業務を「捨てる」という発想

人手不足をどう乗り越えるか。多くの会社が、まず「採用」を考えます。

けれど、人を増やすこと自体が、経営のリスクになることがあります。

ベンチャーネットがお伝えしたいのは、その前にできることです。「人を増やす」前に、「業務を捨てる」。

やめる業務を決めて、仕事の総量そのものを減らす。空いた力を、人にしかできない仕事へ向ける。これが業務削減の出発点です。

この記事では、なぜ「捨てる」が人手不足対策になるのか、やめる業務をどう決めるのか、そして捨てた後に何を残すのかを、順にお話しします。

目次

なぜ「人を増やす」より「業務を捨てる」なのか

人手不足というと、まず採用を考えがちです。けれど人を増やす前に、見直したいものがあります。いまの業務そのものです。

採用は、年々むずかしくなっています。働く人の数は減り続け、採用の競争も激しくなっています。

さらに、人を増やすと固定費が増えます。売上が落ちても、人件費はすぐには下げられません。

つまり、人を増やすほど、会社は変化に弱い体質になりがちです。これは持田が、多くの経営の現場で見てきたことです。

人手不足は、根性で乗り切る問題ではありません。仕事の「構造」を見直して解く問題です。

だからこそ、採用の前に問いたいのです。「その業務は、本当に必要ですか?」

なお、人を増やさずに乗り越える打ち手は、ほかにもあります。外部の力を借りる、という選択肢です。本記事は、そのなかの「捨てる」に絞ってお話しします。人手不足の背景となる数字は関連記事「人手不足の本質と向き合う」で、外部の力で補う方法は「人を増やさずにDXを進める」でくわしく取り上げています。

「効率化」と「業務を捨てる」は何が違うのか

このセクションの要点は1つです。効率化と業務廃棄は、似ているようで別物です。

効率化は「どう速くやるか」を考えます。業務を捨てる(業務廃棄)は「そもそもやる必要があるか」を問います。

違いを表で整理します。

観点効率化(速く・安くする)業務を捨てる(業務廃棄)
立てる問いどう速くやるかそもそもやる必要があるか
対象既存業務はそのまま業務そのものを見直す
結果同じ仕事が少し軽くなる仕事の総量が減る
空いた時間また別の作業で埋まりがち人にしかできない仕事へ向ける
自動化の位置づけゴールきっかけ

効率化だけでは、仕事の総量は変わりません。速くなった分、別の作業で埋まってしまいがちです。

大切なのは、自動化をゴールにしないこと。自動化は「この業務、そもそも要るのか?」と気づくきっかけにすぎません。

やめる業務の決め方

ここが多くの方の悩みどころです。「捨てたほうがいいのは分かる。でも、どれを捨てればいい?」

進め方は3つのステップです。

  1. 棚卸し:いまの業務を、いったんすべて書き出す
  2. 仕分け:1つずつ「本当に必要か/惰性で続いているか」を問う
  3. プロセスで見る:1作業ではなく、前後のつながり(プロセス)の単位で要否を判断する

仕分けの軸は、シンプルに2つで十分です。

  • その業務は、目的に直結している
  • その業務は、人でなければできない

どちらにも当てはまらない業務が、最初の廃棄候補です。迷ったら「止めたら誰がどう困るか」を問います。困らないなら、惰性で続いている可能性が高いといえます。

「やめる業務」の決め方 2つの軸で仕分けると、最初に捨てるべき業務が見えてきます 見直す・縮小する 人の手は要るが、 目的への効きは弱い 残す(中核業務) 目的に直結し、 人にしかできない ★ 第一の廃棄候補 まず「捨てる」 目的に効かず、 人でなくてもよい 自動化を検討 価値はあるが、 人でなくてもよい (手段はRPA/AIへ) 目的に直結しているか →(右ほど直結) 人でなければできないか →(上ほど人が必要) 迷ったら「止めたら誰がどう困るか」を問う。困らないなら、左下=惰性の可能性。

図A:「やめる業務」の決め方 ── 2つの軸(目的に直結するか/人でなければできないか)で仕分ける

「やめる」を習慣や仕組みにするための考え方は、関連する書籍からも学べます。一度きりの見直しで終わらせず、続けられる形にすることが大切です。

捨てた後に何を「詰める」か

業務を捨てるのは、ただ楽になるためではありません。空いた場所に、別のものを詰めるためです。

ここが「捨てる」のいちばん大事な意味だと、ベンチャーネットは考えています。

空いた力の向け先は、大きく2つです。

  • 探索:新しい売上のしくみを探す(新規事業、新しい市場)
  • 深化:いまの強みを磨き込む(既存事業の質を上げる)

この2つを両輪で回す考え方を「両利きの経営」と呼びます。捨てて空けた余白は、この両輪のための燃料になります。「探索」と「深化」の両立については、関連記事「両利きの経営」でくわしく解説しています。

「捨てる」は終わりではなく、次への燃料 空いた力を、人にしかできない仕事へ向け直す STEP 1 業務を捨てる (業務廃棄) STEP 2 空いた力が生まれる 時間・人のゆとり 探索 新しい売上のしくみ 深化 いまの強みを磨く 両利きの経営(両輪で回す) 捨てるのは節約のためではなく、会社が次に進むための前向きな経営判断です。 呼吸と同じで、吐かなければ新しい空気は入ってきません。

図B:「捨てる」→「空いた力」→「探索と深化」。捨てることで生まれた余白を、次の一手の燃料にする

捨てるのは、後ろ向きの節約ではありません。人にしかできない仕事へ、会社を向き直させるための前向きな経営判断です。

空いたリソースを固定費のまま抱えるのか、変動費へと組み替えて身軽にするのか。その設計も合わせて考えると、効果はさらに大きくなります。身軽な体質への組み替え方は、関連記事「固定費を変動費に変える」で取り上げています。

自動化の手段は、RPAからAIへ

業務を捨てる手段として、長く使われてきたのがRPAです。RPAとは、パソコン上の定型作業を自動化する仕組みのことです。

いまは、その主役がAIへと移りつつあります。AIは、人を置き換えるためではなく、人手を補う形で、より広い業務に使われ始めています。

ただ、手段はあくまで手段です。RPAでもAIでも、大切な順番は変わりません。

まず「何を捨てるか」を決める。手段を選ぶのは、その後です。

ここを逆にすると、不要な業務までそのまま自動化してしまいます。それは「ムダの高速化」にしかなりません。

具体的にどう自動化を進めるか、RPAとAIをどう使い分けるかは、関連記事「業務を自動化する考え方」でくわしく解説しています。本記事は「捨てる発想」に絞ります。

よくある失敗パターン

業務削減でつまずく形には、いくつかの共通点があります。代表的な3つを挙げます。

1. 効率化で止まり、空いた時間に何も詰めない
速くなっただけで、空いた時間がまた別の作業で埋まる。これでは経営は軽くなりません。
→ 捨てる前に「空けた所に何を詰めるか」を決めておく。ベンチャーネットは”捨てる設計”と”詰める設計”をセットで一緒に考えます。

2. 現行業務をそのまま自動化し、非効率を温存する
ムダな手順ごと自動化すれば、ムダが速く回るだけです。
→ 自動化の前に廃棄候補を見極め、プロセス単位で要否を問う。

3. 運用体制や人材育成を軽視して、頓挫する
導入しても、回す人や育てる仕組みがなければ定着しません。
→ 「誰が回すか」「どう育てるか」まで含めて設計する。ベンチャーネットは導入後も伴走します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 業務削減は何から始めればいい?
まず「業務の棚卸し」からです。やめる候補を見える化するのが先で、自動化はその後です。
いきなりツール導入に走ると、不要な業務まで自動化して非効率を温存しがちです。いまの業務を書き出し、「本当に必要か/惰性で続いているか」で仕分けます。

Q2. やめる業務はどう決める?
「目的に直結するか」「人でなければできないか」の2軸で仕分けます。
どちらにも当てはまらない業務が、第一の廃棄候補です。迷うときは「止めたら誰がどう困るか」を問い、困らないなら惰性の可能性を疑います。

Q3. 自動化はRPAとAI、どちらがいい?
いまは手段の主役がRPAからAIへ移りつつあります。ただ大切なのは、手段選びの前に「何を捨てるか」を決めることです。
手段の比較や具体的な進め方は、関連記事「業務を自動化する考え方」でくわしく解説しています。

まとめ ──「捨てる」から始める経営

人手不足は、人を増やすことだけでは解けません。

まず「業務を捨てる」。やめる業務を決め、仕事の総量を減らす。そして空いた力を、人にしかできない仕事へ向ける。

捨てるのは、節約のためではありません。会社が次に進むための、前向きな経営判断です。呼吸と同じで、吐かなければ新しい空気は入ってきません。

とはいえ、「何を残し、何を手放すか」は、社内だけでは決めきれないこともあります。日々の業務に近いほど、捨てる判断はむずかしくなるからです。

ベンチャーネットは、ツールを売るためではなく、その判断を一緒に考える相手でありたいと思っています。何を残し何を手放すか、空いた力をどこへ向けるか。経営の目線で、対等に伴走します。

業務の見直しを考え始めたら、まずは気軽にご相談ください。自動化の進め方から知りたい方は、関連記事「業務を自動化する考え方」もあわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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