「求人を出しても、応募が来ない」
「やっと採用できても、すぐに辞めてしまう」
中堅・中小企業の経営者なら、一度はこう感じたことがあるのではないでしょうか。
実は、この「人が採れない」という悩みは、あなたの会社の魅力や努力が足りないからではありません。日本全体の人口構造から生まれている、いわば「時代の前提」です。
この記事では、まず人が採れない本当の理由を整理し、その上で「採用に頼りきらない経営」という考え方をご紹介します。
なぜ中小企業は人を採れないのか
人が採れない背景には、大きく3つの構造的な理由があります。
働き手そのものが減り続けている
日本の働き手は、年々減っています。
生産年齢人口(15歳から64歳までの、生産活動の中心となる層)は、2026年1月時点で約7340万人です。総人口も、この1年間で約60万人減っています(出典:総務省「人口推計」2026年1月報)。
この減少は、一時的なものではありません。少子高齢化により、今後も続いていく流れです。
図1:減り続ける日本の働き手——生産年齢人口 約7,340万人、総人口は1年で約60万人減
「採用したい層」はもっと少ない
経営者が本当に知りたいのは、働き手の総数ではなく「自社が採用したい人がどれくらいいるか」でしょう。
ここに、もう一段の現実があります。
企業が中途採用で戦力として求めるのは、多くの場合20代から40代の層です。しかし、この年齢層は人口全体の一部にすぎません。さらに「経験」「スキル」「自社との相性」といった条件を重ねると、現実的な候補は一気に絞られます。
そして、その限られた候補の中でも、いわゆる「できる人」ほど、待遇の整った大手企業を選びがちです。
中小企業の採用担当者が「いくら募集しても、ちょうどいい人に出会えない」と感じる背景には、こうした構造があります。努力不足ではなく、母数そのものが小さいのです。
図2:「採用したい人」が絞られていく構造——出会える候補は何重にも狭まる
「2025年問題」はすでに現実に
数年前から「2025年問題」という言葉が使われてきました。団塊の世代が全員75歳以上になり、社会の担い手が大きく減る、という節目です。
その2025年は、すでに訪れました。人手不足は「これから起きること」ではなく、「すでに起きていること」になっています。
「採る」以外の3つの道
人が採れないことを前提にすると、打ち手は「もっと頑張って採用する」だけではなくなります。ベンチャーネットは、次の3つの道を提案しています。
図3:「採る」以外の3つの道——人を増やさずに成果を上げる
道1:仕事を「減らす」
採用が難しいなら、まず仕事の量そのものを見直します。
定型的な入力作業、繰り返しの事務処理、紙の書類のデータ化といった業務は、AIやデジタルツールに任せられる時代になりました。
ここで大切なのは、AIは「人を減らすため」の道具ではない、という点です。慢性的な人手不足の中小企業にとって、AIはむしろ「足りない人手を補う味方」です。人にしかできない仕事に集中できるよう、定型業務を肩代わりしてもらう。そういう発想です。
道2:人を「抱えこまない」
正社員として採用し、固定費として人を抱える。これだけが人材確保の方法ではありません。
「必要なときに、必要なスキルを借りる」という考え方があります。仕事の単位で、外部の専門人材と長期的に付き合っていく。雇用という形にこだわらず、能力そのものに着目する方法です。
これは単発の外注とは違います。「この人と何ができそうか」という視点から関係を始め、少しずつ任せる範囲を広げていく。腰を据えた付き合いが前提です。
道3:チームごと「借りる」
新しい仕組みづくりや業務改革のように、部門をまたぐ大きな取り組みは、一人の力では進みません。チームの力が要ります。
しかし、人手不足の中小企業が、専門チームを社内に組成するのは簡単ではありません。そこで、専門知識を持ったチームを、まるごと外部から借りるという選択肢があります。
固定費をかけずに、実行力だけを手に入れる。これも、人を抱えこまない経営の一つの形です。
人を増やさない経営という考え方
ここまで見てきた3つの道には、共通する一つの発想があります。
それは「会社の規模を大きくすることが、成長ではない」という考え方です。
人を増やし、固定費を膨らませ、売上を追いかける。かつては当たり前だったこの道は、働き手が減り続ける時代には、必ずしも最適ではありません。
むしろ、人を増やさずに成果を上げる。一人ひとりが、本当に価値のある仕事に集中できる状態をつくる。ベンチャーネットは、こうした経営のあり方を大切にしています。
人手不足は、たしかに厳しい現実です。しかし見方を変えれば、「会社のかたちを見直すきっかけ」でもあります。
とはいえ、自社のどの仕事を減らせるのか、どの力を外から借りればいいのか。これは社内にいるほど「いつものこと」に埋もれて見えにくく、外からの視点が入ると、最初の一手が定まりやすくなります。
よくある誤解
Q. AIを入れたら、社員の仕事が奪われませんか?
中堅・中小企業の多くは、慢性的な人手不足の状態にあります。そのため、AIが定型業務を担っても、人が余ることはまれです。むしろ、これまで手が回らなかった仕事に、人を振り向けられるようになります。AIは人を減らす道具ではなく、足りない人手を補う道具と考えるのが現実的です。
Q. 外部人材に頼ると、ノウハウが社内に残らないのでは?
単発の発注なら、その懸念はあります。しかし、長期的な関係を前提に「一緒に仕事をする」形であれば、やり取りの中でノウハウは社内にも蓄積されていきます。大切なのは、相手を「下請け」ではなく「パートナー」として捉える姿勢です。
Q. うちのような小さな会社でも、できることですか?
はい。むしろ規模が小さいほど、意思決定が速く、新しいやり方を取り入れやすい利点があります。大きく構える必要はありません。まず一つの業務から見直すだけでも、変化は始まります。
まとめ・次の一歩
「人が採れない」という悩みは、努力不足ではなく、時代の構造から生まれています。だからこそ、「もっと採用を頑張る」だけでは、根本的な解決になりにくいのです。
採用に頼りきらず、仕事を減らし、人を抱えこまず、必要な力を借りる。こうした「人を増やさない経営」は、人手不足の時代を生き抜く、現実的な選択肢です。
そして、その先には「会社のかたちそのものを見直す」という、もう一歩深いテーマが広がっています。変化の必要性を感じている経営者にとって、それは避けて通れない問いかもしれません。
次は、「人を増やさず、新しい仕組みを取り入れる」具体的な方法を見ていきます。

