背骨は言う。強要はしない——自分の軸は明かし、相手の軸は相手に任せる

この記事でわかること

  • 自分の考え方の背骨は、隠さずはっきり言うという置き方
  • 言うことと強要することは違う、という線の引き方
  • 社員に求めるものを「同じ中身」から「ぶれないこと」へずらす見方

前回は、話の聞き方について書きました。流して、引っかかったものを持ち帰り、良し悪しは確かめる。受け取る側の話です。

では、伝える側は、どう伝えればいいのか。受け取る側に、流す余地を残す伝え方はあるのか。

2019年の暮れの坐禅会で、ある学びの場の運営について語られた言葉があります。自分の背骨ははっきり言う。けれども、強要はしない。そういう置き方でした。

目次

「背骨は……はっきり言ってます」

こう語られていました。

私のベースは禅なので、まあ座禅を……強要したりすることを絶対しないと思って

そのうえで、こう続きます。

それを強要はしないけど、私は私の考え方、背骨は禅的なものの考え方がベースになってますってことははっきり言ってます。

強要はしない。けれども、自分の背骨ははっきり言う。

ここでの「背骨」とは、ものの考え方のいちばん奥にある、ぶれない土台のことです。自分が何に立っているのかを、隠さずに示している。ただし、それを相手に押しつけない。二つが一組になっています。

「嫌だったら去っていけばいい」

続く言葉は、こうです。

これは別に宗教じゃないので、嫌だったら去っていけばいいし、納得できなければ別にやめればいいわけで、私はそこのところは自分はそうなんだよとはっきり申し上げてます。

同じ日の別の場面では、こう語られていました。

私は強制強要するということは嫌なので

示すことと、従わせることを、分けている。

自分の考え方は、はっきり言う。そのうえで、受け取るかどうかは相手が決める。合わなければ、離れていい。その自由まで含めて、はっきり伝えている、と私は読みました。

相手には「自分の背骨は自分で」

では、相手には何を求めるのか。こう語られています。

ただ、……それぞれ自分が自分自身で、最終的には自分の背骨、自分の基軸は自分で。ただブレないようにしてくださいと言います。

同じ背骨を持て、とは言わない。自分の背骨を持て、とだけ言う。

求めているのは、考えの中身をそろえることではありません。ぶれないことです。

その理由も、語られていました。周りの声に合わせて揺れる人が多い、という話です。

グラグラグラグラ揺れて……どっちについたらどうかと。

そんなことばっかり言って自分と向き合ってないし

どちらにつくかばかり考えていると、自分と向き合わなくなる。だから、中身は相手に任せて、ぶれないことだけを求める。そういう筋道です。

考え方の、三つの置き方 言わない 自分の背骨を 示さない 言うが、強要しない 自分の背骨ははっきり言う 受け取るかは相手が決める 相手の背骨は相手が持つ 求めるのは、ぶれないこと 強要する 同じ背骨を 持たせようとする 坐禅会(2019年12月)で語られた言葉をもとにした筆者の整理

図1 考え方の、三つの置き方——言わないのでも、強要するのでもない。言うが、強要しない

ぶれない自分は、どう作るのか

ぶれないために何をするのか。語られていたのは、こういうことでした。

やっぱり知識だけではなくて、座禅なら座禅をやって……ブレない自分を作り上げていく。

知識だけでは、ぶれない自分にはならない。語り手にとって、その方法が坐禅だった、という話です。坐禅を勧めているのではありません。背骨をつくる何かを、知識とは別に持っている、ということだと私は読みました。

私の場合——伝え方は場面による。同じ考えは持ってほしい

私は、会社の考え方を社員に伝えるとき、場面によって伝え方が変わります。

そして、社員には同じ考えを持ってほしいと思うほうです。

正直なところ、語られていた置き方とは、向きが少し違います。あちらは、中身は相手に任せ、ぶれないことだけを求める置き方でした。だからこそ、この置き方は私には簡単ではない、と読みました。

経営に置き換えると

経営者は、会社の考え方を伝える立場にあります。言わなければ、社員は何を拠り所にすればいいか分かりません。かといって同じ考えを強いれば、社員は考えることを止めてしまうかもしれません。

語られていた置き方は、その間にあります。自分の背骨は、はっきり言う。相手の背骨は、相手に持ってもらう。

同じ考えを持ってほしいという気持ちは、私の中にあります。その気持ちを消す必要はない、と私は考えます。ただ、求めるものを「同じ中身」から「ぶれないこと」へ一歩ずらせるかどうか。そこに、この話から学ぶ余地があると読みました。

求めるものを、一歩ずらす 同じ中身を求める 私と同じ考えを 持ってほしい ぶれないことを求める 自分の背骨は 自分で持ってほしい 自分の背骨を言うことは、どちらでも変わらない 坐禅会(2019年12月)で語られた言葉と、筆者自身の場合をもとにした筆者の読み

図2 求めるものを、一歩ずらす——自分の背骨は言う。求めるものを、同じ中身からぶれないことへ

「考え方は言わなくていい」という話ではありません

ここには、誤解されやすい点が二つあります。

一つ目。自分の考え方を伏せておけ、という話ではありません。語られていたのは、背骨は「はっきり言ってます」という置き方です。強要しないことと、言わないことは違います。

二つ目。合わない人は切り捨てろ、という話でもありません。「嫌だったら去っていけばいい」は、相手に離れる自由を認める言い方だと私は読みました。追い出すための言葉ではありません。

まとめ——言うが、強要しない

  1. 自分の背骨は、はっきり言う。隠さずに示す
  2. ただし、強要しない。受け取るかどうかは、相手が決める
  3. 相手には、自分の背骨を持ってもらう。求めるのは、同じ中身ではなく、ぶれないこと

心を高める、経営を伸ばす。自分の背骨を言い、相手の背骨を信じて任せることも、心を高める側の仕事だと、この言葉を読み直して思いました。

軸を持ったまま、人は時間とともにどう変わっていくのか。次回は、人生の段階の話です。坐禅会の接心で語られた言葉を取り上げます。

明日、一つだけやってみる

社員に自分の考え方を伝えるとき、同じ考えになってほしいのかを一度自問してみてください。求めるものを、同じ中身ではなく「ぶれないこと」に置き換えて話してください。

よくある質問

Q. ここでいう「背骨」とは何ですか。

ものの考え方のいちばん奥にある、ぶれない土台のことです。語り手にとっては、それが禅的なものの考え方でした。

Q. 社員に同じ考えを持ってほしいと思うのは、よくないことですか。

この記事は、それを否定していません。私自身、そう思うほうです。語られていた置き方から借りたのは、求めるものを「同じ中身」から「ぶれないこと」へずらしてみるという見方です。

Q. 宗教的な話として受け取るべきですか。

語り手自身が「これは別に宗教じゃない」と話しています。この記事が借りたのは、背骨は言うが、強要しないという置き方です。

出典

  • 坐禅会(2019年12月)の録音記録。「私のベースは禅なので、まあ座禅を……強要したりすることを絶対しないと思って」「それを強要はしないけど、私は私の考え方、背骨は禅的なものの考え方がベースになってますってことははっきり言ってます」「これは別に宗教じゃないので、嫌だったら去っていけばいいし……はっきり申し上げてます」「ただ、……それぞれ自分が自分自身で、最終的には自分の背骨、自分の基軸は自分で。ただブレないようにしてくださいと言います」(録音の51:16〜52:14前後)
  • 同じ録音の「グラグラグラグラ揺れて……どっちについたらどうかと」「そんなことばっかり言って自分と向き合ってないし」「やっぱり知識だけではなくて、座禅なら座禅をやって……ブレない自分を作り上げていく」(52:25〜53:03前後)、「私は強制強要するということは嫌なので」(11:46前後)
  • 上記はいずれも会話の中の発言で、話者を確定できないため、発言者を特定せずに書いた(会に出席していた筆者も確定できなかった。2026年9月確認)
  • 語られていた学びの場の名称・所在地、関係する方々のお名前は記載していない
  • 引用は録音の文字起こしから。言いよどみや、意味が取れない部分は「……」で省いた
  • 会社の考え方の伝え方は場面による、社員には同じ考えを持ってほしい、という記述は筆者自身のものです
  • 本文中に坐禅会の関係者・老師・世話人の方のお名前は記載していません
  • 本記事は特定の宗教を評価・推奨するものではありません

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この記事を書いた人

Takuomi Mochidaのアバター Takuomi Mochida 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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