ERP(NetSuite)を”使う側”から”導入する側”へ|現場ユーザーがコンサルタントになるキャリア

月末の締めの日。

経理の担当者が、ERPの画面で仕訳を見直しながら、ふと思う。

「この仕組みを、入れる側に回ってみたい」。

ERPの導入コンサルタントとは、お客様の業務を聞き取り、ERPに合わせた業務の形を設計して、導入と定着までを支える仕事です。

現場でERPを使い込んできた経験は、この仕事の大きな土台になります。

ただし、ERPを「使いこなす」力と、お客様に合わせて「導入する」力は別の技術です。

では、使ってきた経験は、導入のどの工程で効き、どこで足りなくなるのか。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットの進め方に沿って、答えていきます。

目次

この記事で分かること

  • 「使う側」から「導入する側」へ、というキャリアの中身
  • 導入の4つの工程で、使ってきた経験が効く場所と、新しく要る力
  • 転身の5ステップと、よくある失敗3つ
  • 向いている人・向いていない人
  • ベンチャーネットの働き方と選考

「使う側」から「導入する側」へ

ERP(Enterprise Resource Planning)は、会計・販売・在庫などの基幹業務を、1つのシステムでまとめて管理する仕組みです。

NetSuiteは、Oracleが提供するクラウド型のERPです。

世界220地域・44,000社以上で使われています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。

事業会社でERPを使う人は、たくさんいます。

経理で仕訳を切る人、情シスで運用を支える人、営業や在庫の現場で入力する人。

その「使う側」から、ERPを企業に入れる「導入する側」へ回るのが、このキャリアです。

導入コンサルタントの仕事は、システムの操作ではありません。

  • お客様の業務を聞き取り、課題を整理する
  • あるべき業務の流れを設計し、NetSuiteに落とし込む
  • 導入の後も、経営や業務の変化に合わせて伴走する

ベンチャーネットは、この仕事を「システム導入ではなく、経営への伴走」と考えています。

導入して終わりではなく、お客様の経営が変わるところまで関わります。

仕事の全体像は、NetSuiteコンサルタントとは?で扱っています。

なぜ「業務が分かる人」が強いのか

製品の操作は、学べば身につきます。

業務の実感は、そうはいきません。

導入の現場でベンチャーネットが感じているのは、この「業務が分かる人」の価値です。

ERPを使ってきた人は、次のものを最初から持っています。

  • 業務の実感:受注から出荷・請求・入金までの流れを、机上ではなく体で分かっている
  • 現場の勘所:月次の締めや、承認の流れが詰まりやすい場所が分かる
  • データの手触り:どの入力が漏れやすく、どこでミスが起きるかに気づける

NetSuiteの導入では、Fit to Standardという考え方を重視します。

業務を、パッケージの標準の機能に合わせて設計する進め方のことです。

標準に寄せるには、「その業務が何のためにあるのか」を分かっている必要があります。

使ってきた人は、そこから始められます。

この関係を図にすると、次のとおりです。

使ってきた人が最初から持つもの:業務の実感・現場の勘所・データの手触り ERPを使ってきた人は、業務の実感、現場の勘所、データの手触りを最初から持っている。業務が何のためにあるかが分かるので、標準に寄せるFit to Standardの出発点になる。 使ってきた人が最初から持つもの 業務の実感 受注から入金までの流れを体で分かる 現場の勘所 締めや承認が詰まりやすい場所が分かる データの手触り 漏れやすい入力、ミスの起きる所に気づく Fit to Standardの出発点になる 業務が何のためにあるかから始められる
使ってきた人が最初から持つもの

経理でも、情シスでも、営業や在庫の現場でも構いません。

派遣先でNetSuiteに触れてきた方も同じです。

出身ごとの活かし方は、次の記事で扱っています。

ベンチャーネットならこう見る|4つの工程で、経験が効く場所

「使えるから、導入もできるはず」。

操作に自信がある人ほど、そう考えがちです。

実際には、導入の工程ごとに、経験が効く場所と足りない場所が分かれます。

まず、2つの力の違いを並べておきます。

観点使いこなす力(ユーザー)導入する力(コンサル)
立ち位置決まった業務を回す業務そのものを設計し直す
向き合う相手自社の1つの運用業種も規模も違う複数の会社・経営層
判断の起点マニュアル・既存のルールあるべき姿を描いて決める
失敗の影響の範囲自分の作業プロジェクト全体・お客様の経営

どちらが上ということではありません。

使いこなす力は、確かな土台です。

では、その土台は導入のどこで効くのか。

ベンチャーネットの進め方に当てはめると、はっきりします。

型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

ベンチャーネットの導入は、次の順番で進めます。

  1. 業務の見える化:いまの業務の流れを、現場に聞いて描く
  2. 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
  3. Fit&Gap:残った業務を、NetSuiteの標準機能と照らし合わせる
  4. 3つの選択:合わない業務を、標準に合わせる・開発する・残すのどれかに決める
ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択 業務の見える化、整理整頓、NetSuite標準機能とのFit&Gap、そして標準に合わせる・開発する・残すの3択で決める。 ベンチャーネットの進め方業務の見える化いまの業務フローを現場に聞いて描く整理整頓やめる・まとめる・そろえる業務を決めるFit&GapNetSuiteの標準機能と照らし合わせる3つの選択標準に合わせる/開発する/残す製品が決まっていても、見える化から始める
ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

型2:工程ごとの「効く経験」と「新しく要る力」

この4つの工程に、使ってきた経験を当てはめると、次のようになります。

工程やること使ってきた経験が効くところ新しく要る力
業務の見える化いまの業務の流れを描く受注から入金までの流れを体で知っている他社の業務を、先入観なく聞く力
整理整頓やめる・まとめる・そろえる締めや承認が詰まる場所を知っている部門をまたいで合意を取る力
Fit&Gap標準機能と照らし合わせる標準の画面と動きを、使って知っている合う・合わないを要件として文書にする力
3つの選択標準に合わせる/開発する/残すどの入力が漏れやすいかを知っている経営層に理由を示し、決めてもらう力

要件定義は、システムで実現することを、お客様と合意して文書にする工程です。

合意形成は、立場の違う人たちの意見をまとめ、決めることです。

表の左2列は、使ってきた人の土台です。

右端の列が、導入する側で積む力になります。

つまり、使いこなす力が要らなくなるわけではありません。

その上に、聞く・まとめる・決めてもらう力を重ねるのが、導入する側の仕事です。

ベンチャーネットでは、お客様の要件を聞くのは営業ではなく、導入コンサルタントです。

聞いた人が設計まで受け持つので、右端の力は案件の中で毎回使います。

標準に合わせるか作り込むかの判断は、NetSuite導入のFit&Gap分析で扱っています。

ユーザーからコンサルへ|転身の5ステップ

ステップやること目安
1. 経験を棚卸しする関わった業務と、その深さを書き出す会計・販売・在庫のどこに強いかが見える
2. 仕事を知る操作ではなく、聞く・描く・合意を取る仕事だと知る第1章と第3章が入口
3. 差を埋める準備をする要件定義や業務設計の基本に触れる最初から全部できる必要はない
4. 応募先を選ぶユーザーの経験を評価し、育成の仕組みがある会社を選ぶ「未経験歓迎」の言葉より、育て方の中身を見る
5. 入社後に仕上げる先輩と同じ案件で、設計と合意形成を学ぶ育成の中身を事前に聞いておく

ベンチャーネットの育成の中身は、NetSuiteコンサルタントの育成カリキュラムで公開しています。

最初から全部を目指さなくて構いません。

使ってきた土台の上に、足りない力を後から重ねる。

この順番が、現実的な近道です。

向いている人、向いていない人

向いている人

  • 「なぜこの業務があるのか」を考えながら、ERPを使ってきた
  • 部門をまたぐ相談を、受けることが多かった
  • 自分の会社以外の業務のやり方にも、興味がある
  • 自分で予定を組み、資料で伝えることに抵抗がない

向いていない可能性がある人

  • 決まった業務を正確に回すことにやりがいを感じる人:導入は、毎回前提が変わる仕事です
  • 技術を深く追いたい人:業務と人の比重が高い仕事です
  • 対面や指示を前提に働きたい人:ベンチャーネットの働き方はフルリモートが基本です

いまの会社でERPの担当として深く関わる道もあります。

設定や開発の技術を深めたいなら、開発の職種が合います。

まず一緒に働いてから決めたい人には、紹介予定派遣・業務委託という入口もあります。

いま社内でERPの入れ替えに関わっている人へ

読者の中には、いま自社のERPの入れ替えの真っただ中にいる人もいるでしょう。

ベンダーとの打ち合わせに呼ばれ、要件の一覧を渡されている人です。

その場合は、転職を急ぐ前にできることがあります。

入れ替えや見直しが進む職場は、それ自体が導入する側の力を鍛える場になります。

第3章の表の右端の力を、いまの職場で試せます。

  • 要件をまとめる場に、自分から入る
  • ベンダーがなぜその設計を勧めるのかを、質問して聞く
  • 決まったことと、その理由を記録に残す

試せることを確認リストにすると、次のとおりです。

いまの職場で試せること(確認リスト) ERPの入れ替えが進む職場では、要件をまとめる場に自分から入る、ベンダーに設計を勧める理由を聞く、決まったことと理由を記録に残す、の3つを試せる。 いまの職場で試せること 導入する側の力を、入れ替えの現場で鍛える 要件をまとめる場に、自分から入る ベンダーに、その設計を勧める理由を聞く 決まったことと、その理由を記録に残す 転職するかどうかに関わらず、経験は残る
いまの職場で試せること(確認リスト)

この経験は、転職するかどうかに関わらず残ります。

社内で推進した経験の活かし方は、NetSuite導入があなたのキャリアを上げる理由でも扱っています。

転身でよくある失敗3つ

失敗1:「自社のやり方が正解」と思い込む

起きること:前職の運用を他社にも当てはめ、お客様の「なぜ」を聞く前に答えを出してしまう。

原因:自社で最適だったやり方が、業種も規模も違う会社では合わないことを見落とした。

避け方:自分の経験は「ひとつの正解例」と考え、まず相手の業務を聞きます。

第3章の「見える化」の工程が、その練習の場です。

失敗2:「使えるから、導入できる」と思う

起きること:操作に自信があるぶん、要件定義や合意形成を軽く見て、プロジェクトが進まなくなる。

原因:部門の間の利害を整理し、経営層と合意を取る仕事が、操作とは別の技術だと知らなかった。

避け方:第3章の表の右端を、先に知っておきます。

ベンチャーネットでは、先輩と同じ案件に入りながら、この力を段階的に学びます。

失敗3:フルリモートと自走を甘く見る

起きること:チャット中心のやりとりや、自分で仕事を組み立てる働き方に戸惑う。

原因:通勤がないことだけを見て、自分で動く前提を見落とした。

避け方:自分がリモートと自走の環境に合うかを、先に考えておきます。

ベンチャーネットは、面接の前から働き方の実際をお伝えしています。

経験は武器になります。

ただ、それを「正解」として抱え込むと、かえって壁になります。

ベンチャーネットの働き方と選考

フルリモート、プライム中心

勤務は、フルリモート(国内在住者)が基本です。

案件はプライム(元請け)が中心で、経営層と直接話しながら進めます。

自律して動ける人には自由度が高い一方、対面や指示を前提とする方には向きにくい面もあります。

適性の「現実的なライン」

ERPをまったく触ったことのない、他業種・完全未経験からのフルリモートは、現実には狭き門です。

導入の実務は、短期間で身につくものではないからです。

土台になりやすいのは、次のどちらかです。

  • ERP・NetSuiteを実務で使い込んできた経験(職種・雇用形態は問わない)
  • IT・システムの領域の実務経験

門戸を閉じるつもりはありません。

期待値を正直に共有することも、対等な関係だと考えています。

選考は、書類だけで決めない

選考では、デモ課題で実際に手を動かしていただく場を設けています。

「できあがった人」を選ぶためではありません。

今の力と伸びしろを、お互いに見極め合うためです。

紹介予定派遣や業務委託を入口に、一緒に働きながら見極める道もあります。

詳しくは紹介予定派遣からNetSuite ERPコンサルタントになるをご覧ください。

年収や選考の流れは、NetSuiteコンサルタント求人にまとめています。

今日できること|使ってきた業務を1枚に書き出す

1時間あれば、第4章のステップ1ができます。

次の表を埋めてみてください。

業務関わった深さ「なぜこの手順か」を説明できるか
(例)受注から出荷毎日入力。承認の流れも把握できる。与信の確認のため
(例)月次の締め一部の仕訳を担当一部だけ

3列目が「できる」の業務が、あなたの武器の場所です。

「一部だけ」「できない」の業務が、次に学ぶ場所になります。

よくある質問

Q1. ユーザーの経験しかありませんが、コンサルになれますか

なれます。

ERPを使ってきた経験は、導入コンサルの土台になります。

設計する力を積む必要はありますが、その差は入社後の育成で埋められます。

Q2. 「使える」と「導入できる」は、本当に違うのですか

違います。

使うのは決まった業務を回すこと、導入は業務を設計し直すことです。

他社の業務を聞き、合意を取り、経営層に決めてもらう力が要ります(第3章)。

Q3. 他業種や派遣からでも応募できますか

できます。

職種や雇用形態は問いません。

派遣先でNetSuiteに触れてきた経験も、土台になります。

Q4. フルリモートですか。完全未経験でも大丈夫ですか

フルリモートが基本です。

他業種・完全未経験からのフルリモートは、現実には狭き門です。

ERPの実務やITの経験があると、土台になりやすくなります。

Q5. もっと勉強してから応募したほうがよいですか

まず話を聞くことをおすすめします。

導入の力は、実際の案件でしか身につかない部分があります。

今の力で足りるかどうかは、面談で一緒に見られます。

Q6. 選考では、どんなことを見られますか

デモ課題で実際の仕事ぶりを見ます。

お互いに見極め合うための場です。

今の力と伸びしろを見て、合うかどうかを対等に判断します。

まとめ|使ってきた経験を、次のステージへ

  • ERPを使い込んできた経験は、導入コンサルの大きな土台になる
  • 導入は「見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択」の順。経験が効くのは各工程の左側
  • 新しく要るのは、他社の業務を聞く・合意を取る・要件にする・決めてもらう力
  • 転身は、棚卸し→仕事を知る→準備→応募先選び→入社後の育成、の順で進める
  • よくある失敗は、自社のやり方の押しつけ、操作への過信、リモートと自走の見落とし

冒頭の経理の担当者が明日できることは、第9章の表を1行埋めることです。

「なぜこの手順か」を説明できた業務が、導入する側で最初に効く場所になります。

もう少し詳しく知りたい方へ

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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