成長する事業に、なぜERPが要るのか——BMCで構造をとらえ、弾み車を回し続ける

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成長したのに、なぜか前より見えにくい

人を採り、売上も伸びてきた。事業としては、たしかに前へ進んでいる。

それなのに、ふと「会社の全体像」が以前より掴みにくくなる。そんな感覚に覚えはないでしょうか。

たとえば、同じ数字を部門ごとに入力し直している。在庫の数が、現場と帳簿で合わない。月次が締まるまで、今月の利益が読めない。

一つひとつは小さな手間です。けれど積み重なると、「会社が今どう動いているか」が、だんだん見えにくくなります。

ベンチャーネットも、お客様の現場で同じ場面を何度も見てきました。多くの場合、これは誰かのミスではありません。会社が成長したからこそ起きる、構造の問題です。

まず、会社の「構造」を一枚にしてみる

見えにくさの正体は、会社の「構造」が一枚で見えていないことにあります。

そこで役に立つのが、BMC(ビジネスモデルキャンバス)です。事業の仕組みを9つの箱で一枚に描く図で、ベンチャーネットはBMIA・小山龍介氏に学びました。

9つの箱は、こう問いかけてきます。誰のどんな悩みに応えるのか。なぜ競合ではなく自社が選ばれるのか。どう届け、何で売上を立て、何を使い、誰と組むのか。そして、どこにコストがかかるのか。

中心にあるのは「なぜ、お客様は自社を選ぶのか」という価値提案です。ここがぶれると、ほかの箱も全部ぶれてしまいます。

そして大事なのは、それぞれの箱に「ストック」が溜まっていくこと。ストックとは蓄積のことです。在庫、進行中の商談、積み上がった原価、そして長年の取引で得た経験情報。会社の値打ちは、こうしたストックに宿ります。

会社の構造を一枚に:ビジネスモデルキャンバス(BMC) パートナー 誰と組むか 主要活動 何をするか リソース 何を使うか 価値提案 なぜ選ばれるか (中心) 顧客との関係 どう付き合うか チャネル どう届けるか 顧客 誰に応えるか コスト 何にお金がかかるか 収益 何で売上が立つか 各ブロックに「ストック」(在庫・商談・原価・経験情報)が溜まっていく ——その数字を「一つの真実」でつなぐ土台がERP

図:ビジネスモデルキャンバス(BMC)。会社の構造を9つの箱で一枚に描き、中心に価値提案(なぜ選ばれるか)を置く。各ブロックには在庫・商談・原価・経験情報といった「ストック」が溜まる。BMIA・小山龍介氏に学んだ枠組みを、ベンチャーネットが再構成した。

強い会社は、構造が「好循環=弾み車」で回っている

ただし、BMCは箱を埋めて終わり、ではありません。

箱と箱が線でつながり、好循環で回り始めて、はじめて「強い」モデルになります。これも小山氏から学んだ、大切な視点です。

この好循環を、ジム・コリンズは「弾み車(フライホイール)」と呼びました。一度回り始めると、自己強化的にどんどん加速していく輪のことです。

たとえばアマゾンは、こんな輪を回したと言われます。品ぞろえと配送を充実させる。すると訪問者が増える。人が集まるから、売り手も集まる。規模が出るほど価格を下げられ、さらに人が集まる。この輪が、止まらずに回り続けます。

ベンチャーネットは、経営をこう捉えています。経営とは、自社にとっての弾み車を設計し、それを回し続けることだ、と。

経営とは、弾み車を回し続けること 弾み車 (好循環) 価値が高まる 選ばれる 取引が増える ストックが積み上がる 再投資できる

図:自己強化ループ(弾み車)。価値が高まると選ばれ、取引で得たストックが積み上がり、再投資が利く。この好循環が回り続けると、ビジネスモデルは強くなる。ジム・コリンズの弾み車の考え方を、ベンチャーネットが再構成した。

弾み車を回す土台=「一つの真実」をもつ単一DB(ERP)

では、なぜ多くの会社で、弾み車がうまく回らない——あるいは、回っているのかどうかすら分からないのでしょうか。

理由はシンプルです。各箱のストック(在庫・商談・原価)が、別々のシステムや表計算にバラバラに入っているからです。数字が部門ごとに食い違えば、輪がどう回っているかは見えません。

弾み車が見え、手を打てるようになるのは、各箱のストックを「一つの真実」として持てたときです。英語では Single Source of Truth、たった一つの正しい数字、という言い方をします。

その土台を担うのが、ERPです。ERP(Enterprise Resource Planning)とは、販売・在庫・会計といった基幹業務を、一つのデータベースで統合する仕組みのこと。ベンチャーネットが扱うNetSuiteも、その一つです。

一つの真実があると、BMCの各箱の数字が初めてつながります。在庫が動けば原価が見え、原価が見えれば利益が読める。弾み車が「今どう回っているか」が、リアルタイムで見えてきます。

つまり、ERPが要る理由は「業務が楽になるから」だけではありません。会社の弾み車を、見えるようにし、回し続けるための土台だからです。

ひとつ、正直に申し添えます。ERPは、弾み車を描くための土台であって、弾み車そのものを回してくれる魔法ではありません。回すのは、あくまで経営の意志です。

よくあるつまずきも、ここにあります。構造を一枚にする前に、道具だけを先に入れてしまう。すると現場の入力が回らず、せっかくのデータが「一つの真実」になりません。だからこそ、順番が大事です。まず構造、それから土台、という順です。

成長は段階で変わる——「上げ続ける」には頑張りどころがある

弾み車は、放っておいて永遠に回り続けるものではありません。成長には、必ずどこかで「頭打ち」が来ます。

システム思考は、こう教えます。事業には、伸ばす力(好循環)と、元へ引き戻す力(制約)が、同時に働いている。ベンチャーネットは、経営実務家・岡本吏郎氏のセミナーでこの見方を学びました。

だから、ビジネスモデルを0→1→2と段階的に上げ続けるには、段階ごとに現れる制約を緩める「頑張りどころ」が要ります。成長は、ただ待っていれば進むものではないのです。

この「弱いモデルを強いモデルへ進化させる」筋道について、ベンチャーネットは井上達彦教授(早稲田)の整理に学びました。毎回ゼロから売るモデルは弱く、利益が積み上がりにくい。そこに、継続して課金されるモデルや、買い手と売り手を引き合わせるモデルを「組み合わせて」強くしていく、という考え方です。

先ほどのアマゾンも、最初は在庫の重い流通小売から始まり、仲介や基盤サービスを少しずつ足して、強いモデルへ進化したと整理されています。日本の優良企業の多くも、10年がかりで「気づいたらモデルが変わっていた」と言われます。

成長の節目では、買収や合併で、外の強いモデルを取り込むこともあります。そのときに問われるのが、複数の会社の数字を「一つの真実」へ束ねられるか。ここでもERPが、統合の基盤になります。

「では、いつERPを考えるべきか」。売上規模で線を引くより、構造が複雑になって数字が食い違い始めたとき、あるいは次の成長段階へ上げたいとき。それが一つの目安になります。

ここから、次にどう進めるか

成長する事業にERPが要る理由を、一言にすると、こうなります。弾み車(好循環)を回し続けるための「一つの真実」が要るから、です。

この先には、もう一つの景色が広がります。BMCの各箱の数字をAIが見守り、回り方の異変にいち早く気づく——そんな時代が、すぐ近くまで来ています。

ただし、どの弾み車を回すのか、どこで踏ん張るのかを決めるのは、これからも人です。AIは、人の判断を支える側にいます。ベンチャーネットは、ここを譲らずに考えています。この話は、第6章と終章であらためて掘り下げます。

このあたりは、ほかの記事でも掘り下げています。ビジネスモデルの探索と深化は5-7、好循環そのものの原理は3-3、一つの真実がもたらす全体像は4-8、AIとERPの近い未来は6-5。気になるところから読み進めてみてください。

NetSuiteを実際の画面で見てみたい方には無料デモを、自社の構造から相談したい方には導入支援を、それぞれご用意しています。

ただ、ベンチャーネットがいちばん大切にしているのは、その前の一歩です。どの弾み車を回すか、どの制約から先に緩めるか。これは当事者だけだと、意外と見えにくいものです。だからこそ、ERPを入れる前に、まず「会社の構造を一枚にして、どの弾み車を回すか」を、もう一人と一緒に考える。成長の段階に応じて、土台づくりからご一緒できればと思います。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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