会社の仕事が「案件」や「プロジェクト」の単位で動いている。そんな業種があります。
コンサルティング、IT・システム開発、制作会社、広告・代理店、エンジニアリングなどです。
こうしたビジネスでは、社員の「時間」が在庫であり、原価でもあります。誰が、どの案件に、何時間使ったか。それがそのまま採算につながります。
ところが、その肝心の数字が見えにくい。Excelとメールでなんとか回している会社も少なくありません。
そこで役立つのが、PSA(Professional Services Automation:プロジェクト型ビジネスの計画から採算管理までを一気通貫で支える仕組み)です。
この記事では、NetSuiteのPSA製品である SuiteProjects Pro(旧 NetSuite OpenAir) を、初めての方向けにわかりやすく解説します。
この記事で分かること
- SuiteProjects Pro(旧OpenAir)とは何か、何ができるのか
- NetSuiteに組み込まれたプロジェクト管理との違い
- 組込で足りる企業/Proが必要な企業の見分け方
- 導入でつまずきやすいポイントと回避策
読了目安:約8分
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが、導入支援の現場目線でお伝えします。
SuiteProjects Pro(旧OpenAir)とは
SuiteProjects Pro は、プロジェクト型ビジネスの採算管理を支えるPSA製品です。NetSuiteを提供するOracle NetSuiteのラインアップのひとつです。
PSA(Professional Services Automation)とは、人の時間を売る仕事のための仕組みです。
具体的には、次のような業務を一つの場所でつなぎます。
- 案件の計画とスケジュール
- 人員(リソース)の配分
- 稼働時間・経費の記録
- プロジェクトごとの会計と採算
- 請求・売上計上
「誰が、どの案件に、いくらの原価で関わり、いくら利益が出たか」。これを見える化するのがPSAの役割です。
「OpenAir」から「SuiteProjects Pro」へ
SuiteProjects Pro は、もともと OpenAir という名前の製品でした。
OpenAir は専業のPSAベンダーで、2008年にNetSuiteが買収しました。以来、NetSuiteのプロジェクト管理を支える製品として使われてきました。
その後、SuiteWorld 2024 での発表を経て、名称が SuiteProjects Pro へと変わりました。本番環境では2025年2月15日に全面的に切り替わっています(出典:Oracle NetSuite 公式アナウンス)。
つまり「OpenAir が無くなった」のではありません。名前が変わり、投資が強化された と理解するのが正確です。
なお、ユーザー画面は日本語に対応しており、日本でも提供されています。
なぜ今、プロジェクトの採算管理が重要なのか
近年、プロジェクト型ビジネスを取り巻く環境が大きく変わっています。だからこそ、採算の可視化が経営テーマになっています。
理由は主に3つあります。
- 人手不足と人件費の上昇:限られた人員をどの案件に充てるかが、利益を左右する
- 案件の複雑化:同時並行のプロジェクトが増え、全体の採算が見えにくい
- 意思決定のスピード:月末まで採算が分からないと、打ち手が遅れる
人の時間が原価であるビジネスでは、「稼働率」と「案件ごとの粗利」が経営の生命線です。
ここが見えないまま走り続けると、忙しいのに利益が残らない、という状態になりがちです。
PSAは、この「見えない採算」を見える形に変えるための仕組みです。
SuiteProjects Pro の主な機能
SuiteProjects Pro は、案件の計画から請求までを一貫して支えます。ここでは代表的な機能を紹介します。
リソース管理
人員の配分を効率化する機能です。
- ドラッグ&ドロップで担当者を案件に割り当て
- スキルや経験、空き状況をもとに最適な人を配置
- 複数拠点をまたいだリソースの一元管理(グローバルリソースプール)
「誰が空いていて、誰に余裕がないか」を可視化し、稼働率を高めます。
プロジェクト会計
案件ごとの採算を管理する機能です。
- 固定費・変動費の両方に対応した予算管理
- 複数通貨に対応したプロジェクト会計
- 進捗やマイルストーンに連動した収益認識
グローバルに案件を持つ企業でも、通貨をまたいで採算を把握できます。
時間・経費の記録
現場の入力負担を軽くする機能です。
- タイムシートで稼働時間を記録
- 経費レポートと領収書の管理
- スマートフォンアプリからの入力・申請(日本語対応)
現場が入力した時間と経費が、そのまま採算データになります。
請求・売上計上
採算データを請求につなげる機能です。
- プロジェクトの実績をもとにした請求
- 請求書の自動化
- 売上計上までの一連の流れを一元管理
AIによるプロジェクト分析
プロジェクトの「健全性」を見守る機能です。
リスクの兆候やリソースの偏りを分析し、計画の見直しを支援します。NetSuiteが掲げる「AIを活用したクラウドERP」の方向性に沿った機能強化が進んでいます。
ネイティブのプロジェクト管理との違い
ここが、多くの方がつまずくポイントです。
実は、NetSuiteには本体に組み込まれたプロジェクト管理機能(ネイティブのプロジェクト管理)もあります。SuiteProjects Pro とは別物です。
両者の違いを整理します。
| 観点 | NetSuiteネイティブのプロジェクト管理 | SuiteProjects Pro(旧OpenAir) |
|---|---|---|
| 位置づけ | NetSuite本体に組込(同一データベース) | 別製品(別の基盤・連携にコネクタが必要) |
| 想定規模 | 中小〜中堅/比較的シンプルな案件管理 | 中堅〜大規模/本格的なプロジェクト体制 |
| リソース管理 | 工数・タスク・ガントなどの基本機能 | ドラッグ&ドロップ/スキルベース/グローバルリソースプール |
| プロジェクト会計 | NetSuite会計と一体 | 高度なプロジェクト会計・複数通貨・収益認識 |
| AI・分析 | NetSuiteの分析機能 | AIによるプロジェクト分析・健全性モニタリング |
| 導入の手軽さ | 同一基盤で完結し、比較的容易 | 別実装+コネクタ設定が必要 |
| 向くケース | まず組込で十分/会計と一体で回したい | グローバル・複雑な案件が本業/高度なリソース最適化が要る |
大切なのは、ネイティブが劣っているわけではない ということです。
要件の規模と複雑さによって、適した方が変わります。シンプルな案件管理ならネイティブで十分なことも多く、本格的なリソース最適化が要るならProが力を発揮します。
NetSuiteのネイティブなプロジェクト管理については、別記事で詳しく解説しています。
▶ NetSuiteでプロジェクト管理を行うには
▶ NetSuiteで実現する効果的なプロジェクト管理
SuiteProjects Pro はどんな企業に向いているか
「結局、うちはネイティブで足りるのか、Proが要るのか」。ここが一番知りたいところだと思います。
判断の目安をお伝えします。
SuiteProjects Pro が向いている企業
次のような特徴があれば、Proの検討価値が高まります。
- プロジェクト型ビジネスが事業の中心である
- 同時並行の案件が多く、リソース配分が複雑
- 海外拠点や複数通貨をまたいで案件を持っている
- 稼働率や案件採算を、より精緻に最適化したい
まずネイティブで十分なことが多い企業
一方、次のような場合は、組込のプロジェクト管理から始めるのが現実的です。
- プロジェクト管理が業務の一部で、規模が比較的小さい
- まずは会計と一体で採算をざっくり把握したい
- 複雑なリソース最適化までは、今は必要ない
ベンチャーネットでは、「高機能だから良い」とは考えていません。
御社の規模と課題に対して、過剰でも過少でもない選択を一緒に見極めることを大切にしています。
SuiteProjects Pro 導入でよくある3つの落とし穴
SuiteProjects Pro は高機能なPSAです。ですが、選び方や進め方を誤ると、その価値を活かしきれません。
ここでお伝えするのは、SuiteProjects Pro を売り込みたいからではありません。「導入してから後悔してほしくない」という思いからです。
ベンチャーネットは、お客様にとって過不足のない選択を一緒に見極める伴走者でありたいと考えています。だからこそ、不都合な事実も含めて正直にお伝えします。
落とし穴①:「Proありき」で過剰投資してしまう
よくある現象
- 「プロジェクト管理を高度化したい」という思いが先行する
- 競合や他社事例を見て「うちもProを」と最初から決めてしまう
- NetSuite組込のプロジェクト管理を検討せずにProへ進む
なぜ失敗するか
SuiteProjects Pro は、本格的なプロフェッショナルサービス向けの高度な製品です。
組込のプロジェクト管理で足りる規模の会社が最初からProを選ぶと、過剰投資になりがちです。別製品ゆえのコストや、後述するコネクタ運用の負荷まで抱え込んでしまいます。
どう回避するか
まずは「組込で足りるのか、Proが要るのか」を見極めることが先です。
ベンチャーネットでは、いきなりProではなく、まずNetSuite組込のプロジェクト管理から始める選択肢も率直にお勧めしています。規模や複雑さが増したときに、Proへ広げれば十分間に合います。
落とし穴②:「別製品・コネクタ連携」を軽視してしまう
よくある現象
- SuiteProjects Pro を「NetSuiteの一機能」と思い込んでいる
- 会計・請求データとの連携を、自動でつながる前提で考えている
- 連携の設計を後回しにして導入を進めてしまう
なぜ失敗するか
SuiteProjects Pro は、NetSuite本体とは別の製品です。本体とは別の基盤で動いており、データを連携させるにはコネクタが必要になります。
この前提を見落とすと、想定外の連携設計が後から発生します。結果として、二重入力や同期のずれといったトラブルにつながりやすくなります。
どう回避するか
導入前に「どのデータを、どこまで、どう連携させるか」を決めておくことが大切です。
ベンチャーネットでは、Proと会計・請求の連携範囲を導入前に設計図として固めることをお勧めしています。ここを丁寧に詰めるほど、稼働後の運用が安定します。
落とし穴③:プロジェクト採算の「目的」が曖昧なまま導入する
よくある現象
- 「リソース管理を見える化したい」で止まっている
- 改善したい経営指標が、社内で言語化されていない
- 高機能を入れること自体が目的になっている
なぜ失敗するか
PSAの価値は、機能の多さではありません。プロジェクトの採算を改善できるかどうかです。
何の指標を良くするのかが曖昧だと、せっかくの機能が使われません。稼働率なのか、案件ごとの粗利なのか、回収の早さなのか。ここが定まらないまま導入すると、「入れたけれど変わらない」状態になります。
どう回避するか
導入前に「どの数字を、どこまで良くするのか」を決めることが出発点です。
ベンチャーネットでは、機能の話の前に、経営として改善したい指標を言語化するところから一緒に考えます。目的が定まれば、必要な機能も自然と絞り込めます。
最後に、ひとつだけお伝えします。
SuiteProjects Pro は、案件・プロジェクト単位で動く会社にとって、心強い武器になります。ですが、その武器が御社の規模や課題に合っているかは、また別の話です。
「うちは組込で足りるのか、Proが要るのか分からない」。そう感じた方は、お気軽にご相談ください。御社にとって過不足のない進め方を、一緒に考えさせてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. OpenAir は無くなったのですか?
いいえ、無くなっていません。名称が SuiteProjects Pro に変わっただけです。
OpenAir は、SuiteWorld 2024 での発表を経て SuiteProjects Pro へと改称されました。製品としては継続しており、むしろ投資が強化されています。これまでOpenAirを使ってきた企業も、引き続き利用できます。
Q2. ネイティブのプロジェクト管理と何が違うのですか?
SuiteProjects Pro は、NetSuite本体とは別の、より高度なPSA製品です。
ネイティブのプロジェクト管理はNetSuiteに組み込まれており、比較的シンプルな案件管理に向いています。一方のProは、高度なリソース最適化や複数通貨のプロジェクト会計などに対応します。どちらが良いかは、要件の規模と複雑さで決まります。
Q3. NetSuiteを使っていないと導入できませんか?
SuiteProjects Pro は、NetSuiteと連携させて使うとき、コネクタを通じてデータをつなぎます。
NetSuite ERPと組み合わせると、案件の採算から会計・請求までを一気通貫で管理できます。この連携の範囲をどう設計するかが、導入の成否を分けるポイントになります。
Q4. 日本語で使えますか?
はい、ユーザー画面は日本語に対応しています。
スマートフォンアプリも日本語で利用でき、日本でも提供されています。グローバルに案件を持つ企業でも、日本の現場が使いやすい形で運用できます。
まとめ:成長を見据えた「ちょうどよい選択」を
SuiteProjects Pro(旧OpenAir)は、案件・プロジェクト単位で動くビジネスの採算を見える化する、高度なPSA製品です。
この記事の要点を振り返ります。
- SuiteProjects Pro は OpenAir の新名称。製品は継続し、投資も強化されている
- 高度なリソース管理・プロジェクト会計・AI分析が強み
- NetSuiteネイティブのプロジェクト管理とは別製品で、連携にはコネクタが要る
- 「組込で足りるか、Proが要るか」は、規模と複雑さで見極める
大切なのは、「高機能だから入れる」ではありません。
御社の成長フェーズと課題に対して、ちょうどよい選択をすること。それが、プロジェクトの採算を本当に改善する近道です。
ベンチャーネットは、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)として、その見極めから運用までを伴走します。
「うちはネイティブで足りるのか、Proが必要なのか」。判断に迷ったら、まずはお気軽にご相談ください。御社の状況をお聞きしたうえで、過不足のない進め方を一緒に考えます。
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