外部の力を借りる——副業・フリーランス×AIで、足りない力を補う

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打てる手は打った。それでも「人が足りない」

第1章では、人を増やさずに伸ばすための打ち手を見てきました。やめてよい業務を手放し、固定費を変動費に組み替え、営業を仕組みで回す。一つずつ実行すれば、少ない人数でも会社は回り始めます。

それでも、多くの会社がある壁にぶつかります。「この仕事を任せられる人が、社内にいない」。たとえば、本格的なWebマーケティング。月次決算を締める経理の専門知識。新しいシステムの設計。どれも片手間では難しく、かといって毎日フルタイムで必要なわけでもありません。

採用という手はあります。けれど、求人を出してもすぐには見つかりません。見つかっても、給与という固定費が毎月のしかかります。需要が増減する仕事に正社員を一人あてるのは、重すぎる——そう感じた経営者は少なくないはずです。

ここで、発想を少し変えてみます。足りない力は、必ずしも自社で抱える必要はありません。外から借りて、組むこともできます。

副業やフリーランスといった社外の専門家に、必要なときだけ力を貸してもらう。そこに、AIという新しい道具が加わります。この記事では、人を増やさずに足りない力を補う「借りて組む」という選択肢を、具体的な手順で見ていきます。

なぜ「採用」だけでは埋まらないのか

人手不足というと、「頭数が足りない」問題に聞こえます。けれど、中身をよく見ると、本当の悩みは少し違います。

足りないのは「人数」ではなく、「必要なスキルを、必要なときに、必要なだけ」そろえる手立てです。正社員の採用は、この三つと相性がよくありません。採用には時間がかかり、給与は固定費として毎月かかります。需要が増減する仕事や、ときどきしか発生しない専門業務に、正社員を一人あてるのは重すぎます。

この構造に対して、近年は新しい考え方が広がってきました。社外の専門人材を、必要なときに選べる「外部人材クラウド」として捉え、自社のチームに組み込む、という発想です。これを「オープンタレント」と呼びます。ハーバード・ビジネス・レビュー(2024年9月号)が、従来の採用では人材が揃わない時代の戦略として紹介しています。

これは一部の先進企業だけの話ではありません。国内のフリーランス人口は1,303万人、その経済規模は約20兆円に達しています(ランサーズ「フリーランス実態調査2024年」)。副業市場も拡大が続き、経済産業省と野村総合研究所の試算では、2030年に12兆円規模へ伸びる見通しです。

実際に使う企業も増えています。副業・フリーランス人材を活用している企業は約3割で、そのうち7割以上が満足していると答えています(パーソルキャリア「副業・フリーランス人材白書2025」)。活用が多いのはエンジニア、デジタルマーケティング、法務・財務といった専門領域で、成果に対して報酬を払う契約が主流です。

つまり、「外から借りて組む」は、もう特別な選択ではなくなりつつあります。

借りて組む——どの業務を、誰に、どう渡すか

外から借りると決めても、いきなり「誰かに頼む」と動くとうまくいきません。順番があります。まず切り出し、次に渡し方を決めます。

人を「増やす」のではなく、「借りて組む」 1 切り出す 社内でなくてもよい 業務を見極める 判断軸=品質要件× 頻度×例外の多さ 2 渡す 副業・フリーランスに 成果ベースで依頼 何を・いつまでに・ どんな状態で 3 人+AIで補う 人は判断と仕上げ AIは下書き・定型 判断と責任は 人に残す 守りの土台:契約とフリーランス新法 ・取引条件(業務内容・報酬・支払期日)を書面で明示する ・納品物の受領から60日以内に報酬を支払う

「借りて組む」は、業務を切り出し、外部の専門家に成果ベースで渡し、人とAIで組み立てる流れです。その全体を、契約の明示とフリーランス新法という土台が支えます。

まず、切り出す

すべての仕事を社外に出す必要はありません。出すべきは、「社内で抱えなくてもよい仕事」です。見極めるとき、ベンチャーネットは三つの軸で考えます。

  • 品質要件:自社の根幹に関わる判断か、それとも手順が決まった作業か
  • 頻度:毎日必要か、ときどき・スポットで足りるか
  • 例外の多さ:型どおりに進むか、その都度の判断が多いか

たとえば、月次のレポート作成、採用サイトの記事執筆、特定ツールの設計といった「頻度は高くないが専門性は要る」仕事は、外に出しやすい領域です。逆に、顧客との関係づくりや最終判断は、社内に残します。固定費を変動費に変える考え方(本章「固定費を変動費に変える」)と同じで、「抱えるか、借りるか」を一つずつ仕分けていきます。

次に、渡し方を決める

頼む相手は、クラウドソーシングやフリーランス・エージェントを通じて探せます。活用が進んでいるのは、エンジニア、デジタルマーケティング、法務・財務などの専門領域です。

渡すときのコツは、「時間」ではなく「成果」で区切ることです。副業・フリーランスの活用では、プロジェクト単位・成果ベースの契約が主流になっています。「何を、いつまでに、どんな状態で」を最初に決めておくと、社外の人でも迷わず動けます。これは社内の仕組み化(本章「営業は、人数ではなく『仕組み』で伸ばす」)と同じ発想です。仕事の中身を言葉にできていれば、誰に渡しても回ります。

最初から大きく頼む必要はありません。小さな一案件から試し、相性とやり方を確かめてから広げていきます。

そこにAIを組み合わせる——「人+AI」で補う

外から人を借りるだけでも、力は足ります。けれど今は、もう一つの増やし方があります。AIと組み合わせることです。

外部の専門家の側でも、AIの活用は前提になりつつあります。あるプロ人材の調査では、生成AIを使いこなすスキルを「市場価値を保つための必須条件」と捉える人が4割を超え、AIで生まれた時間を高付加価値の仕事や新しいスキルの習得に充てているといいます。同じ一人に頼んでも、AIと組む人ほど成果が大きくなりやすい、ということです。

会社の側でも、考え方は同じです。下書きや調べもの、定型の処理はAIに任せ、人は判断と仕上げに力を注ぐ。定型作業を自動化し、限られた人材をより高度な仕事に集中させる。これがAI活用の基本の形です。社内の人も、借りてきた専門家も、AIを下敷きにすれば、少ない人数でこなせる範囲が広がります。

ただし、一線があります。AIの出力は、いつも正しいとは限りません。だからこそ、重要な判断をAIに任せきりにせず、人が確認を挟む仕組みが欠かせません。AIは仕事を奪う存在ではなく、足りない手を補い、人を本質的な仕事へ向かわせる道具です。判断と責任は、最後まで人に残ります。

「人+AI」で組む。これが、採用に頼らず足りない力を補う、いまの現実的なやり方です。

借りる前に押さえる土台:契約とフリーランス新法

外部の人と組むときに、見落とせない土台があります。契約と、法律のルールです。

2024年11月、フリーランスとの取引に関する新しい法律が施行されました。正式名称は長いので、一般に「フリーランス・事業者間取引適正化等法」、いわゆるフリーランス新法と呼ばれます。注意したいのは、その対象範囲です。資本金の額に関係なく、従業員を使って事業を行う発注者は、すべてこの法律の対象になります。中小企業も例外ではありません。

発注する側が守るべきことは、難しくありません。基本は二つです。一つは、仕事を頼むときに業務の内容・報酬・支払期日などの取引条件を、書面か電子データで明示すること。もう一つは、納品物を受け取った日から60日以内のできるだけ早い時期に、報酬を支払うことです。あいまいな口約束や、支払いの先延ばしは避ける、ということです。

ここには、考え方の芯も表れています。外部人材は、立場の弱い「下請け」ではありません。条件を明確にし、約束どおり払う。当たり前のことを当たり前に積み重ねることが、よい相手に長く力を貸してもらう近道です。安く買い叩く発想では、続きません。

AIを使う場合も、同じ姿勢が要ります。AIが下書きした成果物でも、最終的な品質と責任の所在は、人と人との取り決めで明確にしておきます。「どこまでをAIで進め、どこからを人が確認するか」を、頼む段階ですり合わせておくと、後のすれ違いを防げます。

よくある不安と、その答え

Q. 社外の人に頼むと、情報が漏れないか心配です。
A. 秘密保持の取り決め(NDA)と、渡す情報の範囲を絞ることで、リスクは大きく下げられます。最初は核心に触れない業務から始め、信頼を確かめながら任せる範囲を広げるのが安全です。

Q. 成果物の品質は担保できますか。AIに任せた部分は特に不安です。
A. 「何を、いつまでに、どんな状態で」を最初に決め、納品物は人が確認する工程を必ず挟みます。AIが下書きした部分も、品質と責任の所在を契約で明確にします。小さく試すほど品質は安定します。

Q. 外注ばかりで、社内にノウハウが残らないのでは。
A. すべてを外に出す必要はありません。判断や顧客との関係は社内に残し、専門スポット業務だけを借ります。やり取りの記録や手順を残せば、外部人材と組んだ経験そのものが会社の資産になります。

人を「増やす」から「組む」へ

第1章では、人を増やさずに伸ばす道を一つずつ見てきました。業務を捨て、固定費を変動費に変え、営業を仕組みにする。そして最後のピースが、足りない力を外から借りて組む、という選択です。

大切なのは、発想の置き換えです。人手不足を「人を増やして解く」と考えると、採用という重い一手しか残りません。「組んで解く」と考えれば、選べる手は一気に増えます。社内の人、社外の専門家、そしてAI。この三つをどう組み合わせるかが、これからの経営の腕の見せどころです。

最初の一歩は小さくてかまいません。社内になくてもよい仕事を一つ選び、信頼できる相手に、条件を明確にして頼んでみる。そこにAIを下敷きとして添える。小さく試し、手応えを確かめてから広げていけば、リスクは抑えられます。

小さく強く戦う考え方は、ニッチ戦略の記事(本章「中小企業が生き残るニッチ戦略」)にも通じます。仕事を言葉にして渡す技術は、営業を仕組みにする記事(本章「営業は、人数ではなく『仕組み』で伸ばす」)と地続きです。あわせて読むと、「人を増やさない経営」の全体像が見えてきます。

そして、「人+AI」で仕事を組む形を、もう一歩進めたいとき——どの業務を切り出し、どこまでAIに任せ、どこから人が受け持つか。その線引きは、内側にいると意外と見えにくいものです。ベンチャーネットは、外部の力とAIを自社の仕組みに組み込む過程を、伴走しながら一緒に考えています。最初の一社選びや品質の担保でつまずく前に、足りない力の補い方に迷ったら、気軽に相談してください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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