1.5か月で稼働した会社があります。
2年かかった会社もあります。
どちらも、ベンチャーネットが支援したNetSuiteの導入です。
NetSuiteの導入期間(実装期間)とは、要件定義から本番の稼働までにかかる期間のことです。
ベンチャーネットの見立てでは、標準的な導入で9〜12か月が目安です。
ただし進め方を誤ると、1.5〜2倍に膨らむこともあります。
1.5か月と2年の差は、製品の差ではありません。
では、2年かかった会社は、何が違ったのか。
いちばんユーザーの多い会社では、ありませんでした。
この記事で分かること
- 導入の型3つと期間の目安、実際の4つの事例
- 期間を左右する要因と、フェーズごとの期間
- 決算期から逆算する切替の設計と、Plan-B(遅れたときの代わりの計画)
- データ移行で時間がかかる理由と、移す順番
- これから選ぶ会社と、導入中・稼働済みの会社が見ること
カットオーバーは、旧システムから新システムへ切り替え、本番の稼働を始めることです。
要件定義は、新しいシステムで何をするかを決める工程を指します。
導入期間の目安|3つの型と4つの事例
型ごとの期間
ベンチャーネットでは、導入を3つの型に分けて期間を見立てています。
| 導入の型 | 期間の目安 | 主な特徴 | 合う会社 |
|---|---|---|---|
| ミニマムな新規導入 | 3〜6か月 | 標準の機能が中心。会計か販売管理に絞って始める | 既存のERPがなく、まず最低限から始めたい中小企業 |
| 標準的な導入 | 9〜12か月 | 主な機能を広く入れる。SuiteSuccessなどを使う | 本格的にERPを使いこなしたい中堅企業 |
| 既存ERPからのリプレイス | 12〜24か月 | データ移行と業務の見直しを伴う | データの量や拠点が多い会社 |
この期間は、製品の公式の数字ではなく、ベンチャーネットの見立てです。
一般には「6〜9か月」と1つの目安で語られることもあります。
実際には、会社の条件で倍以上の差が出ます。
ベンチャーネットが支援した4つの事例
見立ての根拠を、ベンチャーネットが支援したNetSuite導入の費用と期間で示します。
| 事例1 | 事例2 | 事例3 | 事例4 | |
|---|---|---|---|---|
| ユーザー数 | 100名程度 | 30名程度 | 20名程度 | 3名程度 |
| 機能範囲 | 購買・販売・在庫・会計 | 購買・販売・プロジェクト管理 | 購買・販売・在庫・会計 | 購買・販売 |
| 外部システム連携開発 | あり(他社SaaS・顧客独自システム) | あり(助言・QAのみ、開発は顧客側) | なし | なし |
| アドオン開発 | あり | あり | あり | なし |
| 期間 | 1.5年 | 1年 | 2年 | 1.5か月 |
| 顧客側体制 | 情シスあり | 情シス・開発会社あり | 情シスなし | 情シスなし |
| 導入費用 | 2億円程度(うち開発約7割) | 2,000万円程度 | 3,000万円程度 | 150万円程度 |
いちばん長い2年は、100名の事例1ではありません。
20名の事例3です。
社内に情報システムの担当がいないと、その分の作業をベンチャーネットが厚く支えます。
支えを厚くする分、期間も延びやすくなります。
いちばん短い事例4は、3名で購買と販売だけ、開発なしでした。
範囲を絞り、標準の機能をそのまま使えば、見立ての下限より短く稼働することもあります。
費用の中身は、NetSuiteの料金・費用で扱っています。
期間を見立てるのに要る情報
最初の相談の段階で、次の情報があると見立ての精度が上がります。
- いま使っているシステムと、使い始めてからの年数
- 拠点・子会社の数と、海外の拠点の有無
- 品目・取引先の件数のおおよそ
- 独自の帳票や、外部のシステムとの連携の数
- 稼働させたい時期と、その理由
細かい数字でなくても構いません。
「おおよそ何件か」が分かるだけで、データ移行の手間の見当がつきます。
NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上で使われるクラウドERPです(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
製品そのものはNetSuiteとは?クラウドERP入門で扱っています。
期間を左右する5つの要因
| 要因 | 期間が延びる方向 | 期間が縮む方向 |
|---|---|---|
| 導入の範囲 | 会計・販売・在庫・人事などを同時に | 会計か販売から始め、順に広げる |
| カスタマイズの量 | 独自の業務に合わせて作り込む | 標準の機能に業務を合わせる |
| データ移行 | 古いデータが多く、整理されていない | 移す範囲を絞り、早く整理を始める |
| 社内の体制 | 兼任だけで、経営層が関わらない | 専任の担当がいて、判断が早い |
| 業種の特性 | 製造の原価計算など要件が複雑 | 業種向けの型(SuiteSuccess)を使う |
導入の範囲とカスタマイズの量
NetSuiteは、会計・販売・在庫・購買・人事・CRMなどを持つ統合型のERPです。
範囲が広いほど、設計・開発・テストの手間が増えます。
会計だけなら数か月で済むものが、全機能を同時に入れると1年を超えることもあります。
作り込みを増やすほど、開発とテストの期間も延びます。
外部システムとの連携開発は、とくに重い。事例1では、費用の約7割が開発でした。
どこを標準に合わせるかは、NetSuite導入のFit&Gap分析で扱っています。
社内の体制
専任で関われる社員の数と、経営層の関わり方が、判断の速さを決めます。
通常の業務との兼任だけだと、繁忙期にプロジェクトが止まります。
最低限、次の役割を社内で決めておきます。
| 役割 | 主な仕事 | 目安の関わり方 |
|---|---|---|
| プロジェクトの責任者(経営層) | 範囲・予算・優先順位の判断 | 月1回以上の定例と、期限つきの判断 |
| プロジェクトの担当 | 日程の管理、社内の調整 | できれば専任 |
| 業務の代表(部門ごと) | 業務の説明、テスト | 要件定義とテストの時期に集中して |
| データの担当 | マスタの整理と移行の確認 | 要件定義の時期から |
1人が複数の役割を兼ねても構いません。
誰の役割かが決まっていないことが、判断の遅れを生みます。
ユーザー数が多いと、受入テストと教育の工数、社内の調整の時間も増えます。
業種の特性
- 製造業:生産管理と原価計算の要件が複雑
- 商社・卸売業:在庫と複数の倉庫の管理が要る
- サービス業:プロジェクト管理と収益認識が要になる
業種ごとの型は、第6章のSuiteSuccessで扱います。
フェーズ別の期間
標準的な導入の場合の目安です(ベンチャーネットの見立て)。
| フェーズ | 主な作業 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| ① 要件定義 | 業務の棚卸し、範囲の決定、日程の作成 | 1〜2か月 |
| ② 設計・構築 | 設定、カスタマイズの開発、機能の設計 | 3〜4か月 |
| ③ データ移行・テスト | データの整理、移行のリハーサル、利用者のテスト | 2〜3か月 |
| ④ 本番の稼働 | カットオーバー、初期のトラブルへの対応 | 1か月 |
| ⑤ 定着・改善 | 入力のルールの定着、追加の改善 | 3〜6か月 |
各フェーズの手順は、NetSuite導入の流れ|5フェーズで分かる進め方で扱っています。
フェーズごとの成果物と、経営者が決めること
期間を守るには、各フェーズの終わりに「何ができていれば次に進めるか」を決めておきます。
| フェーズ | 終わりの成果物 | 経営者が決めること | 決めないと起きること |
|---|---|---|---|
| ① 要件定義 | 業務の一覧、やること・やらないことの一覧 | 最初の段階の範囲、予算の上限 | 範囲が膨らみ続ける |
| ② 設計・構築 | 設定の一覧、作り込みの一覧 | 標準に合わせる業務と、作り込む業務 | 作り込みが増え、期間と費用が膨らむ |
| ③ データ移行・テスト | 移行のリハーサルの結果、テストの記録 | 移す過去のデータの範囲、稼働の可否 | 整理が終わらず、稼働が遅れる |
| ④ 本番の稼働 | 切替の手順書、問い合わせの窓口 | 切替の日、旧システムを止める日 | 旧と新の二重入力が続く |
| ⑤ 定着・改善 | 入力のルール、見る数字の一覧 | 次の段階に入れる業務 | 使われない機能が残る |
3列目は、担当者に任せると止まりやすい判断です。
定例の議題に、先に載せておきます。
並行で進める作業と、順番を守る作業
| 並行で進めてよい組み合わせ | 順番を守るべき組み合わせ |
|---|---|
| 要件定義 と データの棚卸し | 要件定義の完了 → 設計の開始 |
| テスト と 利用者の研修の準備 | テストの完了 → 本番の稼働 |
並行できる作業を見極めることが、期間を短くする判断の中心です。
定着のフェーズを軽く見ない
稼働した直後の3〜6か月は、現場が新しいシステムに慣れる期間です。
この時期に入力のルールが定着しないと、ダッシュボードの数字が信頼されなくなります。
「数字が合わない」状態が続くと、現場はNetSuiteを使わなくなっていきます。
導入の成功は、稼働した日ではなく、定着した日に決まります。
決算期から逆算する切替の設計
「何か月かかるか」と同じくらい効くのが、「いつ切り替えるか」です。
期首の切替と期中の切替
| 選択肢 | 利点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 期首の切替 | 決算のデータを年度で分けやすい。年度の替わり目で業務を切り替えやすい | 期首の前のテスト期間が短くなりがち |
| 期中の切替 | 日程を選ぶ自由度が高い | 旧システムと新システムの会計のデータをつなぐ作業が要る |
特別な事情がなければ、期首の切替をおすすめしています。
決算月の前後は経理の繁忙期のため、カットオーバーを重ねないようにします。
期中に切り替える場合は、次の3つを先に決めます。
- 切替の日の時点の残高を、どの数字で移すか
- 期首から切替の日までの取引を、新システムに移すか、旧システムに残すか
- 年度の決算を、どちらのシステムの数字をもとに作るか
決めないまま進めると、決算の時期に二つのシステムの数字を手作業で合わせることになります。
顧問の会計士・税理士とも、早めにすり合わせておきます。
逆算の目安
稼働させたい期首から逆算して、着手の時期を決めます(ベンチャーネットの見立て)。
ミニマムな新規導入は6か月前、標準的な導入は12か月前。
リプレイスなら、18〜24か月前から準備を始めます。
NetSuiteのリリースの時期も、日程に入れておきます。
公式ヘルプでは、大きなリリースは年2回で、各社は数か月かけて順にアップグレードされると説明しています。
(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)
自社のアップグレードの予定日と、カットオーバーの日が重ならないようにします。
備え方は、NetSuiteのバージョンアップへの備え方で扱っています。
Plan-Bを前提にした日程
ERPの導入は、予定どおりに進まないことが珍しくありません。
最短の日程ではなく、Plan-Bを織り込んだ日程を最初に組みます。
- 各フェーズに15〜20%の余裕を持たせる
- 「3か月遅れたら、どこで取り戻すか」を最初に合意する
- 重要な節目を決め、進み具合を見えるようにする
Plan-Bがあるから安心して進められる。その状態を作るほうが、結果的に早く終わります。
データ移行が期間に与える影響
期間が延びる最大の原因になりやすいのが、データ移行です。
時間がかかるのは「整理」
時間がかかるのは、移す作業ではなく、データの整理です。
長く使ってきたシステムには、次のような課題がたまっています。
- 品目名の表記ゆれ:同じ部品が「Aパーツ」「A部品」で別のデータになっている
- 廃番品の未削除:もう扱っていない商品が大量に残っている
- 取引先の重複:「株式会社」「(株)」の違いで別に登録されている
- 勘定科目の不整合:部門ごとに違う科目で計上されている
これらの整理には、想定の倍の時間がかかるのが普通です。
早く進めるには、作業の前にルールを決めます。
- 表記の統一の基準:会社名の「株式会社」の位置、全角と半角、品目名の付け方
- 廃番の判定の基準:最後の取引から何年たった品目を移さないか
- 重複の判定の基準:どの項目が同じなら、同じ取引先とみなすか
ルールがないまま担当者ごとに直すと、直した後にまた表記がばらつきます。
移す順番と範囲
- マスタ:品目・取引先・勘定科目から始める
- 残高:在庫の数量・売掛金と買掛金・固定資産など
- 過去の取引:経営の判断に要る範囲に絞る(ベンチャーネットでは最大2〜3年を目安にしています)
過去のデータをすべて移そうとすると、整理に膨大な時間がかかります。
移さない過去のデータは、旧システムや書き出したファイルで、必要なときに見られるようにしておきます。
保存の期間や方法は、会計士・税理士とも相談しておきます。
移行のリハーサル
本番の前に、テスト環境で一度通しで動かす「移行のリハーサル」を行います。
取込のエラー、文字化け、マスタどうしのつながりの不整合などが、ここで見つかります。
NetSuiteのSandboxは、本番に影響させずに試せる環境です。
公式ヘルプでは、本番と同じ設定・データ・カスタマイズを持ち、依頼すれば本番から更新できると説明しています。
取得は、アカウントの担当に問い合わせます(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。
リハーサルを何回、いつ行うかを最初の日程に入れておくと、終盤で慌てません。
使い方はNetSuiteのサンドボックスとは、移行の進め方は基幹システムのデータ移行ガイドで扱っています。
「要件定義が終わってから移行の準備」では、終盤で必ず時間が足りなくなります。
業務の棚卸しとデータの棚卸しは、同時に始めます。
期間を短くする5つの方法
SuiteSuccessを使う
SuiteSuccessは、Oracle NetSuiteが業種ごとに用意した導入の型です。
公式サイトでは、業種ごとの業務の流れと機能に、KPI・役割ごとのダッシュボード・レポート・ワークフローを組み込んだものと説明しています。
重要な機能から先に稼働し、必要に応じて機能を足す進め方が前提です(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。
| 比べる軸 | SuiteSuccessを使う | ゼロから設計する |
|---|---|---|
| 期間(ベンチャーネットの見立て) | 3〜6か月(ミニマム)/9〜12か月(標準) | 12〜18か月以上 |
| 業務の合い方 | 業種の標準の業務に合いやすい | 独自の業務に細かく合わせられる |
| カスタマイズ | 最小限 | 大きくできるが、費用と期間が膨らみやすい |
| 稼働した後 | 年2回のリリースに追いつきやすい | 作り込みが多いほど、リリースごとの確認が増える |
「うちは特殊だから標準では無理」と思われがちです。
ベンチャーネットの経験では、標準の機能で対応できる業務が多くあります。
詳しくはNetSuite SuiteSuccessとはで扱っています。
小さく始めて、順に広げる
全機能を最初から入れるのではなく、重要な機能から始めます。
会計か販売管理から始めて、半年〜1年ごとに機能を足していく形です。
- 商社・卸売業:販売管理 → 在庫管理 → 会計
- 製造業:会計から始め、生産管理は次の段階で
- サービス業:会計とプロジェクト管理を最初に。CRMは運用に慣れてから
最初の段階で稼働させると、現場の慣れが進み、次の段階の要件の精度も上がります。
経営層が関わり続ける
ERPの導入は、ITのプロジェクトではなく経営のプロジェクトです。
ベンチャーネットでは、次の2つを最初に合意することをおすすめしています。
- 経営層が、月1回以上の定例に出る
- 重要な判断を、2週間以内に出す
部門の意見が割れたとき、予算が見込みを超えそうなとき、旧システムの帳票をどこまで諦めるか。
こうした判断は、現場の担当者だけでは下せません。
判断待ちが1週間、2週間と続くうちに、日程は少しずつ遅れていきます。
「やらないこと」を最初に決める
要件定義の段階で、「やること」だけでなく「やらないこと」を書き出します。
最初の段階ではここまで、それ以外は次の段階で検討する、と切り分けます。
100点を最初から目指さず、80点で稼働させ、残りは運用しながら直します。
経験のあるパートナーと組む
どこを標準で済ませ、どこを作り込むか。
データ移行のどこに落とし穴があるか。
どのフェーズを並行で進めても安全か。
こうした判断は、自社だけで下すには経験が要ります。
選び方は、NetSuiteパートナーの選び方で扱っています。
削ってはいけない工程と、日程の読み方
削ってはいけない工程
次の3つを削ると、表の上では数か月短くなっても、稼働した後にやり直しになります。
| 削りたくなる工程 | 削ると起きること |
|---|---|
| 要件定義 | 後の工程で手戻りが起きる |
| テスト | 稼働した直後に現場が混乱する |
| 現場の研修 | 使われないシステムになる |
短くしてよいのは、判断の待ち時間と、最初に入れる範囲です。
短くしてよいものと削ってはいけない工程を並べると、次のとおりです。
見積りの日程を読むときに見る点
受け取った日程は、短さより、前提が書かれているかで読みます。
| 見る点 | 見るところ |
|---|---|
| 範囲 | 最初の段階に入る業務と、入らない業務が書かれているか |
| 作り込み | 作り込みの件数と、その分の期間が見込まれているか |
| データ移行 | 移すデータの範囲と、整理を誰が行うかが書かれているか |
| リハーサル | 移行のリハーサルの回数と時期が入っているか |
| 社内の工数 | 自社の担当者に求める時間が書かれているか |
| 余裕 | 各フェーズに余裕の期間があるか |
| 定着 | 稼働した後の支えの期間が含まれているか |
特に見落とされやすいのが、社内の工数です。
パートナーの作業の期間だけが書かれた日程は、後で延びがちです。
導入前の確認項目は、NetSuite導入チェックリストにもまとめています。
判断の物差し|どの進め方が合うか
短い期間で始めやすいのは、次のような会社です。
- 既存のERPがなく、会計か販売から始められる
- 標準の業務に合わせることに、経営層が前向き
- 専任の担当を1人以上置ける
反対に、既存のERPのデータが多く整理が進んでいない会社は、期間を長めに見ます。
拠点や子会社を同時に切り替えたい会社、作り込みを減らせない会社も同じです。
| 進め方 | 合う条件 | 注意点 |
|---|---|---|
| NetSuiteを小さく始める | 1つの業務から早く稼働させたい | 次の段階の計画を先に持つ |
| NetSuiteを全社で一度に | 業務が単純で、拠点が少ない | テストの範囲が広がる |
| Odoo | 費用を抑え、必要なアプリから始めたい | 自社で持つ範囲と、日本の業務への合わせ方を見る |
| 国産ERP | 国内だけで完結し、日本の帳票を重視する | 海外拠点の管理は製品ごとに違う |
| AIスクラッチ開発 | 業務の一部だけを自社に合わせて作りたい | 保守を自社か外部で持ち続ける |
| いまは入れない | 取引が少なく、会計ソフトとExcelで回っている | 稼働させたい時期から逆算して、準備だけ始める |
期間だけで選ぶと、稼働した後の手間を見落とします。
「稼働までの期間」と「稼働した後の保守」をセットで比べます。
これから選ぶ会社と、導入中・稼働済みの会社
これから選ぶ会社
見積りを頼む前に、次の3つを決めておくと、期間の見立てが正確になります。
- 稼働させたい期首(決算期)
- 最初の段階で入れる業務と、入れない業務
- 移すデータの範囲(マスタ・残高・過去の取引の何年分)
補助金を使う場合は、公募の日程に合わせた逆算も要ります。
デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)の使い方は、補助金でNetSuiteを導入する方法で扱っています。
導入中で、予定より長引いている会社
- 要件定義で決めた「やらないこと」が、いつの間にか減っていないか
- 判断待ちの課題が、2週間を超えて残っていないか
- データの整理を、誰がいつまでに終えるかが決まっているか
パートナーとの進め方そのものに原因がある場合は、パートナー変更(リプレイス)という選択肢もあります。
稼働済みで、次の段階を考えている会社
第2段階の期間は、第1段階より短くなることが多くあります。
データと操作に慣れた状態から始められるためです。
ただし、年2回のリリースの時期と、決算の繁忙期は避けて計画します。
第2段階の前に、第1段階を振り返っておくと、次の見立てが正確になります。
予定より延びたフェーズとその理由、使われていない機能や帳票、標準で済む現場の要望の3つです。
よくある失敗3つ
失敗1:「やらないこと」を決めず、要件定義が終わらない
起きること:「あれもこれも」と希望が膨らみ、いつまでも設計に入れない。6か月の予定が10か月、12か月と延びる。
原因:最初の段階の範囲と、次の段階に回すことを決めていなかった。
避け方:要件定義の最初に「やらないこと」の一覧を作ります。80点で稼働させ、残りは次の段階で検討すると明記します。
失敗2:いまの業務や帳票を、そのまま再現しようとする
起きること:「30年使ってきた帳票をそのまま出したい」「画面も今と同じに」と作り込みが増え、期間が1.5〜2倍になる。
原因:システムを入れることが目的になり、業務を見直す機会と捉えていなかった。作り込みが多いほど、年2回のリリースごとの確認も増えます。
避け方:標準の機能で対応できる業務は、まずそのまま使います。標準で対応できない業務だけ、本当に作り込みが要るかを経営層も入って議論します。
失敗3:データ移行を後回しにし、経営層も現場任せにする
起きること:テストの段階で「データの整理が終わっていない」と気づく。判断待ちも重なり、稼働が1〜2か月遅れる。
原因:データ移行を最後の工程と考え、部門をまたぐ判断を現場の担当者に任せていた。
避け方:データの棚卸しを要件定義と同時に始めます。経営層の月1回の定例と、2週間以内の判断を最初に合意します。
全機能を一度に稼働させると、1か所の不具合を直すために、ほかの業務のテストもやり直すことになります。
在庫の修正で販売を、販売の修正で会計を、と再テストが連鎖します。
小さく始めることは、この連鎖を短くする方法でもあります。
ベンチャーネットならこう見る|「見える化→整理整頓→Fit&Gap」と定着の4手順
期間の相談を受けたとき、最初に見るのは3つです。
- 稼働させたい日:期首はいつか。そこから逆算して間に合うか
- データの状態:マスタの重複と表記ゆれが、どれだけあるか
- 判断の体制:経営層の定例と、判断の期限を決められるか
3つ目が決まらないうちは、どんなに短い見積りでも当てになりません。
型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap
範囲は、いまの機能の一覧からは決めません。
まず業務の見える化で、いまの流れを現場に聞いて描きます。
次の整理整頓で、やめる・まとめる・そろえる業務を決めます。
残った業務だけを、NetSuiteの標準機能と照らし合わせます(Fit&Gap)。
やめる業務を先に決めるほど、照らし合わせる数が減り、設計と構築の期間が縮みます。
型2:定着の4手順
公開事例のキュリエ様で定着を支えたのは、次の4つの手順でした。
- データ整理を最初に
- 段階的に導入
- 研修・サポートを徹底
- 操作はシンプルに(使わない機能を盛らない)
期間に置き換えると、移行の準備は要件定義と同時に始める。
最初の範囲を絞り、動かしながら広げる。
研修の期間は日程から削らない。
使わない機能を盛らなければ、テストの範囲も狭まります。
情報システムの担当が少ない会社でも、進める体制は組めます。
ただ第1章の事例3のとおり、その分の支えを厚くし、期間は長めに見ます。
要件を伺うのは営業ではなく導入コンサルタントで、伝言ゲームにしません。
逆算の例(架空の会社)
3月決算の会社が、標準的な導入で2028年4月1日に稼働させる場合の例です。
会社名も数字も架空で、進め方の形を示すためのものです。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2027年4〜5月 | 要件定義。同時にデータの棚卸しを始める |
| 2027年6〜9月 | 設計・構築。作り込みの一覧を経営層が見る |
| 2027年10〜12月 | 移行のリハーサルを2回、利用者のテスト |
| 2028年1〜2月 | 余裕の期間。研修と、最後のリハーサル |
| 2028年3月 | 年度末の業務を優先し、切替の準備だけ進める |
| 2028年4月1日 | 期首に切替。以後3〜6か月は定着の支え |
2028年1〜2月の余裕が、Plan-Bの期間です。
遅れが出なければ、研修に時間を回せます。
見落としやすいのが、切替の直後の4〜5月です。
前の年度の決算を旧システムで締める作業と、新システムでの最初の月次が重なります。
この時期は経理の体制を厚くし、旧システムをいつまで見られる状態で残すかも決めておきます。
今日できること|逆算の表を作る
次の表を、自社の条件で埋めてみてください。
| 項目 | 自社の場合 |
|---|---|
| 稼働させたい期首 | (例)2028年4月1日 |
| 型(ミニマム・標準・リプレイス) | |
| 逆算の着手の時期 | (例)標準なら12か月前 |
| 最初に入れる業務 | |
| 最初は入れない業務 | |
| 品目と取引先のデータの件数 | |
| 社内の情報システムの担当の有無 | |
| 判断する経営層と、定例の日 |
「最初は入れない業務」の行が空いたままなら、そこが最初の打ち合わせの議題です。
品目と取引先の件数が分かると、データの整理の手間の見当もつきます。
よくある質問
Q1. NetSuiteは最短で何か月で導入できますか
ミニマムな新規導入で3〜6か月が目安です。
会計か販売管理のどちらかに絞り、標準の機能をそのまま使う前提の期間です(ベンチャーネットの見立て)。
3名程度で購買・販売だけ、開発なしの事例では、1.5か月で稼働しました(第1章)。
Q2. データ移行だけで、どのくらいかかりますか
少なくとも1〜2か月は見込みます。
時間がかかるのは、移す作業より整理の作業です。
既存のERPからのリプレイスでは、データ移行だけで3〜6か月かかることもあります。
Q3. フェーズを並行で進めれば早くなりますか
並行してよい作業といけない作業があります。
データの棚卸しと要件定義は並行できます。
要件定義が終わらないまま設計を始めると、後で大きな手戻りが起きます。
Q4. 補助金は使えますか
デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)の対象になる場合があります。
対象になるかは、その回の登録の状況で変わります。
申請から交付の決定まで時間がかかるため、補助金の日程に合わせて導入を計画します。
Q5. 短くしすぎると、稼働した後に問題が出ませんか
工程を削ると出ます。
要件定義・テスト・研修を削ると、稼働した直後に現場が混乱します。
短くするのは、判断の待ち時間と、最初に入れる範囲です。
Q6. いつ切り替えるのがよいですか
特別な事情がなければ期首がおすすめです。
決算のデータを年度で分けやすいためです。
決算の繁忙期と、NetSuiteのアップグレードの予定日は避けます。
Q7. 導入が予定より長引いています。どうすればよいですか
「やらないこと」と判断待ちの課題を洗い出します。
範囲が膨らんでいないか、判断が止まっていないかを見ます。
原因が進め方そのものにある場合は、パートナーの見直しも選択肢です。
まとめ
- 期間の目安は、ミニマム3〜6か月、標準9〜12か月、リプレイス12〜24か月(ベンチャーネットの見立て)
- 支援した事例では1.5か月から2年まで。20名で2年かかった事例は、社内に情報システムの担当がいなかった
- 切替は決算期から逆算し、リリースの時期と繁忙期を避ける
- データ移行は要件定義と同時に始め、Sandboxでリハーサルする
- 短くするのは判断の待ち時間と範囲。要件定義・テスト・研修は削らない
1.5か月と2年の差は、製品ではなく、最初の範囲と社内の体制で生まれました。
まずは第12章の表で、自社の期首と「最初は入れない業務」を書き出してください。
もう少し詳しく知りたい方へ
自社の条件で、何か月で稼働できるか。
稼働させたい期首からの逆算と、最初の範囲の決め方から、ご相談をお受けしています。
導入でよく受ける質問は、NetSuite導入でよく受ける質問と回答にもまとめています。

コメント
コメント一覧 (1件)
[…] NetSuiteの場合の導入全体の期間は、NetSuiteの導入期間で扱っています。 […]