案件が終わって1か月。
経理の集計が上がって、ようやくその案件の粗利が分かる。
人の時間を売る会社では、よくある光景です。
SuiteProjects Proとは、Oracle NetSuiteが提供する、プロジェクト型ビジネス向けのPSA製品です。
以前はOpenAirという名前でした。
NetSuite本体とは別のアプリケーションで、コネクタでNetSuiteとつなぎます。
ただ、多くの中堅・中小企業は、NetSuite本体に足す組込の「SuiteProjects」で足ります。
Proの価値が大きくなるのは、規模が大きく、人の配置の最適化が本業の会社です。
では、組込で足りる会社とProが要る会社は、どこで分かれるのか。
分かれ目は機能の数ではなく、良くしたい数字にあります。
この記事で分かること
- SuiteProjects Pro(旧OpenAir)とは何か、何ができるか
- NetSuite本体とのつながり方と、連携の設計
- 組込のSuiteProjectsとの違い、費用の考え方
- 組込で足りる会社と、Proが要る会社の見分け方
- 導入でつまずく、よくある3つの失敗
SuiteProjects Pro(旧OpenAir)とは
PSAとは
PSA(Professional Services Automation)は、人の時間を売る仕事のための仕組みです。
コンサルティング、IT・システム開発、制作、広告、エンジニアリングなどの会社で使われます。
PSAは、次の業務を1つの流れでつなぎます。
- 案件の計画と日程
- 人の割り当て
- 働いた時間と経費の記録
- 案件ごとの会計と採算
- 請求と売上の計上
目指すのは、「誰が、どの案件に、いくらの原価で関わり、いくら利益が出たか」が見える状態です。
OpenAirからSuiteProjects Proへ
SuiteProjects Proは、もともとOpenAirという名前の製品でした。
名称の変更は、SuiteWorld ’24で発表されました。
2025年1月25日から、切り替えが始まっています(出典:NetSuiteコミュニティの公式告知、2026年9月確認)。
製品がなくなったのではありません。名前が変わったのです。
日本語の公式ページでは、2026年9月時点でも旧名の「NetSuite OpenAir」で案内されています。
複雑なプロジェクトを実施する、大規模なサービス組織向けという説明です(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
なぜ案件の採算が経営を左右するのか
人の時間が原価のビジネスでは、稼働率と案件ごとの粗利が経営の生命線です。
- 人手不足と人件費の上昇:限られた人をどの案件に充てるかが、利益を左右する
- 案件の複雑化:並行する案件が増え、全体の採算が見えにくい
- 判断の速さ:月末まで採算が分からないと、打ち手が遅れる
ここが見えないと、忙しいのに利益が残らない状態に陥りがちです。
SuiteProjects Proの主な機能
| 機能 | できること |
|---|---|
| リソース管理 | スキル・経験・働き方の希望・休暇の予定をもとに人を割り当てる。ドラッグ&ドロップでの割り当て、拠点をまたぐグローバルリソースプール |
| プロジェクト会計 | 固定費・変動費の予算管理、複数通貨の案件会計、進み具合やマイルストーンに連動した収益の認識 |
| 時間・経費の記録 | スマートフォンで時間と経費を入力・提出し、タイムシートを承認する |
| 請求 | 請求のルールを細かく設定し、請求書の作成を自動にする |
| AIでの見守り | AIで案件を見守り、状況の要約を作る |
リソース管理・時間と経費・請求・AIの記載は、公式の製品ページにもとづきます(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
タイムシートは、働いた時間を案件ごとに記録する表です。
AIの見守りは、リスクの兆しや人の偏りに早く気づく助けになります。
ただし、元になるのは現場が入れた時間と経費です。
入力が遅れれば、AIの要約も遅れます。
NetSuite本体とのつながり方
多くの方がつまずくのが、ここです。
SuiteProjects Proは、NetSuite本体とは別のアプリケーションです。
Oracleのヘルプでは、PSAとERPの間で情報を流す連携として説明されています(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。
| 向き | 主なデータ |
|---|---|
| NetSuite → SuiteProjects Pro | 社員、顧客、受注(販売注文)、サービスの品目 |
| SuiteProjects Pro → NetSuite | 収益認識の取引、請求書、入金 |
連携は、必要なときに実行する、日程を決めて実行する、リアルタイムで実行する、から選べます。
NetSuiteの画面の中からSuiteProjects Proの情報を見る機能もあります(出典:同上)。
つまり、導入の中には「連携の範囲と頻度を設計する作業」が必ず入ります。
どのデータを、どの向きで、どの頻度で流すか。
これを決めずに進めると、二重入力や同期のずれが残ります。
連携の設計図で決めることを図にすると、次のとおりです。
組込のSuiteProjectsとの違い
NetSuiteには、本体に組み込むプロジェクト管理「SuiteProjects」もあります。
Oracleの公式ページでは、SuiteProjectsとSuiteProjects Proの2つのPSAが案内されています。
どちらもアドオン・モジュールとして提供されます(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
| 観点 | SuiteProjects(組込) | SuiteProjects Pro(旧OpenAir) |
|---|---|---|
| 位置づけ | NetSuite本体に組込(同じデータベース) | 別のアプリケーション(コネクタで連携) |
| 想定の規模 | 中小〜中堅、比較的シンプルな案件管理 | 中堅〜大規模、本格的なプロジェクト体制 |
| リソース管理 | 工数・タスク・ガントなどの基本 | スキル・希望・休暇にもとづく割り当て、グローバルリソースプール |
| プロジェクト会計 | NetSuiteの会計と一体 | 複数通貨・収益認識を含む高度な案件会計 |
| 導入の手軽さ | 同じ基盤で完結し、比較的容易 | 別の実装とコネクタの設定が要る |
| AIとの親和性 | 高。案件と会計が同じデータにあり、横断して点検しやすい | 高。案件の見守りと要約のAIを持つ。会計との突き合わせは連携の設計次第 |
組込が劣っているわけではありません。
要件の規模と複雑さで、合う方が変わります。
組込の機能は、NetSuiteのプロジェクト管理機能とはで扱っています。
費用の考え方
NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上で使われているクラウドERPです(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
ライセンスはミニマム構成で月額20万円〜が出発点で、モジュール・ユーザー数・オプションで変わります。
SuiteProjectsやProはアドオンのため、その分が上乗せされ、数百万円規模になることもあります。
導入費用は、さらに幅が出ます。
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットの支援事例で見てみます。
購買・販売・プロジェクト管理を30名程度で入れた事例は、期間1年・2,000万円程度でした。
一方で、3名程度・購買・販売だけの事例は150万円程度、100名程度で外部連携を含む事例は2億円程度です。
差を生んだのは、機能範囲・開発(特に外部システム連携)・社内の体制・ユーザー数の4つでした。
4事例の詳細は、NetSuiteの料金で扱っています。
Proを選べば、別のアプリケーションとの連携の設計と設定が加わります。
4つの要因でいえば、「開発(外部システム連携)」に効いてくる選び方です。
判断の物差し|Proが要る会社・組込で足りる会社
冒頭の問いへの答えが、この図です。
まず良くしたい数字を1つ決めます。
その数字が組込のSuiteProjectsで出るなら、組込から始めます。
出ないときだけ、Proで出るかを見ます。
Proで出るなら、連携の設計図を作ってから費用を比べます。
SuiteProjects Proが向いている会社
- プロジェクト型のビジネスが事業の中心
- 並行する案件が多く、人の割り当てが複雑
- 海外の拠点や複数の通貨をまたいで案件を持っている
- 稼働率と案件の採算を、細かく最適化したい
まず組込のSuiteProjectsで足りることが多い会社
- プロジェクトの管理が業務の一部で、規模が比較的小さい
- まずは会計と一体で、採算を大づかみに見たい
- 人の配置の細かい最適化は、今は要らない
NetSuite以外が合う会社、いまは入れない会社
- 国内のプロジェクト型の業務が中心:国産のPSAやERPも候補(Reforma PSAとは、ZACとは、MA-EYESとは)
- 小さく始めて社内で設定を触れる:Odooも候補(Odooとは)
- 工数の入力のルールがまだない:いまは入れない。PSAは入力された時間の上に成り立つため、先にルールを決める
これから選ぶ会社と、OpenAirを使っている会社
これからNetSuiteとPSAを選ぶ会社
最初から組込とProのどちらかに決める必要はありません。
第5章の図の順に考えれば足ります。
規模や複雑さが増したときに、Proへ広げる道もあります。
ただしProは別のアプリケーションです。
将来の規模の見込みは、最初の打ち合わせで話しておくと判断が早くなります。
すでにOpenAir(SuiteProjects Pro)を使っている会社
名前が変わっただけで、引き続き使えます。
名称変更の告知では、IT部門への周知と、社内のIT設定の点検が求められていました。
迷惑メールの振り分け、ファイアウォール、許可するドメインの設定です(出典:NetSuiteコミュニティの公式告知、2026年9月確認)。
旧名のままの設定が残っていないか、見ておいてください。
名前の変更は、運用を見直す機会でもあります。
- NetSuiteとの連携の範囲と頻度が、いまの業務に合っているか
- 二重入力や、同期のずれが起きていないか
- Proの機能を使い切れているか。組込で足りる規模になっていないか
点検する項目をまとめると、次のとおりです。
運用に悩みがあれば、NetSuiteが使いにくい・活用できていないと感じたらもご覧ください。
よくある3つの失敗
失敗1:「Proありき」で選び、投資が重すぎる
起きること:組込で足りる規模なのに、最初からProを選ぶ。別製品の費用と、連携の運用の負担を抱える。
原因:「高度化したい」という思いや他社の例が先に立ち、組込を検討しなかった。
避け方:まず組込で足りるかを見ます。
足りない数字があるときに、Proを検討します。
失敗2:別製品であることを軽く見て、連携を後回しにする
起きること:会計や請求のデータが自動でつながる前提で進め、後から連携の設計が発生する。二重入力や同期のずれが起きる。
原因:SuiteProjects Proを、NetSuiteの一機能と思い込んでいた。
避け方:導入の前に、第3章の表を出発点にして連携の設計図を作ります。
失敗3:改善したい指標を決めないまま入れる
起きること:「リソース管理を見える化したい」で止まり、高機能なのに使われない。
原因:稼働率か、案件の粗利か、回収の早さか。良くしたい数字が決まっていなかった。
避け方:導入の前に「どの数字をどこまで良くするか」を決めます。
目的が決まれば、要る機能も自然に絞れます。
ベンチャーネットならこう見る
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
PSAの相談で最初に聞くのは、製品名ではなく「良くしたい数字」です。
組込で出る数字→Proで出る数字→連携の設計図
ベンチャーネットは、第5章の図の順番で判断します。
組込で出る数字を先に見るのは、Proを選ぶと連携の設計と設定が加わるからです。
Proを選ぶ場合も、連携の設計図ができるまでは費用を比べません。
ベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入より、他システムとの連携や、他社のあとの引き継ぎが多い。
Proとの連携の設計も、既存システムとの連携と同じく導入の中で担います。
PM兼コンサルタントが一貫して担当する
PSAの要件は、案件の区切り方や工数の入れ方のように、現場の細かい話です。
営業が聞いて設計者に伝える形だと、ずれが生まれます。
ベンチャーネットでは、PM兼コンサルタントが提案からカットオーバー(本番稼働への切り替え)まで一貫して担当します。
週次の定例と課題管理表で、決めたことを文書に残します。
最初に確かめる問いは3つです。
- 良くしたい数字は、稼働率・案件の粗利・回収の早さのどれか
- 並行する案件と、割り当てる人の数はどれくらいか
- 国産のPSAやOdooに比べて、NetSuiteに合わない条件はないか
今日できること|良くしたい数字を1つ決める
1時間で、次の表を埋めてみてください。
| 数字 | いまの値 | 分かるまでの日数 | 1年後の目標 |
|---|---|---|---|
| (例)案件の粗利率 | 不明 | 案件の終了から約1か月 | 毎月、進行中に見る |
「いまの値」が不明な数字が、最初に見える化すべきものです。
その数字を組込で出せるかどうかが、Proを検討するかの分かれ目になります。
よくある質問
Q1. OpenAirはなくなったのですか
なくなっていません。名前がSuiteProjects Proに変わりました。
SuiteWorld ’24で発表され、2025年1月25日から切り替えが始まっています。
これまでOpenAirを使ってきた会社も、引き続き使えます(第1章)。
Q2. 組込のSuiteProjectsと何が違うのですか
Proは別のアプリケーションでより高度なPSAです。
組込はNetSuite本体と同じデータベースで動き、比較的シンプルな案件管理に向きます。
Proは、人の配置の最適化や複数通貨の案件会計などに対応します(第4章)。
Q3. NetSuiteとはどうつながるのですか
コネクタでデータを連携します。
社員・顧客・受注はNetSuiteから取り込み、請求書・入金などはNetSuiteへ書き出します。
連携の範囲と頻度の設計が、導入の成否を分けます(第3章)。
Q4. 日本語で使えますか
日本語での利用はアカウントの担当に確かめてください。
公式ヘルプでは、個人の設定に画面の言語を選ぶ項目があります(出典:SuiteProjects Pro公式ヘルプ、2026年9月確認)。
ただし、選べる言語の一覧は今回の確認では見つかりませんでした。
画面とスマートフォンのアプリの日本語対応、使う機能の日本での提供範囲は、契約の前に聞いてください。
Q5. 費用はどれくらいかかりますか
アドオン・モジュールのためNetSuiteの費用に上乗せになります。
NetSuiteのライセンスはミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
Proの費用は構成とユーザー数で変わるため、見積もりで確かめます。
導入費用は、ベンチャーネットの支援事例で、購買・販売・プロジェクト管理・30名程度の2,000万円程度などの例があります(4-1)。
Q6. 最初は組込で始め、後からProに移れますか
規模や複雑さが増したときにProへ広げる道があります。
ただし、Proは別のアプリケーションのため、連携の設計と移行の作業が要ります。
最初に将来の規模の見込みを話しておくと、判断しやすくなります。
まとめ
- SuiteProjects Proは、OpenAirの新しい名前。製品は続いている
- 強みは、スキルにもとづく人の割り当て・高度な案件会計・AIでの見守り
- NetSuite本体とは別のアプリケーション。連携の設計が導入に必ず入る
- 組込のSuiteProjectsで足りる会社も多い。まず組込で出る数字を見る
- 国産のPSAやOdooが合う会社、いまは入れない会社もある
案件が終わって1か月後に粗利を知るのか、進行中に知るのか。
その差を埋める数字を1つ決めることが、組込かProかを選ぶ最初の一歩です。
もう少し詳しく知りたい方へ
「うちは組込で足りるのか、Proが要るのか」。
良くしたい数字と案件の規模を伺ったうえで、一緒に見極めます。

コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 業務ごとの機能は、たとえばNetSuite SuiteProjects Pro(プロジェクト管理)などの解説記事も参考になります。 […]