はじめに~経営者が把握しておくべき日本のビッグピクチャー

~今後10年で起こり得る”衰退”と取るべきアクション~
日本は「衰退国家」だと言われることがあります。確かに今の日本には、いっときのような勢いはありません。しかし、何が、どのくらいのスピードで衰退していくのかを具体的に把握できている人は意外と少ないのです。経営者は、国というプラットフォームの中で会社を切り盛りしていかなくてはなりません。グローバル化が進むとはいえ、大半の中小企業にとって日本というプラットフォームからの脱却は現実的ではありません。したがって、仮に衰退が確定しているのならば、それに対するカウンターアクションも準備しておくべきです。日本が今どのような状態にあり、今後10年スパンでどう変化し、何を対策すべきなのか。ここでは、日本の今と近未来をビッグピクチャー的に解説していきます。

目次

「ネガティブな日本の未来像」の正体

2021年時点の日本は、「斜陽」「衰退」といった言葉で形容される国です。しかし、それがどの程度の「傾き」なのかを定量的に理解できているでしょうか。急激に状況が悪くなるのならばともかく、大抵の場合は「猶予」が残されているはずですから、正確な状況把握を心掛けたいところです。そこで、まずどの程度の猶予があるのかを数字で把握しておきましょう。

経済成長の指標から見る日本の今

まず、最もわかりやすい数字として「GDP」と「GNI」を紹介します。GDPはご存じのとおり「国内総生産」の略称で、「日本国内で生み出された付加価値の総量」です。これに対してGNIは「国民総所得」であり、「日本国内の居住者が国内外の活動で手に入れた所得の総量」を指しています。近年は国力を測る経済仕様としてGNIが使われることもあるため、この2つの指標を見ていきましょう。

まず外務省が公表している資料を参照すると、日本の名目GDPは2019年ベースで総額が5兆818億ドル、世界ランクは3位です。これに対してGNIは国民ひとりあたり41710米ドルで世界ランクは23位となっています。※1また、ひとりあたりのGDPも同様に4万ドル強で、世界ランクは23位です。

このように国全体として生み出している付加価値は米国、中国に次いで多いものの、個人の所得はそれほど多いわけではありません。

ちなみに、ひとりあたりのGDPは1988年が2位で、1980年代後半から2000年代は10位以内を確保していました。しかし2010年代に入ると急落し、ここ数年は20位台が定位置になっているのが実情です。

つまり、2020年代の日本は「国としては優秀だが、国民一人当たりの所得はそれほど多くない(400万円強)、凡庸な先進国」という位置づけになるでしょう。

次に、GDPをもう少し掘り下げてみます。GDPは以下3つの式で表現できるものです。

A、一人あたり付加価値☓就業者数
B、一商品あたり付加価値☓量(物的生産性)
C、消費+投資+政府支出+(輸出-輸入)

この3つの式に当てはめて日本の今を整理していくと

  • 生産量を増やしたが付加価値は下がり(B)
  • 投資と政府支出と消費が下がって(C)GDPは下落傾向にある

という日本の実情が見えてきます。

経常収支

経常収支は2007年をピークに減少しています。また、現在の日本は貿易ではあまり稼いでおらず、ほぼ内需の国と言い切って良い状態です。

また、対外純資産は世界一ですが、国民一人あたり713万円の公債を負っている状態でもあります。「国の借金は多いが、ほぼ日本国民で支えているのだから安全では?」という意見もありますが、問題はその借金の質です。現在、国債の多くが短期(2年未満満期)に入れ替わっていることをご存じでしょうか。

かつて国債はその大半が長期(10年満期)だったことを考えると、「以前よりも金利上下の影響を受けやすく、やや不安定になっている」と見ることもできます。例えば、海外の物価上昇の影響で著しく金利が上がるようなことがあれば、不安定さが露呈する可能性もあるわけです。

予想される日本の崩れ方「10年後」「50年後」

2019年には、ある週刊誌に衝撃的な日本の「未来像」が掲載されました。具体的には次のような内容です。

  • 2020年に女性の過半数が50歳以上になる
  • 2025年に中小企業経営者のうち93万人が70歳以上になり引退年齢を迎える(大廃業時代の到来)
  • 2029年に生産年齢人口が7000万人を割る(2021年8月概算値では7428万3千人※3)
  • 2030年に平均年齢が50代に上昇

この未来像は主に「人口と年齢」にフォーカスし、国力の中核をなす「人の数と質」が徐々に落ちていくことを危惧したものでしょう。特に、「生産年齢に該当する人材をどう確保するか」は、経営者が今後必ず直面する課題です。

日本は「債権を取り崩す一歩手前?」

以上の情報を踏まえつつ、日本の現状とこれからを整理してみましょう。

すでに日本経済は、財の貿易やサービスによって黒字を積み上げるフェーズは終わったと考えて良いでしょう。ここ数年は、対外資産(債権など)による所得収支の黒字によって経常黒字が維持されている状態です。つまり、簡単に言えば「投資立国」に近い状態なのです。

ここで、ジェフリークローサーの「国際収支発展段階説」を引用しながら日本の今後を予想してみます。国際収支発展段階説は、国の経済的な成長と衰退を以下6つのステップで説明した考え方です。

ステップ1:未成熟の債務国
ステップ2:成熟した債務国
ステップ3:債務返済国
ステップ4:未成熟の債権国
ステップ5:成熟した債権国
ステップ6:再建取り崩し国

各ステップの詳細は割愛しますが、おおよそ読んで字のごとくの状態だと考えてください。現在の日本は「ステップ5:成熟した債権国」にあると考えられます。具体的には「賃金水準などの高さから国際競争力を失い、貿易は赤字、ただし対外債権の多さから所得と経常は黒字」という状態です。

そして、10年~30年というスパンで「ステップ6:再建取り崩し国」に突入する可能性が高いでしょう。ステップ6は、「貿易・所得・経常は全て赤字だが、対外債権を取り崩しながらなんとかやっていく」という状態です。

ちなみに経常収支は10年以内に赤字転落の可能性が示唆されており、コロナ禍でその流れが加速したという見方もあります。

以上のように日本はすでに発展のピークをすぎているどころか、衰退の終着点に突入する可能性すらあるのです。このまま単純に事が進めば、日本は「(付加価値を生み出しやすい)働き手が減り、財政が悪化して税金が上がり、所得が圧迫されて消費が減り…」といった典型的な衰退を辿るのかもしれません。

参考:
※1外務省 経済局国際経済課 主要経済指標 2021年7月
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100053858.pdf

※2 週刊ダイヤモンド 2019年 12/28・2020年 1/4 新年合併特大号(ダイヤモンド社)

※3総務省統計局 人口推計(2020年8月20日公表)
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html

衰退の時代を生き抜くカギは「本質化」

ここまでの内容を見ると、日本にはゆるやかな衰退の道しか残されていないように感じますよね。しかし、今ある日本の未来像には、「テクノロジーによるブレイクスルー」が加味されていません。

例えば国際収支段階仮説は1950年代の理論です。この理論には、現在のテクノロジーによるブレイクスルーの可能性が含まれていません。近年は、テクノロジーの力で衰退をソフトランディングさせ、できる限り社会の持続性を高める動きがありますよね。特に労働力と付加価値に関しては、テクノロジーによるブレイクスルーの可能性が大いに残されています。

具体例として内閣府が公表している「ムーンショット目標※4」を見てみましょう。同目標では、サイバネティックアバターによって人間が持つ能力(身体、認知、知覚)を拡大させるための社会基盤構築を目標としています。つまり、人間が本来持っている能力を仮想化し、アバターによって本質化することで、労働力(生産年齢人口)の不足に対するアクションとしているわけです。このことからもわかるように、今後の日本を生き抜くキーワードは「仮想化」と「本質化」にあると考えています。

経営者はどこから着手すべきか?

サイバネティックアバターの本格的な普及にはまだまだ時間がかかるでしょう。しかし、
現在実用化されているICTツールだけでも、企業活動のほぼすべてを仮想化・本質化することができます。特にクラウドベースのERP・CRM・SFA・MAなどは企業活動をデータとして吸い上げ、代替し、仮想化・本質化に導くツールです。

また、数年で日本企業の共通課題となった「DX(デジタルトランスフォーメーション)」も、仮想化・本質化の一形態であり、ICT活用はそのきっかけに成り得るでしょう。

こうした状況を鑑みて、ベンチャーネットでは、仮想化・本質化による生存戦略を「バーチャル経営」としてまとめることにしました。

参考:
※4 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/sub1.html

まとめ

ここでは、現状の日本をビッグピクチャー的に解説してきました。今後の中小企業には、「人・モノ・カネ・情報という経営の4要素を本質化し、会社の規模は変えずに成果(売上)を拡大させていく」という視点が不可欠です。バーチャル経営には、この視点を前提として、デジタル社会を生き抜くための提案を詰め込んだつもりです。次回は、「なぜ今バーチャル経営なのか」について解説します。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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