自社でECサイトを持つべきか。それとも、楽天やAmazonに出店した方がいいのか。
NetSuiteの導入を検討する企業から、よくいただく相談です。
NetSuiteには、ERPに内蔵された純正のEC機能「SuiteCommerce」があります。一方で、Shopifyや国内モールと連携する方法もあります。
どちらが正解かは、会社によって変わります。
この記事では、SuiteCommerceの基礎と、純正ECと外部EC連携の使い分けを整理します。自社にとって現実的な選択肢を見極める手がかりにしてください。
この記事で分かること
- SuiteCommerceとは何か(ERPに内蔵された純正ECという特徴)
- SuiteCommerceでできること・3つの提供形態
- 純正ECと外部EC連携(Shopify・楽天・Amazon等)の使い分け
読了目安:約8分
SuiteCommerceとは|NetSuiteに内蔵された純正のEC機能
SuiteCommerceは、NetSuiteが提供する純正のECプラットフォームです。ERPの中に組み込まれている点が、最大の特徴です。
ECサイトの注文・在庫・顧客・会計のデータが、すべて同じNetSuite上で管理されます。別々のシステムをつなぐための「連携」が要りません。
一般的なECでは、ECサイトと基幹システムを連携ソフト(ミドルウェア)でつなぎます。SuiteCommerceは、その連携そのものが不要です。注文が入れば、その場でNetSuiteに反映されます(出典:Oracle NetSuite公式ドキュメント)。
参考までに、NetSuiteは世界220地域・43,000社以上で利用されているクラウドERPです(出典:Oracle NetSuite公式、SuiteConnect 2026)。SuiteCommerceは、その基盤の上で動くEC機能だと考えてください。
NetSuiteそのものの全体像は、NetSuiteとは?中堅・中小企業の経営者が知っておきたいクラウドERP入門で解説しています。
SuiteCommerceでできること
SuiteCommerceは、ECサイトの構築から運営までを一通りカバーします。ERPと一体である点が、運営面でも効いてきます。
主にできることは、次のとおりです。
- 商品カタログ・カート・決済を備えたECサイトの構築
- 在庫と販売のリアルタイム連動(二重販売や欠品の防止)
- 顧客アカウントや受注履歴の一元管理
- B2C(一般消費者向け)とB2B(卸・取引先向け)の両対応
B2Bでは、取引先ごとの価格や、請求書払いといった業務にも対応できます。消費者向けと法人向けを、同じ基盤で運営できる点が強みです。
複数の国や通貨で販売する場合は、NetSuiteのグローバル機能「OneWorld」と組み合わせます。190通貨・27言語に対応しています(出典:Oracle NetSuite公式)。
SuiteCommerceの3つの提供形態
SuiteCommerceには、目的に応じた提供形態があります。どれを選ぶかで、構築の自由度とコストが変わります。
| 形態 | 特徴 | 向くケース |
|---|---|---|
| SuiteCommerce(標準) | テーマと設定でサイトを構築。ソースコードは限定的 | 標準機能で素早く立ち上げたい |
| SuiteCommerce Advanced(SCA) | ソースコードまで触れ、自由にカスタマイズ可 | 独自の購入体験を作り込みたい |
| SuiteCommerce MyAccount | 顧客向けのセルフサービス画面(請求確認・履歴など) | 既存取引先の自己管理を提供したい |
このほか、店頭販売向けの SuiteCommerce In-Store(SCIS)もあります。なお、旧世代の「Site Builder」は現在の主力ではありません(出典:Oracle NetSuite公式ドキュメント)。
専門用語の補足です。SCAの「ソースコードにアクセスできる」とは、サイトの動きを根本から作り変えられる、という意味です。自由度が高い反面、開発の専門知識が必要になります。
純正EC(SuiteCommerce)と外部EC連携の使い分け
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい論点です。
NetSuiteでECを実現する方法は、純正のSuiteCommerceだけではありません。Shopifyや国内モールと連携する道もあります。
両者の違いを、判断軸ごとに整理します。
| 判断軸 | 純正:SuiteCommerce | 外部EC連携(Shopify・モール等) |
|---|---|---|
| データの一元性 | 高い(ERPと同一基盤) | 連携設計に依存する |
| 構築の自由度 | SCAなら高いが専門性が要る | 各サービスの仕組みに沿う |
| 国内モール対応(楽天・Amazon等) | 純正単体では手薄 | 連携が前提で現実的 |
| 国内特有の決済 | 限定的になりやすい | 各サービス側の決済を活用 |
| コスト感 | プレミアム価格帯になりやすい | サービスにより幅がある |
| 向く事業 | 自社ブランドのD2C・BtoB | モール出店・多チャネル販売 |
ひとことで言えば、こうです。
- 自社サイトで、ブランドや業務を作り込みたい なら、純正のSuiteCommerce
- 楽天・Amazonなどモールでも売りたい なら、外部EC連携
どちらが優れている、という話ではありません。自社の売り方に合うかどうかが、判断の軸です。
外部EC連携の具体的な方法は、NetSuite×EC連携の全体像にまとめています。サービス別では、Shopify、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、ネクストエンジンの解説もあります。
日本でSuiteCommerceを使うときの実態
SuiteCommerce本体は、日本でも利用できます。サイトの日本語表示なども、設定で対応できます。
ただし、注意したい点があります。
楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングといった国内モールへの出店は、純正機能の中だけでは完結しません。コンビニ決済や代金引換のような国内特有の決済も、純正だけでカバーするのは現実には難しい場面が多いです。
そのため日本では、次のような構成が一般的です。
- 自社サイトはSuiteCommerce、または外部カート
- 国内モールはモール側+連携サービスで運営
- NetSuiteで在庫・受注・会計を一元管理
つまり「純正ですべてを賄う」より、「適材適所で組み合わせる」方が現実的なケースが多い、ということです。
複数チャネルの受注と在庫を一元化する考え方は、マルチチャネル受注管理入門で詳しく解説しています。連携の土台となるiPaaS「Celigo」についてはCeligoとはを参照してください。
SuiteCommerceが向く企業・慎重に検討すべき企業
ここまでを踏まえ、向き不向きを整理します。
向いている企業
- すでにNetSuiteを使っている、または導入予定がある
- 自社ブランドのECを、業務と一体で運営したい
- BtoBの受発注を、Webで効率化したい
慎重に検討すべき企業
- 売上の中心が、楽天・Amazonなど国内モールである
- 小規模で、まずは低コストでECを始めたい
- 国内特有の決済を、すぐ幅広く使いたい
NetSuiteを使っていない段階で、ECだけを純正で始めるのは、あまり現実的ではありません。SuiteCommerceは、NetSuiteという基盤があってこそ価値が出る機能だからです。
EC導入でありがちな失敗パターンと回避策
ここからは、EC導入でつまずきやすいパターンを共有します。NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが、EC・基幹システムの相談を受ける中で見えてきたものです。
これは、純正ECを売り込みたいから書くのではありません。「合わない選び方で失敗してほしくない」という思いから書いています。私たちは、お客様と対等な関係で、一緒に最適な形を考える伴走者でありたいと考えています。
失敗1:純正にこだわり、モールの売上機会を取りこぼす
よくある現象
- 「自社サイトだけで売る」と決め打ちする
- モール出店を、後回しにし続ける
なぜ失敗するか
国内では、楽天やAmazonの集客力は無視できません。純正ECにこだわるあまり、本来取れたはずの売上を逃すことがあります。
どう回避するか
自社サイトとモールは、対立するものではありません。まず「どのチャネルで売上が立つか」を冷静に見極めることが先です。
失敗2:外部連携の同期設計を軽視する
よくある現象
- 連携は「つなげば動く」と考えている
- 在庫や受注の更新タイミングを詰めていない
なぜ失敗するか
在庫の同期がずれると、二重販売や欠品が起きます。注文データの取り込み漏れは、出荷遅延や顧客対応の負担に直結します。
どう回避するか
どのデータを、いつ、どちらに合わせて同期するか。連携の設計を最初に固めることが大切です。
失敗3:全チャネルを一気に立ち上げる
よくある現象
- 自社EC・楽天・Amazonを同時に開始する
- 運用体制が追いつかないまま走り出す
なぜ失敗するか
立ち上げ直後は、想定外の対応が次々と発生します。一気に広げると、現場が回らず、品質が下がります。
どう回避するか
まず1チャネルで運用を安定させてから、段階的に広げます。完璧を目指すより、まず回す。動かしながら磨いていく方が、結果的に早道です。
失敗4:パートナーを使わず、自社だけで進める
よくある現象
- 情報収集だけで設計まで進めようとする
- 純正か連携かの判断を、社内だけで抱え込む
なぜ失敗するか
EC構成の選定は、システムの話であると同時に、事業の話です。判断軸が定まらないまま進めると、後からのやり直しが大きくなります。
どう回避するか
事業構造の棚卸しから、第三者と一緒に進めるのが安全です。最適な構成は、会社ごとに違うからです。
まとめ:純正か連携かは「事業構造」で決まる
SuiteCommerceは、NetSuiteに内蔵された純正のECです。データが一体である強みは、運営の安定につながります。
一方で、国内モールや国内決済まで含めると、外部EC連携の方が現実的な場面も多くあります。
大切なのは、理想のEC像を追うことではありません。自社の事業構造に合った形を選び、まず動かすことです。
EC構成の選定は、システム選びである前に、経営判断です。「どこで・誰に・どう売るか」が決まって初めて、純正か連携かが決まります。
もし「うちはどちらが合うのか」と迷っているなら、まずは事業の棚卸しから、一緒に考えさせてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 純正のSuiteCommerceと外部EC連携、結局どちらを選べばいいですか?
自社ブランドのECを業務と一体で運営したいなら純正、モールでも売りたいなら外部連携が基本の目安です。
多くの企業は、どちらか一方ではなく組み合わせています。自社サイトは純正または外部カート、国内モールは連携、という形です。判断は売上チャネルの構成しだいで変わります。
Q2. SuiteCommerceの費用感はどれくらいですか?
純正ECはプレミアム価格帯になりやすく、構成や規模で大きく変わります。確定した金額はOracleの営業を通じた見積もりが必要です。
NetSuite本体のライセンスに加わる費用となるため、ECだけを単体で安く始める用途には向きません。費用は構成要件によって数百万円規模になることもあります。
Q3. 楽天やAmazonで売りたい場合は、SuiteCommerceで足りますか?
国内モールへの出店は、純正機能だけでは完結しません。モール側の仕組みと、連携サービスを組み合わせる形が現実的です。
NetSuiteは在庫・受注・会計の一元管理を担い、モール販売は外部と連携する。この役割分担が一般的です。詳しくはNetSuite×EC連携の全体像をご覧ください。
Q4. 小規模でもSuiteCommerceは使えますか?
使えますが、小規模で低コストにECだけ始めたい場合には、必ずしも向きません。SuiteCommerceは、NetSuiteという基盤があって価値が出る機能だからです。
まずERPとして導入し、その上でECを広げる。この順序が自然です。NetSuiteの始め方はNetSuiteとはを参考にしてください。
もう少し詳しく知りたい方へ
純正ECと外部EC連携、どちらが自社に合うか迷われている方へ。事業構造の棚卸しから、最適な構成を一緒に考えます。
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