バーチャル経営イノベーション実践編~コロナ禍こそイノベーションを

コロナ禍は人類全体の意識を変化させ、日本でも「不要不急」や「オンラインシフト」といった新たな概念を定着させました。ビジネスのトレンドにも変化が生じ、対応に追われた企業も少なくないはずです。こうした意識変化は今後も十分に起こり得ます。中小企業が生き残り成長していくためには、外的要因の変化に柔軟に対応し、新しいビジネスを立ち上げる力が必要です。つまり、「イノベーション」を成立させる力を持つべきなのです。

目次

仕事の廃棄は始まりの一歩にすぎない

これまでバーチャル経営では、高付加価値経営を実現するためのさまざまな指標や施策を紹介してきました。中でも多くを占めたのが、「仕事の廃棄」にまつわる内容です。そこでここからは、仕事の廃棄で得たリソースを新たな事業に投入し「イノベーション」につなげる内容を紹介したいと思います。これから中小企業が生き残っていくためには、新規事業を成功させて新たな収益の柱を創らなくてはなりません。そのためには、何らかのイノベーションが必要だからです。

イノベーションは「企業家の武器」

ちなみに、日本語では「技術革新」と翻訳されることの多いイノベーションですが、実は技術だけにフォーカスした言葉ではありません。マネジメント理論の大家として知られるP・F・ドラッカー氏は、「イノベーションと企業家精神」の中で以下のような内容を述べています。

・イノベーションは企業家に特有の道具である

・イノベーションは資源に「富の創出能力」を与える

・イノベーションは社会や経済に「購買力」という資源を提供する

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】 p.22(著:P.F.ドラッカー、翻訳:上田 惇生、ダイヤモンド社、2015

このように、ドラッカーが提唱するイノベーションは、日本で長らく理解されていたイノベーションとはやや意味合いが異なります。イノベーションとは新しい価値を創出するための道具であり、それは技術に限った話ではないという内容が述べられているからです。

これは、GAFAやユニコーン企業のように突出した技術力を持たない企業であっても、イノベーションを起こすことは十分に可能である、とも理解できます。

また、ドラッカーは自身の著書の中で何度も「イノベーションは仕事の廃棄から始まる」という内容を述べています。バーチャル経営ではこの考えを採用しており、まず仮想化と本質化によって仕事の廃棄を進め、余剰リソースを生み出したうえでイノベーションに取り組むことを推奨しています。

なぜ今「イノベーション」なのか?

では、なぜ今イノベーションが必要なのかを、もう少し具体的に考えてみましょう。前述のドラッカー「イノベーションと企業家精神」の中では、イノベーションが起こりうる状況として「7つの機会」を提示しています。それは以下のようなものです。

ドラッカーが提唱する「イノベーション7つの機会」

予期せぬことの生起

1つ目の機会は「予期せぬ成功と失敗」です。ドラッカーは、日常の業務の中で起こりうる予測できない成功/失敗の中にこそ、イノベーションの機会があると述べています。ここから生まれるイノベーションはリスクが低く、確実性が高く、成果に結びつきやすいとのことです。

ギャップの存在

業績、認識、価値観、プロセスなど企業経営の中で起こりうるさまざまなギャップの中にイノベーションの機会があるとしています。ここで言うギャップとは、「不整合」のことだと考えられ、不整合が起こっている部分をうまく分析することで、新たな発見や付加価値が生まれると理解できそうです。

ニーズの存在

ニーズ、すなわち需要が発生している状況は、イノベーションを生み出しやすいという考えです。ドラッカーはニーズを「プロセス上のニーズ」「労働力上のニーズ」「知識上のニーズ」の3つに分類しています。

産業構造の変化

産業構造の変化は、イノベーションを促す絶好の機会です。また、産業構造が変化することにより本来ならば「門外漢」であるはずの異業種の企業にもチャンスが生まれるとしています。

人口構造の変化

人口構造の変化は、現代の日本人が体感しやすい機会かもしれません。人口構造の変化は労働力や雇用、所得など多方面に影響します。同時に、新たなビジネストレンドやニーズの予測にも役立つため、イノベーションに適した機会であると考えられます。

認識の変化

事実や状況は全く同じであっても、物事のとらえ方(=認識)に変化が起これば、イノベーションを促す機会になり得ます。コロナ禍以降、認識の変化を体験する機会は非常に多かったと思います。例えば、かつては信用の代名詞であった「対面での取引」が制限され、オンラインの信用力が上昇するなど、認識の変化が新たなビジネスチャンスを生み出しています。

新しい知識の出現

いわゆる従来型のイノベーション(技術革新)に近いものですが、ドラッカーは知識を技術だけに限定していません。社会的な知識も技術と同等に重要だとしています。ただし、知識によるイノベーションは偶発的でコントロールしにくく、成果が出るまでに長い時間を要するとの意見も示しています。

7つの機会と合致するアフターコロナ

すでにお気づきの方も多いかと思いますが、コロナ禍以降、この7つの機会がすべて当てはまる時代に突入しています。パンデミックから日常業務が予期せぬ方向に変わり、人々の生活は変化を余儀なくされ、さまざまなギャップが生じました。また、オンライン上で新たなニーズが発生し、産業構造も変化しつつあります。さらに、日本は人口構造の変化の真っただ中です。価値観の多様化に伴い、労働や消費に対する認識も変わり続けています。加えて、AIをはじめとした先端技術が実用化に至り、先端技術からもたらされる新たな知見に期待が寄せられるようになりました。

このように現代はドラッカーが提唱する7つの機会が交錯する時代であり、イノベーションを起こしやすい土壌が存在していると言えるのです。

バーチャル経営が考えるイノベーションとは

ここでバーチャル経営が定義するイノベーションも併せて紹介しておきます。バーチャル経営では、ドラッカーが述べた「古いものを捨て(仕事の廃棄)新しいことを行う」「7つの機会」をベースとしつつ、以下のようにイノベーションを定義しました。

  • 中小企業にとってイノベーションとは生存戦略のひとつである
  • イノベーションとは、常に柔軟な組織として、ゲリラのように機動性を重視し、機会を捉えるためのツールである
  • イノベーション=技術革新という概念にとらわれず「社会的イノベーション」を意識する
  • イノベーションは、自動化と効率化、高付加価なビジネスモデルの構築が不可欠である
  • イノベーションへの挑戦では、小規模なチームを前提とし、小さく始めて試行錯誤を繰り返す

以後の記事ではバーチャル経営が考えるイノベーションをより具体的に提示し、ビジネスモデルの構築、新規事業のためのマーケティング手法などを紹介していく予定です。

まとめ

ここでは、イノベーションの概要やバーチャル経営における定義などを紹介してきました。イノベーション=技術革新という認識を変えることが、イノベーションを成立させるための第一歩だと思います。次回は、「社会的イノベーション」について解説します。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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