バーチャル経営における人材調達②~「DX人材不足にどう立ち向かうか?採用・育成以外の手とは」

「DX」は現代の日本企業が取り組むべき最大の課題と言えます。しかし、一部の大手企業のみが着々と準備を進めており、中堅中小企業ではDX対応に着手すらできていないのが実情です。DX移行では「人」「ツール」のバランスが重要です。

ツールは成熟期にありますが、ツールを組織に落とし込むための「人」については枯渇しています。それでは、「人」をどのように確保していけばよいのでしょうか。ここでは、DX人材の不足状況や代替手段の構築方法などを解説します。

目次

「量」「質」ともに不足するDX人材

DXに向けた具体的な施策は、「ITツールと組織の融合」に行き着きます。具体的には、MA・SFA・CRMといったエンタープライズITと組織・業務をすり合わせながら、仕事のやり方、考え方などを抜本的に変えていかなくてはなりません。

ITツールはもちろんのこと、ビジネスモデルと業務プロセスへの理解や、部門横断型の課題をまとめる調整力などが必要です。こうした難易度の高い業務をこなせる人材は、当然のことながらほとんど存在しません。

多くの中小中堅企業にとって、「人」の問題は深刻です。ただでさえ「できる人」に巡り合いにくい状況の中で、DXに対応できる人材の採用・育成は困難を極めるでしょう。

独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)が毎年公表しているIT人材白書の2020年版を見ると、ユーザー企業においてIT人材の不足(質・量ともに)が深刻さを増していることがわかります。

IT人材の量に対する過不足感

IT人材の質に対する不足感出典:独立行政法人 情報処理推進機構「IT人材白書 2020年版」
https://www.ipa.go.jp/files/000085256.pdf

2015年からの5年間で、量について大幅に不足していると回答した企業が12.5%増加しました。質についても強い不足感を覚えている企業が9.2%も増えています。DXは2015年~2016年にかけて急激に広まった概念であることから、DXが知られるにつれ「社内にやれる人間がいない」ことに気が付き始めたとも言えるでしょう。

コロナ禍でさらに争奪戦が激化

DX人材の不足を補うには、「採用」が必要です。しかし、DX人材が欲しいのは大手企業も同じであり、中堅中小企業の大半は大手企業と「DX人材の争奪戦」を繰り広げることになります。ちなみに日経新聞の報道によれば、2020年末時点でIT人材の採用倍率は実に6倍を超えているとのこと。※1これは、同時点の転職求人倍率平均である1.65倍を大きく上回る数値です。この数値だけを見ても、いかにDX対応人材の採用が難しいかがわかります。

さらに、ECなどオンラインベースの企業活動に精通する人材の年収は高騰している点も見逃せません。これには当然のことながらDX対応人材も含まれるでしょう。

採用だけでは不十分?DX人材をどう確保するか

次に、同じくIPAの公開資料から、DX人材の獲得方法を推測してみます。

ユーザー企業のIT人材の獲得・確保状況出典:独立行政法人 情報処理推進機構「IT人材白書 2020年版」
https://www.ipa.go.jp/files/000085256.pdf

DXに取り組んでいる企業・未着手の企業ともに、新卒とキャリア採用がメインです。ただし、ここで注意したいのは、「他部門からの異動」「関連会社からの出向」という項目における2者の差です。この2つの方法は、DX着手済み企業と未着手企業の間で、非常に大きな差が見られます。

DX着手済み企業には、もともと本体や関連会社にDXに対応可能な人材が在籍しており「既存人材の流用」が可能なケースが多いです。これに加え「外部からの獲得」も含めた「両輪」でDX人材を確保していると推測できるでしょう。社風やビジネスモデルに精通した既存人材を「コントローラー」に据え、外部から獲得した人材を「実行チーム」とすることで、DX対応チームの組成が可能だと考えられます。

DX人材をゼロから調達・育成は非現実的?

本体や関連会社にDX人材がいない企業の場合、こうした両輪の施策を選択することはできません。また、強引に中途採用を進めたとしても、日本企業特有の事情からDX対応チームの組成が進まない可能性もあります。

日本企業では新卒で採用した「生え抜き人材」に重要な役職を任せるのが一般的であり、中途採用はそれほど活発ではありませんでした。そのため、「優秀な人材=その企業内で使いやすい人材」という定義が根強く残り、人材側もこの定義に合わせて能力を磨いていきます。その結果「どこに行っても結果を出せる人材」は極めて稀な存在となったのです。

たとえ経営トップが考え方を改めたとしても、中途採用人材が「自社の環境に特化した人材」になるまでには長い時間がかかります。加えて、離職のリスクもあります。

新卒者の育成を地道に続けていけば、いつかはチーム組成が可能になるでしょう。しかし、それまでの数年間が空白地帯となり、大手企業とますます差がついてしまいます。

活路は「外部専門チーム」活用にあり

上の図を見ると、「協力企業・派遣企業等外部人材の活用」を進めている企業が意外に多いことがわかります。ゼロベースで採用、育成を進めるよりも外部人材を「チームとして」丸ごと借りる方法が現実的と判断しているのかもしれません。ここに、DX人材獲得のヒントがあります。

採らない・育てない~バーチャル経営流「DX人材の獲得術」

これまでも繰り返し述べているように、バーチャル経営は「人と仕事の本質化」がテーマのひとつです。「本質化」とは、「本当にコアな部分(純粋な仕事の能力、必要十分な投下リソースなど)を取り出し、効率よく使うこと」とも言えます。

したがって、人と仕事の本質化では、必ずしも採用や育成を必要としません。要は、「仕事の能力」と「リソース」だけを調達できれば、それで事足りるわけです。

具体的には、外部の専門人材を「チームとして丸ごと調達する」方法が、最も理にかなっていると考えています。同時に、コア業務に集中するための環境づくりも大切です。ITツール(RPAやAI-OCRなど)を活用した「体系的な仕事の廃棄」が進めば、コア業務に投下できるリソースが増えていくからです。

ベンチャーネットでは、バーチャル経営の概念に沿ったDX人材獲得の方法として、「デジカツ」と「デジトラ」を提供しています。

デジカツ」~デジマ実行リソースをそのままレンタル

デジカツは、「DX対応型のデジタルマーケティングチーム」をレンタルできるサービスです。DX移行において、デジタルマーケティングは「集客と販促」を担う重要なパーツのひとつといえます。しかし、マーケティングの知識・スキルを持ったDX人材は希少性が高く、チームをけん引する「コントローラー」、手を動かし施策を具体化する「メンバー」ともに確保が難しい状況です。

デジカツは、クライアント企業の部門長や事業責任者をコントローラーに据え、その下で施策を具体化させる実行チームを提供します。SEOスペシャリスト、MA・ABMコンサルタント・RPAコンサルタントによるチームが、既存のマーケティング活動をDX対応型にリファインしつつ、各種ITツールの運用代行も担います。このように、チームとして人材をレンタルすることで、実現性の高いDX施策が採用・育成なしで進められるわけです。

「デジトラ」~ITツール運用課題を解決

デジトラは、DX対応に必要な各種ITツール(SFA、CRM、MA、ERPなど)の運用課題を解決するサービスです。「導入は済んでいるがまったく運用できていない」「そもそも使い方がよくわからない」といったITツール導入後の課題を解決します。

DX対応では高度な専門知識と運用スキルを必要とするエンタープライズITソリューションの活用が必須です。また、ITツールは運用のほうが難しく、コストもエネルギーも必要です。なぜなら、ツールとビジネスの両方に知見を持つ人材を、常に配置しておかなくてはならないからです。

デジトラでは、ベンチャーネットが自社運用で蓄えたノウハウと、技術・ビジネス双方の専門知識を備えた人材を併せることにより、SFA、CRM、MA、ERPの運用課題を解決し、DX対応を進める土台を創り上げることができます。

まとめ

本稿では、DX人材の不足状況と確保の難しさに触れつつ、具体的な解決方法を紹介してきました。中堅中小企業のDX対応では「チームごとレンタルする」という考え方が特に重要であることを覚えておいてください。次回は、人材不足を別の側面から解決する「仕事の廃棄」について解説していきます。

参考:
※1 日本経済新聞「DX 人材不足解消急ぐ」(2020年12月12日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67267850R11C20A2TJ2000/

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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