「Business Oneのままでいいのか。NetSuiteに替えるべきか」
B1を使う会社からも、これからERPを選ぶ会社からも、よく出る問いです。
SAP Business Oneとは、SAPが小規模企業と中堅の下位層向けに提供しているERPです。
NetSuiteは、Oracleが提供するクラウド専用のERPです。
ERPは、会計・販売・在庫・購買などの基幹業務を、一つのシステムで管理する仕組みを指します。
どちらが上か、という答えはありません。
分かれ目は、次の3つです。
- オンプレミスで持ちたい、1ユーザーから小さく始めたいなら、Business One
- 会計から販売・在庫・ECまでクラウドで一つにしたい、海外の子会社を持つなら、NetSuite
- SAPの大きな製品群へ広げる見込みがあるなら、SAPのGROW with SAPも候補
SAP Business ByDesignを使う会社は、今後の提供方針と保守の期限をSAPに聞くことが先です。
では、いまB1を使っている会社は、何を合図に「替える」を考えればよいのか。
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、SAPの導入は行っていません。
NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応する立場から、SAPの長所もそのまま書きます。
SAP全般(S/4HANAなど)とNetSuiteの比較は、SAPとNetSuiteを徹底比較をご覧ください。
この記事で分かること
- Business One・ByDesign・NetSuiteの基本と、得意な領域の違い
- AIとの親和性を含む、3製品の比較表
- どの製品が合う会社かを決める3つの問い
- Business One・ByDesignを使っている会社の、残す・広げる・替えるの考え方
- アドオンを仕分ける2つの型と、移行でよく起きる失敗
SAP Business One・ByDesignとは
SAPは、ドイツに本社を置く世界的なソフトウェア企業です。
中堅・中小企業向けには、Business OneとBusiness ByDesignの2製品を提供してきました。
会社と製品の全体像は、SAPとはで扱っています。
SAP Business One
SAP Business One(以下、B1)は、2002年に提供が始まった、小さな会社向けのERPです。
20年以上の歴史があります。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 対象 | 小規模企業と中堅の下位層。1ユーザーから始められる |
| 提供の形 | オンプレミスとクラウドの両方を選べる |
| 利用 | 83,000社以上・170か国以上 |
| 言語・国別の対応 | 28言語・50の国別の対応 |
| 主な機能 | 会計・販売・購買・在庫・顧客管理(CRM) |
利用・言語などの数値は、SAPの発表によります(出典:SAP News Center、2025年12月、2026年9月確認)。
オンプレミスは、自社にサーバーを置いてシステムを動かす形です。
業種別の追加の機能(アドオン)が多く、日本の製造業の商習慣に合わせた拡張もあります。
「オンプレミスも選べる柔軟さ」と「導入の費用を抑えやすいこと」が、B1の伝統的な強みです。
SAP Business ByDesign
SAP Business ByDesign(以下、ByDesign)は、2007年に提供が始まったクラウド型のERPです。
中堅企業や、大企業の海外子会社向けに作られました。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 対象 | 中堅企業、大企業の子会社 |
| 提供の形 | クラウド(SaaS)のみ |
| 主な機能 | 財務会計・販売・人事・プロジェクト管理 |
| 今後の扱い | 提供方針と保守の期限は、SAPまたは販売パートナーに確認 |
SaaSは、ソフトをインターネット経由のサービスとして使う形です。
本社にSAP S/4HANA、海外子会社にByDesignという「2層ERP」の構成も見られました。
プロジェクト型の事業や人事の管理に強みがあり、コンサルティング業界での採用が多くありました。
NetSuiteとは
NetSuiteは、クラウド専用に作られたERPです。
1998年に米国で設立され、2016年にOracleに買収されました。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 対象 | 中堅・中小企業 |
| 提供の形 | クラウド(SaaS)。全顧客が同じ基盤を共有する形 |
| 利用 | 世界220地域・44,000社以上 |
| 言語・通貨 | 27言語・190通貨 |
| 主な機能 | 会計・販売・在庫・購買・生産・CRM・EC・分析 |
利用の数値は、Oracle NetSuite公式サイトによります(2026年9月時点)。
NetSuiteは自らを「#1 AI Cloud ERP」と位置づけています。
全顧客が同じ基盤を使うため、バージョンアップは自動で届きます。
販売・在庫・購買・会計が一つにつながり、部門ごとに別のシステムを使う状態から抜け出せます。
SuiteSuccessは、業種ごとの標準の設定と手順をまとめた、NetSuiteの導入の型です(NetSuite SuiteSuccessとは)。
OneWorldは、複数の会社・通貨・国の制度をまとめて扱う機能です(NetSuiteのグローバル展開機能)。
基本はNetSuiteとはで解説しています。
3製品の基本の比較
| 比較の軸 | SAP Business One | SAP Business ByDesign | NetSuite |
|---|---|---|---|
| 提供の形 | オンプレミス+クラウド | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) |
| 主な対象 | 小規模企業と中堅の下位層 | 中堅企業、大企業の子会社 | 中堅・中小企業 |
| 海外対応 | 170か国以上・28言語 | 海外子会社での利用の実績 | 220地域・27言語・190通貨 |
| 利用 | 83,000社以上 | ― | 44,000社以上 |
| 提供開始 | 2002年 | 2007年 | 1998年(設立) |
| 強みの出やすい業務 | 会計・販売・在庫・購買 | プロジェクト・人事 | 会計から販売・在庫・ECまでの一気通貫 |
3製品とも、世界中で導入の実績があるERPです。
違いは、主な対象の規模と、提供の形に出ます。
得意な領域の比較
機能の有無で並べると、3製品とも多くの業務を「できる」と書けてしまいます。
そこで、それぞれが得意とされてきた領域で書き分けます。
| 業務の領域 | SAP Business One | SAP Business ByDesign | NetSuite |
|---|---|---|---|
| 会計・販売・在庫・購買 | 中核の機能。業種別のアドオンが多い | 標準で持つ | 中核の機能。一つの基盤でつながる |
| 生産 | 標準の機能に加え、アドオンで補うことが多い | 標準で持つ | 標準で持つ。複雑な生産は要件の確認が要る |
| プロジェクト・人事 | アドオンで補う | 得意な領域 | プロジェクトは標準で持つ。人事は日本の要件の確認が要る |
| EC・顧客管理 | 外部の仕組みとつなぐことが多い | 外部の仕組みとつなぐことが多い | 同じ基盤の上で持てる |
| 海外の子会社 | 各拠点に入れて、つなぐ形が多い | 2層ERPの子会社側として使われてきた | OneWorldで複数の会社をまとめて持つ |
どの製品も、得意でない領域はアドオンや別の製品とつないで補えます。
比べるときは「できるか」ではなく、「標準で済む範囲がどこまでか」を見ます。
見極め方は、Fit&Gap分析で解説しています。
それぞれの長所と、選ぶ前に聞いておきたい点
| 製品 | 長所 | 選ぶ前に聞いておきたい点 |
|---|---|---|
| SAP Business One | オンプレミスも選べる。業種別のアドオンが多い。1ユーザーから小さく始められる | 会社の数や拠点が増えたとき、どこまで一つで持てるか。アドオンの保守を誰が担うか |
| SAP Business ByDesign | クラウドで、プロジェクト・人事までまとめて持てる | 今後の提供方針と保守の期限 |
| NetSuite | 会計から販売・在庫・ECまで一つの基盤。複数の会社・通貨をまとめて持てる | 日本の商習慣に合わせた帳票や、複雑な生産の要件が標準で足りるか。費用の構成 |
B1の「小さく始められる」ことは、小さな会社にとって大きな利点です。
NetSuiteの「一つの基盤」は、会社の数や拠点が増えるほど効いてきます。
どちらが自社に効くかは、3年後の姿で変わります。
2つの製品の長所が効く場面を図にすると、次のとおりです。
AIとの親和性
ERPの役割は、「記録する」から「データをAIで使う」へ広がっています。
| AIの取り入れ方 | SAP Business One | SAP Business ByDesign | NetSuite |
|---|---|---|---|
| 組込型のAI | 予測などの機能を段階的に広げてきた | 機械学習・RPAの一部 | 組込型のAI機能を持つ |
| 外部のAIとのつなぎ方 | SAP BTPを通じて作る | SAP BTPを通じて作る | AI Connector Service(MCP対応) |
| データのまとまり | アドオンや外部の仕組みに散らばりやすい | 既存ユーザーの範囲 | 一つの基盤に集まりやすい |
SAP BTP(Business Technology Platform)は、SAPの製品とつなぐ仕組みを作るための開発・連携の基盤です。
MCPは、生成AIと業務システムをつなぐための共通の約束事です。
NetSuiteは、ChatGPTやClaudeなど、自社で使うAIをつなぐ形を取っています。
詳しくはNetSuite AI Connector Service(MCP)とはで解説しています。
ただし、NetSuiteの一部の新しいAI機能(NetSuite Nextなど)は、現時点で日本では提供されていません。
AIの機能の差より先に効くのは、データが一つの場所にそろっているかです。
判断の物差し|3つの問いで候補を絞る
「どれが優れているか」ではなく、「どんな条件の会社に合うか」で見ます。
これからERPを選ぶ会社は、次の3つの問いに答えるところから始めてください。
- オンプレミスが要るか:要るならB1が候補に残る
- 3年後に会社の数や海外の拠点が増えるか:増えるなら、複数の会社・通貨をまとめる力を重く見る
- SAPの大きな製品群へ広げる見込みがあるか:あるならGROW with SAPも比べる
3つに答えると、合いやすい製品は次のように分かれます。
| 合いやすい製品 | 合いやすい会社の条件 |
|---|---|
| SAP Business One | 小規模〜中堅の下位層。オンプレミスで持ちたい。業種に合うアドオンと、付き合いのあるB1のパートナーがいる |
| SAPのGROW with SAP | SAPの製品で、クラウドの標準の型に合わせて始めたい。将来、大きなSAPの製品群へ広げる見込みがある |
| NetSuite | 中堅・中小企業で、会計から販売・在庫・ECまでクラウドで一つにしたい。海外子会社を持つ、これから持つ |
| ByDesign | 既存ユーザーは第7章の考え方で判断する。新しく選ぶなら、提供方針をSAPに聞く |
GROW with SAPは、SAPの説明では中堅中小企業を含む新規の顧客向けです。
S/4HANA Cloud Public Editionを基盤に、必要な機能から始めて広げる形です(出典:SAP公式、2026年9月確認)。
3製品のどれでもない方が合う場合
- 国産ERP:日本の商習慣に合わせた帳票や、業界に特化した機能を最優先したい
- Odoo:費用を抑え、必要なアプリから小さく始めたい(OdooとNetSuiteを徹底比較)
- AIスクラッチ開発:業務が独特で、パッケージに合わせる利点が小さい(AIでスクラッチ開発とERP、どちらを選ぶべきか)
- いまは入れない:会計ソフトと表計算で回っていて、困りごとがはっきりしない
ERP全般の選び方はERP・クラウドERPを徹底比較、製造業の方は製造業向けERP15選も参考にしてください。
これから選ぶ会社と、いまB1・ByDesignを使っている会社
これからERPを選ぶ会社|デモは自社の取引で
第6章の3つの問いで、B1・NetSuite・GROW・国産ERPから2〜3つに絞ります。
そのうえで、自社の実際の取引を1件、画面の上で最後まで流してもらいます。
| 場面 | 見るところ |
|---|---|
| 受注から請求まで | 入力の回数と、途中で表計算を使う場面がないか |
| 月の締め | 締めの作業の順番と、経営の数字が出るまでの手順 |
| 在庫の確認 | 拠点ごと・品目ごとの在庫が、その場で見えるか |
| 帳票 | 自社で使う請求書や納品書の形が出せるか |
| 権限 | 部門ごとに見せる範囲を分けられるか |
デモは、売り手が得意な場面から見せがちです。
自社の側から場面を指定すると、製品の差が見えてきます。
いまBusiness Oneを使っている会社
B1は新規販売も続いている製品です。
「期限に追われて替える」状況ではありません。
| 道 | 中身 | 合いやすい会社 |
|---|---|---|
| 残す | B1を使い続け、周りの仕組みを整える | 規模が大きく変わらず、今の運用で困っていない |
| SAPの中で広げる | GROW with SAPなど、SAPのクラウドの製品へ移る | SAPの製品で統一したい。パートナーの体制がある |
| 替える | NetSuiteなど、別の製品へ移る | 海外の子会社が増えた。アドオンと外部の仕組みが増え、データが散らばった |
替えるかどうかの合図になりやすいのは、次のような変化です。
- 会社の数や海外の拠点が増え、連結の作業が表計算に頼っている
- アドオンが増え、バージョンアップのたびに確認の手間がかかる
- ECや顧客管理が別の仕組みにあり、数字をつなぐ作業が毎月発生している
いまByDesignを使っている会社
まず、今後の提供方針と保守の期限を、SAPまたは販売パートナーに聞きます。
期限が分かれば、使い続ける期間と、次の製品を決める時期を逆算できます。
慌てて替えるより、期限から計画を立てるほうが失敗は少なくなります。
| 道 | 中身 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 使い続ける | 保守の続く範囲で、いまのByDesignを使う | 保守の期限と、新しい機能の予定を先に聞く |
| SAPの中で移る | SAPのクラウドERP(S/4HANA Cloud Public Editionなど)へ移る | SAPの示す移行の道筋と、パートナーの体制 |
| 別の製品へ替える | NetSuiteなど、規模に合う製品へ移る | データ移行と業務の見直しが要る |
大企業の子会社でByDesignを使っている場合は、本社の方針も関わります。
本社の基幹システムを残したまま子会社を束ねる考え方は、2層ERPとはで解説しています。
SAPの中に残る道を選ぶ場合は、SAPの認定パートナーに相談してください。
替えるかどうかを決めるチェック表
B1・ByDesignを使う会社は、次の項目に「はい」がいくつあるかを数えてみてください。
| 項目 | はい/いいえ |
|---|---|
| 3年以内に、会社の数か海外の拠点が増える予定がある | |
| 連結や会社間の取引の処理を、表計算で行っている | |
| アドオンの仕様を説明できる人が、社内にもパートナーにもいない | |
| ECや顧客管理のデータを、毎月手作業でつないでいる | |
| 経営の数字が出るまでに、月の締めから10日以上かかる | |
| いまのパートナーの支援の体制に、不安がある |
「はい」が多いほど、替える道を比べる価値は大きくなります。
少なければ、使い続けながら設定や運用を見直すほうが合うことが多いです。
ByDesignの既存ユーザーは、これに「提供方針と保守の期限」を加えます。
SAP ERP(ECC 6.0)を使っている会社は別の論点
B1・ByDesignと、大企業向けのSAP ERP 6.0(ECC 6.0)は別の製品です。
いわゆる「2027年問題」は、ECC 6.0の保守の期限の話です。
SAPの保守方針では、ECC 6.0を含む製品群の標準の保守は2027年末まで、延長保守は2030年末までです(出典:SAP公式、2026年9月確認)。
期限ごとの選択肢は、SAP 2027年問題の解決策で詳しく扱っています。
移行するときの進め方
B1・ByDesignから別の製品へ移る期間は、規模とアドオンの量で大きく変わります。
データの移行と、新旧を並べて動かす期間を含むため、新規の導入より長くなりやすくなります。
| 要因 | 期間が延びやすい状態 |
|---|---|
| いまのアドオンの範囲 | 独自の機能が多く、仕様を知る人がいない |
| データ移行の難しさ | 取引の履歴やマスタが整っていない |
| 並行稼働 | 新旧を長く並べて動かす |
| 業務の見直しの度合い | 見直す範囲を途中で広げる |
並行稼働は、切り替えの前に、新旧のシステムを同時に動かして結果を比べることです。
マスタは、取引先・品目・勘定科目など、取引のもとになる基本のデータです。
費用のほうは、どう動くのか。
ベンチャーネットがNetSuiteの導入を支援してきた中で、費用と期間を左右した要因は4つでした。
機能範囲、開発(特に外部システムとの連携)、社内の体制、ユーザー数です。
B1で積み上げたアドオンと外部とのつなぎは、このうち「開発」の重さに直結します。
情報システムの担当が少ない会社では、支援を厚くする分、期間も延びやすくなります。
期間を延ばす状態と、それを軽くする手を図にすると、次のとおりです。
移行の段取り
移る先がどの製品でも、段取りの骨格は変わりません。
| 段階 | やること | この段階で決めること |
|---|---|---|
| 1. 見える化 | アドオン・帳票・外部とのつなぎと、今の業務の流れを洗い出す | いま何があり、誰が使っているか |
| 2. 整理整頓 | やめる・まとめる・そろえる業務を決める | 移すもの、やめるもの |
| 3. Fit&Gap・製品の比較 | 同じ業務の流れで、2〜3製品の標準と照らす | 移る先の製品とパートナー |
| 4. データの整備 | マスタと残高を整え、移すデータの期間を決める | 何年分の履歴を移すか |
| 5. 並行稼働・切り替え | 新旧の結果を比べ、切り替えの日を決める | 切り替えの判断の基準 |
| 6. 定着 | 研修と運用のルールを整える | 稼働後3〜6か月の体制 |
最初の1〜2か月で、標準で済む範囲と作る範囲を分けておくと、後の手戻りが減ります。
何年分の履歴を移すかも、費用と期間に大きく効きます。
古い履歴は移さず、旧システムのデータを参照用に残す方法もあります。
データ移行は基幹システムのデータ移行ガイド、全体の流れは基幹システムのリプレイスとはをご覧ください。
よくある失敗3つ
失敗1:いまの業務とアドオンを、そのまま再現しようとする
起きること:作り込みが増え、費用と期間がふくらむ。クラウドの自動のバージョンアップの利点も薄れる。
原因:「今と同じに」「うちは特殊だから」と、B1・ByDesignで作ったアドオンをすべて移そうとした。
避け方:実際のデータと現場への聞き取りを突き合わせ、使っていないアドオンを先に外します。
残ったものを「標準に合わせる・開発する・残す」に分けます(第10章)。
全部を一度に変える必要はなく、会計や販売から段階的に進める方法もあります。
失敗2:SAPの延長で考えてしまう
起きること:設計の途中で「前はできたのに」が続き、手戻りが増える。
原因:「同じERPだから、同じように動くはず」と考えた。
B1とNetSuiteでは、提供の形も、作り込みの方法も、バージョンアップの運用も違います。
避け方:移行の前に、製品の考え方の違いを押さえます。
最初の打ち合わせでは、いまの画面ではなく「業務の目的」から要件を書き出します。
失敗3:体制とパートナーを軽く見る
起きること:日本の税制やインボイス制度への対応、データ移行や切り替えの段取りで詰まる。
原因:費用を抑えるため、社内だけで進めようとした。
または、B1のパートナーと同じ役割を、新しいパートナーに期待した。
避け方:移行先の製品に詳しいパートナーと、役割を分けて進めます。
要件の整理から稼働後の運用まで、誰が何を担うかを先に決めます。
同じ失敗を繰り返さない進め方は、ERP導入はなぜ失敗するのかでも扱っています。
ベンチャーネットならこう見る|アドオンは2つの型で仕分ける
B1を長く使った会社ほど、アドオンの一覧は長くなります。
その一覧を、そのまま移る先の要件にしない。
ベンチャーネットは、ここから始めます。
型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap
- 業務の見える化:いまの業務の流れと、アドオンが使われている場面を現場に聞いて描く
- 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
- Fit&Gap:残った業務を、移る先の標準機能と照らし合わせる
移る先の製品が決まっていても、見える化からやり直します。
一覧には、もう使っていない帳票や、表計算で補っている業務が混ざっているからです。
型2:標準に合わせる/開発する/残す
Fit&Gapで合わなかった業務は、3つのどれかに決めます。
- 標準に合わせる:業務のほうを、移る先の標準機能に寄せる
- 開発する:追加の開発や、外部の仕組みとの連携で補う
- 残す:新しいERPには載せず、いまの仕組みや運用で続ける
「開発する」が増えるほど、第8章で見た費用と期間は重くなります。
図の3段目はNetSuiteを例にしていますが、GROW with SAPと比べる場合も順番は同じです。
2つの型で仕分けてから比べると、SAPの中の道と外の道を同じ土俵に並べられます。
最初の打ち合わせで伺う3つのこと
- いまの製品で困っていることは、製品の限界か、使い方や設定の問題か
- 3年後の会社の数・拠点・人数は、いまの製品の得意な範囲に収まるか
- いまのアドオンのうち、なくすと業務が止まるものはいくつあるか
使い方で解ける困りごとが多いなら、B1やByDesignを使い続けるほうが合います。
その場合は、SAPの認定パートナーへの相談をおすすめしています。
国産ERP・B1・NetSuiteのどれが優れているかではなく、それぞれに長所がある。
ベンチャーネットは、その前提で候補を並べます。
今日できること|アドオンの棚卸し表を作る
いまB1・ByDesignを使っている会社は、次の表を1時間で埋めてみてください。
| アドオン・独自の機能 | 使う部門・回数 | なくなると困ること | 標準の機能で代わりになるか |
|---|---|---|---|
| (例)独自の請求書の形式 | 経理・月1回 | 取引先ごとの形式が出せない | 要確認 |
月に1回も使わないものは、移行の対象から外せる候補です。
「なくなると困ること」が書けないものも、見直しの候補になります。
これから選ぶ会社は、自社の実際の取引を1件選び、受注から入金までの流れを書き出します。
その流れを、比べたい製品のデモで同じように流してもらいます。
よくある質問
Q1. SAP Business OneとNetSuiteはどう違うのですか
提供の形と得意な範囲が違います。
B1はオンプレミスとクラウドを選べ、小規模〜中堅の下位層が主な対象です。
NetSuiteはクラウド専用で、会計から販売・在庫・ECまでを一つの基盤で持ちます(第3章・第4章)。
Q2. ByDesignを使っています。この先どうすればよいですか
まず提供方針と保守の期限をSAPに聞きます。
期限が分かれば、慌てずに計画を立てられます。
選択肢は、使い続ける、SAPの中で移る、別の製品へ替える、の3つです。
どれが合うかは、規模・海外展開・本社の方針で変わります(第7章7-3)。
Q3. Business Oneは、この先も使い続けられますか
B1はいまも新しい顧客が増えている製品です。
SAPの発表では、2025年12月時点で83,000社以上に使われ、新しい顧客も増えています。
期限に追われて替える状況ではないため、困りごとと3年後の姿から判断します(第7章7-2)。
Q4. B1・ByDesignからNetSuiteへ移る期間はどのくらいですか
規模とアドオンの量で大きく変わります。
アドオンの範囲、データの整い方、並行稼働の有無、業務の見直しの度合いが期間を動かします。
具体的な期間は、範囲を決めたうえでパートナーの見積もりで出してもらいます。
最初に標準で済む範囲を決めておくと、手戻りが減ります(第8章)。
Q5. いまのSAPのパートナーとの関係はどうなりますか
移行の後も関係が続くことがあります。
たとえば、ほかのSAPの製品の保守を、いまのパートナーが続ける場合です。
本社はNetSuite、一部の子会社はB1のまま、という形では、両方のパートナーが役割を分けます。
Q6. NetSuiteの料金はSAPと比べてどうですか
提供の形とライセンスの体系が違うため単純には比べられません。
NetSuiteは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
モジュール・ユーザー数・オプションの構成で変わり、数百万円規模になることもあります。
最終の金額はOracleの営業が提示します。
比べるときは、利用料・ライセンス、サーバーの費用、アドオンの保守、委託と社内の人件費をそろえます。
費用の考え方は、NetSuiteの料金・費用で詳しく扱っています。
Q7. 2027年問題は、B1やByDesignにも関係しますか
2027年問題は大企業向けのSAP ERP 6.0の保守の期限の話です。
B1・ByDesignとは別の製品です。
ECC 6.0をお使いの場合は、SAP 2027年問題の解決策をご覧ください(第7章7-5)。
まとめ
- これから選ぶ候補はB1・NetSuite・GROW with SAPなど。ByDesignは提供方針をSAPに聞く
- B1はオンプレミスも選べる小規模〜中堅の下位層向けの製品
- NetSuiteは会計から販売・在庫・ECまでを一つにするクラウドERP
- 候補はオンプレミス・3年後の拠点・SAPで広げるかの3つの問いで絞る
- いま使っている会社は、困りごとが製品の限界か使い方の問題かを先に分ける
- 替えるなら、アドオンを見える化→整理整頓→Fit&Gapで洗い、標準に合わせる・開発する・残すに分ける
「B1のままでいいのか」への答えは、7-4のチェック表の「はい」の数に出ます。
まずは表を埋め、3年後の自社の姿と並べてみてください。
もう少し詳しく知りたい方へ
B1・ByDesignを使い続けるか、替えるか。これから選ぶなら、どの製品が合うか。
ベンチャーネットは、特定の製品に誘導しない立場で、整理のお手伝いをしています。
- SAPなどの基幹システムからの移行を考えている方:基幹システムリプレイス
- NetSuiteの実際の画面を見てみたい方:NetSuiteの無料デモ
- 自社に合う製品や進め方を相談したい方:お問い合わせ
