「売上を伸ばすために営業リソースを増やす。」
このやり方に限界を感じている企業は多いのではないでしょうか。
確かに営業リソースの増加は売上向上につながります。
また、直販だけでなく、アライアンス営業やリファラル営業、代理店経由の販売など、さまざまな手法に取り組んでいる企業もあります。
しかし、いずれも属人的なスキルや知見に左右され、再現性のある仕組みとしては弱いのです。
本記事では、これら主要な販路拡大の手法を整理しつつ、海外で主流となっている「パートナーセールス」の考え方を解説します。あわせて、その実行に必要なPRM(パートナー関係管理)の仕組みも紹介します。
販路拡大の主要な手法とその限界
売上を伸ばすためには、営業リソースの強化、そして販路拡大が必須です。
主な方法論としては、以下4つが挙げられます。
- 直販(自社営業チームによる販売)
- アライアンス営業(他社との協業による販路拡大)
- リファラル営業(紹介による案件獲得)
- 代理店販売(代理店を通じた間接販売)
まずはこれら4つの手法を整理しつつ、その弱点を分析してみましょう。
直販「営業人員の増加に依存する成長モデルの限界」
直販は、自社の営業チームが顧客に直接アプローチする方法であり、最も基本的な販売手法です。
製品知識や顧客理解に優れた営業担当者が、直接顧客に働きかける。提案内容も自社でコントロールできるため、自由度は高いです。
しかし、売上の成長が営業人員の数に比例するモデルであるため、スケールには限界があります。さらに営業担当者の採用から育成、戦力化には時間もコストもかかります。
たとえば営業を1名採用してから安定的に成果が出るまでには、早くても半年から1年を要します。また、人員を増やしても、マネジメントの負荷が上がるぶん、生産性や利益が比例するとも限りません。
さらに問題となるのは、「新しい業界や商圏に進出したい場合」です。その市場の知見を持たない営業を送り込んでも成果は出にくく、市場に精通したプレイヤーの力が必要になります。
直販への依存は、営業のリソースが「成長の天井」になってしまうことなのです。
アライアンス営業「協業は生まれるが、仕組みにならない」
アライアンス営業は、顧客基盤や製品が補完的である他社と協業し、共同で販売する手法です。自社だけではリーチできない顧客層にアクセスできる点がメリットです。
しかし、多くのアライアンスは案件単位の協業に留まり、継続的な仕組みにはなりません。ワンショットでスポット的な活動になりがちなのです。
営業の質は担当者間の人間関係に依存するため、担当が異動や退職で変わると協業そのものが途絶えてしまいます。また、案件の帰属やコミッションのルールが曖昧なまま走ってしまうケースも目立ちます。
共同で提案した案件の売上計上や紹介料のルールが曖昧なままだと、トラブルの種になることもあるでしょう。アライアンスの数を増やしても、管理が追いつかなければ逆効果です。どのアライアンスが成果を出しているのか可視化できない状態では、リソース配分の最適化も進みません。
リファラル営業「属人性が高く、再現性がない」
リファラル営業は、既存顧客や知人からの紹介で案件を獲得する手法です。紹介経由の案件は成約率が高く、営業コストも低いため、費用対効果は非常に高いです。成功している営業担当者ほど、紹介からの受注比率が高い傾向があります。
しかし、紹介という行為自体が、属人性の最たるものです。成果は個人の人脈と信頼関係に依存します。そもそも紹介元へのインセンティブ設計が曖昧で、紹介を組織的に促進する仕組みがない企業がほとんどです。
さらに、紹介が発生するかどうかは偶然の要素が絡むため、パイプラインとして計画に組み込みにくいという弱点があります。販路拡大の柱に据えるのはリスクが大きいでしょう。
代理店販売「販路は広がるがコントロールが効かない」
代理店販売は、ディストリビューターやリセラーを通じて間接的に販売する手法です。自社の営業リソースを増やさずに販路を広げられるため、スケーラビリティの面では直販より優れています。
しかし、代理店契約を結んだだけでほぼ効果が出ないこともあります。なぜなら代理店側は、自社製品を積極的に売ってくれるとは限らないからです。
代理店の営業担当者は複数のメーカーの製品を扱っていることが多く、自社製品が優先されるかどうかはインセンティブ次第の側面があります。報酬体系が他社よりも劣っていたり、不透明であったりすれば、当然のことながら優先度は下がってしまいます。
運用面にも課題があります。案件管理がメールやスプレッドシートで行われ、どの代理店がどの案件を進めているか本社側で把握できない状態では、集計のたびに突合が必要です。計算ミスや支払いの遅延が積み重なれば、代理店との信頼関係は確実に損なわれます。
代理店ビジネスを拡大したいのに、管理の仕組みがボトルネックになるという矛盾が生じるのです。
さらに深刻なのが、直販の営業チームと代理店が同じ顧客に、別々にアプローチしてしまう「チャネル競合」です。顧客から見れば同じ会社の製品を別々の窓口から提案される形になり、混乱と不信を招きます。チャネル全体を可視化し、案件の帰属を明確にする仕組みがなければ、この問題は拡大していく一方です。
4つの手法に共通する課題
ここまで4つの手法を整理してきましたが、共通する課題が見えてきます。
- 属人性が高く、特定の担当者や人脈に依存している
- 案件管理やインセンティブ設計が仕組み化されていない
- チャネル全体の状況が可視化されておらず、どの手法がどれだけ成果を出しているか分からない
- 個別の手法としては機能しても、スケールする仕組みにはなっていない
これらの課題を解決するには、販路拡大の手法を個別に運用するのではなく、パートナーとの関係を体系的に設計・管理する仕組みが必要です。その仕組みこそが「パートナーセールス」です。
パートナーセールスとは何か
これまで紹介した方法は、いずれも販路拡大の「手法」です。パートナーセールスは、これらの手法を包含し、パートナーとの関係を仕組みとして設計・運用する「モデル」にあたります。
まずはパートナーセールスの位置づけと、成功に必要な要素を理解しておきましょう。
パートナーセールスの定義
パートナーセールスとは、自社製品・サービスの販売を外部のパートナー企業と協業して行う営業モデルです。
代理店販売やアライアンス営業はパートナーセールスの一形態です。これら2つとパートナーセールスとの違いは、パートナーとの関係を戦略的に設計する点にあります。案件管理・報酬体系・情報共有・育成まで含めて、一つの仕組みとして運用するのです。
海外では売上拡大の主要モデル
パートナーセールスは、海外では事業成長のために必須のモデルとして確立されています。
McKinseyの予測では、パートナーエコシステムの市場規模は2030年までに70〜100兆ドルに達し、世界経済の約30%を占めるとされています。
また、世界の取引の75%は直販ではなく、チャネルやパートナーを経由しているとされます(WTOの推計として広く引用される数値)。パートナー経由の間接売上の拡大を見込む企業は多く、正式なパートナープログラムの有無が売上の差につながるとする調査も複数あります。
近年は、日本市場でパートナーセールスが着実に広がっています。たとえば、ビデオ会議サービス大手のZoomは日本市場における売上の70%がパートナー経由です。日本の商習慣に精通したパートナーを活用することで、自社だけではリーチできない顧客層を開拓しています。
一方で、日本の中小中堅企業にパートナーセールスの仕組みが整っているかというと、そうとは言い難いのが実情です。代理店やアライアンス先との協業はあっても、ティア設計やコミッション体系、案件の帰属管理までを一つの仕組みとして運用している企業は少数です。
裏を返せば、パートナーセールスに取り組むことで、競合よりも優れた販路拡大戦略をとることができます。
パートナーセールスを機能させる5つの要素
成功しているパートナーセールスには、共通する5つの要素があります。
- ティア設計
- コミッション設計
- ディール登録
- パートナーポータル
- オンボーディング
① ティア設計
パートナーを実績や専門性に応じてランク分けし、ランクごとに異なるインセンティブとサポートを提供する仕組みです。たとえば、年間売上が一定額を超えるとゴールドパートナーに昇格し、より高いコミッション率や優先的なリード配分を受けられるといった設計です。昇格条件を明示することで、パートナー自身が目標を持って動く状態をつくれます。
② コミッション設計
売上金額、粗利率、達成率など、複数の指標に基づいてコミッションを設定する仕組みです。パートナーにとって報酬体系が明確であることが、自社製品を優先的に扱う動機になります。代理店契約における「代理店が積極的に売ってくれない」問題は、コミッション設計の不在に起因することが多いです。パートナーの営業担当者は複数社の製品を扱っている以上、報酬が明確で魅力的な製品を優先します。「最小限の費用で、いかにパートナーに売ってもらうか」を設計するのがコミッション設計です。
③ ディール登録
パートナーが案件を登録し、承認を経て帰属を確定させる手続きです。案件を持ち込んだパートナーを記録することで、直販との競合やパートナー間の重複を防ぎます。1章で触れたチャネル競合の問題は、このディール登録の仕組みで大部分が解消されます。逆にこの仕組みがなければ、パートナーは案件を持ち込んでも直販に横取りされるリスクを感じ、積極的に動かなくなります。
④ パートナーポータル
商品情報、価格表、在庫状況、販促資料などをパートナー専用のシステムで共有する仕組みです。パートナーの営業担当者が提案に必要な情報をセルフサービスで取得できる環境を整えます。問い合わせが来たタイミングで随時情報をやり取りしているのでは、パートナーの動きは遅くなります。一方、ポータルを通じてリアルタイムに情報共有されていれば、パートナーは自分のタイミングで提案準備を進められます。
⑤ オンボーディング
契約から初回案件の創出までを支援するプロセスです。製品トレーニング、営業ツールの提供、初期案件の共同推進を通じて、パートナーが早期に成果を出せる状態を整えます。最初の成功体験をいかに早くつくるかが、パートナーとの長期的な関係を決めます。
なお、PartnerStackの調査では、トレーニングや認定を完了したパートナーは、未完了のパートナーに比べ平均6倍の収益を上げると報告されています。オンボーディングの有無が、パートナーセールスの成果を大きく左右することがわかります。
パートナーセールスを仕組み化するPRMとは
これらパートナーセールスの成功要素5つを実務に組み込むためには、システムによる支援が不可欠です。
パートナーが10社程度であれば、Excelでの管理も何とか成り立ちます。しかしそれ以上になってくると、案件の突合やコミッション計算だけで毎月相当な工数がかかるようになります。さらに100社規模になれば、計算ミスや支払い漏れが常態化し、パートナーからの問い合わせ対応に追われる状態になりかねません。
パートナーを増やすほど管理コストが膨らむのでは、メリットが打ち消されてしまいます。そこで必要になるのがPRM(Partner Relationship Management:パートナー関係管理)です。
PRM(Partner Relationship Management:パートナー関係管理)とは
CRM(顧客関係管理)が自社と顧客の関係を管理する仕組みであるのに対し、PRMは自社とパートナーの関係を管理する仕組みです。
具体的には、以下のような機能を提供します。
- パートナーポータル(情報共有・セルフサービス)
- ディール登録と承認ワークフロー(案件の帰属管理)
- コミッションの自動計算(報酬の算定・支払管理)
- パフォーマンス分析ダッシュボード(パートナーごとの実績可視化)
パートナーセールスを「仕組み」として回すためのインフラがPRMです。
PRM専業ツールImpartnerの導入企業を対象に、Forresterが2023年に調査を行っています。同調査では、3年間のROI 296%と投資回収期間6か月未満が報告されました。パートナー経由案件は30〜50%増加、リード獲得単価は75%削減という結果です。
PRMツールの選び方──専業ツール vs ERP/CRM一体型
PRMツールには大きく2つの選択肢があります。
① PRM専業ツール(Impartner、Allboundなど)
パートナー管理に特化した機能が豊富です。しかし、受注・在庫・財務などの業務データはERPにあるため、システム間の連携開発が必要になります。パートナーが在庫をリアルタイムで確認する、受注実績からコミッションを自動計算するなどの処理には別途開発コストがかかります。パートナー管理のみを見れば優秀ですが、業務全体との接続の悪さがネックです。
② ERP/CRM一体型(NetSuiteなど)
ERP/CRMの中にPRM機能が組み込まれており、受注・在庫・財務データとパートナー管理が最初から繋がっています。連携開発が不要で、パートナーの案件登録から受注、コミッション計算、支払いまでを一気通貫で処理できます。パートナービジネスと自社の業務データが同じプラットフォーム上にあることが最大のメリットです。
なお、国産ERP/CRMの多くにはPRM機能自体が存在しません。パートナー管理という概念が設計に組み込まれていないため、Excelや外部ツールで補うしかないのが現状です。
それぞれの違いをまとめると以下のようになります。
| PRM専業ツール | ERP/CRM一体型 | |
|---|---|---|
| パートナー管理機能 | 豊富 | ERP/CRM内に統合 |
| 業務データとの連携 | 別途開発が必要 | 最初から接続済み |
| コミッション自動計算 | 受注データとの連携開発が必要 | 受注データから直接計算可能 |
| 導入コスト | ツール費用+連携開発費 | ERP/CRM内のオプション追加 |
| 適したケース | すでにERPが固定されており変更できない場合 | ERP/CRM導入と同時にパートナー管理も始める場合 |
NetSuiteのPRM機能
ERP/CRM一体型の代表例がNetSuiteです。NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが取り扱う製品でもあります。
NetSuiteはクラウドERPですが、オプションモジュールであるCRMを導入することで、PRM機能を使えるようになります。パートナーセールスを成功させるための5要素をシステム上で簡単に実装でき、業務データとパートナー管理が同一プラットフォーム上にある状態を作ります。NetSuite自体の概要は、関連記事「NetSuiteとは?中堅・中小企業の経営者が知っておきたいクラウドERP入門【2026年版】」で解説しています。
たとえば、パートナーがポータルから案件を登録すると、その案件は受注処理・在庫引当・コミッション計算まで裏側で自動的に連携されます。PRM専業ツールの場合、この一連の流れをAPI連携で個別に構築しなければなりませんが、NetSuiteであれば追加の連携開発なしで実現できます。パートナーの数が増えるほど、この差は運用コストに直結します。
つまり、「外部連携開発なしで、業務データと連携したパートナー管理」ができるようになります。
PRMの主な機能は以下の通りです。
- パートナーポータル:商品情報、在庫状況、価格表にリアルタイムでアクセス可能。見積・商談・受注伝票の作成もポータル上で完結し、パートナーのランクに応じてアクセス範囲を制御できる
- ディール登録と承認ワークフロー:案件登録から承認まで自動で処理。直販との競合を防止し、パイプライン全体を可視化
- コミッション自動計算:売上総額、粗利額、ノルマ達成率、販売数量、利益率の5種類の基準に対応。段階的なレート設定や分割コミッションにも対応し、承認から支払いまで一気通貫で処理
- パフォーマンス分析ダッシュボード:パートナーごとの売上・コミッション・活動状況をリアルタイムで把握。リソースを集中すべきパートナーをデータに基づいて判断可能
ちなみにベンチャーネット自身も、NetSuiteのパートナーとしてパートナービジネスを運営しています。NetSuiteの機能に関する知見に加え、パートナービジネスの当事者としての実務ノウハウを持っている点が、一般的なコンサルファームやSIerとの大きな違いです。パートナービジネスを経営モデルとして捉える考え方は、関連記事「パートナービジネスとは?ERPパートナービジネスで成果を出す経営モデル設計論」でも掘り下げています。
まとめ
直販、アライアンス営業、リファラル営業、代理店販売。いずれも販路拡大の有効な手法ですが、属人的な運用に留まる限り、スケールする仕組みにはなりません。
これらの手法を体系化し、パートナーとの関係を仕組みとして設計・管理するのがパートナーセールスです。
パートナーセールスを機能させるには、ティア設計、コミッション設計、ディール登録、パートナーポータル、オンボーディングの5つの要素が必要です。そしてこれらをシステムとして回すのがPRM(パートナー関係管理)です。
ERP/CRMと一体化したPRMであれば、業務データとパートナー管理が最初から繋がった状態で運用を始められます。
パートナービジネスの立ち上げに関心がある方は、まず無料相談で自社に合った進め方を確認してみてください。ベンチャーネットでは、パートナービジネスの戦略設計からNetSuite上でのPRM実装まで、ワンストップで支援しています。
もう少し詳しく知りたい方へ
- NetSuite販売取次 ベンチャーネットパートナープログラム:パートナーセールスの仕組みづくりを検討したい方はこちら
- NetSuite 無料体験デモのお申し込み:NetSuite上でのPRMの動きを実際に確認したい方はこちら
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