今後数年で、Web広告・マーケティングの「源泉」であるCookie情報の取り扱いが変わることをご存じでしょうか。特に、他社サイトからもたらされるアクセス情報「サードパーティーCookie」は、iOS搭載のsafariやGoogle Chromeといったメジャーなブラウザにおいて制限が開始されることから、Web広告・マーケティング界隈に波紋を生じさせています。今後はサードパーティーCookieに依存した施策が使用できなくなることから、何らかの代替手段を講じなくてはなりません。ここでは、サードパーティーCookie制限の流れと、そこで必要とされる新たな情報収集の手段を紹介します。

個人情報保護強化から拡大するサードパーティーCookie制限

冒頭でも述べたように、サードパーティーCookieは今後数年で著しく制限されることが確実視されています。

サードパーティーCookieに対する制限の背景には、個人情報保護に関する制度の変化があります。日本の「改正個人情報保護法」、EU圏の「GDPR」、米国カリフォルニア州の「CCPA」など、ここ3年ほどで同時多発的に個人情報保護の新しいルールが制定されました。

改正個人情報補保護法

日本国内において、個人情報の利用目的や利用範囲、第三者へ提供する際のルールを定めた法律。2017年5月29日までは、個人情報の取扱い件数が5000件以上の場合のみ適用されていたが、改正後は件数の条件が撤廃され、事実上すべての組織が適用対象となった。

GDPR(EU 一般データ保護規則)

個人情報の処理と移転に関するルール。EU地域以外への個人情報移転に対する厳しい制限と情報主体の権利強化が図られている。違反した場合は最大で企業の年間売上高の4%または2000万ユーロのうちいずれか高い方が課される。

CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)

※国カリフォルニア州で2020年1月から適用開始となった州法。カリフォルニア州の住民に対するプライバシー保護を定めており、プライバシーに関連する権利の付与や、住民の個人情報を利用する事業者に対する適正管理の義務が定められている。

これら新しいルールの影響から、今後はオンライン上の商行為における個人情報の取り扱いも厳格になっていきます。具体的には、インターネット上における広告・マーケティングで重用されていた「サードパーティーCookie」の取り扱いに制限が設けられ、これまでのようにWeb広告・マーケティング施策のベースとすることができなくなるのです。

サードパーティーCookieとは何か?

サードパーティーCookieについて簡単におさらいしましょう。サードパーティーCookieとは、従来のブラウザが保持する「Cookie情報」のうち、ユーザーが閲覧しているサイト以外から発行されたものです。Cookieは、Webサーバーとユーザーが使用するブラウザの間でやり取りしたデータを保存している場所のことで、ユーザーIDやログイン状態などのほか、個人の行動履歴に関するさまざまなデータが蓄積されます。さらにCookieは、以下2つに分類されます。

  • ファーストパーティーCookie…自社サイト(サーバー)が発行したCookie
  • サードパーティーCookie…他社サイト(サーバー)から発行されたCookie

サードパーティーCookieを活用すれば、インターネット上でユーザーがアクセスした情報を分析することができ、広告配信やマーケティング施策に活かせるというわけです。具体的には、リターゲティング広告の配信や広告効果のトラッキング、シングルサインオン情報の保持、KPI計測といった用途が一般的でしょう。

個人情報保護の観点から危険視されるサードパーティーCookie

しかしながら、事業者がサードパーティーCookieを利用することで、ユーザーの情報が第三者に「本人の同意を得ず」「知らぬ間に」利用されるリスクが発生します。この点が、個人情報保護の観点から危険視されていました。そのため、主要なWebブラウザにおいて、サードパーティーCookieの利用に関する厳しい制限が広まりつつあります。

主要ブラウザにおけるサードパーティーCookieの制限

  • Safari…2017年9月に「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」という情報保護機能を実装。サードパーティーCookieの保持条件、保持期間に厳しい制限を設ける。
  • Fire Fox…2019年7月から、ETP(Enhanced Tracking Protection)というトラッキング防止機能を実装。
  • Google Chrome…2020年1月に、将来的にサードパーティーCookieのサポートを打ち切ることを発表。2022年をめどにサードパーティーCookieの利用が制限されるとみられている。

つまり今後は広告・マーケティング施策の「原資」をサードパーティーCookie以外の方法へ切り替える必要があるわけです。

ファーストパーティーCookieによる「IDマーケティング」に活路あり

サードパーティーCookie以外の情報取得手段としては、「オプトイン経由のファーストパーティーCookie」と、これを用いた「IDマーケティング」が有望視されています。ファーストパーティーCookieは、前述のように自社サイト(サーバー)から発行されたアクセス情報です。この情報をユーザーの同意を経て取得・活用し、顧客ID単位で整理・分析しながら広告・マーケティングに活用します。

IDマーケティングでは自社保有のWebサイト、アプリ、メルマガなどから取得した情報を、顧客ごとに割り振ったIDに紐づけ、情報資産へと昇華させなくてはなりません。具体的には、次のような情報を整理・分析する必要があります。

  • 顧客IDのキーとなるメールアドレス・SNSのID・会員番号など
  • 属性(年齢、職業、性別、居住地域など)
  • 行動(来訪回数、滞在時間、閲覧履歴、購入データなど)

上記のようなデータを、「過去から現在にわたり、顧客行動や属性、興味関心の変化がわかるような形態」で蓄積していくことがIDマーケティングのベースとなります。

しかし、こうした情報は、「顧客の同意」を経てはじめて活用できるもの。つまり、顧客の「同意取得」をいかに効率的に行い、顧客IDに紐づけていくかが、事業者全体の課題になるわけです。

IDマーケティングに有用なソリューション

IDマーケティングの実現には、「顧客ID管理基盤」と「Webサイト・アプリ、メルマガなどのチャネル」をつなぎ、「顧客からの同意取得を自動化する仕組み」が必要です。また、顧客が複数のチャネルを安心して使えるように、セキュリティやプライバシー保護を内包したID統合機能(CIAM機能)も必要になるでしょう。例えばERPパッケージ世界最大手のSAPは、「SAP Customer Data Cloud from GIGYA」という顧客ID統合に関する新ソリューションをリリースしています。ちなみに弊社でも、以下のようなソリューションを組み合わせ、IDマーケティングの基盤構築を支援していきます。

Salesforce

SFAとして世界最大手のパッケージソリューションであり、「Salesforce Identity」などのID管理サービスが利用可能です。

Netsuite

クラウド型ERPでありながら、CRM・MAとしての機能も内包しています。顧客の同意を自動化できるオプトイン機能を持っており、顧客管理基盤を活用しながら同意取得作業を効率的に進めることができます。

Eloqua

顧客のオンラインでの行動履歴を管理し、ニーズや動向の可視化や見込客の興味の度合いを自動でスコアリングする機能を持つMAツールです。

Pardot

Salesforceとの連携によるチャネル統合が可能なMAツールです。CRMとMAの連携でIDマーケティングに必要なデータが一覧化されます。

また、これらITツールを活用・連携させながら、IDマーケティングを推進するABMサービスも展開中です。

LP

まとめ

ここでは、個人情報保護の厳格化とサードパーティーCookieの利用制限、その代替手段としてのIDマーケティングについて紹介してきました。サードパーティーCookieの制限は今後も拡大していくことが確定しています。それに伴い、顧客情報はますますクローズドになっていくと予想されます。広告・マーケティングの効果を維持するために、ぜひ「ファーストパーティーCookieをベースにしたIDマーケティング」への移行を検討してみてください。


書き手:持田卓臣