ERP(会社全体の業務を一つのシステムでまとめて管理する仕組み)の入れ替えは、多くの中堅企業にとって大きな決断です。なかでも「NetSuiteとMA-EYES、どちらがいいのか」という相談をよくいただきます。
ただ、最初にお伝えしたいことがあります。
この比較は、どちらが優れているかを決めるためのものではありません。大切なのは、自社の経営課題にどちらが合うか、です。
NetSuiteとMA-EYESは、得意とする領域が違います。違いを正しく理解すれば、迷いはかなり減ります。
この記事では、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが、両者の違いと選び方を中立の立場で整理します。
この記事で分かること
- MA-EYESとNetSuiteそれぞれの得意分野
- 6つの軸で見た両者の違い(AIとの親和性を含む)
- 自社に向いているのはどちらかの判断材料
- 製品選びでよくある失敗とその避け方
- 読了の目安:約7分
MA-EYESとは?特徴と得意分野
MA-EYESは、プロジェクト管理を中心に据えた国産のクラウドERPです。提供元はビーブレイクシステムズで、2005年の販売開始以来、提供されています。
最大の強みは、プロジェクト単位の原価管理と管理会計です。
案件ごとに、労務費・経費・外注費を積み上げ、収支をリアルタイムに近い形で把握できます。複雑な配賦(費用を一定のルールで部門や案件に振り分ける処理)にも対応します。
そのため、次のような事業と相性がよいとされています。
- IT・受託開発業
- 広告・制作業
- コンサルティング業
- 建設業
いずれも、仕事が「案件」や「プロジェクト」の単位で進む業種です。案件別の採算が経営の生命線になる事業に向いています。
なお、MA-EYESの詳しい機能や価格は、提供元のビーブレイクシステムズにご確認ください。
NetSuiteとは?特徴と得意分野
NetSuiteは、経営全体を一つの基盤に統合するクラウドERPです。提供元はOracleで、世界220地域・43,000社以上で利用されています。
会計・販売・在庫・購買・顧客管理までを一元化し、経営の数字をリアルタイムで見える化します。
強みは、統合とグローバル対応です。190通貨・27言語に対応し、海外拠点も同じシステムで管理できます。
プロジェクト原価の管理も可能です。本体のプロジェクト管理機能に加え、PSA製品の「SuiteProjects Pro(旧OpenAir)」を組み合わせます。PSA(Professional Services Automation)とは、案件の計画から請求までを一貫して支える仕組みです。詳しくはNetSuiteのプロジェクト原価管理の解説をご覧ください。
NetSuiteは、AIの活用にも力を入れています。「#1 AI Cloud ERP」を掲げ、組込型のAI機能や、外部AIと連携する仕組みを備えます。
ただし、NetSuiteのAI機能は北米で先行して提供されるものが多くあります。日本での提供状況や日本語対応は、順次拡大している段階です。導入を検討する際は、その時点での最新の対応状況をご確認ください。
NetSuiteそのものの概要は、NetSuiteとは?クラウドERP入門でも解説しています。
NetSuiteとMA-EYESを比較表で整理
ここまでの違いを、6つの軸で整理します。どちらが上か、ではなく、どこが違うか、という視点でご覧ください。
| 比較軸 | NetSuite | MA-EYES |
|---|---|---|
| 製品の性格 | 経営全体を統合するグローバルERP | プロジェクト管理に特化した国産ERP |
| プロジェクト原価・管理会計 | SuiteProjects Pro+本体機能で対応 | 中核機能。多段階の配賦・管理会計に強い |
| グローバル(多通貨・多言語・拠点) | 220地域・190通貨・27言語に対応 | 国内中心 |
| 組込型AI | 「#1 AI Cloud ERP」を掲げ、組込型AI機能やNetSuite Nextを提供(日本提供は順次拡大) | 2026年2月に生成AIとの連携機能を追加 |
| 外部AI連携 | AI Connector Service(MCP対応・Bring Your Own AI)で外部AIと直接連携 | AIツールとの連携ソリューションを提供 |
| 価格 | 月20万円〜(最小構成からの出発点。使うモジュール・ユーザー数・オプションで変動し、規模により数百万円規模になることもあります) | ビーブレイクシステムズへ要確認 |
表のとおり、重なる部分もありますが、軸足が違います。NetSuiteは経営全体の統合とグローバル、MA-EYESは案件別の原価管理です。
どちらが自社に向いている?
適合シーンを整理します。
クラウドやAIの活用が当たり前になり、海外との取引も増えています。Excelや個別システムのままでは、経営の数字が見えにくくなっている会社も少なくありません。だからこそ、いま自社に合う基盤を選ぶ意味があります。
NetSuiteが向いているのは、次のような会社です。
- 会計・販売・在庫まで含めて、経営全体を一つの基盤に統合したい
- 海外拠点があり、多通貨・多言語で管理したい
- AIを活用しながら成長していきたい
MA-EYESが向いているのは、次のような会社です。
- 事業の中心が案件・プロジェクトで、案件別の採算管理が最優先
- 国内中心で、プロジェクト原価や管理会計を細かく作り込みたい
迷ったときの考え方はシンプルです。「経営全体をまとめたい」のか、「案件の採算をとことん見たい」のか。この軸で、かなり絞り込めます。
製品選びでよくある3つの失敗
ここからは、製品選びでつまずきやすい点をお伝えします。
これは、どこかの会社を責めるためではありません。同じ失敗を、できれば避けてほしいからです。
失敗1:「機能の多さ」で優劣を決めてしまう
よくある現象は、次のようなものです。
- 機能の数や対応範囲の広さで点数をつける
- 自社では使わない機能まで比較してしまう
- 「全部入り」が良いものだと感じてしまう
なぜ失敗するのか。機能の多さは、自社の課題と無関係なことが多いからです。使わない機能は、コストと運用負担になります。逆に、自社に必要な一点が抜けていれば、いくら多機能でも意味がありません。
どう回避するか。出発点は、製品ではなく自社の課題です。「何を解決したいか」を先に決めます。そのうえで、どちらが課題に合うかを見ます。ベンチャーネットでは、この課題の整理から一緒に考えます。
失敗2:いまの業務をそのまま乗せ替えようとする
よくある現象は、次のようなものです。
- Excelや既存の運用を、そのまま新システムに移そうとする
- 「今のやり方を変えたくない」が前提になっている
- 属人化した業務を、そのまま温存してしまう
なぜ失敗するのか。いまの業務には、過去の事情でできた無駄や属人化が含まれているからです。それをそのまま移すと、新システムでも同じ問題が続きます。現場が「結局Excelに戻る」状態になりがちです。
どう回避するか。先に、あるべき業務の形を描きます。そのうえで、最初から完璧を目指さず、小さく始めて育てる進め方が現実的です。ベンチャーネットは、業務整理から運用の定着までを伴走します。
失敗3:パートナーと運用を後回しにする
よくある現象は、次のようなものです。
- 製品の選定だけに力を注ぐ
- 導入後の運用体制を決めないまま進める
- 「入れれば何とかなる」と考えてしまう
なぜ失敗するのか。ERPは、入れて終わりではないからです。動かしながら磨いていくものです。運用を支える体制がないと、システムは動いていても成果につながりません。
どう回避するか。製品と同じくらい、誰と進めるかが大事です。選定の段階で、パートナーの伴走体制まで含めて検討します。なお、MA-EYESを選ぶ場合は、ビーブレイクシステムズに相談するのが確実です。
製品選びは、機能の比較表だけでは決まりません。最後は、自社の経営にとっての意味で選ぶことになります。ERPの導入は、ITプロジェクトであると同時に、経営プロジェクトだからです。
よくある質問
MA-EYESからNetSuiteへ乗り換えるべきですか?
一概には言えません。判断軸は、経営課題がどこにあるか、です。案件別の原価管理が中心ならMA-EYESの継続も選択肢です。経営全体の統合やグローバル対応を重視するなら、NetSuiteが候補になります。
プロジェクト原価管理はNetSuiteでもできますか?
できます。本体のプロジェクト管理機能に加え、PSA製品のSuiteProjects Proを組み合わせます。案件の計画から採算管理、請求までを一貫して扱えます。詳しくはSuiteProjects Proの解説記事をご覧ください。
NetSuiteの費用はどのくらいですか?
月20万円〜が出発点です。最小構成からの目安で、使うモジュール・ユーザー数・オプションによって変わります。規模によっては、数百万円規模になることもあります。最終的な金額は、パートナーを通じてOracleの営業とご相談ください。
海外展開を考えています。どちらが有利ですか?
グローバル対応では、NetSuiteに分があります。190通貨・27言語・220地域に対応し、海外子会社も同じ基盤で管理できます。将来の海外展開を見据えるなら、長期的な投資価値が高いといえます。
まとめ
NetSuiteとMA-EYESは、どちらも良いERPです。違うのは、得意とする領域です。
MA-EYESは、案件別の原価管理に強い国産ERP。NetSuiteは、経営全体を統合するグローバルERPです。
選ぶときの主語は、製品ではなく、あなたの会社です。「自社の経営を、これからどうしたいか」。そこから考えると、答えは見えてきます。
そして、製品選びと同じくらい、誰と進めるかが大事です。完璧な計画を待つより、小さく始めて、動かしながら育てる。その伴走者として、ベンチャーネットはお役に立てます。
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