SAPとNetSuiteを徹底比較|新規導入・移行先選定で経営者が押さえるべきポイント【2026年版】

「SAPとNetSuite、結局どちらがうちに合うのか」

新しくERPを入れる会社からも、SAP ERPの保守期限を前にした会社からも、同じ問いが届きます。

SAPとNetSuiteの比較とは、業種・規模・業務の変え方に、どちらの設計が合うかを見極めることです。

原料を加工するプロセス製造で、業務を深く作り込んでいるなら、SAPの継続が合いやすい。

中堅・成長企業、組み立て型の製造、流通・サービス業なら、NetSuiteが合いやすい。

どちらにも当てはまらなければ、別の製品や「いまは替えない」も選択肢です。

製品の優劣で決まる話ではありません。

では、自社はどちらに寄るのか。

分かれ目は、業種と、業務の「作り込み」をどう扱うかにあります。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、特定の製品に誘導しない立場です。

NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。

SAPの長所は、長所として公式情報のとおりに扱います。

目次

この記事で分かること

  • SAP S/4HANAとNetSuiteの違い(8つの観点の比較表)
  • AIとの親和性の違い
  • 新規に選ぶ会社と、SAPから移る会社、それぞれの判断の物差し
  • SAP ERP 6.0の保守期限と、判断の時期
  • 費用と期間を左右する4つの要因と、よくある3つの失敗

言葉の整理:ERPは、販売・購買・在庫・会計などを1つの仕組みで管理するシステムです。

SAP S/4HANAはSAPの現在の主力のERP、SAP ERP 6.0(ECC 6.0)はその前の世代の製品です。

SAPとNetSuiteの違い|8つの観点の比較表

#観点SAP(S/4HANA)NetSuite
1設計の出自製造業から発展。オンプレミスとクラウドの両方クラウド前提で設計されたERP
2主な対象大企業・多国籍企業に強い。中堅中小向けの道もある中堅・中小・成長企業
3導入の規模要件が複雑なほど大規模・長期になりやすい標準の型を使い、比較的短い期間を目指す
4作り込み柔軟で、深い作り込みができる標準に合わせる(Fit to Standard)が基本
5業種プロセス製造に深い強み組み立て型の製造・流通・サービス・プロジェクト型
6海外対応多国籍の大規模な展開で実績220地域・190通貨・27言語
7AIJoule(SAPのAIの窓口)を中心に組込型組込型に加え、外部のAIとMCPでつなぐ
8保守の期限SAP ERP 6.0は2027年末で標準保守が終了クラウドで年2回の更新。期限による入れ替えはない

(出典:SAP公式・Oracle NetSuite公式サイト・Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)

プロセス製造は、化学・食品・金属など、原料を加工して製品をつくる製造です。

組み立て型の製造は、部品を組み合わせて完成品をつくる製造です。

どちらが優れているか、ではありません。

設計が違うため、合う会社が違います。

比較表の読み方

8つの観点は、同じ重さではありません。

判断を大きく分けるのは、5の業種と4の作り込みの2つです。

  • 業種がプロセス製造で、作り込みが深い → SAPの側に寄る
  • 業種がそれ以外で、作り込みを減らしたい → NetSuiteの側に寄る

残りの6つは、この2つで方向が決まった後に、細かく見る観点です。

たとえば海外対応は、両製品とも対応しています。

差が出るのは、会社の規模に対して、どれだけ手軽に始められるかです。

両製品をひと言でいうと

SAP|深く作り込める世界標準のERP

SAPは、ドイツに本社を置くソフトウェアの会社です。

主力のSAP S/4HANAは、インメモリー(データをメモリ上で処理する技術)で高速に動くERPです。

クラウド版とオンプレミス版があり、会社の方針に合わせて選べます。

多拠点・多通貨の複雑な業務を、深く作り込んで回せることが最大の強みです。

SAPには、会社の状況に応じた2つの道が用意されています。

道対象中身
RISE with SAPSAP ECC 6.0などのオンプレミスのERPを使う会社SAP Cloud ERP Privateへの移行。AIの窓口Jouleを含む
GROW with SAP新しくSAPを使う会社(中堅中小企業を含む)SAP S/4HANA Cloud Public Editionがベース

(出典:SAP公式サイト、2026年9月確認)

GROW with SAPについて、SAPは「数週間での本稼働が可能」とうたっています(出典:SAP公式サイト、2026年9月確認)。

中堅中小企業がSAPを比べるときは、この道も候補に入ります。

SAPの全体像はSAPとは?で扱っています。

NetSuite|クラウド前提のオールインワンERP

NetSuiteは、Oracleが提供するクラウドERPです。

1998年に米国で生まれ、世界220地域・44,000社以上で使われています。

  • 販売・在庫・購買・生産・会計・顧客管理を、1つのデータベースで扱う
  • すべての利用者が同じ基盤を共有するマルチテナント型
  • 大きなリリースは年2回。更新の前にRelease Previewで試せる

(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)

海外の子会社の管理には、OneWorldという複数の会社を扱う仕組みを使います。

NetSuiteの全体像はNetSuiteとは?、海外の管理はNetSuite OneWorldで扱っています。

判断を分ける観点

業種への合い方

経営の判断で、最も重い観点です。

SAPは、製造業をルーツに発展してきました。

特にプロセス製造で、複雑な工程・レシピ・部品表の管理に強みを持ちます。

NetSuiteが強いのは、次のような業種です。

  • 販売・在庫の管理が中心の会社
  • 組み立て型の製造
  • 流通・卸売
  • サービス業・プロジェクト型の業務

レシピや工程の管理に深く頼るプロセス製造では、NetSuiteの標準では足りない部分が出やすくなります。

一方で、製造業でもSAPを会計と販売の中心にだけ使っている会社もあります。

その場合は、業種の名前より、実際に使っている機能で判断してください。

「製造業だからSAP」「サービス業だからNetSuite」とは決めつけられません。

作り込みの考え方

SAPは柔軟で、業務に深く合わせた作り込みができます。

ただし、作り込みが増えるほど、保守の手間と費用も増えます。

NetSuiteは、クラウドERPの中では拡張しやすい製品です。

それでも基本はFit to Standard(業務を製品の標準に合わせる考え方)です。

標準を最大限に使うほど、年2回の更新の恩恵を受けやすくなります。

導入の期間と費用

SAPの導入は、要件が複雑なほど大規模・長期になる傾向があります。

年単位のプロジェクトも珍しくありません。

NetSuiteは、業種ごとの標準の導入の型(SuiteSuccess)を用意しています。

ライセンスは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。

ただ、どちらの製品でも、総額を大きく動かすのはライセンスより導入の中身です。

導入の費用と期間は、次の4つの要因で決まります。

  • 業務の範囲:販売・購買だけか、在庫・会計・生産まで入れるか
  • 開発の量:とくに外部システムとの連携と、アドオン(追加の開発)
  • 社内の体制:情報システムの担当が少ないと、支援を厚くするため期間も延びやすい
  • ユーザー数:受入テストと教育の工数、社内の調整の時間が増える

SAPから移る会社では、2つ目がとくに効きます。

SAPで作り込んだ機能を、NetSuiteでも開発で再現しようとするほど、費用と期間が膨らみます。

NetSuiteの費用の考え方はNetSuiteの料金・費用で扱っています。

海外対応

SAPは、多国籍企業の大規模な展開で長い実績があります。

NetSuiteは、OneWorldで複数の会社・通貨・税制を1つの基盤で扱います。

海外の子会社の管理や連結を、中堅企業の規模で始めやすい点が特徴です。

AIとの親和性

AIの使い方で、両社の考え方は少し違います。

観点SAP(S/4HANA)NetSuite
AIの窓口Joule(業務をまたぐアシスタントとエージェントの窓口)製品に組み込まれたAI機能
外部のAIとの連携SAPの仕組みの中で使う形が中心AI Connector Service(MCP)でClaude・ChatGPTなどを接続
AIの選び方SAPが用意するAIを使う自社で選んだAIを持ち込める(Bring your own AI)
権限の扱いSAPの権限の設計に従う利用者もAIもロールの範囲だけを見る
親和性の見立て高い(SAPの中で完結させたい会社に)高い(AIを選び替えたい会社に)

(出典:SAP公式・Oracle NetSuite公式、2026年9月確認。見立てはベンチャーネットによる)

MCP(Model Context Protocol)は、外部のAIとシステムをつなぐための共通の約束事です。

NetSuiteは「#1 AI Cloud ERP」を掲げています(Oracle公式)。

どちらもAIに力を入れていますが、「AIを選び替えたいか」で合う側が変わります。

保守の期限

SAP ERP 6.0を含むSAP Business Suite 7の標準保守は、2027年末までです。

延長保守は2028年初めから2030年末までで、保守の料金の基準に2ポイントが上乗せされます。

S/4HANAについて、SAPは2040年末までの機能の提供を約束しています。

(出典:SAP公式「Maintenance Strategy」、2026年9月確認)

NetSuiteは、クラウドで年2回の更新を受ける形です。

製品の世代の終わりに合わせて入れ替える、という判断は起きません。

期限を順に並べると、次のとおりです。

保守の期限を並べると:SAP ERP 6.0・S/4HANA・NetSuite SAP ERP 6.0を含むSAP Business Suite 7の標準保守は2027年末まで。延長保守は2028年初めから2030年末までで、保守の料金の基準に2ポイントが上乗せされる。S/4HANAはSAPが2040年末までの機能の提供を約束。NetSuiteは年2回の更新で、世代の終わりによる入れ替えは起きない。 保守の期限を並べると 2027年末まで|標準保守 SAP ERP 6.0を含むBusiness Suite 7 2028年初め〜2030年末|延長保守 保守の料金の基準に2ポイント上乗せ 比べるときに見ておく、ほかの期限 S/4HANA|2040年末まで SAPが機能の提供を約束 NetSuite|年2回の更新 世代の終わりによる入れ替えは起きない 期限は、ERPを見直す機会でもある
保守の期限を並べると

2027年問題の全体はSAP 2027年問題とはで扱っています。

この期限は、SAPを使う会社にとって、ERPを見直す機会でもあります。

  • 今のままの延長で、本当によいのか
  • 5年後の自社に必要なシステムは何か
  • 作り込みのうち、今も価値を生んでいるのはどれか

新しくERPを選ぶ会社も、選んだ製品の世代の期限を見ておくと、将来の入れ替えの負担を読めます。

経営者の数字の見え方

もう一つ、経営者が気にしたいのは、数字をいつ見られるかです。

SAP S/4HANAは、インメモリーの処理で、大量のデータをすばやく分析できます。

NetSuiteは、販売・在庫・会計が1つのデータベースにあり、画面ですぐに数字を見られます。

どちらもリアルタイムに近い数字を出せます。

差が出るのは、ダッシュボードや分析の画面を「誰が、どれだけの手間で作るか」です。

IT部門が作り込む前提か、経営者や経理が自分で見られる前提か。比べるときの問いになります。

稼働後の支え方

導入の後に、誰がどう支えるかも違います。

SAPは、IT部門とSAPのパートナーが、作り込みを含めて保守する形が一般的です。

作り込みが多いほど、保守の体制も厚く要ります。

NetSuiteは、Oracleの製品サポートと、パートナーの運用の支援を組み合わせる形が一般的です。

年2回の更新の前に、作り込みや連携が正しく動くかを見る作業が要ります。

更新の前の確認は、NetSuiteのバージョンアップで扱っています。

判断の物差し|向いている会社・向いていない会社

SAPが向いている会社

  • 大企業・多国籍企業で、複雑な業務とIT部門の体制がある
  • プロセス製造で、工程・レシピ・部品表の管理が経営の中心
  • 自動車・化学など、業界向けの仕組みを深く使いたい
  • すでにSAPを深く使い込み、その資産を活かしたい

SAPが向いていない会社

  • IT部門が小さく、作り込みの保守を続ける体制がない
  • 作り込みが重くなりすぎて、更新のたびに負担が大きい
  • 業務の中心が販売・在庫・サービスで、複雑な工程を持たない

NetSuiteが向いている会社

  • 中堅・中小企業で、成長の途中にある
  • 組み立て型の製造、流通・卸売、サービス・プロジェクト型の業務
  • 海外の子会社を、中堅の規模で管理したい
  • IT人材が限られ、サーバーの運用を持ちたくない
  • 外部のAIを選んで、業務のデータにつなげたい

NetSuiteが向いていない会社

  • プロセス製造で、SAPを作り込み込みで深く使っている
  • 今の業務の流れを、ほぼ変えたくない
  • 業界向けの深い仕組みが、事業の競争力そのもの

向いていない条件に当てはまるからといって、使えないという意味ではありません。

当てはまる数が多いほど、導入の負担と、稼働後の不満が大きくなりやすいということです。

両方の「向いていない」を読み、自社がより多く当てはまる側を、候補から外す見方もできます。

消去法で候補を絞ると、比べる手間が大きく減ります。

両方の「向いていない」を並べると、次の図のとおりです。

「向いていない」から絞る:SAPとNetSuite、それぞれが向いていない会社 SAPが向いていないのは、IT部門が小さく作り込みの保守を続けられない、作り込みが重く更新の負担が大きい、業務の中心が販売・在庫・サービスで複雑な工程がない会社。NetSuiteが向いていないのは、プロセス製造でSAPを深く作り込んで使っている、業務の流れをほぼ変えたくない、業界向けの深い仕組みが競争力そのものの会社。当てはまる数が多い側を候補から外す。 「向いていない」から絞る SAPが向いていない NetSuiteが向いていない IT部門が小さく、 作り込みの保守を 続ける体制がない プロセス製造で、 SAPを深く 作り込んで使っている 作り込みが重く、 更新のたびに 負担が大きい 今の業務の流れを、 ほぼ変えたくない 業務の中心が販売・ 在庫・サービスで、 複雑な工程がない 業界向けの深い 仕組みが、事業の 競争力そのもの 当てはまる数が多い側を、 候補から外す 消去法で絞ると、比べる手間が大きく減る
「向いていない」から絞る

どちらでもない選択肢

状況検討したい選択肢
小規模で、SAPの名前に安心感があるSAP Business One(SAP Business OneとNetSuiteの比較)
費用を抑え、必要な機能から広げたいOdoo(Odooとは?)
業務がとても独特で、パッケージに合わないAIスクラッチ開発(AIでスクラッチ開発とERP)
本社はSAP、子会社は軽いERPにしたい2層ERP(2層ERPとは)
延長保守の期間で、判断の時間を確保したいいまは替えない。期限と課題を見張る

他の主要なERPも含めて比べたい方は、ERPを徹底比較をご覧ください。

「いまは替えない」も、判断の一つです。

ただし延長保守には上乗せの費用がかかるため、判断の時期は決めておきます。

判断に迷いやすい例

次は、よくある迷い方を架空の例で示したものです。

会社の状況(架空)迷う理由考え方
食品の製造。SAPを20年使い、レシピの作り込みが多いNetSuiteの軽さに魅力を感じるレシピの作り込みが今も必要かを棚卸しし、必要ならSAPの継続を軸にする
機械の組み立て。SAPの作り込みの半分は使っていない慣れたSAPを手放す不安がある使っていない作り込みを外すと、NetSuiteへの移行が現実的になる
卸売の本社と海外の販売会社。本社はSAP子会社の分までSAPにすると重い子会社から軽いERPにする2層ERPも候補に入れる
新規にERPを入れるサービス業名前の知られたSAPに安心感がある業種と規模から、NetSuiteやGROW with SAPを並べて比べる

迷ったら、「作り込みを守りたいのか、減らしたいのか」を最初に決めてください。

新しく選ぶ会社と、SAPから移る会社

これから新しくERPを選ぶ会社

初めてERPを入れる会社、または国産ERPや会計ソフトから移る会社です。

考える順番は次のとおりです。

  1. 業種の特性を見る(プロセス製造か、それ以外か)
  2. 5年後の会社の姿を書く(海外・子会社・事業の数)
  3. IT部門が、作り込みの保守を続けられるかを考える
  4. 候補の製品で、自社の業務を1本通すデモを見る

プロセス製造でなく、IT部門も小さいなら、NetSuiteを候補の中心に置くのが自然です。

SAPを比べる場合は、中堅中小向けのGROW with SAPやSAP Business Oneも並べてください。

製品を比べるときに、両方の窓口へ同じ質問をすると、違いがはっきりします。

  • 自社の業務を1本通すと、標準で足りない部分はどこか
  • その部分は、作り込み・別の製品・運用の変更のどれで補うか
  • 5年間の利用料と保守、作り込みの保守を合わせた総額はいくらか

答えが具体的な窓口ほど、導入後の姿も具体的に描けます。

いまSAPを使っていて、見直しを考えている会社

SAP ERP 6.0を使っている会社が最初に見るのは、期限と作り込みの量です。

道中身合う会社
A. S/4HANAへ進むRISE with SAPなどでSAPの次の世代へ移るプロセス製造で、作り込みの資産を活かしたい
B. NetSuiteへ替える業務を標準に寄せ、NetSuiteへ移る組み立て型の製造・流通・サービス。作り込みが負担
C. 延長保守で時間を取る2030年末までの延長保守を使い、判断を固める判断の材料がそろっていない

(期限の出典:SAP公式、2026年9月確認)

Aを選ぶ場合は、SAPジャパンやSAPのパートナーに相談するのが確実です。

Bを選ぶ場合は、作り込みの棚卸しから始めます。

Cを選ぶ場合も、延長保守の上乗せの費用と、判断の期限を決めておきます。

なお、規模が大きく複雑な会社に向けて、2031〜2033年の事業の継続を支える期間限定の仕組みもあります。

SAP ERP, private edition, transition optionと呼ばれるものです。

2030年12月31日までにSAP ERP, private editionへ移っていることなどが条件です。

データベースはSAP HANAに限られ、2TB以上のシステムが対象です。

(出典:SAP News Center 2025年8月4日、2026年9月確認)

中堅企業の多くは、この条件に当てはまらない可能性があります。

自社が対象かどうかは、SAPの窓口に聞いてください。

SAPを深く使ってきた会社がNetSuiteへ移るときの注意は、次の3つです。

  • 作り込んだ機能を「同じ形で」移そうとしない
  • 勘定の持ち方や締めの手順など、会計の考え方の違いを最初に押さえる
  • 並行して動かす期間と、現場の切り替えの時間を見込む

作り込みを仕分ける前に、いまの業務を見える化します。

ベンチャーネットは、製品が決まっていても、この順番を変えません。

ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択 業務の見える化、整理整頓、NetSuite標準機能とのFit&Gap、そして標準に合わせる・開発する・残すの3択で決める。 ベンチャーネットの進め方業務の見える化いまの業務フローを現場に聞いて描く整理整頓やめる・まとめる・そろえる業務を決めるFit&GapNetSuiteの標準機能と照らし合わせる3つの選択標準に合わせる/開発する/残す製品が決まっていても、見える化から始める
ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

最初に、いまの業務の流れを現場に聞いて描きます。

次に、やめる業務・まとめる業務・そろえる業務を決めます。

残った業務だけを、NetSuiteの標準の機能と照らし合わせます。

SAPの作り込みの中には、整理整頓の段階で「もう要らない」と分かるものが少なくありません。

それでも残る作り込みは、一つずつ、次の4つのどれで受け止めるかを決めます。

受け止め方中身向く作り込み
標準に寄せる業務のやり方を変え、製品の標準で回す昔の事情で残っている帳票・手順
設定で対応項目・画面・承認の流れを設定で変える項目の追加や承認のルート
開発で補うSuiteScriptなどで機能を足す取引先との約束で変えられない処理
別の仕組みに任せる専用の製品やAIの開発で外に出す業種に特有で、ERPの外が向く処理

「開発で補う」が多くなるほど、NetSuiteの軽さは失われ、費用と期間も膨らみます。

開発の考え方はNetSuiteのカスタマイズで扱っています。

移行の進め方は基幹システムのリプレイスとは?で扱っています。

今の導入パートナーを替える場合はパートナー変更という選択肢もご覧ください。

導入・移行の進め方と期間の目安

新規でも移行でも、進め方は大きく4つの段階に分かれます。

段階やること期間の目安
1. 構想今の業務の棚卸し、範囲の決定、5年後の方向の整理1〜2か月
2. 設計・構築Fit&Gapの分析、業務の流れの設計、システムの構築3〜6か月
3. テスト・本番データの移行、利用者の教育、本番の稼働1〜2か月
4. 定着運用のルールづくり、操作の研修、改善を回す3〜6か月

合計で、8〜12か月程度が一つの目安です。

規模と作り込みの量で前後し、SAPからの移行では延びることもあります。

期間はベンチャーネットの目安で、公式の数字ではありません。

見落とされやすいのは、4の「定着」です。

本番の稼働日をゴールにすると、稼働後に現場が元のやり方に戻ってしまいます。

定着の期間にも、予算と担当者を付けてください。

経営者が各段階で決めることは、次のとおりです。

  • 構想:何を良くするためのERPか。範囲をどこまでにするか
  • 設計・構築:標準に合わせる業務と、残す業務の線引き
  • テスト・本番:切り替える日と、並行して動かす期間
  • 定着:稼働後の担当と、改善の優先順位

全体の流れはNetSuite導入プロジェクトの全体像で扱っています。

選ぶとき・移るときによくある3つの失敗

失敗1:今の業務や作り込みを、そのまま移そうとする

起きること:「SAPで動いていた独自の流れを、NetSuiteでも同じように」と求め、作り込みが膨らんだ。

費用も期間も延び、更新のたびに確認の手間がかかるようになった。

原因:製品の設計の違いを前提にせず、今の形を正解として扱った。

日本の会社には「業務に合わせてシステムを作る」考え方が根強くあります。

合わせるほど使いやすく見えますが、作り込みが増えるほど、変化に弱くなります。

特にプロセス製造で深く作り込んだ業務は、NetSuiteの標準では再現しきれないことがある。

避け方:選ぶ入口で、業種の特性と作り込みの量を棚卸しします。

プロセス製造で作り込みが深いなら、無理にNetSuiteを選ばず、SAPの継続を含めて比べます。

それ以外なら、Fit to Standardとクリーンコア(ERP本体の作り込みを最小にする考え方)で進めます。

切り分けの進め方はFit&Gap分析で扱っています。

失敗2:情報システム部門に任せきりにする

起きること:部門の間の調整が進まず、現場が本当に必要な機能が入らなかった。

原因:ERPの導入を、ITの案件として扱った。

ERPは、会社の情報を一本につなぐ経営の基盤です。

業務の流れを見直し、部門の壁を越える取り組みでもあります。

避け方:経営者がプロジェクトの責任者として関わる形を、最初に決めます。

  • プロジェクトの管理者を置く
  • 経営層が責任者として判断する
  • 月1回、経営層が進み具合を確かめる会議を開く

経営者が「なぜこのERPを選んだのか」を自分の言葉で話せる状態が、進める力になります。

失敗3:費用と期間を低く見積もる

起きること:「クラウドだからすぐ入る」と短い計画を立てたが、途中で延びた。

稼働後も現場に定着せず、Excelとの併用に戻った。

原因:机の上の計画では見えにくい作業を、見込んでいなかった。

  • 会計のマスタの整理
  • 過去のデータの移行
  • 並行して動かす期間
  • 現場の業務の切り替え

避け方:段階的な導入を、最初から計画に入れます。

財務会計を2番目の段階に回し、販売・在庫など効果の見えやすい領域から始める方法もあります。

日本の会計の要件には設計の手間がかかるためです。

稼働後3〜6か月の定着の期間も、予算と人を付けて計画に入れます。

見積もりの段階で、次の点が計画に入っているかを見てください。

  • 移すデータの年数と、マスタの整理にかかる時間
  • 並行して動かす期間と、その間に二重に入力する負担
  • 操作の研修と、社内のマニュアルづくり
  • 稼働後の問い合わせに応じる体制

入っていない項目があれば、その分だけ期間と費用が延びると考えておきます。

データの移し方は基幹システムのデータ移行ガイドで扱っています。

ベンチャーネットならこう見る

SAPとの比較の相談で、ベンチャーネットは製品の説明から始めません。

最初に聞くのは、次の3つです。

  1. 業種はプロセス製造か
  2. 工程・レシピなどの作り込みを、今も使っているか
  3. SAPの保守の期限までに、判断を出せるか
SAPとNetSuite、どちらを軸に比べるか プロセス製造でなければNetSuiteを軸に比べる。プロセス製造で工程・レシピの作り込みを今も使っていればSAPの継続を軸に、使っていなければNetSuiteも候補に入る。 どちらを軸に比べるか 問い1:業種は プロセス製造か いいえ → NetSuiteを軸に比べる はい ↓ 問い2:工程・レシピの 作り込みを今も使うか 使っている SAPの継続を 軸に比べる 使っていない NetSuiteも 候補に入る
SAPとNetSuite、どちらを軸に比べるか

1つ目と2つ目で、どちらを軸に比べるかが決まります。

3つ目は、急ぐか、延長保守で時間を取るかを決める問いです。

この図は答えを決めるものではなく、話し合いの出発点です。

社内の意見が割れたときも、どの問いで割れているのかが分かれば、話が前に進みます。

プロセス製造で作り込みが深い場合は、NetSuiteより、SAPの継続を勧めることもあります。

逆に、作り込みの多くがもう使われていないと分かれば、NetSuiteへの移行は現実的な道になります。

誰が要件を聞き、誰が何を担うか

SAPからの移行でつまずきやすいのは、作り込みの意味が途中で伝わらなくなることです。

ベンチャーネットでは、要件を聞くのは営業ではなく導入コンサルタントです。

現場の話を伝言ゲームにせず、そのまま設計に落とします。

ベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入より、他社の後の引き継ぎ・立て直しや、他のシステムとの連携が多くあります。

SAPから移る会社でも、周りに残るシステムとのつなぎ込みが、計画の大きな部分を占めます。

役割は、最初に3つに分けます。

担い手担うこと
日本オラクルNetSuiteのライセンス・トレーニング・製品サポート
ベンチャーネット要件定義・設定・カスタマイズ・アドオン開発・既存システムとの連携・保守・PM
自社作り込みの棚卸し、業務の整理、受入テスト

PMには、発注する会社側のPM業務やOracleとの調整も含みます。

契約は請負契約に対応しています(準委任も相談可)。

SAPを続ける場合は、SAPジャパンやSAPのパートナーが相談先です。

100点より、まず回す

ベンチャーネットは「100点を目指すより、まず回す。動かしながら磨く」を大切にしています。

最初から全機能をそろえるより、効果の大きい領域から動かすほうが、定着が進みやすいからです。

ERPの導入を、システムの入れ替えではなく、業務の流れと部門の壁を見直す機会として扱います。

進め方の考え方は、伴走型のNetSuite導入支援とは?で扱っています。

今日できること|1時間でつくる「作り込みの棚卸し表」

SAPを使っている会社は、次の表を埋めてみてください。

新しく選ぶ会社は、「今の業務で独自のやり方」を同じ形で書き出します。

作り込み・独自のやり方使っている部門月に何回使うかなくなると困るか
(例)独自の出荷の帳票物流毎日困る
(例)旧い部門の集計経理使っていない困らない

「使っていない」「困らない」の行が多いほど、標準に寄せる余地が大きいことを示します。

「毎日」「困る」の行が、製品を比べるときに確かめるべき点です。

部門の責任者に1行ずつ見てもらうと、思い込みで残している作り込みが見つかります。

あわせて、SAPの保守契約の期限と、延長保守を使うかどうかの案を書き込みます。

この1枚があると、SAPのパートナーとも、NetSuiteのパートナーとも、同じ土台で話せます。

新しく選ぶ会社は、もう1枚、次の表を書いてみてください。

5年後の姿今の姿ERPに求めること
(例)海外の販売会社を2社国内だけ複数の会社・通貨を1つで扱う
(例)売上を2倍経理は2人人を増やさずに締めを回す

右の列が、製品を比べるときの物差しになります。

よくある質問

Q1. 新しくERPを入れるなら、SAPとNetSuiteのどちらがよいですか

業種と規模と作り込みの必要で決まります。

プロセス製造で、工程・レシピ・部品表の管理が複雑なら、SAPの強みが活きます。

中堅・中小企業、組み立て型の製造、流通・サービス業なら、NetSuiteが合いやすいです。

Q2. 中堅企業にも、ERPは本当に必要ですか

成長の速さによっては早めに要ります。

販売・在庫・会計のデータが別々だと、経営の判断が遅れます。

高機能で高額な製品を入れるという意味ではなく、データを1か所に集めることが目的です。

早い段階で経営の基盤を整えると、会社が大きくなったときの混乱を防げます。

Q3. 製造業でSAPを使っています。NetSuiteに移れますか

業態によって判断が分かれます。

プロセス製造でSAPを深く作り込んでいる場合、NetSuiteへの移行は難しいことが多いです。

組み立て型の製造や、製造業以外でSAPを使う会社なら、NetSuiteへの移行は現実的な選択肢です。

判断には、作り込みの一覧と、それぞれが今も使われているかの確認が欠かせません。

Q4. SAP ERP 6.0の保守はいつまでですか

標準保守は2027年末までです。

延長保守は2028年初めから2030年末までで、保守の料金の基準に2ポイントが上乗せされます。

S/4HANAについて、SAPは2040年末までの機能の提供を約束しています(出典:SAP公式、2026年9月確認)。

Q5. 2027年末までに、NetSuiteへ移せますか

計画の立て方次第です。

規模と範囲によって、必要な期間は大きく変わります。

焦って一気に切り替えるより、優先する領域から段階的に移すほうが定着しやすくなります。

延長保守を使って時間を取る道もあります。

まず範囲を決め、どの業務から切り替えるかの順番を先に決めてください。

Q6. 移行の費用はどれくらいですか

構成と範囲で大きく変わります。

NetSuiteのライセンスは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

構成によっては数百万円規模になることもあり、別に導入と移行の費用がかかります。

導入の費用を決めるのは、業務の範囲、開発の量、社内の体制、ユーザー数の4つです(3-3)。

SAPの作り込みを開発で再現しようとするほど、2つ目が膨らみます。

SAPを続ける場合の費用も、延長保守の上乗せを含めて同じ期間で並べると比べやすくなります。

Q7. SAPを続けるか迷うとき、誰に相談すればよいですか

それぞれの製品の窓口に聞きます。

SAPの継続はSAPの窓口に、NetSuiteはNetSuiteのパートナーに聞くのが確実です。

S/4HANAへ進む場合の詳細は、SAPジャパンやSAPのパートナーに聞いてください。

両方の話を聞いたうえで、第8章の棚卸し表を土台に比べるのが公平な進め方です。

まとめ

  • SAPとNetSuiteの違いは、業種・規模・作り込みの考え方にある
  • プロセス製造で作り込みが深いなら、SAPの継続が合いやすい
  • 中堅・成長企業、組み立て型の製造、流通・サービスなら、NetSuiteが合いやすい
  • SAP ERP 6.0の標準保守は2027年末まで。延長保守は2030年末まで
  • どちらも合わなければ、Business One・Odoo・AIスクラッチ開発・2層ERP・「いまは替えない」も選択肢

ERPは、管理のための道具というより、会社が伸びるための基盤です。

新規の導入は、業務をゼロから設計する機会です。

SAPからの乗り換えは、長年の作り込みを見直す機会です。

どちらの場合も、5年後・10年後の会社の姿から逆算して選んでください。

「結局どちらが合うのか」への答えは、作り込みの棚卸し表の中にあります。

製品を比べる前に、まず1枚つくってください。

新規でも移行でも、そこが最初の一歩です。

もう少し詳しく知りたい方へ

SAPからの移行を含め、基幹システムの乗り換えを考えている方は、リプレイスの相談をお受けしています。

NetSuiteが自社に合うかを画面で確かめたい方は、無料のデモをご利用ください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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