バーチャル経営の集客と販促~顧客の思考変化を予測する「パーセプションチェンジ」

前回は検索ユーザーの思考・心理の変遷を描く「サーチジャーニーマップ」について解説しました。今回は、サーチジャーニーマップを描く上で重要な根拠となりうる「パーセプションチェンジ」について解説します。パーセプションチェンジを理解することで、サーチジャーニーマップの質が上がり、コンテンツ作成・配置にも多様性が生まれてきます。サーチジャーニーはパーセプションチェンジと切っても切れない関係にあるため、ぜひ理解しておきたいところです。

目次

サーチジャーニーの核となるパーセプションチェンジ

まず、サーチジャーニーとパーセプションチェンジの概念を紹介します。サーチジャーニーは、前回の記事でも紹介したように「検索ユーザーが辿る(であろう)検索の旅」を指す言葉です。検索ユーザーは意思決定に至るまでに、何度も検索を重ね、そのたびに知識を補強し、認識を変えていきます。この「変化」がパーセプションチェンジです。

パーセプションチェンジの繰り返しがサーチジャーニーを作る

パーセプションチェンジを日本語で表すと「意識や認識の変化」となります。ビジネス領域では「顧客の意識変容」や「態度の変化」といった言葉で表されることが多いでしょう。サーチジャーニーが「変化の過程」を可視化したものであるのに対し、パーセプションチェンジは「変化そのもの」を指すわけです。パーセプションチェンジが繰り返された結果、サーチジャーニーが形成されると言い換えても良いでしょう。

パーセプションチェンジはコントロールできる?

パーセプションチェンジは自然に発生するものです。しかし、これを意図的に発生させる(変化させる)ことも不可能ではありません。検索ユーザーのパーセプションチェンジをコントロールできれば、検索ユーザーの思考・心理の「行き先」が推測できるため、それに即したコンテンツを配置し、CVへとつなげていくことができます。もちろん、100%の精度でコントロールすることはできません。しかし、パーセプションチェンジが起こるタイミングを知ることで、対策すべきポイントやコンテンツを知る機会を得られるでしょう。

「パーセプションチェンジ」が起こるタイミングとは

では実際にBtoB領域でパーセプションチェンジが起こるタイミングを推測してみましょう。一般的にパーセプションチェンジは「理解・納得」「新たな視点や視座の獲得」「価値観の更新」「好意・敵意の発生」といったタイミングで起こりやすいと言われています。これを踏まえ、BtoB領域でパーセプションチェンジが起こるタイミングを整理すると、以下のようになります。

BtoB領域でパーセプションチェンジが起こるタイミング

①新しい知識や技術に触れ、理解と納得があった

例えば、20年近く使用している社内システムがあり、長い間自社の業務プロセスに特化した開発が行われきたとしましょう。このシステムは言わば「独自性」の塊であり、社内では「他システムへの移行が不可能」との認識が広まっています。しかし、情報システム部の社員が、「仮想化技術を使用し、社内システムのプログラムを丸ごとクラウドへ移設できる」という事実を知ったとしたらどうでしょうか。少なくともこの社員は、「社内システムの独自性を維持しつつ、クラウド移行が可能だ」という具合に認識を変化させます。

②ある専門性が高い分野について、粒度が細かい情報に触れ納得した

オンプレミス型基幹システムを運用している企業が、セキュリティ要件からクラウド移行を見送っていたと想定してみましょう。システムの運用担当者が、Webメディアに記載されていた事例から、「100項目以上のセキュリティ要件に対応したクラウドパッケージ」があることを知り、その項目を精査したところ十分にクラウド化が可能であるとの認識に至った場合は、パーセプションチェンジと考えて良いかもしれません。

③出発点は自社が保有する課題と同じだが、全く別のアプローチで解決に至っている

人手不足対策として採用強化に勤しむものの、思うように人材を確保できない企業を想定してみましょう。あるとき、人事部長は「クラウド型CTIシステムを活用し、全国の支社から手の空いている人材を集め、オンラインだけでつながる仮想的な部署を立ち上げた」という事例を見つけます。「他支社の余剰リソースを、採用や異動(転勤)を発生させずに解決した」という事実を目の当たりにし、「クラウド活用による余剰リソースの再配置」という新たな視点を獲得します。

他にもさまざまなタイミングがあるとは思いますが、代表的なものはこの3つだと考えています。

パーセプションチェンジを加味したコンテンツ展開の方法

パーセプションチェンジは新たな価値観や視点の獲得を促すとともに、強烈な興味・関心の引き金となります。したがって、パーセプションチェンジを上手く予測できれば、コンテンツへのアクセス流入をある程度コントロールできるのです。また、自社コンテンツ全体の検索評価を上げることにもつながります。以下は、パーセプションチェンジを意識したコンテンツ展開の概要です。

  • パーセプションチェンジを促すコンテンツを作成、配置する
  • 検索ユーザーの認識が「A⇒B⇒C」と変わることを想定して、A・B・Cそれぞれに対応した派生コンテンツを作成・配置する。
  • さらに内部リンクやレコメンドなどで自社コンテンツ内の巡回を促し、コンテンツ群全体としての評価向上を狙う。
  • 検索ユーザーは、最初の記事でパーセプションチェンジが起こっても自社コンテンツ群から離脱せず、なおかつコンテンツ群を巡回することで疑似体験を深めていく(=UXの強化)。

巡回するごとに理解と納得を深め、「決定する」

パーセプションチェンジを意識したコンテンツ配置ができるようになると、検索ユーザーが自社コンテンツ内を何度も巡回するようになります。その結果、新たな知識の獲得と理解を繰り返し、納得感を強めていくわけです。この現象を、「バタフライ・サーキット」と呼びます。

バタフライ・サーキットとは、まるで蝶のように情報の中を飛び回る検索ユーザーが、「情報探索」「納得」を繰り返す様子を表す言葉です。また、バタフライ・サーキットの先には、これまでの購買行動には当てはまらない瞬間的な消費(決定)があるとされています。この瞬間的な消費を「パルス消費」と呼びます。

より簡単な言い方をすると「コンテンツ群を巡回するうちに、瞬間的な意思決定が促される」わけですね。BtoB領域では瞬間的な消費=購入ではないものの、問合せや資料DLを促すうえで非常に有益な方法論だと言えるでしょう。

まとめ

ここでは、サーチジャーニーマップの核とも言えるパーセプションチェンジと、パーセプションチェンジを意識したコンテンツ配置、そこから促されるパルス消費などについて解説してきました。バーチャル経営では、サーチジャーニーマップとパーセプションチェンジがコンテンツSEOの核だと考えています。ぜひ2つセットで理解を進めてみてください。次回は、「BtoB領域におけるライティング」について解説します。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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