NetSuiteが「使いにくい」と感じる本当の原因とは?トラブル別の対処法と活用度を高めるコツ【2026年版】

月次の締めの前日。

経理の担当者が、保存検索の合計を見て手を止めます。

売上の数字が、Excelで集めた数字より大きい。

隣の席では営業が「この画面、前のシステムのほうが早かった」とこぼしています。

NetSuiteを入れて1〜2年の会社で、よく見る場面です。

NetSuiteの「使いにくさ」は、多くの場合、機能の限界ではありません。

業務と仕組みの間の、設計や体制のずれから生まれる状態です。

NetSuiteは世界220地域・44,000社以上で使われるクラウドERPで、機能の幅は広い製品です。

製品の基本はNetSuiteとは?で扱っています。

操作や設定の疑問は、公式のヘルプとSuiteAnswersで解けることが多い。

合わない合計も、条件を1つ直せば合うことがあります。

それでも「使いにくい」が続くなら、原因は画面の外にあります。

では、画面の外のどこを直せば、現場はNetSuiteに戻ってくるのか。

目次

この記事で分かること

  • バックアップ・共有・保存検索・ロール・更新の5つのトラブルの対処法
  • 公式サポートで解けることと、解けないこと
  • 「使いにくい」の根本原因4つと、それぞれの直し方
  • 自社で直す範囲と、専門家と直す範囲の線引き
  • 改善を進めるときによくある3つの失敗

言葉の整理:保存検索は、NetSuiteのデータを条件で抜き出し、集計する機能です。

ロールは、利用者が触れる機能とデータの範囲を決める、権限のまとまりです。

「使いにくい」の典型的な4つの場面

NetSuiteを運用する会社の悩みは、大きく4つに分かれます。

場面よく聞く声背景にあることが多いもの
データの管理「バックアップは取れているのか」「過去のデータの見方が分からない」書き出しの方法と目的が決まっていない
権限・共有「人によって見えるデータがちぐはぐ」「権限を変えた影響が読めない」ロールの設計の方針がない
レポート「保存検索の数字が合わない」「ダッシュボードに必要な情報が出ない」集計の軸と条件の組み合わせ
業務との合い方「Excelとの併用が当たり前」「機能はあるのに使われない」導入時の業務の切り分けと、稼働後の定着

どれも、操作の難しさより、運用の設計と定着の段階の課題が背景にあります。

NetSuiteの大きなリリースは年2回あります(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。

画面の名前や場所は変わることがあるため、以下は考え方を中心に書いています。

トラブル別の対処法

5つのトラブルと、最初に見るところを図にすると、次のとおりです。

困りごと別、まず見るところ バックアップが不安なら目的を先に決める。共有はロールが先で個別の共有は後。保存検索の合計が大きすぎるならメインラインの条件を見る。一部の人だけ画面が出ないならカスタムのロールに権限を足す。更新の後はリリースノートと作り込みの一覧を見る。 困りごと別、まず見るところこんなときまず見るところバックアップに不安がある目的を先に決める監査・障害・連携共有の設定がうまくいかないロールが先、個別の共有は後保存検索の合計が大きすぎるメインラインの条件(指定なしで膨らむ)一部の人だけ画面が出ないカスタムのロールに権限を手で足す更新の後に動きがおかしいリリースノートと作り込みの一覧を見る
困りごと別、まず見るところ

データのバックアップに不安があるとき

NetSuiteはクラウドのサービスです。

データは、複数のデータセンターにわたって継続的にバックアップされています(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。

そのうえで自社の手元に取り出すなら、Oracleのヘルプは次の方法を挙げています。

方法中身注意点
Full CSV Export決まった種類のデータをまとめてCSVで出すすべてのデータは出ない。管理者ロールのみ使える
保存検索のCSV条件で抜き出した結果を出す必要なデータの形を自分で決められる
レポートのCSVレポートの結果を出す集計済みの数字になる
SOAP Webサービスプログラムでデータを取り出す開発が要る
SuiteAnalytics ConnectODBCなどで外部のツールからつなぐODBCでの接続は追加の有料サービス

(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)

ODBCは、外部のツールからデータベースにつなぐための共通の仕組みです。

内部IDは、NetSuiteがレコードに振る番号を指します。

どの方法でも、内部IDを一緒に出せば、データの関係を保てます(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。

Full CSV Exportは、ZIPの形で出力されます。

CSVをExcelで直接開くと、16桁を超える数字の精度が落ちます。

そのため、Excelの取り込みの手順で開くよう案内されています(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。

方法を選ぶ前に、目的を決めてください。

  • 監査への備え → 取引の明細と、変更の履歴を残せるか
  • 障害への備え → どのデータを、どの頻度で持っておくか
  • 他のシステムとの連携 → 決まった時刻に、決まった形で出せるか

データの種類(マスタ・取引・カスタム項目)と、持っておく期間の方針も先に決めます。

詳しくはNetSuiteのバックアップとデータの書き出しをご覧ください。

共有の設定がうまくいかないとき

NetSuiteのデータの共有は、主に2つの層で管理します。

  • ロール:業務の役割ごとに、権限のまとまりを決める
  • 個別の共有:保存検索・ダッシュボード・カスタムレコードごとの共有の設定

意図しない閲覧を防ぐ順番は、ロールが先で個別の共有は後です。

保存検索を他の人と共有する場合は、次の点を押さえます。

  • 公開や対象者の設定は、管理者と、公開の権限を持つ人だけができる
  • 公開した検索は全員が実行できるが、編集できるのは管理者と所有者だけ
  • 対象者にも編集を許すには、「対象者に編集を許可」の設定をする
  • 顧客・仕入先・多くのパートナーは、公開した検索でも使えない

(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)

つまずきやすいのは、子会社(サブシディアリ)ごとの権限の分け方です。

カスタムレコードの「ロールによるアクセス」の設定も、後から迷いやすい。

設計の段階で全体の方針を決めておけば、後の運用が楽になります。

保存検索やレポートが思いどおりに動かないとき

冒頭の場面の「合計が大きすぎる」は、ここに当たります。

原因は、多くの場合、集計の軸と条件の組み合わせです。

最初に見るのは、次の3つです。

  • 期間の条件が「日付」か「会計期間」か
  • 子会社や場所の絞り込みが効いているか
  • カスタム項目の値が、想定どおりに入っているか

取引の検索では、メインラインの条件がよく効いてきます。

メインラインの設定結果の出方
真(はい)取引ごとに1行。明細は出ない
偽(いいえ)明細ごとに1行
指定なし取引の見出しと明細が、別々の行で出る

(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)

「指定なし」のまま金額を合計すると、見出しと明細の両方が数えられます。

数字が膨らむのは、このためです。

なお、種類を仕訳帳にした取引の検索では、メインラインの条件は効きません。

数字が合わないときは、いきなり複雑な式を組まないでください。

条件を1つずつ外し、1件ずつ元の取引と突き合わせるほうが近道です。

作り方の基本はNetSuiteの保存検索で扱っています。

ロール・権限の設定で詰まったとき

ロールの設計でつまずく場面は、主に3つです。

  • 標準のロールをそのまま使い、不要な権限まで与えてしまう
  • カスタムのロールを増やしすぎ、誰がどの権限を持つか分からなくなる
  • 子会社の間の権限の分け方が複雑になる

見落としやすいのが、標準ロールの更新はカスタムのロールに反映されない点です。

新しい機能を有効にしても、その権限は既存のカスタムのロールに自動では足されません(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。

機能を増やした後に「一部の人だけ画面が出ない」なら、まずここを疑います。

勧めたいのは、業務の役割ごとに最小限のカスタムロールを決める運用です。

そのうえで、定期的に棚卸しします。

ロールは、一度組むと変更の影響が広く出ます。

詳しくはNetSuiteのロールと権限で扱っています。

年2回の更新の後に動きがおかしいとき

NetSuiteは、大きなリリースが年2回あります。

利用者は、数か月かけて段階的に新しい版へ更新されます(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。

更新の後に「帳票の形が変わった」「作り込みの処理が止まった」という相談もよく受けます。

その場合は、次の順番で当たります。

  1. 更新の案内(リリースノート)で、関係する変更がないかを見る
  2. 作り込みや連携の一覧から、影響を受けそうなものを洗い出す
  3. 次の更新からは、Release Previewの環境で、事前に主な業務を1本通す

作り込みや連携が多い会社ほど、3の事前の確認が効いてきます。

進め方はNetSuiteのバージョンアップをご覧ください。

公式のサポートで解けること・解けないこと

操作や機能の使い方は、まずOracleの公式の情報を当たります。

窓口中身
SuiteAnswersすべての利用者とパートナーが使える、検索できるナレッジセンター。記事・ベストプラクティス・研修の動画
ヘルプ機能ごとの公式の説明(主に英語)
ベーシックサポートすべての契約に含まれる。重大な問題に24時間365日対応
プレミアムサポートフリーダイヤルでの対応、優先の対応、週末の対応、次のリリースの早めの案内など
Advanced Customer SupportNetSuite全体を最適化し、維持するための支援

(出典:NetSuite日本語サイト、2026年9月確認)

特定の機能の操作や仕様なら、ここで解決することが多くあります。

一方、業務全体の設計や運用の方針の相談をどこまで扱うかは、契約の種類で変わります。

自社の契約の範囲は、提供元やパートナーに聞いておきましょう。

サポートの種類と選び方は、NetSuiteの運用支援・保守・サポートのポイントで扱っています。

使いにくさの根本原因|4つのパターン

応急処置をしても「使いにくい」が続く。

そうなると、見るべきは画面ではなく、運用の設計と体制です。

4つの原因と直し方を図にすると、次のとおりです。

使いにくさの根本原因4つと直し方 業務との対話が足りないなら業務の棚卸し、記録と知見が引き継がれていないなら第三者の診断と文書化、パートナーの伴走の力が足りないなら契約の範囲の確認、現場の教育とフォローがないなら定着の計画をつくる。4つに共通するのは、機能と業務の対話が途中で止まっていること。 使いにくさの根本原因4つと直し方1業務との対話が足りない→ 業務の棚卸しから始める2記録と知見が引き継がれていない→ 第三者の診断と、設定の意図の文書化3パートナーの伴走の力が足りない→ 契約のサービスの範囲を確かめる4現場の教育と稼働後のフォローがない→ 稼働後3〜6か月の定着の計画をつくる4つに共通すること機能と業務の対話が途中で止まっている
使いにくさの根本原因4つと直し方

原因1:標準の機能と業務の対話が足りない

症状:「機能は多いが業務にしっくりこない」「Excelとの併用が当たり前」「画面のボタンが多く、何から触ればよいか分からない」

なぜ起きるか:導入のときのFit&Gap(業務と機能の合い方の確認)が浅かった。

「業務を仕組みに合わせるか、仕組みを業務に合わせるか」を切り分けないまま稼働した。

直し方:今の業務の棚卸しから始めます。

  • 今の業務をECRS(なくす・まとめる・順番を変える・簡単にする)の観点で見直す
  • 標準の機能で賄える範囲を決める
  • 残った差だけを、段階的に作り込みで埋める

作り込みの考え方はNetSuiteのカスタマイズ、業務改善の進め方はNetSuiteで実現する業務改善で扱っています。

原因2:導入のときの記録と知見が引き継がれていない

症状:「なぜこの設定なのか説明できない」「導入の担当者が辞めて経緯が分からない」「作り込みの仕様書がない」

なぜ起きるか:導入の相手が、記録を十分に残さなかった。

あるいは、記録はあっても「なぜそう設計したか」「業務とどうつながるか」が書かれていなかった。

直し方:自社だけでは片づけにくい領域です。

「何が分かっていないか」を知ること自体に、専門の知識が要るからです。

  • 第三者に、今の環境の設定の診断を頼む
  • 設定の意図、作り込みが影響する範囲、業務とのつながりを文書にする
  • 社内の担当者が、日常的に見られる形で残す

地味な作業ですが、属人化をなくす効果は大きい。

マニュアルの作り方はNetSuiteのマニュアルで扱っています。

原因3:今のパートナーの伴走の力が足りない

症状:「問い合わせの返事が遅い、あいまい」「改善の提案を受けたことがない」「更新の影響の確認を丸投げされる」「『仕様です』で打ち切られる」

なぜ起きるか:導入の段階の契約だけで関係が組まれ、稼働後の体制が薄い。

または、新しい導入を優先し、既存の利用者の運用に人を割かない姿勢がある。

直し方:まず、今のパートナーのサービスの範囲を契約書で見ます。

どこまでが含まれ、どこからが追加の費用か。

それが分かれば、打てる手は3つです(第5章の道A〜C)。

パートナーの変更は、重い決断に見えます。

それでも、回らない運用を放っておく損失のほうが、長い目では大きくなることもあります。

原因4:現場の教育と、稼働後のフォローがない

症状:

  • 「研修の後、現場が触っていない機能が多い」
  • 「新人に教える仕組みがない」
  • 「『前のシステムのほうが良かった』の声が増えた」
  • 「詳しい人がいないと回らない」

なぜ起きるか:本番の稼働日を、プロジェクトのゴールにした。

稼働で「完了」とし、定着の段階の予算と人を用意していなかった。

直し方:稼働後3〜6か月の定着の計画をつくります。

ここは、自社で始められる領域です。

  • 月1回の運用の見直しの会を開き、現場の困りごとを集める
  • よくある操作とつまずきを、社内のマニュアルや動画にする
  • 新人・異動者向けの社内の教育の仕組みを整える

公開事例のキュリエ様では、定着を4つの手順で進めました。

  1. データ整理を最初に行う
  2. 段階的に導入する
  3. 研修・サポートを徹底する
  4. 操作はシンプルにし、使わない機能を盛らない

いま使っている会社でも、同じ4つで点検できます。

データは整っているか、一度に広げすぎていないか、聞ける先はあるか、使わない機能が画面に残っていないか。

4つめの「使わない機能」は、冒頭の「ボタンが多い」という声に直結します。

ただし、現場の困りごとには、設定の見直しが要るものも含まれます。

定期的に外の目で見てもらう仕組みを併せると、定着の速さと質が上がります。

4つの原因に共通すること

使いにくさの正体は、多くの場合、機能と業務の対話が途中で止まっていることです。

Fit&Gap・記録・パートナーとの関係・現場の定着。

どれも機能の仕様ではなく、人と組織の領域にあります。

原因が自社・NetSuite本体・パートナーのどこにあるかの切り分けは、NetSuiteが使いにくい・活用できていないと感じたらで詳しく扱っています。

これから入れる会社と、いま使っている会社

これからNetSuiteを導入する会社

稼働後に「使いにくい」とならないために、契約の前に次の3つを決めます。

  1. 稼働後の定着の期間と費用を、見積もりに入れてもらう
  2. 設定の意図と作り込みの仕様を、どの形で残すかを決める
  3. 年2回の更新の前の確認を、誰がどこまで行うかを決める

NetSuiteは、更新の前にRelease Previewの環境で新しい機能を試せます。

自社のデータと業務の流れで試せるのが利点です(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。

この確認の担い手を契約の段階で決めておけば、稼働後の不安は減ります。

いま使っていて、見直しを考えている会社

使いにくさが続く会社は、次の3つの道から選びます。

道中身合う会社
A. 今の体制のまま、自社で直すマニュアル・見直しの会・棚卸しを自社で進める原因が主に原因4(定着)で、記録も残っている
B. 外の支援を部分的に足す設定の診断や、更新の前の確認だけを外に頼む原因2(記録)や、作り込みの影響が読めない
C. パートナーを変える運用の支援の相手を替え、全体を見直す原因3(伴走の力)が続き、話し合いでも変わらない
使いにくさを直す3つの道の選び方 どの機能をどれだけ使えているかを棚卸しし、当てはまる根本原因を決める。定着が原因ならA自社で直す、記録が原因ならB外の支援を足す、伴走の力が原因ならCパートナーを変える。 3つの道の選び方 使えている度の棚卸し どの機能をどれだけ使えているか 根本原因を当てはめる いちばん重いのはどれか 原因4 定着 A 自社で 直す 原因2 記録 B 外の支援を 部分的に足す 原因3 伴走 C パートナー を変える 棚卸しをせずに道を選ぶと、同じ悩みが残る
使いにくさを直す3つの道の選び方

どの道を選んでも、最初にやることは同じです。

どの機能をどれだけ使えているかの棚卸し。

結果があれば、Aで足りるのか、Bの支援が要るのか、Cまで考えるべきかが見えてきます。

棚卸しをせずに道を選ぶと、替えても同じ悩みが残りやすい。

Cを考える場合は、今のパートナーから設定の記録と作り込みの仕様を受け取れるかを、先に聞いてください。

引き継ぎの材料がそろうほど、新しい相手への移行の負担は小さくなります。

自社で直す範囲・専門家と直す範囲

改善は、自社で進める範囲と、専門家と進める範囲を分けると早く進みます。

状況自社で専門家と
機能・操作の使い方が分からない◯-
バックアップ・基本の書き出し◯△(監査や連携が絡むとき)
ロール・権限の見直し△(小さな修正)◯(全体の方針を変えるとき)
作り込みの影響の範囲の調査△(詳しい担当者がいるとき)◯(記録がないとき)
業務の流れ全体の見直し×◯
更新の前の影響の確認△(大きな変更がないとき)◯(作り込み・連携が多いとき)
他のシステムとの連携の新設×◯
現場の定着・教育の仕組みづくり◯(始めるのは自社で)◯(設計と伴走で効果が増す)
使いにくさの根本原因の究明△(自己診断で当たりをつける)◯(外の目で構造にする)

凡例:◯=勧める、△=条件つきで可能、×=自社だけでは難しい。

線を引く目安は、「使い方の問題か運用の設計の問題か」です。

  • 操作・設定の具体的な手順 → 自社で解決できる
  • 業務全体・人の動き・複数のシステムの連携 → 専門家と一緒に

AIの活用を考える会社にとっても、土台はロールの設計です。

NetSuiteのAI Connector Serviceは、外部のAIをNetSuiteにつなぐ仕組みです。

利用者もAIも、ロールに許された範囲だけを見ます(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。

ロールが整理されていなければ、AIに任せる範囲も決まりません。

改善を進めるときによくある3つの失敗

失敗1:「使いにくい」を理由に、作り直しから始める

起きること:画面や帳票を作り直したが、現場の不満は変わらなかった。

原因:原因が機能ではなく、定着や記録の不足だった。

避け方:作り込みの前に、第4章の4つの原因のどれに当たるかを見極めます。

原因4(定着)なら、作り込みより、マニュアルと見直しの会が先です。

作り込みは、一度入れると更新のたびに確認の手間が増えます。

直すべき原因がはっきりしてから、最小限の範囲で入れてください。

失敗2:パートナーを替えれば解決すると考える

起きること:パートナーを替えたが、同じ悩みが続いた。

原因:記録の不足や、社内の定着の体制の問題が、そのまま残っていた。

避け方:替える前に、今の環境の診断と記録の整理を行います。

新しい相手に引き継ぐ材料があれば、立ち上がりも早くなります。

変更の進め方はNetSuiteパートナーの選び方で扱っています。

失敗3:研修を1回やって終わりにする

起きること:研修の直後は使われたが、数か月で元のExcelの運用に戻った。

原因:新人や異動者に教える仕組みと、困りごとを集める場がなかった。

避け方:研修を「続く仕組み」にします。

月1回の見直しの会、社内のFAQ、担当者が替わるときの引き継ぎ手順をそろえます。

社内のFAQやマニュアルの下書きは、AIに任せると作る負担が小さくなります。

ベンチャーネットならこう見る

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、使いにくさの相談を2つの型で受けています。

NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、NetSuiteありきでは見ません。

引き継ぎ・立て直しは「記録」から始める

ベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入より、他社のあとの引き継ぎと立て直しが多くを占めます。

そこで最初に探すのは、スクリプトの中身ではありません。

設定の意図が、どこかに残っているかです。

残っていれば、原因1や原因4の手当てにすぐ進めます。

残っていなければ、診断と記録づくりが先です。

道C(パートナーを変える)を選んだ会社でも、この順番は変わりません。

最初の打ち合わせで伺うのは、次の3つです。

  1. どの機能をどれだけ使えていて、Excelに残っている業務は何か
  2. 困りごとは操作か、設計か
  3. 年2回の更新の前の確認を、誰が担っているか

定着の先を「守り→攻め→次へ」で描く

使いにくさが解けても、そこで終わりではありません。

稼働の後は、3つの段階で考えます。

定着の先の3段階:守り→攻め→次へ 守りは業務が回ること、攻めはデータで打つこと、次へは経営が変わること。 定着の先の3段階守り|業務が回る在庫・販売・会計を1つにし、日々の業務を安定させる攻め|データで打つ売れ筋・在庫の分析、営業作業の自動化、生成AIでの集計次へ|経営が変わるKPI、管理会計、上場に向けた内部統制
定着の先の3段階:守り→攻め→次へ
  • 守り|業務が回る:在庫・販売・会計を1つにし、日々の業務を安定させる
  • 攻め|データで打つ:売れ筋・在庫の分析、営業作業の自動化、生成AIでの集計
  • 次へ|経営が変わる:KPI、管理会計、上場に向けた内部統制

「使いにくい」が続く間は、まだ守りの段階にいます。

保存検索の合計が合わないうちは、データで打つ段階には進めません。

逆に言えば、この記事の対処法は、攻めに進むための足場づくりです。

伴走型の支援の考え方は、伴走型のNetSuite導入支援とは?で扱っています。

今日できること|1時間でつくる「使えている度の表」

各部門の担当者に聞いて、次の表を埋めてみてください。

業務NetSuiteで完結しているかExcelや紙が残っているか困りごと
(例)受注の入力はいいいえ特になし
(例)月次の売上の集計いいえExcelで集計保存検索の数字が合わない
(例)新人の操作の習得-口頭で説明教える人が1人しかいない

「いいえ」と「困りごと」が並ぶ行を、第4章の4つの原因に当てはめます。

部門ごとに聞くと、同じ機能でも「使えている部門」と「使えていない部門」に分かれることがあります。

その差は、教え方や手順書の有無から生まれていることが多い。

原因4の手がかりです。

当てはまる原因が分かれば、第6章の表で、自社で直すか専門家と直すかが決まります。

よくある質問

Q1. NetSuiteのデータを手元にバックアップするには

Full CSV Export・保存検索のCSV・SuiteAnalytics Connectなどの方法があります。

Full CSV Exportはすべてのデータを出すものではなく、管理者ロールだけが使えます。

目的(監査・障害への備え・連携)とデータの種類で、方法を選びます。

Q2. ユーザーの間でデータを共有する設定は

ロールを先に整理し保存検索などの共有は後にします。

保存検索の公開の設定は、管理者と公開の権限を持つ人だけができます。

公開した検索は全員が実行できますが、編集できるのは管理者と所有者です。

Q3. 保存検索の合計が合いません

メインラインの条件を見直してください。

指定がないと、取引の見出しと明細が別々の行で出て、合計が膨らむことがあります。

取引ごとに1行で見たいなら、メインラインを「真」にします。

Q4. 新しい機能を有効にしたら、一部の人に画面が出ません

カスタムのロールに権限が自動で足されないためです。

新しい機能の権限は、既存のカスタムのロールには自動で入りません。

手作業でロールに権限を足します(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ、2026年9月確認)。

Q5. NetSuiteが使いにくいと感じます。どう直せばよいですか

まず4つの根本原因のどれに当たるかを見極めます。

機能の問題だと思っていたことが、運用の体制の問題だったという例は少なくありません。

自社で直す範囲と専門家と直す範囲を分けて取り組むと、効率よく進みます。

Q6. 活用度を上げるために最初にやることは

今の使用状況の棚卸しです。

どの機能をどれだけ使えているか、Excelや手作業が残るのはどこかを見える形にします。

そのうえで、使われていない機能を改善の効果の順に並べ、効果の大きいものから始めます。

Q7. 自社で直すか専門家に相談するか迷います

使い方の問題か運用の設計の問題かで分けます。

操作や設定の場所が分からないだけなら、SuiteAnswersやヘルプ、社内の経験者で解けます。

業務全体の見直し・記録がない・作り込みの影響が読めない場合は、専門家と進めるほうが早く解けます。

ほかの疑問はNetSuite導入でよく受ける質問30問もご覧ください。

まとめ

  • 「使いにくい」の多くは、機能ではなく運用の設計と体制の問題
  • 操作や設定の疑問は、SuiteAnswersとヘルプでまず調べる
  • 根本原因は、業務との対話・記録・パートナーの伴走・現場の定着の4つ
  • 改善は、自社で直す範囲と専門家と直す範囲を分けてから始める
  • 最初の一歩は、どの機能をどれだけ使えているかの棚卸し

締めの前日に合わない合計は、条件を1つ直せば合うかもしれません。

それでも現場がExcelに戻るなら、直す場所は画面の外にあります。

まずは各部門に聞いて、使えている度の表を1枚埋めてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

今のパートナーの対応や、稼働後の運用に不安がある方は、導入の立て直し・引継ぎ・伴走保守のご相談をお受けしています。

自社で直すか相談するか迷っている段階でも、状況の整理からご一緒します。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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