6業務のうち5つが「同等」。
Odoo側の対応表で、この領域はそう判定されています。
数だけ見れば、NetSuiteとOdooの差はほとんどないように見えます。
ところが、会社によっては、この領域で製品が決まります。
プロジェクト・現場業務の6業務とは、プロジェクト・工数・問い合わせ管理・現場作業・予約・シフトのことです。
人事やマーケティングと違い、この領域は製品選びの決め手になりえます。
ただし、決め手になるのは自社が「時間」を売っている場合に限られます。
では、時間を売っているかどうかは、どう見分けるのか。
道具は1つです。時間を「予定・実績・請求」の3つの状態に分けます。
会計まわりは会計・請求・経費、販売まわりは販売・CRM・店舗、在庫まわりは在庫・購買・製造で扱いました。
人事まわりは人事・勤怠・給与、マーケティングまわりはマーケ・Web・ECにあります。
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、あわせてOdooの導入支援も行っています。
どちらか一方に誘導する立場ではありません。
📌 この記事で分かること
- プロジェクト・工数・問い合わせ・現場作業・予約・シフトの6業務が、①②③のどれになるか
- 時間の3つの状態(予定・実績・請求)とERPが担う範囲
- この領域が製品選びの決め手になる会社、ならない会社
- 問い合わせ管理と現場作業を、どこまでERPに載せるか
- 予約とシフトを、外に置いてよい理由
この領域で見ること|時間がお金に変わる流れ
判定は3つ
判定の言葉は、親ハブの記事と同じ定義です。
①標準で足りるとは、NetSuiteの標準機能に同じ業務範囲があり、追加の開発が要らない状態のことです。
②拡張で補うとは、標準にはないものの、項目・レコード・ワークフローを組み合わせて作れる状態を指します。
③連携するは、相手側の商流や法制度への対応が価値の源泉であり、専用のサービスを残してつなぐ状態です。
45アプリ全体の対応表はOdooのアプリはNetSuiteで何に当たるかにあります。
ここまでの5本と、問いが変わる
| 記事 | 読者の問い |
|---|---|
| 会計・請求・経費 | 残すか、寄せるか(③になる理由) |
| 販売・CRM・店舗 | 作るか、あきらめるか(②になる条件) |
| 在庫・購買・製造 | どこまでの深さが要るか |
| 人事・勤怠・給与 | そもそも比べる必要があるか |
| マーケ・Web・EC | ERPに、どこまで寄せるか |
| 本記事 | 自社は時間を売っているか |
人事とマーケティングの記事では、「この領域だけで製品は決まらない」と書きました。
この領域は違います。
会社によっては、ここで製品が決まります。
その境目が、時間を売っているかどうかです。
6業務の判定表
親ハブの対応表と、Odoo側の対応表を並べます。
| 業務(Odooのアプリ) | NetSuiteでの実現 | NetSuite側の判定 | Odoo側の関係 |
|---|---|---|---|
| プロジェクト(Project) | プロジェクト管理の標準機能。工数・請求・採算まで扱う機能は追加ライセンス | ① | 同等 |
| 工数(Timesheets) | 工数入力の標準機能。請求・原価につながる | ① | 同等 |
| 問い合わせ管理(Helpdesk) | 問い合わせ(ケース)管理が標準。SLAや複数の窓口の本格運用は連携 | ①/③ | 同等 |
| 現場作業(Field Service) | フィールドサービスの機能の🌏日本での提供状況は要確認 | ①/③ | — |
| 予約(Appointments) | 標準にはない。簡易な予約受付は拡張で作れる | ②/③ | 同等 |
| シフト(Planning) | 店舗シフトの機能は標準にない | ③ | 同等 |
SLA(サービスレベル合意)とは、問い合わせに何時間以内に応えるかなど、対応の水準を取り決めたものです。
表には、両者の性格の違いがはっきり出ています。
- Odoo側:6業務のうち5つが「同等」。どれも単機能のアプリとして持っている
- NetSuite側:プロジェクトと工数は①。予約とシフトは②や③
親ハブの記事は、NetSuiteの標準が厚い領域の1つにプロジェクトを、Odooが軽い単機能を持つ領域の1つに予約を挙げています。
この領域の中に、両方の性格が同居しているわけです。
🌏 フィールドサービスの提供状況は、契約内容と時期によって変わります。導入時に最新の公式情報でご確認ください。機能の概要はNetSuiteのフィールドサービス管理で扱っています。
時間の3つの状態|予定・実績・請求
この領域の6業務は、すべて人の時間を扱います。
そして時間には、3つの状態があります。
| 状態 | 何を表すか | 主な業務 | 置き場所の基本 |
|---|---|---|---|
| 予定の時間 | 誰が、いつ、何をする予定か | 予約、シフト、作業の割り当て | 外でもよい |
| 実績の時間 | 誰が、何に、何時間かけたか | 工数、作業の報告、問い合わせへの対応 | ERP |
| 請求の時間 | その時間が、いくらの売上・原価になったか | 請求、採算、原価 | ERPの中核 |
予定の時間は、外でもよい
予約やシフトは、変更が多く、現場で頻繁に触るものです。
画面の使いやすさや、スマートフォンでの操作が効いてきます。
そして予定の段階では、まだお金は動いていません。
予定が変わっても、会計の数字は変わらないのです。
だから、予定の時間を専用のサービスに置いても、困ることは少なくなります。
親ハブの判定で予約とシフトが②や③になっているのは、この性質のためです。
実績の時間は、ERPに置く
実際にかかった時間は、原価の材料です。
誰が、どの案件に、何時間かけたか。
これが分かって初めて、案件ごとの原価が計算できます。
工数の取り方そのものは、工数管理を「現場の作業」で終わらせないで扱っています。
請求の時間は、ERPの中核
時間を売る会社では、実績の時間がそのまま請求の金額になります。
作業した時間に単価を掛けて請求する。
あるいは、進み具合に応じて売上を計上する。
どちらでも、時間と会計が直結します。
NetSuiteのプロジェクト管理で採算まで見られることは、NetSuiteのプロジェクト管理機能とはで解説しています。
3つの状態で、製品の差が出る場所が分かる
| 状態 | Odoo | NetSuite |
|---|---|---|
| 予定の時間 | 予約・シフトを単機能のアプリとして持つ | 標準にないものが多い。作るか、つなぐ |
| 実績の時間 | 工数のアプリを持つ | 工数は標準。原価につながる |
| 請求の時間 | 同じデータベースの上で請求につながる | 採算・請求まで扱う機能は追加ライセンス。会計と一体 |
予定の時間はOdooが軽く請求の時間はNetSuiteが厚い。
どちらが自社にとって重いかで、この領域の答えが変わります。
この領域が、製品の決め手になる会社
見分ける問いは1つ
自社の売上の大きな部分が人の時間から生まれているか。
冒頭の問いへの答えは、この1問です。
答えごとの分かれ方を図にすると、次のとおりです。
たとえば、次のような会社が「はい」になります。
- 受託開発、システムの導入、コンサルティング
- 広告の制作、設計、調査など、案件ごとに人が動く仕事
- 機器の据え付けや保守など、技術者が現場に出向く仕事
こうした会社では、時間が在庫であり、原価でもあります。
公開中のSuiteProjects Proの記事も、こうした会社を対象にした仕組みとして解説しています。
時間を売る会社では、請求の時間の深さが効く
時間を売る会社で重いのは、請求の時間です。
案件が同時に多く動く。
複数の会社や通貨をまたぐ。
進み具合に応じて売上を計上する必要がある。
こうした要件があるなら、請求の時間を会計と一体で扱える深さが、製品の決め手になります。
NetSuiteの標準の機能と、より大規模な案件管理の仕組みの違いは、SuiteProjects Proの記事にまとめています。
時間を売る会社でも、Odooが合う場合
一方で、次のような場合は、Odooの軽さが生きます。
- 案件の数が少なく、単価と時間の掛け算で請求が済む
- 予約やシフトなど、予定の時間の管理が業務の中心
- 1つの会社・1つの通貨で完結している
予定の時間が中心で、請求の時間が単純な会社です。
予約・シフト・工数・請求を1つの仕組みで軽く回せることが、そのまま利点になります。
時間を売っていない会社では、決め手にならない
モノを売る会社では、この領域は脇役です。
工数は、製造原価の一部として取ります。
問い合わせ管理や予約は、販売を支える仕組みです。
製品は、在庫・購買・製造や会計・請求・経費の領域で決まります。
問い合わせ管理と現場作業は、どこまで載せるか
6業務のうち、問い合わせ管理と現場作業は①/③です。
ERPの中で始められるものの、本格的に運用すると専用のサービスが要ります。
問い合わせ管理
| 使い方 | 置き場所 | 理由 |
|---|---|---|
| 顧客ごとの問い合わせの記録 | ERP(標準) | 取引や請求と同じ顧客に紐づけられる |
| 対応の期限(SLA)の管理 | 専用のサービス | 本格的な運用は連携が前提(親ハブの判定) |
| 電話・メール・チャットなど複数の窓口 | 専用のサービス | 同上 |
分かれ目は、問い合わせを「売上につながる記録」として見るか、「対応の品質」として見るかです。
記録として顧客に紐づけたいなら、ERPで足ります。
対応の品質を細かく管理したいなら、専用のサービスとつなぎます。
現場作業
技術者が顧客のもとへ出向く仕事では、現場作業の管理が、実績の時間と部品の在庫の両方に関わります。
- 誰がいつ行くか → 予定の時間
- 何時間かかったか、何の部品を使ったか → 実績の時間と在庫
- 保守の契約に含まれるか、別に請求するか → 請求の時間
3つの状態をすべて通る業務です。
だから、会計や在庫と切り離すと、請求漏れや部品の数のずれが起きやすくなります。
予約とシフトは、外に置いてよい
予約とシフトは、予定の時間です。
親ハブでも、予約は②/③、シフトは③と判定しています。
外に置くときに決める2つのこと
| # | 決めること | 決まっていないと |
|---|---|---|
| 1 | 予定が実績になったとき何をERPに渡すか | 予約した作業の時間が、工数として記録されない |
| 2 | 顧客をどちらで作るか | 予約した人と、請求先の顧客が別人になる |
渡すのは、予定が実績に変わった後だけで足ります。
予約の変更やキャンセルのたびに、ERPへ渡す必要はありません。
外に置いたときの流れは、次のとおりです。
簡易な予約受付は、作ることもできる
親ハブでは、簡易な予約受付は拡張で作れるとしています。
取引先からの作業依頼を受け付け、そのまま案件や作業に紐づけたいなら、作る選択肢があります。
作るかどうかは、販売・CRM・店舗の記事の「②になる条件」に当てはめて決めます。
AIとの親和性
時間の3つの状態は、AIの使いやすさとも関わります。
| 状態 | AIとの親和性 | 理由 |
|---|---|---|
| 予定の時間 | 専用のサービス側で高い | 日程の調整や割り当ての候補出しは、専用のサービスの機能に任せやすい |
| 実績の時間 | 高い | 工数と案件がERPで紐づいていれば、作業の傾向の要約をAIに任せやすい |
| 請求の時間 | 高い | 案件ごとの採算が1か所で見えれば、採算が悪化しそうな案件の洗い出しに使える |
どの状態でも、判断そのものは人が行います。
AIに任せるのは、材料の整理と下書きです。
つまずく3つのパターン
パターン1:予定の時間の使いやすさだけで、製品を決める
現象
予約やシフトの画面の使いやすさを比べて、製品を決める。
運用を始めてから、案件ごとの採算が見えないことに気づく。
構造的な原因
予定の時間と請求の時間を同じ重さで見ているためです。
時間を売る会社で重いのは、請求の時間のほうです。
回避策
第4章の問い「売上の大きな部分が、人の時間から生まれているか」に先に答えてください。
「はい」なら、請求の時間の深さから比べます。
パターン2:勤怠の時間と、案件の工数を1つにまとめる
現象
出退勤の時間から、案件の工数を作ろうとする。
案件ごとの内訳が取れず、採算が見えないまま運用が始まる。
構造的な原因
目的の違う2つの時間を同じものとして扱っているためです。
勤怠は労務管理のため、工数は原価と採算のためのものです。
回避策
勤怠と工数は、別に設計してください。
この区別は、人事・勤怠・給与の記事の第5章でも扱っています。
パターン3:現場作業を、会計や在庫から切り離して入れる
現象
現場作業の管理だけを、専用の仕組みで始める。
使った部品が在庫に反映されず、保守の契約外の作業も請求から漏れる。
構造的な原因
現場作業が3つの状態をすべて通る業務だと捉えていないためです。
公開中のフィールドサービス管理の記事でも、切り離した導入を避けるよう書いています。
回避策
現場作業は、実績の時間・部品の在庫・請求の3つにつながる前提で設計します。
専用の仕組みを使う場合も、この3つをERPに戻す流れを先に決めてください。
ベンチャーネットならこう見る|時間の流れを見える化してから選ぶ
型1:予定→実績→請求の流れを、先に描く
ベンチャーネットは、製品の比較より先に業務の見える化から入ります。
この領域で描くのは、時間の流れです。
- 見える化:予約・割り当てから、工数の報告、請求までを、いまの仕組みと担当者の名前で書き出す
- 整理整頓:二重に入力している時間、請求に届かず消えている実績を洗い出す
- Fit&Gap:残った流れを、NetSuiteかOdooの標準機能と照らし合わせる
描いてみると、請求の時間がどれだけ重いかが見えます。
重ければ、第4章の「はい」の会社です。
型2:予定は「残す」、実績と請求は「標準に合わせる」
図の3つの選択は、時間の3つの状態にそのまま当てはまります。
予定の時間は、専用のサービスを残してつなぐ。
実績と請求の時間は、ERPの標準に合わせる。
簡易な予約受付のように、あいだをつなぐ仕組みだけを開発します。
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
この領域で引き受けるのは、時間を売っているかの見極め、時間の流れの設計、連携と足りない仕組みの開発の3つです。
時間を売る会社でも、請求の時間が単純なら、Odooのほうが合うとお伝えすることもあります。
今日できること|1つの問いと、6業務の置き場所
最初に、1つの問いに答えてください。
自社の売上の大きな部分が人の時間から生まれているか。
「はい」なら、この領域は製品選びの決め手になります。
請求の時間(採算・請求・売上の計上)に求める深さを、先に書き出してください。
次に、6業務を3つの状態に置いてみます。
- 予定の時間:予約・シフト・作業の割り当て → 外でもよい
- 実績の時間:工数・作業の報告・問い合わせへの対応 → ERP
- 請求の時間:請求・採算・原価 → ERPの中核
45アプリ全体で同じ棚卸しをするなら、OdooのアプリはNetSuiteで何に当たるかの対応表を使ってください。
よくある質問
Q1. NetSuiteの標準で、プロジェクトの採算は見られますか
プロジェクト管理と工数は標準です。
親ハブの対応表では、工数・請求・採算まで扱う機能は追加ライセンスとしています。
採算の見え方は、NetSuiteのプロジェクト管理機能とはで解説しています。
Q2. SuiteProjects Proは、どんな会社に必要ですか
案件が多く人の割り当てや採算の管理が複雑な会社です。
標準の機能で足りる会社も多くあります。
違いはSuiteProjects Proの記事にまとめています。
Q3. 問い合わせ管理は、ERPの中で足りますか
顧客ごとの記録として使うなら標準で足ります。
対応の期限の管理や、電話・メール・チャットなど複数の窓口をまとめる本格的な運用は、専用のサービスとつなぐ形が前提です(第5章)。
Q4. 予約やシフトは、ERPで管理しないと困りますか
多くの場合困りません。
予約やシフトは予定の時間で、まだお金は動いていません。
専用のサービスに置き、予定が実績になった後に、工数としてERPへ渡せば足ります(第6章)。
Q5. この領域で、NetSuiteとOdooのどちらかを選ぶことはありますか
時間を売っている会社ではあります。
請求の時間(採算・請求・売上の計上)の深さが要るならNetSuite、予定の時間が中心で請求が単純ならOdooが合いやすくなります。
時間を売っていない会社では、この領域は決め手になりません(第4章)。
まとめ:時間を売っているなら、請求の時間で選ぶ
- この領域の6業務は、すべて人の時間を扱う
- 時間には3つの状態がある。予定は外でもよい/実績はERP/請求はERPの中核
- 予定の時間はOdooが軽く請求の時間はNetSuiteが厚い
- 自社が時間を売っているなら、この領域は製品選びの決め手になる
- 問い合わせ管理と現場作業は、ERPで始められるが、本格運用では専用のサービスとつなぐ
- 予約とシフトは外に置き、予定が実績になった後だけERPに渡す
時間を売る会社にとって、時間は在庫であり、原価でもあります。
予定の使いやすさではなく、請求の時間をどこまで深く扱えるかで選んでください。
まずは、売上の大きな部分が人の時間から生まれているかに、自社の数字で答えるところからです。
もう少し詳しく知りたい方へ
案件の数、請求の方法、現場に出る人の数を教えていただければ、この領域が製品の決め手になるかどうかから一緒に見ていけます。
