この記事でわかること
- 映像に映っていない「支える側」にも、未来の絵が要るという話
- 支える仕組みが、絵がなければ現状維持の装置になる理由
- 未来の絵は、人と資源を割り当てて初めて計画になるという読み方
前回は、スンダー・ピチャイ氏の「技術に依らない三つのフィルター」を読みました。
今回読むのは、言葉がほとんどない投稿です。
イーロン・マスク氏は、2026年9月20日、雲の上に浮かぶ構造物の映像に、短い言葉を一つ添えました。
読む順序は変えません。まず私のルーツ、次に彼の想像力、最後に私の中に生まれたものです。
私は、何を「支える側」と呼んできたか
私が会社を始めたとき、手元にあったのはSEOという技術でした。技術を磨きながら、自然とお金が増える仕組みを作りたかった。
小さな勝ちを、次の勝ちに回す。その順序をSEOで覚えました。
いまの私の仕事は、基幹システム(会計・販売・在庫などをつなぐ仕組み)の導入支援です。
この仕事には、一つの特徴があります。うまくいっているときほど、誰にも見えない。
経営者が新しい市場に出る。新しい商品を試す。人を増やす。そういう動きの下で、数字が合い、在庫が合い、請求が止まらない。それが基幹システムの仕事です。冒険する側ではなく、冒険を支える側です。
私はこの仕事を、挑戦する経営者の冒険を応援する仕事だと思ってやってきました。
支える側は目立たない。それでいい、とこれまでは受け止めていました。けれども、この映像を見て考え直しました。
マスク氏は何を見せたか
マスク氏は、説明をほとんど付けませんでした。2026年9月20日、映像作家Aze Alter氏の映像を引用して、X(旧Twitter)にこう投稿しています。
This is the future we shall bring into being
——これが、私たちが生み出していく未来だ(筆者訳)
原文は一文で、主語は「私たち」です。「shall」には、予測ではなく意志の響きがあります。こうなるだろう、ではなく、こうする。私はそう読みました。
図1 マスク氏が引用した映像(Aze Alter氏制作)。雲の上に、十字型の巨大な構造物が浮かび、周囲に同じ形の小さな構造物がいくつか見える。実在の施設や計画を撮影したものではなく、制作された想像図である
映像はマスク氏ではなく、映像作家の作品です。ただ、それを選んで未来だと言い切ったのは、本人です。
映像には、雲海の上に立つ十字の構造物と、遠くに同じ形の小さなものがいくつか映っています。
構造物の下は、映っていません。雲に隠れています。
図2 映っているものと、映っていないもの——空に立つ構造物と、雲の下でそれを支えているもの
私の中に何が生まれたか
想像してください。宇宙活動を安全に支えられた上での、人類の自由な活動を。
これは私の言葉です。投稿にも映像にも、こうは書いてありません。映像を見て最初に浮かんだのが、この順番でした。「安全に支えられた上で」が先で、「自由な活動」があと。
映像の主役は、空に立つ構造物です。しかし私の目は、雲の下に行きました。
あれが空に浮いているなら、浮かせ、動かし、壊れないよう見ている何かがある。映っていないところに、支えている側がいる。
私の会社は、雲の下で数字を合わせる側です。その仕事は、あの映像の中にも、映っていないだけで必ずある。
考え直したのは、目立たないことではなく、「支える側の想像力」が足りていたか、でした。
支える側にも、未来の絵が要ります。何を支えるのか。どんな自由を支えるのか。
私が基幹システムで支えたいのは、経営者の冒険です。では、その冒険はどこまで行くのか。私はそれを、自分でも絵にしていなかった。
だから、いま自分の言葉で書いておきます。
組織は、今まで通りにはならず、すべてはプログラム化し、バーチャルになっていく。
これもマスク氏の言葉ではなく、私の見立てです。雲の上に構造物を浮かべているのは、目に見える建物ではなく、書かれた手順と、場所を持たない仕組みのはずです。支える側の未来の絵は、たぶんそこにあります。
図3 自由に動く層と、安全に支える層——支える側にも、支える先の絵が要る
私がつまずいた、四つのパターン
パターン1:映像の大きさに、絶望する
自分たちには関係のない規模だ、と思う。関係あるのは規模ではなく、構図です。支える側と自由に動く側は、どの会社にもあります。
パターン2:支える側だから、絵は要らないと思う
私がそうでした。支える仕組みは、支える対象の絵がなければ、現状維持の装置になります。基幹システムを入れる会社で、「何のために数字を合わせるのか」が決まっていない場面を、私は何度も見てきました。
パターン3:映っているものだけを読む
映っていないものを読まないと、借りた想像力は自分のものになりません。私が読んだのは雲の下でした。あなたは別の場所かもしれません。
パターン4:言葉が短いから、軽いと思う
一文で未来だと言い切るには、その前に長い絵が要ります。短さは軽さではなく、決めた人の短さです。
ドラッカーが「資源を割り当ててこその戦略計画」と呼んだもの
「生み出す」は、実行の言葉です。ドラッカーは『マネジメント』で、こう述べています。
最善の戦略計画さえ、仕事として具体化しなければ、よき意図にすぎない。成果は、組織のなかの主な人材を割り当てることによって決まる。戦略計画は、将来において成果を生むべき活動に資源を割り当てて、初めて意味をもつ。さもなければ、約束と希望はあっても戦略計画は存在しない。
(P・F・ドラッカー『経営の哲学』上田惇生編訳、ダイヤモンド社。『マネジメント』からの抜粋)
未来の絵は、描いただけでは「よき意図」です。人と資源を割り当てて、初めて計画になる。私はこれを、支える側への言葉として読みました。割り当てを毎日の数字で続けるのが、基幹の仕組みの仕事だからです。
支える側の、未来の絵
世界の最先端にいる人の投稿を見ると、私はまず絶望します。そして、その絶望から欲望が生まれます。
今回の欲望は、こうでした。支える側にも、未来の絵を持つ。
冒険が雲の上まで行くのなら、雲の下の仕組みは、それに耐えるものでなければならない。
映像の構造物は、誰かが浮かせています。私たちは、浮かせる側の想像力を持っているか。
私の順序を、一文にしておきます。
未来を遠くにおき、解像度を上げることでギャップがうまれ、それが欲望となり、いまが、うごきだす。
遠くに置くだけでは、ぼんやりして絶望にもなりません。解像度を上げるから、現在地との距離が見える。その距離が、ギャップです。
ギャップは、埋めるべき欠損ではなく、燃料です。では、その距離はどう測ればいいのか。次の記事で扱います。
そして問いは、シリーズの出発点に戻ります。なぜ、経営者は学びつづけなくてはいけないのか。支える側の絵は、誰も描いてくれないからです。
あなたの会社は、何を支えていますか。そして、支えている先の絵を、持っていますか。よければ、その話を聞かせてください。塾長としてではなく、同じ雲の下にいる同志として。
さあ、実行しよう。
明日、一つだけやってみる
自社が何を支えているかを一文で、次にその先の絵を一文で書いてみてください。二つ目が書けなければ、そこが現状維持の装置になっている場所です。
よくある質問
この映像は、マスク氏が作ったものですか?
いいえ。映像作家Aze Alter氏の作品を、マスク氏が引用して投稿したものです。映像は実在の施設や計画を撮影したものではありません。
宇宙の話は、小さな会社に関係ありますか?
規模ではなく、構図の話です。基幹システムでも、経理でも、総務でも、支える側には支える先の絵が要る、という点だけを借りています。
何から手をつければいいですか?
私の順序は、自社が「何を支えているか」を一文で書くことです。次に、その先の絵を一文で。二つ目が書けないなら、そこが、支える仕組みが現状維持の装置になっている場所です。
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- なぜ、経営者は学びつづけなくてはいけないのか
出典
- イーロン・マスク氏のX投稿(2026年9月20日・https://x.com/elonmusk/status/2101601873115681037)。引用は英文原典から筆者訳
- 引用元の映像はAze Alter氏の制作。本記事はXの公式埋め込みを用い、映像を転載していない
- P・F・ドラッカー『経営の哲学——いま何をなすべきか』上田惇生編訳、ダイヤモンド社(『マネジメント』からの抜粋)
- 「想像してください。宇宙活動を安全に支えられた上での、人類の自由な活動を」「組織は、今まで通りにはならず、すべてはプログラム化し、バーチャルになっていく」「未来を遠くにおき、解像度を上げることでギャップがうまれ、それが欲望となり、いまが、うごきだす」「さあ、実行しよう」は筆者の言葉であり、マスク氏の発言ではない
- 本記事は、マスク氏および関連企業の事業・主張への賛否を表明するものではない
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