「AIを使える人」を社内に増やす——人を増やさずに、今いる人の力を引き出す

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AIは入れた。でも、使えているのは一部の人だけ

ChatGPTのようなAIツールは、もう導入した。そんな会社は、いま増えています。けれど、よく見るとこうなっていないでしょうか。

毎日きちんと使っているのは、社内のごく一部の人だけ。詳しい誰か一人に頼り切りで、その人が忙しいと、AIの活用はそこで止まる。

「それなら、AIを使える人を新しく採ろう」とも考えます。でも、AIに強い人材は採用がむずかしく、給与も上がっています。中小企業にとって、これは「人を増やせば片づく」話には見えません。

つまり悩みの正体は、こうです。AIは入れたのに、会社の力になっていない。

なぜ「一部の人しか使えない」のか

実は、これはあなたの会社だけの問題ではありません。

データとAIの調査会社SASが、2026年に調査結果を公表しました(IDCと共同、28カ国の中小企業1,600社超が対象)。それによると、中小企業の約7割が、まだAI活用の「実験段階」や「場当たり段階」にとどまっていました。

ツールは使っている。けれど、その試みがバラバラのまま、会社全体の動きにつながっていない。調査はこれを「期待と実態のギャップ」と呼んでいます。

そして、つまずきの原因はツールそのものではありませんでした。挙がっていたのは、データの土台・社員のスキル・社内のルールという「足並み」が揃っていないという点です。

「実験段階」で止まる本当の理由 AIツール ChatGPT などは もう導入済み ここは足りている 越えられない壁 足並みが未整備 ・人のスキル(リテラシー) ・データの土台 ・社内のルール 本当の壁はここ ツールをもう一つ増やしても、この壁は越えられない

原因がツールでないなら、新しいツールをもう一つ増やしても、この壁は越えられません。越えるべきは、人・データ・ルールの「足並み」のほうです。

解決の方向は、採用ではなく「底上げ」

では、どうするか。

答えは、人を増やすことではありません。今いる人のAIリテラシーを底上げすることです。AIリテラシーとは、AIを日々の仕事に使いこなせる力のことです。

ビジネス向けSNSのLinkedInが2026年に出した調査では、AIリテラシーはいま最も伸びているスキルの一つで、多くの仕事で「あって当たり前」の土台になりつつあると報告されています。裏を返せば、この底上げを進められるかどうかが、これからの競争力を分けるということです。

とはいえ、中小企業に大がかりな研修制度は要りません。次の3つから始められます。

1. 小さく始める。 全社一斉ではなく、毎日の一つの業務から。メールの下書き、議事録の整理、見積りのたたき台づくり。身近な一つで「使えた」という手応えをつくります。

2. 役割を先に決める。 「AIに任せること」と「人が決めること」を、最初に線引きします。下調べや下書きはAIに、最終的な判断と責任は人に。これを曖昧にしないことが、安心して使える土台になります。

3. うまくいった使い方を、社内で共有する。 誰かが見つけた便利な使い方を、その人の中に閉じ込めない。チームの「共通の型」にして、横に広げます。

今いる人を底上げする3ステップ 1 小さく始める 毎日の一つの業務から 下書き・議事録など 2 役割を先に決める 任せること/決めること 判断と責任は人に 3 社内で型を共有 一人に閉じ込めず チームの共通の型に 土台=学び合う空気 「うまく使えなかった」と言える場が、現場の工夫を早く広げる

ここでポイントが一つあります。先ほどのLinkedInの分析では、社員の底上げで差を生むのは、予算やツールの多さではなく、失敗も率直に言い合える「学び合う空気」だとされていました。「うまく使えなかった」と言える場があるほど、現場の工夫は早く広がります。

底上げとは、研修を一度やることではなく、こうした空気を社内に育てることなのです。

底上げが進むと、会社はこう変わる

今いる人の力が底上げされると、会社の景色が変わります。

一部の詳しい人に頼らなくてよくなる。誰かが休んでも、AIの活用は止まりません。新しい人を採らなくても、今いるチームの生産性が上がっていきます。

そして、AIに任せられる作業が増えるぶん、空いた時間を「人にしかできない仕事」に回せます。顧客との関係づくり、現場の判断、次の打ち手を考えること。これらは、人の力がいちばん活きるところです。

ここまで来ると、次の一歩も見えてきます。人のスキルが底上げされた会社では、AIそのものに任せる役割を増やす段階や、AIを現場に根づかせる仕組みづくりへと、自然に進めます。前者は「AI社員を作る」、後者は「AIを現場に定着させる」という、また別のテーマです。まずは今いる人の底上げが、その土台になります。

よくある疑問と、つまずきポイント

Q. AIに、人の仕事が奪われないか?

AIは、人の仕事を奪う道具ではなく、人を支える道具です。判断と責任は、これまでどおり人に残ります。底上げの目的も、人を置き換えることではありません。今いる人の力を引き出し、人にしかできない仕事に集中できるようにすることです。

Q. 何から始めればいい?

立派な研修プログラムより先に、毎日の一つの業務から始めるのがおすすめです。小さな成功を社内で共有し、少しずつ横に広げていきます。

Q. どれくらいで効果が見えてくる?

小さな業務から始めれば、数週間で「使えた」という手応えは出てきます。ただ、会社全体の底上げは、続けるなかで少しずつ進むものです。一度きりで終わらせず、学び合う空気を保つことが、いちばんの近道です。

つまずきやすいのは、次の3つです。

  • 丸投げの一斉研修。 使う場面がないまま座学だけをやっても、身につきません。
  • 一人に任せきり。 詳しい人だけが使い、ノウハウが共有されないと、その人がいないと回らなくなります。
  • ツールばかり増やす。 使いこなす前に次のツールへ。現場が疲れてしまいます。

いずれも「人の底上げ」を飛ばして、制度やツールで解決しようとしたときに起きやすいつまずきです。

まとめ:人を増やす前に、今いる人を伸ばす

AIを入れても会社の力にならない。その壁の正体は、ツール不足ではなく「人の底上げ」が進んでいないことでした。

採用に頼る前に、今いる人のAIリテラシーを底上げする。これが、人を増やさずに売上を伸ばすための、確かな入口です。

ただ、底上げは一度きりの研修では終わりません。学び合う空気を保ち、続けられる仕組みにして、はじめて競争力になります。

そして、ここに一つ、自社だけでは越えにくい点があります。自分たちの使い方の癖や、活用が止まりやすいポイントは、社内からはなかなか見えないものです。続ける仕組みづくりや、見えにくいつまずきの発見には、外からの視点が思いのほか効きます。

ベンチャーネットは、中小企業がこの「人の底上げ」を続けていけるよう、AI活用の伴走支援をしています。自社で進めながら、迷ったときの相談相手として、一度声をかけてみてください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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