月次の締めの前日。
経理の担当者が、保存検索の合計を見て手を止めます。
売上の数字が、Excelで集めた数字より大きい。
隣の席では営業が「この画面、前のシステムのほうが早かった」とこぼしています。
NetSuiteを入れて1〜2年の会社で、よく見る場面です。
NetSuiteの「使いにくさ」は、多くの場合、機能の限界ではありません。
業務と仕組みの間の、設計や体制のずれから生まれる状態です。
NetSuiteは世界220地域・44,000社以上で使われるクラウドERPで、機能の幅は広い製品です。
製品の基本はNetSuiteとは?で扱っています。
操作や設定の疑問は、公式のヘルプとSuiteAnswersで解けることが多い。
合わない合計も、条件を1つ直せば合うことがあります。
それでも「使いにくい」が続くなら、原因は画面の外にあります。
では、画面の外のどこを直せば、現場はNetSuiteに戻ってくるのか。
この記事で分かること
- バックアップ・共有・保存検索・ロール・更新の5つのトラブルの対処法
- 公式サポートで解けることと、解けないこと
- 「使いにくい」の根本原因4つと、それぞれの直し方
- 自社で直す範囲と、専門家と直す範囲の線引き
- 改善を進めるときによくある3つの失敗
言葉の整理:保存検索は、NetSuiteのデータを条件で抜き出し、集計する機能です。
ロールは、利用者が触れる機能とデータの範囲を決める、権限のまとまりです。
「使いにくい」の典型的な4つの場面
NetSuiteを運用する会社の悩みは、大きく4つに分かれます。
| 場面 | よく聞く声 | 背景にあることが多いもの |
|---|---|---|
| データの管理 | 「バックアップは取れているのか」「過去のデータの見方が分からない」 | 書き出しの方法と目的が決まっていない |
| 権限・共有 | 「人によって見えるデータがちぐはぐ」「権限を変えた影響が読めない」 | ロールの設計の方針がない |
| レポート | 「保存検索の数字が合わない」「ダッシュボードに必要な情報が出ない」 | 集計の軸と条件の組み合わせ |
| 業務との合い方 | 「Excelとの併用が当たり前」「機能はあるのに使われない」 | 導入時の業務の切り分けと、稼働後の定着 |
どれも、操作の難しさより、運用の設計と定着の段階の課題が背景にあります。
NetSuiteの大きなリリースは年2回あります(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
画面の名前や場所は変わることがあるため、以下は考え方を中心に書いています。
トラブル別の対処法
5つのトラブルと、最初に見るところを図にすると、次のとおりです。
データのバックアップに不安があるとき
NetSuiteはクラウドのサービスです。
データは、複数のデータセンターにわたって継続的にバックアップされています(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
そのうえで自社の手元に取り出すなら、Oracleのヘルプは次の方法を挙げています。
| 方法 | 中身 | 注意点 |
|---|---|---|
| Full CSV Export | 決まった種類のデータをまとめてCSVで出す | すべてのデータは出ない。管理者ロールのみ使える |
| 保存検索のCSV | 条件で抜き出した結果を出す | 必要なデータの形を自分で決められる |
| レポートのCSV | レポートの結果を出す | 集計済みの数字になる |
| SOAP Webサービス | プログラムでデータを取り出す | 開発が要る |
| SuiteAnalytics Connect | ODBCなどで外部のツールからつなぐ | ODBCでの接続は追加の有料サービス |
(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)
ODBCは、外部のツールからデータベースにつなぐための共通の仕組みです。
内部IDは、NetSuiteがレコードに振る番号を指します。
どの方法でも、内部IDを一緒に出せば、データの関係を保てます(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
Full CSV Exportは、ZIPの形で出力されます。
CSVをExcelで直接開くと、16桁を超える数字の精度が落ちます。
そのため、Excelの取り込みの手順で開くよう案内されています(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
方法を選ぶ前に、目的を決めてください。
- 監査への備え → 取引の明細と、変更の履歴を残せるか
- 障害への備え → どのデータを、どの頻度で持っておくか
- 他のシステムとの連携 → 決まった時刻に、決まった形で出せるか
データの種類(マスタ・取引・カスタム項目)と、持っておく期間の方針も先に決めます。
詳しくはNetSuiteのバックアップとデータの書き出しをご覧ください。
共有の設定がうまくいかないとき
NetSuiteのデータの共有は、主に2つの層で管理します。
- ロール:業務の役割ごとに、権限のまとまりを決める
- 個別の共有:保存検索・ダッシュボード・カスタムレコードごとの共有の設定
意図しない閲覧を防ぐ順番は、ロールが先で個別の共有は後です。
保存検索を他の人と共有する場合は、次の点を押さえます。
- 公開や対象者の設定は、管理者と、公開の権限を持つ人だけができる
- 公開した検索は全員が実行できるが、編集できるのは管理者と所有者だけ
- 対象者にも編集を許すには、「対象者に編集を許可」の設定をする
- 顧客・仕入先・多くのパートナーは、公開した検索でも使えない
(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)
つまずきやすいのは、子会社(サブシディアリ)ごとの権限の分け方です。
カスタムレコードの「ロールによるアクセス」の設定も、後から迷いやすい。
設計の段階で全体の方針を決めておけば、後の運用が楽になります。
保存検索やレポートが思いどおりに動かないとき
冒頭の場面の「合計が大きすぎる」は、ここに当たります。
原因は、多くの場合、集計の軸と条件の組み合わせです。
最初に見るのは、次の3つです。
- 期間の条件が「日付」か「会計期間」か
- 子会社や場所の絞り込みが効いているか
- カスタム項目の値が、想定どおりに入っているか
取引の検索では、メインラインの条件がよく効いてきます。
| メインラインの設定 | 結果の出方 |
|---|---|
| 真(はい) | 取引ごとに1行。明細は出ない |
| 偽(いいえ) | 明細ごとに1行 |
| 指定なし | 取引の見出しと明細が、別々の行で出る |
(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)
「指定なし」のまま金額を合計すると、見出しと明細の両方が数えられます。
数字が膨らむのは、このためです。
なお、種類を仕訳帳にした取引の検索では、メインラインの条件は効きません。
数字が合わないときは、いきなり複雑な式を組まないでください。
条件を1つずつ外し、1件ずつ元の取引と突き合わせるほうが近道です。
作り方の基本はNetSuiteの保存検索で扱っています。
ロール・権限の設定で詰まったとき
ロールの設計でつまずく場面は、主に3つです。
- 標準のロールをそのまま使い、不要な権限まで与えてしまう
- カスタムのロールを増やしすぎ、誰がどの権限を持つか分からなくなる
- 子会社の間の権限の分け方が複雑になる
見落としやすいのが、標準ロールの更新はカスタムのロールに反映されない点です。
新しい機能を有効にしても、その権限は既存のカスタムのロールに自動では足されません(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
機能を増やした後に「一部の人だけ画面が出ない」なら、まずここを疑います。
勧めたいのは、業務の役割ごとに最小限のカスタムロールを決める運用です。
そのうえで、定期的に棚卸しします。
ロールは、一度組むと変更の影響が広く出ます。
詳しくはNetSuiteのロールと権限で扱っています。
年2回の更新の後に動きがおかしいとき
NetSuiteは、大きなリリースが年2回あります。
利用者は、数か月かけて段階的に新しい版へ更新されます(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
更新の後に「帳票の形が変わった」「作り込みの処理が止まった」という相談もよく受けます。
その場合は、次の順番で当たります。
- 更新の案内(リリースノート)で、関係する変更がないかを見る
- 作り込みや連携の一覧から、影響を受けそうなものを洗い出す
- 次の更新からは、Release Previewの環境で、事前に主な業務を1本通す
作り込みや連携が多い会社ほど、3の事前の確認が効いてきます。
進め方はNetSuiteのバージョンアップをご覧ください。
公式のサポートで解けること・解けないこと
操作や機能の使い方は、まずOracleの公式の情報を当たります。
| 窓口 | 中身 |
|---|---|
| SuiteAnswers | すべての利用者とパートナーが使える、検索できるナレッジセンター。記事・ベストプラクティス・研修の動画 |
| ヘルプ | 機能ごとの公式の説明(主に英語) |
| ベーシックサポート | すべての契約に含まれる。重大な問題に24時間365日対応 |
| プレミアムサポート | フリーダイヤルでの対応、優先の対応、週末の対応、次のリリースの早めの案内など |
| Advanced Customer Support | NetSuite全体を最適化し、維持するための支援 |
(出典:NetSuite日本語サイト、2026年9月確認)
特定の機能の操作や仕様なら、ここで解決することが多くあります。
一方、業務全体の設計や運用の方針の相談をどこまで扱うかは、契約の種類で変わります。
自社の契約の範囲は、提供元やパートナーに聞いておきましょう。
サポートの種類と選び方は、NetSuiteの運用支援・保守・サポートのポイントで扱っています。
使いにくさの根本原因|4つのパターン
応急処置をしても「使いにくい」が続く。
そうなると、見るべきは画面ではなく、運用の設計と体制です。
4つの原因と直し方を図にすると、次のとおりです。
原因1:標準の機能と業務の対話が足りない
症状:「機能は多いが業務にしっくりこない」「Excelとの併用が当たり前」「画面のボタンが多く、何から触ればよいか分からない」
なぜ起きるか:導入のときのFit&Gap(業務と機能の合い方の確認)が浅かった。
「業務を仕組みに合わせるか、仕組みを業務に合わせるか」を切り分けないまま稼働した。
直し方:今の業務の棚卸しから始めます。
- 今の業務をECRS(なくす・まとめる・順番を変える・簡単にする)の観点で見直す
- 標準の機能で賄える範囲を決める
- 残った差だけを、段階的に作り込みで埋める
作り込みの考え方はNetSuiteのカスタマイズ、業務改善の進め方はNetSuiteで実現する業務改善で扱っています。
原因2:導入のときの記録と知見が引き継がれていない
症状:「なぜこの設定なのか説明できない」「導入の担当者が辞めて経緯が分からない」「作り込みの仕様書がない」
なぜ起きるか:導入の相手が、記録を十分に残さなかった。
あるいは、記録はあっても「なぜそう設計したか」「業務とどうつながるか」が書かれていなかった。
直し方:自社だけでは片づけにくい領域です。
「何が分かっていないか」を知ること自体に、専門の知識が要るからです。
- 第三者に、今の環境の設定の診断を頼む
- 設定の意図、作り込みが影響する範囲、業務とのつながりを文書にする
- 社内の担当者が、日常的に見られる形で残す
地味な作業ですが、属人化をなくす効果は大きい。
マニュアルの作り方はNetSuiteのマニュアルで扱っています。
原因3:今のパートナーの伴走の力が足りない
症状:「問い合わせの返事が遅い、あいまい」「改善の提案を受けたことがない」「更新の影響の確認を丸投げされる」「『仕様です』で打ち切られる」
なぜ起きるか:導入の段階の契約だけで関係が組まれ、稼働後の体制が薄い。
または、新しい導入を優先し、既存の利用者の運用に人を割かない姿勢がある。
直し方:まず、今のパートナーのサービスの範囲を契約書で見ます。
どこまでが含まれ、どこからが追加の費用か。
それが分かれば、打てる手は3つです(第5章の道A〜C)。
パートナーの変更は、重い決断に見えます。
それでも、回らない運用を放っておく損失のほうが、長い目では大きくなることもあります。
原因4:現場の教育と、稼働後のフォローがない
症状:
- 「研修の後、現場が触っていない機能が多い」
- 「新人に教える仕組みがない」
- 「『前のシステムのほうが良かった』の声が増えた」
- 「詳しい人がいないと回らない」
なぜ起きるか:本番の稼働日を、プロジェクトのゴールにした。
稼働で「完了」とし、定着の段階の予算と人を用意していなかった。
直し方:稼働後3〜6か月の定着の計画をつくります。
ここは、自社で始められる領域です。
- 月1回の運用の見直しの会を開き、現場の困りごとを集める
- よくある操作とつまずきを、社内のマニュアルや動画にする
- 新人・異動者向けの社内の教育の仕組みを整える
公開事例のキュリエ様では、定着を4つの手順で進めました。
- データ整理を最初に行う
- 段階的に導入する
- 研修・サポートを徹底する
- 操作はシンプルにし、使わない機能を盛らない
いま使っている会社でも、同じ4つで点検できます。
データは整っているか、一度に広げすぎていないか、聞ける先はあるか、使わない機能が画面に残っていないか。
4つめの「使わない機能」は、冒頭の「ボタンが多い」という声に直結します。
ただし、現場の困りごとには、設定の見直しが要るものも含まれます。
定期的に外の目で見てもらう仕組みを併せると、定着の速さと質が上がります。
4つの原因に共通すること
使いにくさの正体は、多くの場合、機能と業務の対話が途中で止まっていることです。
Fit&Gap・記録・パートナーとの関係・現場の定着。
どれも機能の仕様ではなく、人と組織の領域にあります。
原因が自社・NetSuite本体・パートナーのどこにあるかの切り分けは、NetSuiteが使いにくい・活用できていないと感じたらで詳しく扱っています。
これから入れる会社と、いま使っている会社
これからNetSuiteを導入する会社
稼働後に「使いにくい」とならないために、契約の前に次の3つを決めます。
- 稼働後の定着の期間と費用を、見積もりに入れてもらう
- 設定の意図と作り込みの仕様を、どの形で残すかを決める
- 年2回の更新の前の確認を、誰がどこまで行うかを決める
NetSuiteは、更新の前にRelease Previewの環境で新しい機能を試せます。
自社のデータと業務の流れで試せるのが利点です(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
この確認の担い手を契約の段階で決めておけば、稼働後の不安は減ります。
いま使っていて、見直しを考えている会社
使いにくさが続く会社は、次の3つの道から選びます。
| 道 | 中身 | 合う会社 |
|---|---|---|
| A. 今の体制のまま、自社で直す | マニュアル・見直しの会・棚卸しを自社で進める | 原因が主に原因4(定着)で、記録も残っている |
| B. 外の支援を部分的に足す | 設定の診断や、更新の前の確認だけを外に頼む | 原因2(記録)や、作り込みの影響が読めない |
| C. パートナーを変える | 運用の支援の相手を替え、全体を見直す | 原因3(伴走の力)が続き、話し合いでも変わらない |
どの道を選んでも、最初にやることは同じです。
どの機能をどれだけ使えているかの棚卸し。
結果があれば、Aで足りるのか、Bの支援が要るのか、Cまで考えるべきかが見えてきます。
棚卸しをせずに道を選ぶと、替えても同じ悩みが残りやすい。
Cを考える場合は、今のパートナーから設定の記録と作り込みの仕様を受け取れるかを、先に聞いてください。
引き継ぎの材料がそろうほど、新しい相手への移行の負担は小さくなります。
自社で直す範囲・専門家と直す範囲
改善は、自社で進める範囲と、専門家と進める範囲を分けると早く進みます。
| 状況 | 自社で | 専門家と |
|---|---|---|
| 機能・操作の使い方が分からない | ◯ | - |
| バックアップ・基本の書き出し | ◯ | △(監査や連携が絡むとき) |
| ロール・権限の見直し | △(小さな修正) | ◯(全体の方針を変えるとき) |
| 作り込みの影響の範囲の調査 | △(詳しい担当者がいるとき) | ◯(記録がないとき) |
| 業務の流れ全体の見直し | × | ◯ |
| 更新の前の影響の確認 | △(大きな変更がないとき) | ◯(作り込み・連携が多いとき) |
| 他のシステムとの連携の新設 | × | ◯ |
| 現場の定着・教育の仕組みづくり | ◯(始めるのは自社で) | ◯(設計と伴走で効果が増す) |
| 使いにくさの根本原因の究明 | △(自己診断で当たりをつける) | ◯(外の目で構造にする) |
凡例:◯=勧める、△=条件つきで可能、×=自社だけでは難しい。
線を引く目安は、「使い方の問題か運用の設計の問題か」です。
- 操作・設定の具体的な手順 → 自社で解決できる
- 業務全体・人の動き・複数のシステムの連携 → 専門家と一緒に
AIの活用を考える会社にとっても、土台はロールの設計です。
NetSuiteのAI Connector Serviceは、外部のAIをNetSuiteにつなぐ仕組みです。
利用者もAIも、ロールに許された範囲だけを見ます(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
ロールが整理されていなければ、AIに任せる範囲も決まりません。
改善を進めるときによくある3つの失敗
失敗1:「使いにくい」を理由に、作り直しから始める
起きること:画面や帳票を作り直したが、現場の不満は変わらなかった。
原因:原因が機能ではなく、定着や記録の不足だった。
避け方:作り込みの前に、第4章の4つの原因のどれに当たるかを見極めます。
原因4(定着)なら、作り込みより、マニュアルと見直しの会が先です。
作り込みは、一度入れると更新のたびに確認の手間が増えます。
直すべき原因がはっきりしてから、最小限の範囲で入れてください。
失敗2:パートナーを替えれば解決すると考える
起きること:パートナーを替えたが、同じ悩みが続いた。
原因:記録の不足や、社内の定着の体制の問題が、そのまま残っていた。
避け方:替える前に、今の環境の診断と記録の整理を行います。
新しい相手に引き継ぐ材料があれば、立ち上がりも早くなります。
変更の進め方はNetSuiteパートナーの選び方で扱っています。
失敗3:研修を1回やって終わりにする
起きること:研修の直後は使われたが、数か月で元のExcelの運用に戻った。
原因:新人や異動者に教える仕組みと、困りごとを集める場がなかった。
避け方:研修を「続く仕組み」にします。
月1回の見直しの会、社内のFAQ、担当者が替わるときの引き継ぎ手順をそろえます。
社内のFAQやマニュアルの下書きは、AIに任せると作る負担が小さくなります。
ベンチャーネットならこう見る
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、使いにくさの相談を2つの型で受けています。
NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、NetSuiteありきでは見ません。
引き継ぎ・立て直しは「記録」から始める
ベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入より、他社のあとの引き継ぎと立て直しが多くを占めます。
そこで最初に探すのは、スクリプトの中身ではありません。
設定の意図が、どこかに残っているかです。
残っていれば、原因1や原因4の手当てにすぐ進めます。
残っていなければ、診断と記録づくりが先です。
道C(パートナーを変える)を選んだ会社でも、この順番は変わりません。
最初の打ち合わせで伺うのは、次の3つです。
- どの機能をどれだけ使えていて、Excelに残っている業務は何か
- 困りごとは操作か、設計か
- 年2回の更新の前の確認を、誰が担っているか
定着の先を「守り→攻め→次へ」で描く
使いにくさが解けても、そこで終わりではありません。
稼働の後は、3つの段階で考えます。
- 守り|業務が回る:在庫・販売・会計を1つにし、日々の業務を安定させる
- 攻め|データで打つ:売れ筋・在庫の分析、営業作業の自動化、生成AIでの集計
- 次へ|経営が変わる:KPI、管理会計、上場に向けた内部統制
「使いにくい」が続く間は、まだ守りの段階にいます。
保存検索の合計が合わないうちは、データで打つ段階には進めません。
逆に言えば、この記事の対処法は、攻めに進むための足場づくりです。
伴走型の支援の考え方は、伴走型のNetSuite導入支援とは?で扱っています。
今日できること|1時間でつくる「使えている度の表」
各部門の担当者に聞いて、次の表を埋めてみてください。
| 業務 | NetSuiteで完結しているか | Excelや紙が残っているか | 困りごと |
|---|---|---|---|
| (例)受注の入力 | はい | いいえ | 特になし |
| (例)月次の売上の集計 | いいえ | Excelで集計 | 保存検索の数字が合わない |
| (例)新人の操作の習得 | - | 口頭で説明 | 教える人が1人しかいない |
「いいえ」と「困りごと」が並ぶ行を、第4章の4つの原因に当てはめます。
部門ごとに聞くと、同じ機能でも「使えている部門」と「使えていない部門」に分かれることがあります。
その差は、教え方や手順書の有無から生まれていることが多い。
原因4の手がかりです。
当てはまる原因が分かれば、第6章の表で、自社で直すか専門家と直すかが決まります。
よくある質問
Q1. NetSuiteのデータを手元にバックアップするには
Full CSV Export・保存検索のCSV・SuiteAnalytics Connectなどの方法があります。
Full CSV Exportはすべてのデータを出すものではなく、管理者ロールだけが使えます。
目的(監査・障害への備え・連携)とデータの種類で、方法を選びます。
Q2. ユーザーの間でデータを共有する設定は
ロールを先に整理し保存検索などの共有は後にします。
保存検索の公開の設定は、管理者と公開の権限を持つ人だけができます。
公開した検索は全員が実行できますが、編集できるのは管理者と所有者です。
Q3. 保存検索の合計が合いません
メインラインの条件を見直してください。
指定がないと、取引の見出しと明細が別々の行で出て、合計が膨らむことがあります。
取引ごとに1行で見たいなら、メインラインを「真」にします。
Q4. 新しい機能を有効にしたら、一部の人に画面が出ません
カスタムのロールに権限が自動で足されないためです。
新しい機能の権限は、既存のカスタムのロールには自動で入りません。
手作業でロールに権限を足します(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
Q5. NetSuiteが使いにくいと感じます。どう直せばよいですか
まず4つの根本原因のどれに当たるかを見極めます。
機能の問題だと思っていたことが、運用の体制の問題だったという例は少なくありません。
自社で直す範囲と専門家と直す範囲を分けて取り組むと、効率よく進みます。
Q6. 活用度を上げるために最初にやることは
今の使用状況の棚卸しです。
どの機能をどれだけ使えているか、Excelや手作業が残るのはどこかを見える形にします。
そのうえで、使われていない機能を改善の効果の順に並べ、効果の大きいものから始めます。
Q7. 自社で直すか専門家に相談するか迷います
使い方の問題か運用の設計の問題かで分けます。
操作や設定の場所が分からないだけなら、SuiteAnswersやヘルプ、社内の経験者で解けます。
業務全体の見直し・記録がない・作り込みの影響が読めない場合は、専門家と進めるほうが早く解けます。
ほかの疑問はNetSuite導入でよく受ける質問30問もご覧ください。
まとめ
- 「使いにくい」の多くは、機能ではなく運用の設計と体制の問題
- 操作や設定の疑問は、SuiteAnswersとヘルプでまず調べる
- 根本原因は、業務との対話・記録・パートナーの伴走・現場の定着の4つ
- 改善は、自社で直す範囲と専門家と直す範囲を分けてから始める
- 最初の一歩は、どの機能をどれだけ使えているかの棚卸し
締めの前日に合わない合計は、条件を1つ直せば合うかもしれません。
それでも現場がExcelに戻るなら、直す場所は画面の外にあります。
まずは各部門に聞いて、使えている度の表を1枚埋めてください。
もう少し詳しく知りたい方へ
今のパートナーの対応や、稼働後の運用に不安がある方は、導入の立て直し・引継ぎ・伴走保守のご相談をお受けしています。
自社で直すか相談するか迷っている段階でも、状況の整理からご一緒します。
