売上総利益(粗利)とは?営業利益との違い・計算方法・経営での活かし方をわかりやすく解説

「粗利がこれだけ出ているなら、お金は残っているはずだ」

そう思って通帳を見て、首をかしげる経営者は少なくありません。

粗利は、手元のお金とは別の数字だからです。

売上総利益とは、売上高から売上原価を引いた利益です。

「粗利(あらり)」「粗利益」とも呼ばれ、損益計算書で最初に出てくる利益です。

商品やサービスそのものが、どれだけ稼ぐ力を持っているかを表します。

ただ、会社全体の粗利を1つの数字で眺めても、次の打ち手は見えてきません。

商品別・部門別に分けて月ごとに追うと、はじめて動かせる数字になります。

では、粗利を追える会社になると、経営の何が変わるのか。

計算のしかたから順に見て、最後にその答えに戻ります。

目次

この記事で分かること

  • 売上総利益(粗利)の意味と計算式、具体例
  • 営業利益など5つの利益との違い
  • 粗利率の見方と、業種で水準が違う理由
  • 粗利の読み方で陥りやすい3つの落とし穴
  • 粗利を追える会社が進む3つの段階(守り→攻め→次へ)

売上総利益(粗利)とは

意味と計算式

売上総利益 = 売上高 − 売上原価

売上原価は、売れた商品の仕入や製造にかかった費用です。

仕入れた商品の代金や、製造に使った材料費などが入ります。

30万円で仕入れた商品を50万円で売れば、売上総利益は20万円。

この20万円が、商品が生んだ付加価値の分の利益です。

決算書でのルール

上場企業などが使う財務諸表等規則は、売上高から売上原価を引いた額を「売上総利益金額」と表示すると定めています。

売上原価のほうが大きければ「売上総損失金額」です(出典:e-Gov法令検索「財務諸表等規則」第83条、2026年9月確認)。

売上原価の表示は、次の3つの項目で組み立てます(同 第75条)。

  • 商品または製品の期首棚卸高
  • 当期商品仕入高、製造業なら当期製品製造原価
  • 商品または製品の期末棚卸高(差し引く)

式にすると、売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 − 期末棚卸高。

引くのは、仕入れた額ではありません。

「売れた分」の原価だけです。

計算例(架空の数字)

ある卸売の会社の1年を、架空の数字で計算します。

項目金額
売上高1億円
期首の在庫1,000万円
当期の仕入6,500万円
期末の在庫1,500万円

売上原価は、1,000万円+6,500万円−1,500万円=6,000万円です。

売上総利益は、1億円−6,000万円=4,000万円。

粗利率は、4,000万円÷1億円×100=40%になります。

計算の流れを図にすると、次のとおりです。

売上原価と粗利の出し方(架空の例) 期首の在庫1,000万円に当期の仕入6,500万円を足し、期末の在庫1,500万円を引いた6,000万円が売上原価。売上高1億円から引いた4,000万円が売上総利益で、粗利率は40%。期末の在庫を数え間違えると原価も粗利も動く。 売上原価と粗利の出し方 (架空の卸売の会社・1年) 期首の在庫 1,000万円 + 当期の仕入 6,500万円 − 期末の在庫 1,500万円 売上原価 6,000万円 引くのは「売れた分」の原価だけ 売上高 1億円 − 売上原価 売上総利益(粗利) 4,000万円 粗利率 40% 期末の在庫を数え間違えると、 売上原価も粗利も動く
売上原価と粗利の出し方(架空の例)

仕入は6,500万円でも、原価は6,000万円。

差の500万円は、期末の在庫として翌期に回ります。

期末の在庫を数え間違えると、売上原価も粗利も動きます。

粗利の正しさは、在庫の数と金額の正しさに支えられているわけです。

「粗利」と「売上総利益」の呼び方

「粗利」は現場の通称で、「売上総利益」は決算書の正式な名称です。

意味は同じと考えて差し支えありません。

売上総利益と営業利益の違い

違いは、どこまでの費用を引いたかです。

営業利益は、売上総利益から販管費を引いた利益です。

販管費(販売費及び一般管理費)は、商品を売るためや、会社を運営するためにかかる費用を指します。

人件費・広告宣伝費・家賃などが代表例です。

観点売上総利益(粗利)営業利益
計算式売上高 − 売上原価売上総利益 − 販管費
何を表すか商品・サービスの稼ぐ力本業全体の稼ぐ力
引いている費用売上原価のみ売上原価 + 販管費
主な使い道商品・事業の収益性を見る経営全体の効率を見る

粗利が高くても、販管費が大きければ営業利益は小さくなります。

両方を並べると、稼ぎの構造がつかめます。

販管費の中身は、販売費及び一般管理費(販管費)とは?で扱っています。

5つの利益の中での位置

利益の種類計算式分かること
売上総利益(粗利)売上高 − 売上原価商品の稼ぐ力
営業利益売上総利益 − 販管費本業の稼ぐ力
経常利益営業利益 ± 営業外損益財務を含めた通常の稼ぐ力
税引前当期純利益経常利益 ± 特別損益臨時の要因も含めた利益
当期純利益税引前当期純利益 − 税金最終的に残る利益

粗利は、5つの利益の出発点です。

最終の利益は当期純利益の計算方法・出し方は?、損益計算書の全体は損益計算書と貸借対照表を活用したデータドリブンな経営で扱っています。

売上総利益率(粗利率)とは

粗利率は、売上高に対する売上総利益の割合です。

売上総利益率(%)= 売上総利益 ÷ 売上高 × 100

高いほど、付加価値の高い商品・サービスを売っていることになります。

ただし、適正な水準は業種で大きく違います。

製造業・小売業・サービス業では原価のかかり方が違い、平均的な粗利率にも差が出ます。

自社の粗利率の良し悪しは、一律の基準では決められません。

自社の過去の推移と、同業他社との比較で見ます。

各種の利益率は利益率の計算方法、売上原価の出し方は売上原価とは?が参考になります。

粗利の読み方で陥りやすい3つの落とし穴

用語を知っていても、読み方を誤ると判断を誤ります。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが、ご相談の中でよく見るつまずきです。

粗利の読み方の3つの落とし穴 会社全体の粗利しか見ないなら商品別・事業別・部門別に分ける。粗利を手元のお金と思うなら、粗利・利益・お金の流れを分けて見る。粗利率を一度測ったままなら、月単位で推移を見る。 粗利の読み方の3つの落とし穴 1 会社全体の粗利しか見ない → 商品別・事業別・部門別に分ける 2 粗利=手元に残るお金と思う → 粗利・利益・お金の流れを分けて見る 3 粗利率を一度測って、そのまま → 月単位で推移を見る どれも、ご相談の中でよく見るつまずき
粗利の読み方の3つの落とし穴

落とし穴1:会社全体の粗利しか見ていない

起きること:全社の粗利率は分かる。けれど、どの商品・事業が稼いでいるかを説明できない。

気づかないうちに、赤字の商品にコストをかけ続ける。

原因:儲かっている商品の利益が、不採算の商品の損失を覆い隠している。

避け方:粗利を商品別・事業別・部門別に分けます。

どこで稼ぎ、どこで失っているかが見えると、打ち手を選べます。

採算の分け方は、限界利益と貢献利益の違いも参考になります。

落とし穴2:「粗利=手元に残るお金」と思ってしまう

起きること:粗利は十分に出ているのに、会社にお金が残らない。

原因:粗利は、販管費・税金・借入の返済を引く前の数字である。

売上の入金や在庫の支払の時期も、ずれる。

避け方:粗利・営業利益・最終の利益・お金の流れを、分けて見ます。

お金の流れは、キャッシュフローとは?で扱っています。

落とし穴3:粗利率を一度測って、そのままにしている

起きること:決算のときだけ粗利率を計算し、期の途中では追わない。

気づいたときには、利益率が下がっていた。

原因:仕入の値上がりや値引きの積み重ねは、少しずつ利益を削る。

年に一度では、手を打つ時期を逃す。

避け方:粗利率は、月単位で推移を見ます。

締めの進め方は、月次決算とは?が参考になります。

Excelで足りる段階と、仕組みが要る段階

粗利をどこまで細かく見るかは、会社の段階で変わります。

段階見る単位合う道具
会社全体を月1回見る全社の粗利・粗利率会計ソフトの試算表
商品・部門で分けて見る商品別・部門別・顧客別会計ソフト+Excel、または販売管理
日々の取引から自動で出す取引ごとに原価と売上がひもづくERP(NetSuite・Odoo・国産ERPなど)

Excelで足りる段階

  • 商品の数が少なく、月の取引も少ない
  • 在庫をほとんど持たない(サービス業など)
  • 集計する人が決まっていて、月1回で困っていない

この条件がそろうなら、あわててシステムを入れる必要はありません。

「いまは入れない」も、立派な判断です。

仕組みが要る段階

  • 商品別の粗利を出すのに、毎月数日かかる
  • 在庫の金額が、月末の棚卸まで分からない
  • 値引きや仕入の値上げの影響に、数か月後に気づく
  • 集計できる人が1人しかいない

どちらの段階かの見分け方を図にすると、次のとおりです。

Excelで足りるか、仕組みが要るかの見分け方 商品別の粗利に毎月数日かかる、在庫の金額が月末まで分からない、集計できる人が1人しかいない、のどれかに当てはまるなら仕組みが要る段階。当てはまらなければExcelで足り、いまは入れないのも判断になる。 Excelで足りるか、仕組みが要るか 次のどれかに当てはまるか 商品別の粗利を出すのに毎月数日かかる 在庫の金額が月末の棚卸まで分からない 集計できる人が1人しかいない いいえ はい Excelで足りる 会計ソフトの試算表 +Excelで見る 「いまは入れない」も 立派な判断 月1回で困っていない 仕組みが要る 販売管理を足す 国産ERP・Odoo NetSuiteのようなERP AIスクラッチ開発 選択肢は1つではない
Excelで足りるか、仕組みが要るかの見分け方

選択肢は1つではありません。

販売管理を足す、国産ERPを入れる、Odooで必要な機能から始める。

自社だけの原価の出し方が強みなら、AIを使ったスクラッチ開発も候補に入ります。

拠点や事業が増え、取引ごとに原価を持ちたい会社には、NetSuiteのようなERPが合います。

NetSuiteでは、売上と売上原価が取引ごとに記録されます。

記録を部門・クラス・場所で分類し、分類ごとに絞ったレポートを作れます(出典:Oracle NetSuiteヘルプ、2026年9月確認)。

在庫の原価の計算方法は品目ごとに選び、品目を保存した後は変えられません(同)。

方法は会計方針で決まるので、会計士・税理士と決めてから品目を登録します。

これから整える会社と、見直す会社

これから粗利を見る仕組みを整える会社は、どの単位で粗利を見たいかを先に決めます。

商品別か、部門別か、顧客別か、案件別か。

売上は顧客別に分かるのに、原価は月の合計しかない。そんな会社は珍しくありません。

売上と原価が同じ単位でひもづくかどうかが、最初の関門です。

いまの仕組みを見直す会社は、会計ソフトや販売管理の更新・保守の期限がきっかけになりがちです。

このときは、いまの仕組みで「出せない粗利」を書き出します。

出せない単位、出すのにかかる日数、数字が合わない場所(在庫の金額など)の3つです。

これが、次の仕組みに求める条件になります。

更新か乗り換えかは、基幹システムは「更新」か「乗り換え」かが参考になります。

ベンチャーネットならこう見る|粗利を追える会社の「守り→攻め→次へ」

ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。

粗利のご相談では、製品より先に、会社がいまどの段階にいるかを見ます。

段階は3つです。

定着の先の3段階:守り→攻め→次へ 守りは業務が回ること、攻めはデータで打つこと、次へは経営が変わること。 定着の先の3段階守り|業務が回る在庫・販売・会計を1つにし、日々の業務を安定させる攻め|データで打つ売れ筋・在庫の分析、営業作業の自動化、生成AIでの集計次へ|経営が変わるKPI、管理会計、上場に向けた内部統制
定着の先の3段階:守り→攻め→次へ
  • 守り|業務が回る:在庫・販売・会計の数字がつながり、粗利が正しく出る。第1章の「期末の在庫」が合っている状態です
  • 攻め|データで打つ:商品別・顧客別の粗利を毎月見て、値決めや品ぞろえを動かす。売れ筋や在庫の分析、集計の自動化もここに入ります
  • 次へ|経営が変わる:粗利をKPIに組み込み、管理会計で事業ごとの採算を判断する。上場を目指す会社なら、内部統制まで視野に入ります

多くの会社は、守りの段階で止まっています。

集計に手間を取られ、数字を読む時間が残らないからです。

最初の打ち合わせで伺うのは、主に次の3つです。

  • その粗利で、何を決めたいか(値決め・品ぞろえ・担当の配置など)
  • 決めるために、どの単位の粗利が要るか
  • 在庫の金額は、どのくらい正しいか

答えが「まだ守りの途中」なら、仕組みより先に在庫と原価の数字を整えます。

KPIの置き方と画面の作り方は、経営ダッシュボードの作り方で扱っています。

今日できること|粗利を3つの単位で分けてみる

直近の1か月の売上を、次の表に分けてみてください。

単位売上原価粗利率
上位3商品
上位3顧客
部門ごと

あわせて、1行を埋めるのにかかった時間を書き留めます。

1時間で埋められない単位が、仕組みで補うべき場所です。

粗利率が全社の平均より大きく低い行は、次の打ち手の候補になります。

よくある質問

Q1. 売上総利益と粗利は同じ意味ですか?

同じ意味です。

「売上総利益」が決算書で使う正式な名称で、「粗利(粗利益)」が現場の通称です。

どちらも、売上高から売上原価を引いた利益を指します。

Q2. 売上総利益と営業利益の違いは何ですか?

引いている費用の範囲が違います。

売上総利益は、売上原価だけを引いた利益です。

営業利益は、そこからさらに販管費を引いています。

Q3. 売上総利益率はどのくらいが目安ですか?

一律の目安はありません。

原価のかかり方が違うため、業種で水準が大きく変わります。

自社の過去の推移や、同業他社との比較で判断します。

Q4. 粗利を正しく管理するにはどうすればいいですか?

月単位で商品別・部門別に分けて見ることです。

変化に早く気づける状態をつくります。

手作業の集計に時間がかかるなら、仕組みで集計を自動にする時期です。

Q5. 売上原価には何が含まれますか?

売れた商品の仕入や製造にかかった費用です。

決算書では、期首の在庫に当期の仕入(製造業は製造原価)を足し、期末の在庫を引いて出します。

仕入れた額そのものではありません。

Q6. 粗利が赤字になることはありますか?

あります。

売上原価が売上高を上回れば、売上総損失になります。

値引きのしすぎや、原価の上昇を価格に移せていない場合に起きます。

まとめ:粗利の数字を、経営の打ち手につなげる

  • 売上総利益(粗利)は、売上高から売上原価を引いた、商品の稼ぐ力を表す利益
  • 売上原価は「期首棚卸高+当期仕入高−期末棚卸高」。売れた分だけを引く
  • 営業利益は、粗利からさらに販管費を引いた本業の利益
  • 粗利率の水準は業種で違う。自社の推移と同業で比べる
  • 落とし穴は「全社でしか見ない」「粗利=お金と思う」「年1回しか見ない」
  • 粗利を追える会社は、守り→攻め→次へと進む

粗利が出ているのにお金が残らない。

その違和感は、粗利を分けて、月ごとに追い始めたときに、答えの形が見えてきます。

まずは上の表の1行目から、埋めてみてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

粗利をどの単位で、どう見るべきかは、会社の商売の形で変わります。

数字の見方の整理から、ご相談をお受けしています。

関連記事:NetSuiteで変動費・固定費を「固変分解」し、利益体質の会社をつくる方法

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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