NetSuiteで実践するCVP分析(損益分岐点分析)|勘と経験の経営から、数字で利益体質を作る方法【2026年版】

「材料費などの変動費が1割上がったら、営業利益は6割減る」

売上1億円、営業利益1,000万円の会社で試算すると、こうなります(架空の数字)。

値上げを迷っている間に、利益の半分以上が消える計算です。

CVP分析とは、コスト(Cost)・販売量(Volume)・利益(Profit)の関係から、黒字と赤字の境目を数字で見る管理会計の手法です。

損益分岐点分析とも呼ばれます。

計算式は簡単です。差がつくのは、固定費と変動費の分け方と、毎月見続ける仕組みのほうです。

では、年に1回の計算で終わらせず、毎月の判断に使う会社になるには、何から始めればよいのか。

計算の基本から順に追い、最後にその答えに戻ります。

目次

この記事で分かること

  • CVP分析の4つの指標と計算式(架空の数字での試算つき)
  • 固定費と変動費を分ける「固変分解」のつまずきどころ
  • Excelで足りる段階と、システムが要る段階の見分け方
  • CVP分析が定着しない、よくある3つの失敗と避け方
  • 毎月見る習慣を作る「1業務・1KPI」の進め方

CVP分析とは|管理会計の基本の道具

管理会計は、社内の経営判断のための会計です。

外部への報告のための財務会計とは、目的が違います。

CVP分析は、管理会計の代表的な手法の一つです。

売上・コスト・利益の関係を数字にし、次のような問いに答えます。

  • いまの売上は、赤字の境目からどれだけ離れているか
  • 材料費が上がったら、利益はどれだけ減るか
  • 値下げして数量を増やす作戦は、利益の面で割に合うか

意思決定の速さが強みの中小企業こそ、この数字を持つ価値があります。

判断の速さに、判断の根拠が加わるからです。

CVP分析の前提と限界

CVP分析は、いくつかの前提の上に成り立っています。

  • 販売価格と変動費率が、一定の範囲で変わらない
  • 一定の範囲の売上なら、固定費は動かない
  • 複数の製品を売る場合、売上の構成比が大きく変わらない

売上が大きく伸びて人や設備を増やすと、固定費そのものが上がります。

製品の構成比が変われば、全社の限界利益率も動きます。

だからCVP分析は、「当面の範囲」の判断に向く道具です。

数年先の大きな投資の判断には、別の計画の数字と合わせて使います。

管理会計と財務会計の違いは、NetSuiteで実現する管理会計の高度化で詳しく扱っています。

最初の壁|固定費と変動費を分ける(固変分解)

CVP分析では、まずコストを2つに分けます。

  • 固定費:売上に関わらず一定でかかるコスト(人件費・家賃・減価償却費など)
  • 変動費:売上に応じて増減するコスト(材料費・外注費・販売手数料など)

この作業を固変分解(こへんぶんかい)と呼びます。

見た目は簡単です。

ところが実務では、迷う費目が必ず出てきます。

どちらとも言い切れない費用を、準固定費・準変動費と呼びます。

費目の例迷う理由考え方の例
営業の歩合給基本給は固定、歩合は売上で動く基本給と歩合を分けて扱う
最低利用料つきの外注最低額までは固定、超えると変動最低額を固定費、超えた分を変動費に
電気代・水道代基本料金と使用量の料金がある金額が小さければ、どちらかに寄せる
パート・アルバイトの人件費繁閑で時間が変わる売上との連動が強ければ変動費に

細かく分けるほど、CVP分析の精度は上がります。

ただし、最初から細かくしすぎると始まりません。

分け方の2つの方法

方法やり方向く場面
勘定科目法勘定科目ごとに、固定か変動かを決めるまず始めるとき。手早く分けたい
数字から推定する方法過去の月々の売上と費用の動きから、固定部分と変動部分を推定する準固定費・準変動費が多く、科目だけでは分けにくい

数字から推定する方法には、最も高い月と低い月を比べる高低点法などがあります。

最初は勘定科目法で始め、迷う科目だけ数字で見直すのが現実的です。

固変分解の方法は、NetSuiteで変動費・固定費を「固変分解」する方法で詳しく扱っています。

CVP分析の4つの指標と計算式

固変分解ができたら、次の4つの指標を出します。

指標計算式分かること見方
限界利益売上高 − 変動費売上が固定費の回収と利益にどれだけ回るか限界利益率が高いほど、売上増が利益に直結
損益分岐点売上高固定費 ÷ 限界利益率黒字と赤字の境目の売上実際の売上がこれを上回れば黒字
損益分岐点比率損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100境目にどれだけ近いか低いほど余裕がある。目安は業種・事業で違う
安全余裕率(実際の売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際の売上高 × 100売上減にどれだけ耐えられるか高いほど売上減に強い。目安は業種・事業で違う

限界利益率は、限界利益 ÷ 売上高です。

損益分岐点比率と安全余裕率を足すと、100%になります。

目安は業種・事業で違います。

他社の数字と比べるより、自社の数字の月ごとの動きを見るほうが役に立ちます。

限界利益の考え方は、限界利益と貢献利益の違いで詳しく扱っています。

架空のA社で計算してみる

※以下の数字は、説明のための架空の数字です。

A社の前提

  • 売上高:1億円
  • 固定費:3,000万円
  • 変動費:6,000万円(変動費率60%)

計算結果

  • 限界利益:1億円 − 6,000万円 = 4,000万円
  • 限界利益率:4,000万円 ÷ 1億円 = 40%
  • 損益分岐点売上高:3,000万円 ÷ 40% = 7,500万円
  • 損益分岐点比率:7,500万円 ÷ 1億円 = 75%
  • 安全余裕率:(1億円 − 7,500万円)÷ 1億円 = 25%
  • 営業利益:4,000万円 − 3,000万円 = 1,000万円

A社は、売上が25%(2,500万円)減っても黒字を保てる計算です。

逆に損益分岐点比率が90%なら、安全余裕率は10%しかありません。

売上が少し下がるだけで、赤字に近づく体質です。

「もしも」を計算する

CVP分析の強みは、条件を変えた試算がすぐできることです。

A社の数字で、2つの「もしも」を計算します(架空の数字)。

もしも1:材料費などの変動費が10%上がったら

  • 変動費:6,000万円 → 6,600万円
  • 限界利益率:40% → 34%
  • 損益分岐点売上高:7,500万円 → 約8,824万円
  • 営業利益:1,000万円 → 400万円

冒頭の「6割減る」は、この計算です。

価格の見直しを考える、はっきりした根拠になります。

もしも2:販売数量はそのままで価格を5%下げたら

  • 売上高:1億円 → 9,500万円(変動費は6,000万円のまま)
  • 限界利益率:40% → 約36.8%
  • 損益分岐点売上高:7,500万円 → 約8,143万円
  • 同じ営業利益1,000万円を残すには、販売数量を約14%増やす必要がある

「5%の値下げで売上が増えるなら得」と感じても、数量が14%増えないと元の利益に戻りません。

値下げを決める前にこの計算をしておくと、冷静になれます。

利益を500万円増やす3つの道

同じA社で、営業利益を1,000万円から1,500万円に増やす道を比べます(架空の数字)。

道必要な変化考えること
売上を増やす売上を1,250万円(12.5%)増やす限界利益率40%なので、増えた売上の4割しか利益に残らない
変動費率を下げる変動費率を60%から55%へ仕入先との交渉、歩留まりの改善、値上げ
固定費を下げる固定費を500万円減らす削ると売上を生む力まで落ちないか
営業利益を500万円増やす3つの道(架空のA社) 売上高1億円・変動費率60%・固定費3000万円の架空のA社で、営業利益を500万円増やすには、売上を1250万円増やすか、変動費率を55%に下げるか、固定費を500万円減らす。 利益を500万円増やす3つの道 架空のA社:売上1億円・変動費率60%・固定費3千万円 売上を増やす +1,250万円 増えた売上の4割しか 利益に残らない 変動費率を下げる 60%→55% 仕入先との交渉、歩留まりの改善、 値上げ 固定費を下げる −500万円 削ると売上を生む力まで 落ちないかを見る 数字はすべて説明のための架空の数字
営業利益を500万円増やす3つの道(架空のA社)

同じ500万円でも、売上で稼ぐには1,250万円の上積みが要ります。

限界利益率が低い会社ほど、売上を増やすだけでは利益が増えにくいのです。

どの道が現実的かは、会社の事情で変わります。

3つを同じ物差しで並べられること。それが、CVP分析を使う意味です。

全社の数字だけで見ない|部門別・製品別のCVP分析

CVP分析は、全社合計だけで見ると大事な変化を見落とします。

全社の損益分岐点比率が75%でも、ある事業部だけ取り出すと95%ということがあります。

部門別・製品別・顧客別に分けると、次の判断に使えます。

  • 立て直すか、撤退を考える事業を見つける
  • 投資を増やす価値がある事業を見極める
  • 複数の事業を持つ会社で、人とお金の配分を見直す

架空のB社の例

※以下の数字は、説明のための架空の数字です。

事業売上高(限界利益率)事業の固定費損益分岐点比率
卸売事業6,000万円(30%)1,200万円約67%
自社ブランド事業4,000万円(55%)2,090万円95%
全社1億円(40%)3,290万円約82%

全社で見ると82%で、少し重い程度に見えます。

事業別に分けると、自社ブランド事業が境目ぎりぎりだと分かります。

一方で、自社ブランド事業は限界利益率の高い事業です。

売上が1割伸びれば、利益は大きく改善します。

撤退か、売上を伸ばす投資か。数字があると、議論の出発点がそろいます。

NetSuiteには、部門・クラス・場所という3つの分類があります。

取引や従業員に部門を付け、部門や場所ごとの財務レポートを出せます。

この3つで足りない切り口は、カスタムセグメントで追加できます。

(出典:Oracle NetSuiteヘルプ「Classifications Overview」、2026年9月確認)

部門別の損益の見方は、損益管理とはでも扱っています。

CVP分析を回す3つのやり方

やり方中身向く会社注意点
A. Excelで計算試算表の数字をExcelに写し、指標を計算する事業が1つで、費目が少ない転記の手間と誤りが増えやすい
B. 会計ソフト+Excel会計ソフトの勘定科目を固変で分け、Excelで指標を出す全社の数字だけで足りる部門別・製品別にすると集計が重くなる
C. ERPで一元管理販売・購買・経費のデータから、部門別・製品別の指標まで出す事業や拠点が複数ある勘定科目と分類の設計が先に要る

AからCへ進むほど、データは1か所にそろいます。

そろったデータは、生成AIに要約や点検を任せやすくなります。

たとえばNetSuiteには、財務データから文章の説明を作るNarrative Insightsがあります。

Oracleのヘルプでは、日本を含む全地域で使えると案内されています(出典:Oracle NetSuiteヘルプ、2026年9月確認)。

判断の物差し|Excelで足りる段階と、システムが要る段階

見分け方を図にすると、次のとおりです。

CVP分析:Excelで足りる段階と、システムが要る段階 固変分解も毎月見る習慣もまだないなら、いまはシステムを入れない。事業が1つで月1回の全社の4指標で十分なら、まずExcelで毎月見る習慣を作る。部門別・製品別に毎月見たい、転記に毎月数日かかるなら、データを一元管理する仕組みを考える。 CVP分析は、Excelか、システムか いま、自社はどの状態? 固変分解も、毎月 見る習慣もまだない いまはシステムを 入れない 事業が1つで、 月1回の全社の 4指標で十分 まずExcelで 毎月見る習慣を 部門別・製品別に 毎月見たい 転記に毎月数日 データを 一元管理する 仕組みを考える NetSuiteが合いやすいのは、複数の事業・ 拠点の数字を、同じ物差しで見たい会社
CVP分析:Excelで足りる段階と、システムが要る段階

Excelで足りる段階

  • 事業が1つで、部門別に見る必要がない
  • 費目が少なく、固変分解が1時間ほどで終わる
  • 月1回、全社の4指標を見られれば十分

この段階では、無理にシステムを入れる必要はありません。

まずExcelで、毎月の指標を見る習慣を作るほうが先です。

システムが要る段階

  • 部門別・製品別・顧客別に、毎月CVP指標を見たい
  • Excelへの転記に、毎月数日かかっている
  • 担当者が替わると、計算のやり方が変わってしまう
  • 会計・販売・購買が別々の仕組みで、数字が合わない

こうした状態なら、データを一元管理する仕組みを考える時期です。

Excelからの移り時は、ExcelからNetSuiteへ移行すべきタイミングで扱っています。

NetSuite以外が合う場合

全社の数字だけで足り、会計ソフトに満足しているなら、いまの会計ソフト+Excelで十分です。

費用を抑えて広げたいならOdoo、国内の帳票を重く見るなら国産ERPも候補になります。

固変分解も毎月見る習慣もまだないなら、いまはシステムを入れない判断もあります。

NetSuiteが合いやすいのは、複数の事業・拠点の数字を同じ物差しで見たい会社です。

NetSuiteは世界220地域・44,000社以上で使われています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。

これから始める会社と、見直す会社

これから始める会社は、精度より毎月出すことを優先します。

直近1か月の試算表で固定費と変動費をざっくり分け、4指標を出してみてください。

数字を見て初めて、「この費目はもっと細かく分けたい」という要望が出てきます。

すでに会計ソフトやERPを使っている会社でも、CVP指標が出ていないことはよくあります。

原因の多くは、勘定科目が固変を分けられない粒度になっていることです。

見直しは、次の順で進めます。

  1. 勘定科目は、固定費と変動費を分けられる粒度か
  2. 部門や製品の分類が、取引に正しく付いているか
  3. 指標を毎月出す手順が、特定の担当者に頼っていないか

基幹システムの保守期限が近い場合は、乗り換えの機会に科目の体系から作り直す手もあります。

経営会議での扱い方も、あわせて見直します。

  • 報告する指標は、損益分岐点比率と安全余裕率の2つに絞る
  • 前月比と前年同月比を並べ、動いた理由を1行で添える
  • 過去の推移より悪くなった部門だけ、次の打ち手を議論する

報告が短いほど、経営者は毎月見続けやすくなります。

CVP分析でよくある3つの失敗

失敗1:指標を出すことが目的になり、経営者が見ない

起きること:月次レポートに指標が並ぶだけで、誰も判断に使わない。「経理に任せている」となる。

原因:指標を見て「何を判断するか」が決まっていない。経営者自身が数字を見る場がない。

避け方:判断のきっかけを先に決めます。

たとえば「損益分岐点比率が前年同月より上がったら、固定費を見直す議論を始める」です。

月次の経営会議で、指標の報告を1分だけ入れる形でも十分です。

失敗2:固変分解が雑で、数字が信用されない

起きること:「人件費は固定費、材料費は変動費」と機械的に分け、実感と合わない数字が出る。やがて「CVPは当てにならない」と言われる。

原因:歩合給や最低利用料つきの外注など、準固定費・準変動費の扱いを決めていない。

避け方:勘定科目ごとに「固定・変動・準固定・準変動」を仕分け、扱いのルールを書き残します。

分け方は、年に1回見直します。

失敗3:年に1回の分析で終わる

起きること:決算の後や予算づくりのときだけ計算し、途中の変化に気づけない。

原因:月次決算の流れに、CVP分析の手順が入っていない。

避け方:月次決算の締めの後に、指標を出す手順を組み込みます。

前月比・前年同月比で並べると、変化が見えてきます。

月次決算の流れは、月次決算とはで扱っています。

NetSuiteでCVP分析を仕組みにする4つのステップ

4つのステップの流れを図にすると、次のとおりです。

NetSuiteでCVP分析を仕組みにする4つのステップ 勘定科目の体系を整え、固定・変動の区分を持たせ、部門別・製品別の指標をダッシュボードに置き、月次決算の後に経営会議で指標を議論する場を決める。 CVP分析を仕組みにする4ステップ 1. 勘定科目の体系を整える 固定・変動を判定できる粒度まで科目を分ける 2. 固定・変動の区分を持たせる 準固定・準変動は、按分のルールを先に決める 3. 指標をダッシュボードに置く 部門・クラス・場所の分類を取引に付ける 4. 月次レビューの場を決める 月次決算の後、経営会議で指標を議論する 経営者が見続けて、初めて変化が見えてくる
NetSuiteでCVP分析を仕組みにする4つのステップ

ステップ1:勘定科目の体系を整える

「販売費及び一般管理費」のような大きな括りでは、固変分解ができません。

費目ごとに固定・変動を判定できる粒度まで、科目を分けます。

ステップ2:固定・変動の区分を持たせる

固定費の科目と変動費の科目を分けて作れば、レポートでそれぞれを集計できます。

準固定費・準変動費は、按分のルールを決めてから扱います。

按分は、1つの費用を決めた割合で分けることです。

ステップ3:部門別・製品別の指標をダッシュボードに置く

部門・クラス・場所の分類を取引に付け、切り口ごとに指標を出します。

NetSuiteでは、役割ごとに必要な指標やグラフを置いたダッシュボードを作れます。

(出典:Oracle NetSuite公式「What Is NetSuite?」、2026年9月確認)

画面の組み立て方は、経営ダッシュボードの作り方で扱っています。

ステップ4:月次レビューの場を決める

月次決算の後、経営会議で指標を議論する場を決めます。

経営者が見続けて、初めて変化が見えてきます。

標準で足りない部分をどう補うか

  • (a) いまNetSuiteの標準で使えること:部門・クラス・場所とカスタムセグメントでの分類、レポート、役割別のダッシュボード
  • (b) 開発で補えること:自社独自の按分の計算や、CVP指標の専用の帳票は、ベンチャーネットのアドオン開発「NetSuiteリブート」で補う方法があります
  • (c) 今後の提供を待つこと:AIの新しい機能は順次追加されます。日本での提供状況は、アカウントの担当に確認してください

需要の予測と組み合わせる

NetSuiteの需要計画(Demand Planning)は、将来の在庫の需要を予測する機能です。

過去の需要・季節性・販売予測などをもとにします(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。

この見込みの数量に変動費率のパターンを掛け合わせると、「来期、売上が15%減ったら、いまの固定費で黒字を保てるか」といった試算ができます。

経営環境は、月単位で変わります。

年1回の予算だけでなく、月ごとに試算を回すことが、判断の遅れを防ぎます。

ベンチャーネットならこう見る|1つの指標を90日で習慣にする

ベンチャーネットは、CVP分析の相談を受けたとき、システムの話から始めません。

最初に伺うのは、次の3つです。

  1. 経営者が指標を見て何を決めたいか:値上げか、固定費の見直しか、事業の選別か
  2. いまの勘定科目で固変分解ができるか:できないなら、科目の体系が先
  3. 毎月だれがいつ指標を出すか:担当者と会議の場

そのうえで、次の2つの型で進めます。

型1:1業務・1KPIに絞った1周目(最短90日)

最初から全社・全部門の4指標をそろえると、途中で止まります。

そこで、見る指標を1つ、切り口を1つに絞ります。

たとえば「損益分岐点比率」を「主力の事業部」だけで追う形です。

最短90日で、1周を回します。

1か月目に数字を出し、2か月目に会議で使い、3か月目に分け方を直す。

3回の月次を経ると、どの科目の分け方が実感と合わないかが見えてきます。

そこで初めて、2つ目の切り口に広げます。

型2:守り→攻め→次へ

定着の先の3段階:守り→攻め→次へ 守りは業務が回ること、攻めはデータで打つこと、次へは経営が変わること。 定着の先の3段階守り|業務が回る在庫・販売・会計を1つにし、日々の業務を安定させる攻め|データで打つ売れ筋・在庫の分析、営業作業の自動化、生成AIでの集計次へ|経営が変わるKPI、管理会計、上場に向けた内部統制
定着の先の3段階:守り→攻め→次へ

1周目が回ると、CVP分析は3つの段階で育ちます。

  • 守り|業務が回る:販売・購買・会計がつながり、固変を分けた数字が毎月同じやり方で出る
  • 攻め|データで打つ:部門別・製品別の指標を見て、値上げや固定費の見直しを動かす
  • 次へ|経営が変わる:損益分岐点比率をKPIに組み込み、管理会計で事業の選別を判断する

冒頭の問いへの答えは、ここにあります。

毎月の判断に使う会社になる最初の一歩は、指標を1つに絞った90日の1周目です。

システムが要るかどうかは、その1周を回してから決めても遅くありません。

今日できること|1時間でCVP指標を出す

直近1か月の試算表を用意し、次の手順で進めてください。

  1. 費用の科目を、固定費と変動費に分ける(迷ったら、ひとまずどちらかに寄せる)
  2. 変動費の合計と、固定費の合計を出す
  3. 限界利益率・損益分岐点売上高・安全余裕率を計算する
  4. 「迷った科目」を書き出しておく

4で書き出した科目が、次に細かく分けるべき候補です。

3か月続けると、それがそのまま90日の1周目になります。

よくある質問

Q1. CVP分析と損益分岐点分析は、何が違いますか

実務ではほぼ同じ意味で使われます。

CVP分析は、コスト・販売量・利益の関係全体を見る手法です。

損益分岐点分析は、その中で利益がゼロになる点に注目したものです。

この2つは、区別せずに使って差し支えありません。

Q2. 仕組みを作るのに、どれくらい時間がかかりますか

指標を出すだけなら数週間です。定着には3〜6か月を見込みます。

勘定科目の整理と固変分解ができれば、指標を出す仕組みは2〜4週間ほどで作れます。

経営会議で使う習慣が根づくまでには、月次のサイクルを何度か回す必要があります(第10章)。

Q3. Excelで十分ではないですか

事業が1つならExcelで十分なこともあります。

部門別・製品別に毎月見たい場合は、転記と集計の手間が大きくなります。

その段階で、データを一元管理する仕組みを検討してください(第6章)。

Q4. 中小企業には、まだ早くないですか

規模が小さいうちから役立ちます。

中小企業の強みは、意思決定の速さです。

粗い数字でも、毎月見る習慣を作れば、判断の精度が加わります。

Q5. 最初に何から始めればよいですか

固定費と変動費を「ざっくり」分けることからです。

1か月分の試算表で、4つの指標を出してみてください。

精度は、数字を見ながら上げていけば十分です(第11章)。

Q6. 損益分岐点比率が上がってきたら、何から手を打ちますか

まず部門別・製品別に分けて原因の場所を探します。

全社の数字だけでは、どこが重いのか分かりません。

比率の高い事業や製品が分かれば、どの手が効くかを比べられます。

値上げ・変動費の見直し・固定費の見直しを並べて考えます(第3章3-3)。

Q7. NetSuiteで部門別のCVP分析はできますか

部門・クラス・場所の分類で切り口ごとに数字を出せます。

足りない切り口は、カスタムセグメントで追加できます。

自社独自の按分の計算などは、開発で補う方法もあります(第9章)。

まとめ|CVP分析は計算ではなく、毎月の判断の習慣

  • CVP分析は、コスト・販売量・利益の関係から、黒字と赤字の境目を見る手法
  • 最初の壁は固変分解。準固定費・準変動費の扱いを決める
  • 4つの指標は、限界利益・損益分岐点売上高・損益分岐点比率・安全余裕率
  • 「もしも」の試算で、原価の上昇や値下げの影響を事前に知れる
  • 定着の鍵は、1つの指標を90日で習慣にすることと、経営者が毎月見る場

変動費が1割上がるだけで、利益が6割減る会社もあります。

その前に、1か月分の数字で、自社の境目がどこにあるかを出してみてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

勘定科目の設計から、CVP指標を毎月見る仕組みづくりまで、ご相談をお受けしています。

NetSuiteが合わない場合は、その理由もお伝えします。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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