棚卸のたびに、倉庫や店舗を止めていませんか。
在庫を数える間は取引を止める——これが従来の棚卸の常識でした。NetSuite Smart Countは、その常識を変えます。在庫取引を止めずに、業務を動かしたまま棚卸ができる仕組みです。
この記事では、Smart Countの仕組み・主な機能・設定の進め方、そしてつまずきやすいポイントまでを、運用担当者の方に向けて解説します。
NetSuite Smart Count(スマート棚卸)とは
Smart Countは、業務を止めずにリアルタイムで棚卸ができる、NetSuiteの在庫カウント機能です。
まず前提となる言葉を整理します。
- 棚卸:帳簿上の在庫と、実際の在庫が一致しているかを確認する作業
- サイクルカウント:一度に全部を数えるのではなく、対象を絞って定期的に数える棚卸の方法
Smart Countは、このサイクルカウントを「業務を止めずに」行えるようにしたものです。NetSuiteに追加して使うアプリ(SuiteApp)として提供され、NetSuite 2022 Release 2で登場しました。
数えている間も、システムは在庫の動きを記録し、変化があれば担当者に知らせます。
なお、棚卸はあくまで在庫管理の一部です。販売・購買・会計と統合した在庫管理の全体像は、NetSuiteの在庫管理でできることで解説しています。
なぜ「業務を止めない棚卸」が必要なのか
従来の棚卸では、数える間は取引を止めるのが定石でした。これが現場の大きな負担になっていました。
たとえば小売の現場では、棚卸のために売り場を一時的に閉じることがあります。その間、買おうとしていたお客様が買えず、販売機会を逃すこともあります。
倉庫でも同じです。入出庫を止めれば、出荷が遅れ、業務全体に影響します。複数チャネルで販売している場合は、その影響がさらに広がります。
Smart Countは、取引を止めずに数えられるため、こうした「棚卸のたびに業務が止まる」問題を小さくできます。
Smart Countの主な機能
Smart Countには、棚卸を効率化する5つの柱があります。
- 管理者コントロール:カウント中に在庫数が動いたとき、どう扱うかを管理者が決められる
- 高度な可視性:あらかじめ決めた条件(保存検索など)で、数えるべき品目のリストを自動表示
- 自動再カウント:在庫が発注点を下回ったとき、その棚(ビン)の数え直しを自動でうながす
- 集中管理:その拠点で数える予定の品目を、一覧で把握できる
- モバイル対応:ハンディ端末とバーコード(GS1対応)で、その場で数えて記録できる
加えて、期待数を表示しない「ブラインドカウント」も設定できます。先入観なく数えたいときに役立ちます。
バーコードを使った倉庫現場の運用(入庫・ピッキング・棚卸)は、NetSuite WMS×バーコードで倉庫業務を高速化もあわせてご覧ください。
従来のサイクルカウントとの違い
両者の違いは「取引を止めるかどうか」に集約されます。比較すると次のとおりです。
| 観点 | 従来のサイクルカウント | NetSuite Smart Count |
|---|---|---|
| 在庫取引の停止 | カウント中は拠点の取引を止めるのが定石 | 取引を止めずにライブで実施 |
| 在庫数の基準時点 | プラン開始時に対象を一括で記録 | 各品目のカウント開始時点で記録 |
| カウント中の在庫変動 | 把握しづらく、差異の原因になりやすい | 変動を追跡し、担当者へ自動アラート |
| 期待数の非表示 | 運用しだい | ブラインドカウントを設定可 |
| 許容差での自動承認 | 手作業で確認しがち | 許容差内は自動承認を設定可(品目・ビン・在庫ステータス単位) |
| 端末 | モバイル端末・バーコード | モバイル端末・GS1バーコード対応 |
※従来方式が劣るわけではありません。「取引を止められない現場」で、Smart Countの強みが活きます。
Smart Countの導入・設定の進め方
導入は、準備 → 設定 → 運用の流れで進みます。
① 前提を確認する
- NetSuite OneWorldアカウントがあること
- 「SCM Mobile」と「Smart Count」のSuiteAppをインストールすること
② 権限を割り当てる
Inventory Manager(在庫管理者)やCounter(カウント担当者)などの役割を、担当者に割り当てます。
③ 設定を決める
会社単位・品目単位で、次を設定します。
- 許容差(数量・金額・それぞれの割合)
- ブラインドカウントの有無
- 許容差内の自動承認(品目・ビン・在庫ステータス単位)
④ カウント構成を作る
数えるべき品目のタスク一覧を、カウント構成(保存検索ベース)から自動生成します。
⑤ モバイルで数える
端末でアプリを開き、ロケーション・ゾーン・通路(ビン利用時)を選んで数えます。タスク一覧に沿った「指示型カウント」のほか、任意の品目を選ぶ「スポットカウント」もできます。
⑥ 差異をレビューする
数え終えたら、承認・却下・再カウントの指定でレビューします。許容差内は自動承認できるため、確認の手間を減らせます。
設定をチームに定着させるには、操作ルールの整備も欠かせません。社内マニュアルの整え方は、NetSuiteの使い方・操作マニュアルガイドが参考になります。
Smart Countでも在庫精度が上がらない ── よくある3つの失敗と回避策
Smart Countは、入れただけで在庫精度が上がる魔法ではありません。
ここでは、棚卸の現場でよく見られる3つの失敗と、その回避策を共有します。売り込みのためではなく、「同じつまずきを避けてほしい」という思いからお伝えします。
失敗①:差異が出ても、原因を追わない
よくある現象
- 差異が出ても、在庫調整の入力だけで終わってしまう
- 毎回、同じ品目で差異が出ている
- 「だいたい合っているからOK」で締めてしまう
なぜ失敗するか
差異は「結果」です。
その発生源(受払の記録漏れ、ロケーション運用の乱れなど)を直さない限り、同じ差異が何度も繰り返されます。Smart Countで数えやすくなっても、原因に向き合わなければ精度は上がりません。
どう回避するか
許容差の自動承認を「全部おまかせ」にせず、要調査のラインを残すことが大切です。
ベンチャーネットでは、差異を単なる作業ではなく「経営の異常検知」として扱う設計を、一緒に考えます。
失敗②:設定を現場に丸投げする
よくある現象
- 標準設定のまま、カウントだけを回している
- 許容差を設定せず、毎回すべてを目視レビューしている
- 誰が承認するのか、役割が曖昧なまま運用している
なぜ失敗するか
Smart Countの省力化機能は、自社の在庫リスクに合わせて設定して初めて効きます。
許容差(数量や金額の許容範囲)、ブラインドカウント(期待数を表示しない数え方)、自動承認。これらを現場任せにすると、せっかくの機能が活きません。
どう回避するか
品目の重要度や金額に応じて、許容差を段階的に設計します。
ここで大切にしたいのが「完璧より、まず回す」という考え方です。最初から完璧に詰めるより、運用しながら調整するほうが現実的です。この調整に、ベンチャーネットが伴走します。
失敗③:棚卸が「年1回のイベント」のまま形骸化する
よくある現象
- Smart Countを、年1回の全棚卸の置き換えとしか考えていない
- 導入はしたが、日々の定期運用に乗っていない
なぜ失敗するか
Smart Countの価値は「業務を止めず、こまめに」回せることにあります。
年1回のイベント運用のままでは、本来の精度向上も省力効果も引き出せません。
どう回避するか
自動再カウントやカウント構成(数えるべき品目のタスク一覧)を使い、日々の定期運用に組み込みます。
機能の導入で終わらせず、棚卸を「経営の精度」につなげる。ベンチャーネットは、そこまで一緒に設計します。
「自社の棚卸をどう設計すればいいか」と感じた方へ。
許容差・ブラインドカウント・運用ルールの組み方は、在庫リスクによって変わります。ベンチャーネットの棚卸・在庫管理の設計に関するご相談で、御社に合った進め方を一緒に整理できます。
経営から見たSmart Count ── 在庫精度は、決算とキャッシュの精度
最後に、経営者の方に向けてお伝えします。
Smart Countは現場の効率化ツールに見えて、実は経営の数字の精度に直結します。
在庫は、貸借対照表に載る「資産」です。在庫精度が低いと、決算の正確さも、資金繰りの判断もぶれます。逆に、棚卸の精度が上がれば、過剰在庫や欠品の判断が早くなり、キャッシュの効率も改善します。
だからこそ、棚卸は「現場の作業」ではなく「経営のテーマ」です。
ツールを入れることがゴールではありません。自社の在庫リスクに合わせて設定を設計し、定期運用に乗せ、差異から経営の課題を読み取る。ここまでやって、はじめてSmart Countは価値を出します。
これは、ITプロジェクトというより経営プロジェクトです。
ベンチャーネットは、機能の導入だけでなく、その先の運用と経営活用まで伴走します。
NetSuiteの導入・運用を、経営の成果につなげたい方へ。
ベンチャーネットは、NetSuite認定パートナーとして導入から運用・定着まで一貫して支援します。詳しくはベンチャーネットのNetSuite関連サービスをご覧ください。御社にとって最適な進め方を、一緒に考えさせてください。
よくある質問
Q1. 在庫を止めずに、本当に正確に数えられますか?
はい。各品目の「カウント開始時点」の在庫を基準にするためです。
従来はプラン開始時に在庫を一括で固定していました。Smart Countは品目ごとに基準時点を取り、カウント中の入出庫を追跡します。変動があれば担当者にアラートが出るので、止めずに精度を保てます。
Q2. NetSuite WMSの通常のサイクルカウントと何が違いますか?
最大の違いは「取引を止めるかどうか」です。
通常のサイクルカウントは拠点の取引停止を前提にしがちです。Smart CountはSuiteAppとして取引を止めずにライブで数え、変動検知・ブラインドカウント・許容差の自動承認などを備えます。
Q3. 導入の前提条件は何ですか?
NetSuite OneWorldアカウントと、専用SuiteAppの導入が前提です。
SCM MobileとSmart CountのSuiteAppをインストールし、Inventory ManagerやCounterなどの役割・権限を割り当てます。そのうえで許容差・ブラインドカウントなどを設定します。
Q4. 現場の負担はどう変わりますか?
「数えること」に集中でき、確認作業を減らせます。
カウント構成からタスク一覧が自動生成され、許容差内は自動承認、在庫が発注点を下回れば自動再カウント。差異レビューも承認・却下・再カウントで整理できます。
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