バーチャル経営における人材調達①~人材の本質化が必要な理由「労働人口減と採用難」

こんにちは。株式会社ベンチャーネットの持田です。

バーチャル経営では、「人材の本質化」が大きなテーマのひとつです。なぜなら、大半の企業にとって最も大きな固定費は人件費であるためです。「いかに固定費をかけず成果を出すか」を重視するバーチャル経営においては、固定費とならない人材調達を意識していきます。しかし、そのためには日本の人材市場の現状をよく知っておかなくてはなりません。そこで、日本の人材難や採用難の背景を整理していきましょう。

目次

1.「採用対象となる人の減少」の深刻さ

日本の人材市場を理解するために、まず「働ける人がどれくらいいるか」をおさらいしておきます。常々ニュースなどで報じられているように、日本は労働人口が減少し続けています。しかし、多くの企業にとって気がかりなのは「採用候補がどれくらいいるか」ではないでしょうか。

労働力人口=採用対象ではない

一般的に報じられる「労働力」とは、「労働力人口」を指していることが大半です。令和2年12月時点で、日本の労働力人口は約6860万人となっています。※1ちなみに、前年同月比では23万人減少しているものの、過去5年スパンでみれば数・比率ともに大きな減少は確認できません。

労働力人口は「15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたもの」と定義されており、年齢の区切りがありません。つまり、すでに定年退職を迎えている「団塊の世代」などもカウントされているわけです。企業が採用したいのは「20代~40代」に限定されるため、労働力人口以外の数値を見ていく必要があります。

生産年齢人口における「採用対象」の比率

より実態に近い数値を得るために「生産年齢人口」をチェックしてみましょう。生産年齢人口は「15歳から65歳未満(64歳まで)の人口」を指し、生産活動の中心にいる層と定義されています。総務省統計局が発行している人口推計によれば、令和元年10月1日時点で、日本の生産年齢人口は7507万2000人です。※2また、全体全体に占める割合は59.5%で、1995年以降は減少が続いています。

年齢区分別人口の割合の推移出典:総務省統計局 人口推計の結果の概要
(2020年4月14日、 https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2019np/index.html

次に、同じく人口推計で示されている「5歳区切りの男女別人口」を確認します。

5歳区切りの男女別人口出典:総務省統計局 人口推計(令和3年2月報)
(2021年2月22日、https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202102.pdf

企業が中途採用の戦力として欲する年齢「25歳~44歳」の人口は「2847万人」です。また、この層が全人口に占める割合は22.7%に過ぎません。つまり、そもそも企業が「人材」とみなす層は、かなり広く見積もっても全体の5分の1程度にしか過ぎないわけです。

ここに「性別」「スキル」「経験」「適正」などの条件を追加すると、現実的な採用対象は数%程度にまで落ち込むことは確実です。また、この数%の中でも「できる人」ほど大手企業を選ぶ確率が高くなります。特に「各世代の上位20%以上」を採用しようとすると、「数百人に一人いるかいないか」といった人材を狙うことになります。中堅中小企業の人事担当者が、「いつまで募集をかけても、そこそこの人材にすら出会えない」と嘆く背景には、このように圧倒的な人材の不足があるのです。

2.バーチャル経営が提唱する「採用できない」時代の処方箋

このように厳しい人材市場の状況に反し、日本企業は「DX人材の獲得」に迫られています。「2025年の崖」※3で示されたように、DXは業界業種を超えた日本企業全体の課題とされています。DXには、先端ITとデジタルマーケティングを使いこなし、ビジネスに落とし込む人材が必要です。しかし、DX人材は希少であり、非デジタル分野の中堅中小企業であれば、そもそも出会う機会すらない可能性が高いです。

したがって、どの企業でもDX人材の確保が「壁」になることは確実です。中堅中小企業の多くは、既存の採用方法以外の手段で、人的リソースの確保を進めていく必要があるでしょう。

バーチャル経営では、「採用できない」ことを前提として、中堅中小企業が取るべき対策を次のように提案します。

RPAによる「仕事の廃棄」

RPAは、「人の採用が進まないのであれば、余計な仕事を捨ててリソースを確保しよう」という考え方を具現化するツールです。手作業で行っていたアナログな業務を自動化し、組織内の雑務やコミュニケーションコストを低減できます。

単純な入力業務などのルーチンワークをすべてRPAに置き換えることで、業務効率化が進みます。業務プロセスレベルで体系的に業務効率化を進めれば、コア業務に集中するためのリソースが生まれます。その結果、DXや業務改善、イノベーションに投下できる人的リソースが増えていくというわけです。

ベンチャーネットでは、国産RPA「WinActor」を活用し、アナログで煩雑な業務を体系的に廃棄するための提案を続けています。

バーチャル社員による「人材の本質化」

バーチャル社員活用は、バーチャル経営の柱のひとつである「仕事と人材の本質化」を体現するための重要な施策です。

バーチャル社員とは、組織・雇用・勤務形態に依らず、純粋に「仕事の遂行」に必要な能力を持った「本質的な」人材を指します。正社員や契約社員のように固定費となることなく、仕事単位で人材を調達する方法と考えてください。

こう聞くと、単なる外注業者のように聞こえるかもしれませんが、バーチャル社員は長期的なお付き合いが前提です。まず「誰と仕事をしたいか」「この人と何ができそうか」という視点から人材の選定を開始し、能力に応じて徐々に任せる仕事の範囲を拡げていきます。さらに、出退勤の時間や出社頻度を指定せず、原則としてオンライン上での取引を前提とすることもバーチャル社員の特徴です。

例えば、当初は書類整理や簡単なリサーチのみを任せていた人材であっても、仕事の出来栄えや本人の適性を踏まえて徐々に任せる仕事の範囲を拡大し、デジタルマーケティングやサービス開発を任せることもあります。「必要なときに」「必要なスキルを」提供してもらいつつ、決して一時的ではない関係がバーチャル社員なのです。

書類仕事はAI-OCRに一任

AI-OCRは、既存のOCRにAIを組合せ、文字や画像読み取りの精度を向上させたソリューションです。紙文化から脱却できていない企業は、そもそもデジタル化に対応するリソースを持たないことが多いです。紙の情報を入力するだけで多くの時間を要し、後回しにしているうちにデジタル化が遅れてしまった…という事例は少なくありません。

AI-OCRならばスキャンだけで読取位置や項目の自動抽出が可能で、手書き文字でも正確かつ迅速なデジタルデータ化が可能です。

外部サービスで「上位20%」の人材をレンタル

バーチャル経営では、必要に応じて「人材をチーム単位でレンタル」することも推奨しています。DX対応は「部門横断型」で進めるケースが一般的であり、その遂行には「チーム力」が欠かせません。実際にDXを推進している大手企業では、本体や関連会社から人材を集め、プロジェクトチームを立ち上げて対応を進めています。

一方、人材獲得に四苦八苦している企業の場合は、少人数のチームを組成することさえ難しいでしょう。
専門知識をもったチームのレンタルは、「固定費をかけずに実行力だけを借りる」ことにつながり、まさに仕事と人材の本質化といえます。

4.まとめ
ここでは、チャプター2「バーチャル経営における人材調達」の導入として、人材の本質化が必要な理由とバーチャル経営における対応策などを紹介してきました。次回は「DX人材」にフォーカスを当て、採用難易度や具体的な確保の方法を紹介していきます。

参考:
※1 総務省統計局 労働力調査 基本集計
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf

※2 総務省統計局 人口推計
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2019np/index.html
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202102.pdf

※3 2025年の崖
経済産業省「DXレポート」の中で示された言葉。複雑化・老朽化・ブラックボックス化が進んだ既存システムが残存した場合に、国際競争力の低下や経済的な損失が発生するリスクが提示されている。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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