「チャットはSlackとTeams、会議はZoom、ファイルはBoxとOneDrive、議事録ツールも入れた」。気づけば、自社のツールが10も20も増えていた。中小企業の経営者から、こうした声をよく聞くようになりました。
ツールは増えたのに、なぜか仕事はラクになっていない。むしろ情報があちこちに散らばって、探すだけで時間がかかる。
ベンチャーネットも、いままさに自社のICTを「AI readyな体制」へ組み直しているところです。この記事では、増えすぎたツールをどう整理し、何を残し、どうつなぐか。その考え方を、現在の知見からお伝えします。
なぜ、ツールは「増やす」だけだと回らなくなるのか
ICTは、入れる順番だけでなく「連携しているか」で効果が大きく変わります。バラバラに入れたツールは、つながらないまま放置されやすいからです。
実際、多くの中小企業では、部門ごとに別々のSaaSが入り、連携しないまま使われています。すると、経営に必要な情報を集めるだけで膨大な手間がかかります。ベンチャーネットの支援現場でも、この「分断」を繰り返し見てきました。
(用語:SaaS=必要な機能をネット経由で月額利用するソフト。ICT=情報通信技術。)
まず、いまの中小企業を取り巻くツールを整理してみます。
| 用途 | 代表的なツール(日本) | 補足 |
|---|---|---|
| ビジネスチャット | Teams/Google Chat/LINE WORKS/Chatwork/Slack | Teamsが上位(出典:BOXIL 2025年6月。※調査で変動) |
| Web会議 | Zoom/Teams/Google Meet/Webex | Zoom 約60%(出典:MM総研) |
| クラウドストレージ | OneDrive・SharePoint/Google Drive/Box/Dropbox | 法人はこの4系統が中心 |
| 議事録・文字起こし | Otolio/Notta/AI GIJIROKU/YOMEL/Rimo Voice | 自動文字起こしが普及(出典:BOXIL 2025年5月) |
| Web/CMS | WordPress/国産CMS/HubSpot | WordPressが世界CMSシェア約6割(出典:W3Techs 2025) |
| MA(集客) | BowNow/Account Engagement/HubSpot/Marketo/SATORI | 国産BowNowが上位(出典:DataSign) |
| SFA・CRM(営業・顧客) | Salesforce/Dynamics 365/HubSpot/Zoho/国産 | 国内CRMはSalesforceが1位(出典:IDC Japan) |
| ERP(基幹) | NetSuite ほか | 会計・販売・在庫・顧客を一元管理 |
| 生成AI | ChatGPT/Copilot/Gemini/Claude | 法人はChatGPTが52%(出典:ICT総研 2025年7月) |
これだけのカテゴリがあり、それぞれに何社もの選択肢があります。気づけば「ツールだらけ」になるのは、自然な流れなのです。
※シェアは調査や集計方法で大きく変わります。順位そのものより「選択肢がこれだけ多い」点が要点です。
まず「攻めの領域」から──順番の基本は変わらない
ツールが増えても、入れる順番の基本は変わりません。中小企業は、成果が出やすい「攻めの領域」から入るのが定石です。
- Webサイト:情報発信と問い合わせの入口。最初に整える土台
- MA:集客・見込み客の育成
- SFA:営業活動の管理・共有
- CRM:顧客情報の蓄積と関係づくり
- ERP:会計・販売・在庫などの基幹を一元管理
図1 Webサイトを入口に、攻めの領域(MA→SFA→CRM)を整え、最後に基幹(ERP)を固めます。生成AIは各段階を横断して人を支えます。
そして、この各段階を横断して支えるのが生成AIです。生成AIは「業務プロセスを変えずに、アウトプットの速度を上げる」道具です。人は、AIが出した下書きを見て「選択と判断」に集中できます(出典:ベンチャーネット「バーチャル経営と生成AI」)。
なお、大企業はまず会計(ERP)から固めますが、中小企業には向きません。会計情報を外部に公開する必要が大企業ほどなく、コスト負担だけが先行しがちだからです。
ありがちな失敗:増えすぎたSaaSが「連携せず」眠っている
ツールを増やすほど、つまずきも増えます。ベンチャーネットがお伝えしたいのは、「増やし方」より「整え方」です。よくある3つのつまずきを共有します。
失敗1:バラバラに導入し、情報が分断される
症状:チャット・会議・議事録・ストレージを別々に契約。データがあちこちに散らばる。
なぜつまずくか:連携していないと、営業・顧客・収益の情報がつながらず、経営判断に使えません。
どう避けるか:「入れること」を目的にしない。入れたあと業務が回るか、連携を前提に選びます。
失敗2:「入れること」自体が目的になる
症状:流行りのツールを次々に導入。使われないまま、契約だけが残る。
なぜつまずくか:連携は項目が増えるほど、設定・運用・保守のすべてが重くなります。
どう避けるか:本当に必要な機能に絞ります。重複するツールは、思い切って統合します。
失敗3:コストだけがふくらむ
症状:似た機能のSaaSを重複契約。月額がじわじわ積み上がる。
なぜつまずくか:誰も全体像を把握しておらず、棚卸しがされないためです。
どう避けるか:定期的にツールを棚卸しし、使っていないものは止めます(=ダイエット)。
これら3つは、いずれも「全体像をつかんでいれば避けられる」ものです。ベンチャーネットは、ツールを売り込むより先に、整理と棚卸しから一緒に考える伴走者でありたいと思っています。
解決の方向:増やすより「統合」──AI×Notionで、AI readyな体制へ
ここからが、ベンチャーネットがいま実践している方向性です。ひとことで言えば「増やすより、統合」。増えすぎたSaaSを必要最低限にダイエットし、残ったツールの情報をAIで統合していく考え方です。
整理のコツは、レイヤー(層)を分けることです。
- 基幹のデータ(会計・販売・在庫・顧客)→ ERPに集約
数字が一本につながると、経営判断を勘ではなくデータでできるようになります。 - 情報・ナレッジ・会話(議事録・ドキュメント・社内の知識)→ AI×Notionに集約
散らばっていた情報を一か所に集め、AIに「探す・まとめる・下書きする」を任せます。
図2 増えすぎたSaaSは必要最低限にダイエット。基幹データはERPへ、情報・ナレッジはAI×Notionへ集約します。
なぜNotionか。Notionは、ドキュメント・タスク・ナレッジを一か所にまとめられる、軽量な情報のハブだからです。そこに生成AIを組み合わせると、「先週の議事録を要約して」「この資料の要点を出して」といった問いに、社内の情報をもとに答えてくれます。
ここで大切なのは、AIが主役ではないことです。AIはあくまで、増えた情報を統合し、人の判断を速くする道具です。最後に「どうするか」を決めるのは、いつも人です。
これが、ベンチャーネットの考える「AI ready な体制」です。ツールを増やすことではなく、情報がAIで統合される状態に組み直すこと。その第一歩は、「いま何を使っているか」を棚卸しすることから始まります。
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaSは減らした方がいいのですか?
増やすこと自体が悪いわけではありません。ただ、連携せず重複しているツールは、コストと手間だけを生みます。まず棚卸しをして、使っていない・重複しているものから整理するのがおすすめです。
Q2. ChatGPTなどの生成AIとNotionは、どう使い分けるのですか?
生成AIは「考える・下書きする・要約する」道具、Notionは「情報をためて・整理する」場所、とイメージすると分かりやすいです。両方を組み合わせると、社内の情報をもとにAIが答えてくれる状態になります。
Q3. AIに任せて大丈夫ですか?
AIは下書きや要約を素早く出してくれますが、最終的な判断は人が行います。AIは人を置き換える道具ではなく、人の「選択と判断」を助ける道具です。まずは小さな業務から試すのがおすすめです。
Q4. 何から始めればいいですか?
最初の一歩は「ツールの棚卸し」です。いま契約しているツールを書き出し、使っているか・重複していないか・連携できているかを確認します。そのうえで、残すもの・統合するもの・止めるものを決めていきます。
まとめ:増やすことより、統合すること
ICTは、増やせば成果が出るものではありません。大切なのは、必要なものを必要な順番で入れ、増えすぎたら統合することです。
ベンチャーネットは、いままさに自社をAI readyな体制へ組み直しています。基幹のデータはERPへ、情報とナレッジはAI×Notionへ。増えすぎたSaaSはダイエットし、AIが人の判断を支える形に整えています。
「自社のツールは、つながっていますか」。もし散らかってきたと感じたら、棚卸しから一緒に始めてみませんか。増やすのではなく、統合する。その設計から、対等なパートナーとして伴走します。
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