NetSuite導入前に知っておきたいベストプラクティス:失敗を防ぐ実践ポイント

NetSuiteの導入を決めた、あるいは検討している経営者の方から、こんな相談をよくいただきます。

「どう進めれば失敗しませんか?」

ERP(会社全体の仕事を一つのシステムで見える化する仕組み)の導入は、経営にとって大きなプロジェクトです。システムを入れれば自動的に解決するわけではありません。

この記事では、ベンチャーネットが多くの導入・保守プロジェクトに関わってきた経験から、成功プロジェクトに共通するベストプラクティスをお伝えします。

「良かれと思ってやっていたことが、実は失敗の原因だった」という落とし穴を事前に知ることが、成功への近道です。

目次

まず確認すべき:NetSuiteとの「相性」を見極める

導入を進める前に、最初に確認すべきことがあります。それは「NetSuiteが自社の課題と相性が良いか」です。

「モノの管理」か「ヒトの管理」かが鍵

多くの導入プロジェクトを概観すると、成功しやすいケースには共通点があります。

NetSuiteとマッチしやすいのは、次の2種類の課題を持つ企業です。

  • 「モノの管理」が課題の企業:販売管理・在庫管理を中心に使いたい
  • 「ヒトの管理」が課題の企業:プロジェクト管理・工数管理を中心に使いたい

逆に、「財務会計をまず完璧にしたい」というニーズがメインの場合は、慎重な検討が必要です。

財務会計はフェーズ2以降を推奨する理由

NetSuiteで日本の財務会計を行うには、いくつかの事前確認が必要です。

たとえば、NetSuiteは「売上原価対立法」という会計方式を採用しています。日本企業に多い「三分法」とは仕組みが異なるため、移行時の調整が必要になるケースがあります。

また、顧問税理士が使っている会計ソフトとの連携可否も、事前に確認が必要です。

ベンチャーネットでは、多くのプロジェクトで財務会計をフェーズ2以降に位置づけることを推奨しています。まずは「モノ」か「ヒト」の管理からスタートし、NetSuiteへの習熟度を上げてから財務に移行するほうが、結果的にスムーズです。

「合わない場合もある、と正直にお伝えする」。これがベンチャーネットの姿勢です。相性の見極めから一緒に考えます。

SuiteSuccessを正しく使いこなす

導入を進める際、次に重要なのがSuiteSuccessの活用です。

SuiteSuccessとは何か

SuiteSuccessとは、Oracleが20年以上のNetSuite導入経験から作り上げた、業種別の導入パッケージです。

導入に必要なテンプレート・設定・手順書があらかじめ用意されており、「ゼロから設計する」必要がありません。現在のNetSuite導入プロジェクトの大半は、SuiteSuccessをベースに進めています。

標準機能で運用する原則と、カスタマイズが必要な4領域

SuiteSuccessの構築の概念図(Oracle社より)

SuiteSuccessは、NetSuiteの豊富な導入経験を基に構築された導入のためのベストプラクティスであり、迅速でスムーズなNetSuiteに限らず、SaaSツールの導入では「標準機能での運用」を目指すことが基本です。

最初からカスタマイズを重ねると、定期的なバージョンアップの恩恵を受けられなくなります。カスタマイズが増えるほど、保守コストも膨らみます。

ただし、実際のプロジェクトではカスタマイズが必要になる領域があります。代表的なものは以下の4つです。

  • 各種帳票(請求書・納品書などのレイアウト変更)
  • 承認フロー関連(自社の決裁ルールへの対応)
  • ロット・シリアル番号での在庫管理
  • プロジェクト管理の詳細設定

これらは多くのプロジェクトで発生するため、要件整理の段階で予算と期間を確保しておくことが重要です。

「まずは標準機能から」のスモールスタート設計

成功しているプロジェクトに共通するのは、スモールスタートの発想です。

SuiteSuccessをベースに、まず必要最小限の範囲で本番稼働を迎える。そこから段階的に機能を追加していく。この順序が、プロジェクトの安定につながります。

やってはいけない:導入プロジェクトの落とし穴3選

ここでは、ベンチャーネットが導入現場で繰り返し見てきた3つの落とし穴をお伝えします。

これは「NetSuiteを売り込みたいから書く」のではありません。「失敗してほしくない」という思いから書きます。

落とし穴①:目的が曖昧なまま導入を進める

よくある現象

  • 「業務効率化のため」「DX推進のため」だけで導入を開始している
  • どの業務を何日短縮するか、数値目標がない
  • 経営層と現場で「何のために入れるのか」の認識がズレている

なぜ失敗するのか

目的に具体性がないと、本当に必要な機能を判断できません。

結果として、ベンダーの提案をそのまま受け入れ、使わない機能に予算を使ってしまいます。「何が成功なのか」が定義されていないため、導入後の評価もできません。

どう回避するか

「月次決算を5営業日短縮する」「在庫回転率を改善する」のように、測定可能な目標を最初に決めましょう。

ベンチャーネットでは、最初のヒアリングで「何を変えたいのか」「変わった後の状態をどう測るか」を一緒に言語化することから始めます。

落とし穴②:全機能を一度に導入しようとする

よくある現象

  • 「せっかく入れるなら全部使いたい」という方針でプロジェクトが走っている
  • 要件定義が膨らみ続け、スケジュールが延び続ける
  • カットオーバー直前になって現場が混乱する

なぜ失敗するのか

NetSuiteには多数の機能があります。すべてを一度に展開すると、現場の変化量が大きすぎて定着しません。

「新システムは使いにくい」「前のやり方のほうが早い」という声が上がり、Excelへ逆戻りするケースが起こります。

どう回避するか

販売管理・在庫管理など、自社の最重要課題に絞ってスタートしましょう。6か月〜1年単位で範囲を広げていくのが現実的です。

ベンチャーネットでは「まず回す、動かしながら磨く」という姿勢で、フェーズを分けた実行計画を最初に設計します。

「完璧より、まず回す」。これがベンチャーネットの考え方です。

落とし穴③:導入後のサポート体制を考えずに進める

よくある現象

  • 「本番稼働」がゴールになっており、その後の計画がない
  • 社内にNetSuiteを運用できる担当者が1名だけ(属人化リスク)
  • 法改正・組織変更のたびに設定変更が止まる

なぜ失敗するのか

ERPは導入して終わりではありません。業務変化・法改正・組織変更があるたびに調整が必要です。

担当者が1名だと、異動・退職でシステム運用が止まるリスクがあります。

どう回避するか

本番稼働後3〜6か月の「定着フェーズ」を、プロジェクト開始時点から計画に組み込みましょう。社内担当者は最低2名を推奨します。

ベンチャーネットでは、定着フェーズのサポートまでを含めた伴走体制を提案しています。「入れっぱなし」にしない支援で、現場に根付くまでサポートします。

成功事例から学ぶ:段階的導入の進め方

小売業での成功事例

実際に成功したプロジェクトを一つ紹介します。

スケジュール内容
2022年5月プロジェクトキックオフ
5〜8月要件整理・アカウントセットアップ・データインポート
9月〜2023年1月受入テスト・倉庫管理システムとの連携開発
2023年2月本番稼働開始
業種:小売業 / 対象範囲:販売管理・在庫管理

成功に共通する3つのポイント

ポイント詳細
目的の明確化「モノの管理(販売・在庫)」に絞り、目標を具体化していた
十分なリソース確保スケジュールと人員を余裕を持って設定し、変更に対応できた
フェーズ分割標準機能の設定セットアップ(フェーズ1)→ 開発・連携(フェーズ2)と分けた

この成功に共通するのは「目的を絞り、段階的に進める」という姿勢です。

ビッグバン導入 vs スモールスタート:どちらを選ぶか

比較軸ビッグバン導入スモールスタート
対象範囲全機能を一度に導入優先業務に絞ってスタート
導入期間長くなりがち短く設定しやすい
リスク高い(失敗時のダメージ大)低い(軌道修正しやすい)
現場負担一時的に非常に大きい段階的で管理しやすい
向いている企業十分なリソースを確保できる企業中堅・中小企業、ERP初導入の企業

ベンチャーネットが推奨するのはスモールスタートです。「まず回せる状態を作り、そこから育てていく」ことが、現場定着の近道です。

よくある質問(FAQ)

NetSuite導入にはどれくらいの期間がかかりますか?

導入期間は、対象範囲と自社の準備状況によって大きく異なります。SuiteSuccessを活用すれば、最小構成であれば数か月での本番稼働が可能です。

ただし「全機能を一度に」を目指すと、期間は大幅に延びます。ベンチャーネットでは、まず販売管理や在庫管理に範囲を絞り、段階的に拡張していく進め方を推奨しています。

標準機能だけでは対応できない業務がある場合、どうすればいいですか?

帳票カスタマイズ・承認フロー・在庫のロット管理などは、多くのプロジェクトでカスタマイズが発生します。

重要なのは「最初からカスタマイズありき」で進めないことです。標準機能で運用できる範囲を先に確定させ、どうしても必要な箇所だけカスタマイズする順序を守ることが、コスト肥大化を防ぐ鉄則です。

財務会計もNetSuiteで一本化できますか?

技術的には可能ですが、日本の会計要件には特有のハードルがあります。ベンチャーネットでは多くのプロジェクトで、財務会計をフェーズ2以降に位置づけることを推奨しています。

まずは「モノの管理(販売・在庫)」または「ヒトの管理(プロジェクト)」からスタートし、習熟度を上げてから財務会計へ移行するほうがスムーズです。詳しくは「NetSuiteで財務会計を行う前に確認すべきこと」もご参照ください。

導入後のサポートはどこに頼めばいいですか?

NetSuiteはパートナー認定制度を採用しており、導入後の保守・運用支援も認定パートナーに依頼できます。また、プロジェクト途中であってもパートナーの変更は可能です。

ベンチャーネットでは、本番稼働後の「定着フェーズ」まで一貫して伴走する体制を整えています。「導入して終わり」ではなく、現場に根付くまでサポートします。

「完璧より、まず回す」という考え方

NetSuite導入を成功させるためのポイントを整理します。

  1. 相性を見極める:「モノ」か「ヒト」の管理から始める。財務会計はフェーズ2以降を推奨
  2. SuiteSuccessを活用する:標準機能を最大限使い、カスタマイズは最小限に
  3. 落とし穴を避ける:目的の曖昧さ・ビッグバン導入・サポート体制の軽視に注意
  4. 段階的に進める:まず回せる状態を作り、そこから育てていく

ベンチャーネットは、NetSuite導入を「売って終わり」とは考えていません。お客様との対等な関係の中で、失敗を予防し、現場に定着するまで伴走する。それがベンチャーネットの役割だと考えています。

「うちはどこから始めればいい?」と感じた方は、お気軽にご相談ください。一緒に、御社にとって最適な進め方を考えさせてください。

ベンチャーネットのNetSuite導入支援

実際の支援事例については、お客様の声もご覧ください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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