バーチャル経営における人材調達~メタバースとバーチャル社員活用の未来

「次世代のインターネット」を語る技術はこれまでもいくつか登場してきましたが、「メタバース」はその中でも特に有望な存在かもしれません。3DCG空間で、他者と深く親密に交流できるメタバースは、人材活用にも大きな影響を与えると見られているからです。

目次

ネットの制約を解き放つメタバース(Metaverse)

2020年ころから、次代のインターネットを牽引する考え方として「メタバース(Metaverse)」が注目され始めました。メタバースは、インターネットにおける「他者との交流」を、現実に限りなく近いレベルで行うための概念です。今後、あらゆるビジネスがオンラインへと軸足を移していく中で、避けては通れない考え方になるでしょう。

メタバースとは

メタバースは、メタ(meta=超)とユニバース(universe=宇宙)の2語を合成した造語です。SF作家のNeal Stephensonが自著の中で記述した、仮想世界を指す名称がその起源だといわれています。現在は、インターネット上に構築された多人数参加型の3DCG空間をメタバースと呼ぶことが多いようです。この3DCG空間では、個々が独自の仮想的な外見(アバター)をまとうことにより、個性を持って他者と接することができます。また、アバターの動きや音声通話などにより、現実世界と同じように感情や表情を伴った交流も可能です。

メタバースの特徴
  • VRゴーグルの装着によって、他社と「空間」「体験」を共有できる
  • 飲食や遊びだけでなく、売買、会議も可能
  • 会議ではスクリーンショットを共有したり、コラボ作業で資料を作成したりと、現実世界と全く同じような共同作業ができる。
  • 自動翻訳機によって言葉の壁がほぼない
  • アバターと音声によってリアルなコミュニケーションが可能なため、無形物の作成はほぼメタバースで完結する

2021年で代表的なサービスとしてはSolirax社が提供する「NeosVR」や、VRChat Incが提供している「VRChat」などが挙げられるでしょう。いずれも海外の企業がゲームプラットフォーム上で提供している「ゲーム」ですが、その内容は一般的なゲームと一線を画しています。例えば、NeosVRでは、VRゴーグルを装着して、3DCG空間内の他者と会話をし、ダンスを楽しみ、ともに動画を見ることができます。また、現実世界で撮影した写真や動画ファイルの共有、ドキュメントの編集やコーディング作業を行うことも可能です。

これまでもたびたび登場していたメタバースの原型

1990年代以降、盛り上がりを見せた多人数参加型のオンラインゲーム(MMO RPG)にメタバースの原型を見ることができます。不特定多数の人間が、仮想的な世界に降り立ち、自らのキャラクターを作成し、鍛え、他者と交流しながら力を合わせて怪物を倒す。内容はシンプルですが、仮想空間上での他者との交流という意味では、メタバースと同じです。

2003年には、米国のリンデンラボ社が現実世界に似せた仮想空間「セカンドライフ」をリリースしました。セカンドライフは現在のメタバースのコンセプトをほぼ実現しており、経済活動や他者との交流など、現実世界の課題を取り込んだ内容となっています。セカンドライフ内の土地・建物・アイテムは、「リンデンドル」と呼ばれる仮想的な通貨によって売買され、さらにリンデンドルはリアルマネーとの交換も容認されています。こうして、現実世界との間に価値の連鎖を発生させたセカンドライフは、一大ブームを巻き起こしました。しかし、当時は現在ほどオンラインシフトが進んでおらず、VR関連の技術も未発達であったことから、あくまでも「現実世界を模したゲーム」という見方が強かったように思います。

「現実世界の課題を解決できる」ビジネス利用が進むメタバース

現在のメタバースが想定しているのは「現実世界の課題・目的を、仮想空間上で他者と交流しながら達成する」ことです。3DCGで作られた仮想世界のアバターは、まさに自身の現身であり分身です。さらに、現実世界では超えることのできない物理的な制約を超え、より濃密で精緻なコミュニケーションをとることができます。

2021年10月には、Facebook社が社名を「Meta」へと変更し、本格的なメタバース関連事業への移行を表明しました。すでにVRを活用したビジネス会議ツール「Horizon Workrooms」をリリースし、ビジネスシーンでのメタバース活用を促しています。

また、Microsoft社はコラボツール「Teams」をメタバースに対応させ、「Mesh for Teams」をリリース。メタバースはビジネス利用を前提としたサービスが多く、その点でもこれまでの仮想空間サービスと異なっています。

「バーチャル社員」の価値を高めるメタバース

ここで、バーチャル経営におけるメタバースの活用を考えてみましょう。バーチャル経営の核のひとつである「バーチャル社員」は、メタバースと非常に相性が良いと考えており、しっかりと歯車が噛み合えば、現実世界の社員以上に付加価値を生み出しやすくなるはずです。

メタバースなら「毎日出社」も可能

バーチャル社員活用は、出社・出勤に制限のある人材とオンラインでつながる施策です。しかし、メタバースならば仮想空間上に「毎日出社」してもらうことも不可能ではありません。メタバースで行うのは、「アバターでの共同作業」「ミーティング」などです。これらはVRによって「没入感、現実感」を伴った「体験」となり、現実世界のようにお互いを刺激します。つまり、現実世界さながらの「空気感」をもって、仕事に取り組んでもらいやすいのです。こうして、制限が少ない状態は維持しつつ、バーチャル社員が持つ能力を引き出せると考えられます。

「仕事の本質」をメタバースに移設

極論を言えば、物理的なモノの移動や肉体同士の接触が必要な仕事以外は、メタバースで完結できてしまいます。例えば、社内資料のレビューやコーディング作業などは、現在のメタバースで十分に可能です。メタバースには、現実世界の情報資産を取り込む機能があるため、情報を扱う仕事は全てメタバース内で進めることができます。

また、一部の接客やヒアリングも十分に対応できると考えられます。1:1 のオンライン商談はもちろん、複数人のディスカッションもメタバースで対応できるでしょう。VRが視覚を拡張するため、現実世界さながらの臨場感と、現実世界を上回る情報共有を実現するためです。

他者との協議や合意が必要な知的労働は、ほぼすべてが「新たな知的価値」を生み出すことを目的としています。本来はオフィスや机、椅子、紙の資料などは必要ありません。必要なのは「新たな知を生み出すための体験」であり、「交流」です。その方法として会議やディスカッション、コラボ作業などがあるわけです。こうした方法をすべてメタバース内に移設することで、仕事の本質が見えてくるかもしれませんね。

バーチャル社員=メタバース社員で生み出す付加価値

Zoom、chatworkなどで交流していたバーチャル社員は、メタバースでより制限がなくなると考えられます。「相手を目の前にして、細かなやり取りを含めながら一緒に仕事をする」という体験が得られるため、生産性が向上するかもしれません。また、仕事に必要な情報をアバターと音声で、「一定の没入感を伴って」やりとりできるため、仕事の質も向上しそうです。バーチャル社員は、今後「メタバース社員」として活躍する可能性が高いのではないかと考えています。

まとめ

ここでは、バーチャル経営が提唱するバーチャル社員とメタバースの親和性について紹介してきました。メタバースは最先端の技術ですが、その根底には「物理的な制限のない、他社との交流」という人類共通の願いが込められています。リモートワークやテレワークに不足しがちな「緊張感」「手ごたえ」も、メタバースで解決できる日が来るのかもしれませんね。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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