いつ撤退すべきか判断しにくいVUCA時代だからこそ「生き残って手数を増やす」べきなのです。ここでは、そのための方法論としてThe PODs・時間当たり採算・バーチャル社員を掛け合わせた「バーチャルチーム」を紹介します。

目次

新規事業の足枷「バラバラ」「動きが遅い」は組織体制が原因

日本企業は機能別(職能別)組織と事業部制組織が一般的です。階層構造でピラミッド型、もしくはツリー型の組織であることが多いでしょう。こうしたことから「素早くチャレンジし、見込みがありそうなら継続、無ければ即撤退」といった身軽な行動がとりにくいのが実情です。

VUCA時代に対応するためには、「階層構造をもたないこと」「複数の機能(職能)を素早く集め、すぐに動き出せること」「撤退条件をリアルタイムに認識できること」といったリスクヘッジ機能を持つ組織体制が必要なのです。

組織体制の概要と弱点

ここで、現代の日本企業が採用している組織形態を整理してみましょう。以下は、各組織形態の概要と弱点をまとめたものです。

機能別(職能別)組織

機能別組織とは、機能単位で区切られた組織です。ここで言う機能とは、「営業」「生産」「総務」「経理」「人事」「マーケティング」など、事業運営に必要な職能のことを指します。営業職であれば営業部門、人事職であれば人事部門といった具合に、同じ職能を持った人材が最小の組織を作り、その組織内で専門性を高めつつ他の組織と連携するという点が特徴です。

機能間(職能間)の連携に問題を抱えがちで、「営業から情報がおりてこない」「生産状況が見えない」といった軋轢を生むことがあります。

事業部制組織

事業部制組織とは、事業単位で区切られた組織です。事業の区切り方はさまざまで、商品・サービスごとの場合もあれば、地域・業界ごとの場合もあります。各事業部は、事業部長をトップとする小組織であり、事業運営に必要な機能を網羅的に備えていることが多いでしょう。

事業部制組織の場合は、事業部と新規事業が「1:1」の状態であれば、問題は生じにくいはずです。しかし、どの事業部にも存在しない人材が必要であったり、複数の事業部をまたぐような事業を開始したりする場合は、動きが遅くなってしまいます

マトリクス型組織

マトリクス型組織とは、2軸の基準で編成された組織です。例えば、縦軸は「職能」、横軸は「事業」でマトリクス表を作り、2つの軸に適合する人材を配置していきます。こうすることで各事業部に万遍なく職能を割り振り、専門性を高めながら事業部間のパワーバランスを維持することが可能です。

マトリクス型は一部の大手企業で採用されていますが、人的リソースに余裕があることが大前提です。

カンパニー型組織

カンパニー型組織は事業部制組織の進化型と考えることができます。事業部の権限をさらに拡大させ、ひとつの「会社」として機能させる組織です。母体となる企業内に設立された子企業というイメージで、意思決定と独立採算の権限を持ち、同じ企業内にある他のカンパニーと競合することもあります。

こちらもマトリクス型と同じく、リソースに余裕がなければ成立しにくいでしょう。そもそもカンパニー制は、母体となる企業が持つリソースを流用できることが最大の強みです。資金・ノウハウ・人材の3つが十分に確保できていなければ、カンパニーを成立させることは難しいはずです。

チーム型組織

事業単位でプロジェクトを編成し、そのプロジェクトのスコープ(目的)に沿って人材を招集した組織です。プロジェクトの目的が達成されれば人材はリリースとなり、また別のプロジェクトに参画することになります。限られた人材を「専任」ではなく「兼任」で配置できれば、小規模な事業を並行して進めることも可能です。

チーム型組織は中小企業が最も取り入れやすい組織かもしれません。しかし、「ノウハウが溜まりにくい」「責任の所在が不明確になりやすい」といったデメリットもあります。

アジャイルな「バーチャルチーム」チャレンジ回数を増やす

以上の内容を踏まえると、中小企業の新規事業に適しているのは「チーム型組織」と言えそうです。もう少し具体的に言うと、「チーム型組織の特性を備えつつ、アジャイルの要素も加えた有機的な小組織」が最適だと考えています。バーチャル経営では、このような組織を「バーチャルチーム」と呼んでいます。

バーチャルチームの特徴

バーチャルチームは、チーム型組織であり、アジャイルの特性を持つ組織でもあります。バーチャルチームのベースは「The PODsモデル」と「時間当たり採算」、そして「バーチャル社員」活用です。

バーチャルチームは、4~8人程度の小規模な組織で、新規事業(プロジェクト)ごとに必要な機能(職能)と明確な撤退条件を持っています。この撤退条件は、時間当たり採算による付加価値の算出をベースにしています。

アジャイル的なチーム型組織「バーチャルチーム」

バーチャルチームは非常に自由度が高い組織です。また、一般的なチーム型組織で発生する「ノウハウの蓄積が進まない」「責任の所在が明確になりにくい」といった弱点も克服することができます。チーム型組織は、プロジェクトごとに解散と終結を繰り返すため、ややもすれば「烏合の衆」になりがちです。しかし、バーチャルチームは長期的な関係を前提とするバーチャル社員が中心になることから、責任の所在を明らかにしつつ、一定のチーム力を持って新規事業に取り組むことができます。

もちろん、「自社でやるべきこと」と「外注に任せること」の切り分けは大切です。これは「選択と集中」に通ずることですから、バーチャル社員と外注メンバーによる分業化は是非とも進めるべきでしょう。コアな部分(新規事業の核となる職能)についてはバーチャル社員を、その他のタスクについては外注メンバーを採用するという方法が良いかもしれません。

バーチャルチームの強み

バーチャルチームの強みは「柔軟性とチーム力を維持しつつ、チャレンジングな環境を構築できる」という点です。具体的には、次のような事柄が挙げられます。

  • ノウハウは各メンバーに蓄勢され、社内に還元される
  • 小規模のプロジェクトを何個も並行し、最小限のコストとリスクでまわせる
  • ピボット(ビジネスモデル転換)がやりやすく、リスク分散も容易

VUCA時代は市場がトレンドのあとから発生しては消えるため、市場の見極めが非常に難しくなります。そのため、集合と離散が頻繁に起こる前提で組織を編成する必要があるでしょう。

ちなみにバーチャルチームは、メタバースとも相性が良いと考えています。メタバース上に複数のバーチャルチームを置き、時間や場所の制約を受けずにプロジェクトを進めることができるからです。

まとめ

ここでは、バーチャル経営における新規事業の回し方として「バーチャルチーム」を紹介してきました。「成功しそうなプロジェクトは伸ばし、失敗しそうなものからは早急に撤退する」という意識をもちながら、新規事業に挑み続けるためには、バーチャルチームのような方法論が最適だと考えています。次回は、バーチャルチームの柱のひとつでもある「The PODsモデル」について解説します。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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