月末の経営会議。
3か月前に終わった案件が、赤字だったと報告される。
直すには、もう遅い。
IT・コンサルティング・広告など、案件単位で動く会社でよく聞く場面です。
NetSuiteのプロジェクト管理機能とは、案件の計画・人の割り当て・工数・経費・請求・会計を、1つの基盤でつなぐ仕組みです。
名前は「SuiteProjects」です。
NetSuiteの本体に足すアドオン・モジュールとして提供されています(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
進捗の管理だけが目的なら、Excelや専用ツールで足ります。
NetSuiteが候補に入るのは、案件の採算を「進行中に」経営の判断に使いたくなったときです。
では、採算が見えるまでの遅れは、どこで生まれているのか。
ツールの差より、数字が散らばる場所の差であることが多いのです。
この記事で分かること
- NetSuiteのプロジェクト管理機能でできること
- Excel・専用ツール・個別SaaSとの違い
- 案件ごとの採算を見える化する仕組み
- 導入の費用と期間を左右する4つの要因
- NetSuiteが向いている会社と、他の選択肢が合う会社
- 選びと導入でつまずく、よくある3つの失敗
ERPは、会社全体の仕事を1つのシステムでつなぎ、見える化する仕組みです。
PSA(Professional Services Automation)は、人の時間を売る仕事の計画から採算までを支える仕組みを指します。
NetSuiteのプロジェクト管理機能でできること
基本の機能
Oracleの日本語の公式ページは、機能を6つに分けています(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
| 機能 | 中身 |
|---|---|
| プロジェクト会計 | 案件の活動と会社の会計をつなぐ |
| プロジェクト管理 | 案件の状況を関係者で共有する |
| リソース管理 | 人の割り当てと稼働率を管理する |
| タイムシート管理 | 働いた時間を記録する |
| 経費管理 | 経費の申請と承認を管理する |
| レポートと分析 | 案件の成績を見て分析する |
英語の公式ページでは、プロジェクト管理の機能として次のものが挙がっています(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
- テンプレートで、案件の計画の型をそろえる
- 受注(販売注文)から、プロジェクトを自動で作る
- ガントチャートを含む計画の全体を、ダッシュボードで見る
- 収益と原価の予算を作り、マージン(粗利)を見積もって実績と比べる
- 「もしこうなったら」の条件で、予算を試算する
- 課題をタスク単位で記録し、重さ・期限・担当を追う
ガントチャートは、作業を横棒で時系列に並べた図です。
案件の型をテンプレートにすると、担当が替わっても同じ進め方で管理できます。
「マネージャーごとにやり方が違う」という悩みへの、手当ての一つです。
会計・顧客・人の情報とつながる
NetSuiteは、会計・顧客管理・人事・営業を同じ基盤で管理します。
プロジェクトの画面から、関連するデータをそのまま開けます。
社員ごとに関わっているタスクの一覧も、その一例です。
営業から請求までを1つの流れでつなぐ
ITシステム会社の開発案件なら、流れは次のようになります。
- 営業〜受注:営業が商談を入力し、プロジェクトマネージャーが案件を立ち上げる
- 開発〜納品:プロジェクトマネージャーが人を割り当て、社員が工数と経費を入力する
- 請求:経理が経費を承認し、請求と売上を計上する
3つの段が同じデータの上にあるので、工数を入れた時点で、案件の原価に反映されます。
ここでのロールは、職種ごとに割り当てる役割と権限のことです。
ロールを分けると、不正を防ぐ内部統制にも役立ちます。
提供の形と、導入の費用・期間
SuiteProjectsは、NetSuiteの本体に足すアドオン・モジュールです。
NetSuiteのライセンスは、次の3つで構成されます(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
- コア・プラットフォーム
- オプション・モジュール
- ユーザー数
ライセンスは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
プロジェクト管理のモジュールやユーザー数を足すと、その分が上乗せされます。
構成によっては、数百万円規模になることもあります。
導入の費用と期間は、ライセンスとは別にかかります。
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットの支援例で見てみます。
ベンチャーネットが支援したNetSuite導入の費用には、大きな幅があります。
30名程度で、購買・販売・プロジェクト管理を入れた事例は、1年・2,000万円程度でした。
3名程度・購買と販売だけ・開発なしなら、1.5か月・150万円程度。
100名程度で外部システムとの連携開発を加えると、1.5年・2億円程度です。
差を生むのは、業務の範囲、開発(特に外部連携)、社内の体制、ユーザー数の4つです。
4つの事例の全体は、NetSuiteの料金・費用で紹介しています。
大規模で複雑な案件向けには、別製品のSuiteProjects Pro(旧OpenAir)があります。
違いはSuiteProjects Pro(旧OpenAir)とはで扱っています。
Excel・専用ツール・個別SaaSとの違い
プロジェクト管理の手段は、NetSuiteだけではありません。
代表的な4つを、同じ目線で並べます。
| 比較の軸 | Excel・専用PMツール | 個別SaaSの組み合わせ | NetSuite |
|---|---|---|---|
| 得意なこと | 手軽さ。タスクと進捗の管理 | 各領域に特化した機能 | 営業〜工数〜会計の一気通貫 |
| 採算の見える化 | 手作業で集計。収支は弱い | ツールの間の突き合わせが要る | 案件別の収支を統合 |
| 規模の拡大 | 中規模までで破綻しやすい | 連携が複雑になる | 拡張を前提にした設計 |
| AIとの親和性 | 低〜中。お金の数字がない | 中。どの数字が正しいか決まらない | 高。案件・工数・会計が同じ場所にある |
| 向いている場面 | 小規模・進捗管理が主 | 各業務が独立している | 採算と経営を統合したい |
どれが正解ということはありません。
規模と目的で、合う手段が変わります。
差がはっきり出るのは、AIに点検を任せる場面です。
「赤字になりそうな案件を知らせる」には、工数と売上と原価が同じ場所に要ります。
数字が散らばったままでは、AIは判断の材料を持てません。
案件ごとの採算を見える化する仕組み
経営者が知りたいのは、「この案件は儲かっているのか」です。
NetSuiteは、会計のデータと勤怠のデータを同じ基盤で管理します。
案件ごとの売上・経費・利益・時間あたりの利益・ROIを、そこから出せます。
ROIは、投じた費用に対してどれだけ利益が出たかを示す指標です。
- 進行中の案件の採算を、その場で直せる
- 終わった案件のデータを、次の見積りに活かせる
案件どうしの比較から、タスクごとの収支まで、細かさを変えて見られます。
進捗に応じた収益認識にも対応する
いまの日本の会計基準では、収益は企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」に沿って計上します。
この基準は、2021年4月1日以後に始まる事業年度の期首から適用されています。
これにあわせて、以前の「工事契約に関する会計基準」は廃止されました。
(出典:企業会計基準委員会〔ASBJ〕公式、2026年9月確認)
履行義務は、顧客に約束した財やサービスを渡す義務のことです。
一定の期間にわたり充足される履行義務は、進捗度を見積り、それに応じて収益を認識します。
旧来の工事進行基準にあたる考え方です。
NetSuiteの公式ページは、プロジェクトの収益のルールの例に、進捗率(percent complete)を挙げています。
ほかに人件費・固定などのルールもあります(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)。
進捗率をどの数字から出すかは、設定の方法を提供元やパートナーに聞いてください。
収益の計上の方針は、会社の会計方針で決まるため、顧問の会計士との相談が欠かせません。
収益認識の全体は、NetSuiteの収益認識で扱っています。
判断の物差し|NetSuiteが合う会社・他が合う会社
NetSuiteのプロジェクト管理が向いている会社
- 複数の案件が並行し、採算を進行中に見たい
- 営業・工数・会計が別々のツールにあり、数字が合わない
- 海外の拠点や、案件以外の販売・在庫の業務もある
- 今後、AIで案件の点検を任せたい
他の選択肢が合う会社
- 案件が少なく経営者が全体を把握できる:Excelで足ります
- 進捗の共有だけが目的:専用のPMツールが軽くて速い
- 国内のプロジェクト型の業務が中心:国産のプロジェクト型ERPも候補です(ZACとは、MA-EYESとは、Reforma PSAとは)
- 小さく始めて社内で設定を触れる:Odooも候補です(Odooとは)
- 大規模で人の配置の最適化が本業:別製品のSuiteProjects Proを検討します
「採算を見たいが、何から見るかが決まっていない」なら、いまは入れないのも一つの判断です。
先に、見たい数字を決めてください。
目的ごとに合う手段を図にすると、次のとおりです。
読者の二つの立場
これからプロジェクト管理の仕組みを選ぶ会社
比べる前に、次の3つを決めておきます。
- 見たい数字は何か(案件別の粗利、稼働率、回収の早さなど)
- その数字を、いつ・誰が見るか
- 工数を入力するのは誰で、どこまで細かく入れるか
3つ目が決まらないと、どの仕組みでも数字はそろいません。
工数の入れ方は、工数管理を「現場の作業」で終わらせないで扱っています。
NetSuiteを使っていて、プロジェクトの機能を広げたい会社
会計や販売はNetSuiteなのに、案件の管理はExcelのまま。
そうした会社は少なくありません。
この場合に見るのは、次の3点です。
- SuiteProjectsのモジュールが、いまの契約に入っているか
- 顧客・品目・社員のマスタが、案件の管理に使える形か
- 工数の入力を、どの部署から始めるか
契約に入っていなければ、追加の費用が要ります。
アカウントの担当かパートナーに聞いてください。
よくある3つの失敗
3つの失敗と避け方を図にすると、次のとおりです。
失敗1:ツールを部門ごとに入れ、数字が合わない
起きること:営業はSFA、工数は別ツール、会計はまた別。同じ「売上」でも、ツールごとに数字が違う。終わってから赤字に気づく。
原因:部門ごとに最適なツールを入れた結果、社内に1つの正しい数字がなくなりました。
避け方:すべてを一度に捨てる必要はありません。
案件の採算に直結する領域から統合し、正しいデータを1か所に育てます。
失敗2:人の割り当てを、ベテランの頭の中に置いたままにする
起きること:特定のエースに負荷が集まり、安請け合いと炎上を繰り返す。中心の人が抜けると回らない。
原因:誰がどれだけ動いているかが、共通の場所で見えていませんでした。
避け方:稼働と割り当てを、共通の基盤で見えるようにします。
人ではなく事実とルールを中心に置く考え方です。
詳しくはリソース管理とはで扱っています。
失敗3:管理を入れること自体が目的になる
起きること:入力の項目を増やしすぎて、現場が入力しなくなる。数か月で誰も使わない。
原因:最初から完成形を求め、現場の負担が重すぎました。
避け方:小さく始めて効果が出た領域から広げます。
最初は、案件別の粗利が見える最小限の項目だけで十分です。
ERP導入の失敗をより広く知りたい方は、ERP導入はなぜ失敗するのかをご覧ください。
AI時代のプロジェクトチーム|中心にERPを置く
プロジェクト管理を突き詰めると、チームをどう動かすかという話になります。
稲盛和夫氏の「アメーバ経営」や、「The PODs」と呼ばれるチームの組み方は、少人数のチームに裁量を持たせる考え方です。
こうしたチームの予算と収益を見るには、職種ごとに分かれたツールでは力が足りません。
ここにAIエージェント(特定の業務を自律的にこなすAI)が加わると、前提が1つ増えます。
正しいデータが1か所にそろっていることです。
ベンチャーネットは、ERPを中心に置き、人とAIが腕として動く「Starfish Team」という組織のモデルを提案しています。
中心が人ではなく、ERP上の事実とルールなので、誰かが抜けても止まりにくくなります。
詳しくはStarfish Team とは?をご覧ください。
ベンチャーネットならこう見る|採算の遅れは「見える化」から
「PMツールを替えれば、採算は早く見えるはずだ」
そう考えて相談に来られる会社は、少なくありません。
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
製品の話に入る前に、まず次の3つを伺います。
- いま案件の採算が分かるのはいつか:終わってから、月末、進行中のどれか
- その遅れの原因はどこか:工数の入力、原価の集計、請求の計上のどれか
- 案件以外の業務の広さ:販売・在庫・海外があるなら統合型が有利
2の答えが「入力のルール」なら、製品を替える前にルールから直します。
型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap
仕組みを替えると決めた場合も、順番は同じです。
- 業務の見える化:受注から請求までの流れを、現場に聞いて描く
- 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
- Fit&Gap:残った業務を、NetSuiteの標準機能と照らし合わせる
Fit&Gapは、業務と機能の合う・合わないを一つずつ見る作業です。
合わない業務は「標準に合わせる/開発する/残す」のどれかに決めます。
工数の入力項目を増やしすぎる失敗3は、たいてい2段目を飛ばしたときに起きます。
型2:提案から稼働まで、同じ人が持つ
要件を伺うのは、営業ではなく導入コンサルタントです。
PMを兼ねるコンサルタントが、提案からカットオーバーまで一貫して担当します。
伝言ゲームにしないためです。
進め方は、週次の定例と課題管理表で文書に残して共有します。
回答を待つだけでなく、必要な情報はこちらから取りに行く。
プロジェクト管理の仕組みを入れる案件そのものを、同じ考え方で管理しています。
今日できること|直近の3案件で「採算が分かった日」を書き出す
| 案件 | 終了日 | 採算が分かった日 | 集計に使ったファイル・ツール |
|---|---|---|---|
| (例)A社システム改修 | 6月30日 | 7月20日 | 工数表・会計ソフト・請求書 |
終了日と、採算が分かった日の差を見ます。
差が大きく、使ったツールが多いほど、統合の価値は大きくなります。
よくある質問
Q1. NetSuiteのプロジェクト管理は、標準で入っていますか
アドオン・モジュールとして提供されています。
Oracleの公式ページでは、SuiteProjectsはアドオン・モジュールとして利用できると案内されています。
いまの契約に入っているかは、アカウントの担当かパートナーに聞いてください(第1章1-4)。
Q2. ExcelやPMツールから乗り換える価値はありますか
案件別の採算を進行中に見たい段階になると価値が出ます。
Excelや専用ツールは手軽ですが、売上・工数・経費が散らばります。
採算を経営の判断に使いたいなら、統合型が有利です(第2章)。
Q3. 導入にはどれくらいの期間と費用がかかりますか
範囲と体制で決まり支援例では1.5か月から1.5年まで開きがあります。
ベンチャーネットが支援したNetSuite導入では、購買・販売・プロジェクト管理を入れた30名程度の事例が、1年・2,000万円程度でした。
業務の範囲、開発(特に外部連携)、社内の体制、ユーザー数の4つで変わります(第1章1-4)。
Q4. 移行のとき、現場の業務は止まりませんか
一度にすべてを切り替える必要はありません。
影響の小さい領域から段階的に移すと、業務を止めずに進められます。
どこから始めるかの順番が、現場の負担を大きく左右します。
Q5. SuiteProjects Proとは何が違いますか
SuiteProjects Proは大規模で複雑な案件向けの別製品です。
本体に組み込むSuiteProjectsで足りる会社も多くあります。
違いはSuiteProjects Pro(旧OpenAir)とはで扱っています。
Q6. 情報システムの担当がいなくても運用できますか
クラウド型のためサーバーの調達や保守は要りません。
ただし、初期の設計と定着には知見が要ります。
導入のパートナーと組み、社内の担当を1人決めておくのが現実的です。
まとめ|プロジェクト管理は手段、目的は止まらない採算経営
- NetSuiteのプロジェクト管理(SuiteProjects)は、計画から請求・会計までを1つの基盤でつなぐ
- 提供はアドオン・モジュール。ライセンスはミニマム構成の月額20万円〜に上乗せになる
- 導入の費用と期間は、業務の範囲・開発・社内の体制・ユーザー数の4つで開く
- 進捗の管理だけならExcelや専用ツールで足りる。採算を進行中に見たい段階でNetSuiteが候補になる
- 失敗の多くは、数字が散らばる・割り当てが人頼み・管理が目的になるの3つ
冒頭の会議で、赤字の報告が3か月遅れた理由は、ツールの性能ではないかもしれません。
まず直近の3案件で、採算が分かった日と、使ったファイルの数を書き出してください。
もう少し詳しく知りたい方へ
自社はExcelで足りるのか、NetSuiteが要るのか。
案件の数と、見たい数字を伺ったうえで、一緒に考えます。

コメント
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