「NetSuiteに給与の機能があるなら、日本の給与もまとめて回せるはず」
米国に拠点を持つ会社から、よく聞く期待です。
残念ながら、そうはなりません。
SuitePeople 米国給与(US Payroll)とは、米国の従業員の給与計算・税の申告と納付・振込を、NetSuiteの中で行う機能です。
対応するのは、米国の連邦・州・地方の給与税だけ。
日本の給与計算には使えません(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。
それでも、給与の数字をNetSuiteに集めることはできます。
米国はUS Payroll、日本は国内の給与システム、ほかの国は現地の仕組みで計算する。
その結果の人件費だけを、NetSuiteの会計に集める組み方です。
では、国ごとに違う給与の結果を、誰がどの区分でNetSuiteに入れるのか。
組み方の成否を分けるのは、機能の有無よりも、この流れのほうです。
この記事で分かること
- US Payrollでできることと、使うための条件
- 日本の給与計算に使えない理由と、対象外の業務
- 米国・日本・ほかの国の拠点で、給与をどう組み分けるか
- 組み方を選ぶ物差しと、よくある3つの失敗
言葉の整理:ERPは、会計・販売・在庫・人事などを1つのシステムで管理する仕組みです。
OneWorldは、複数の子会社の会計・多通貨・多言語をまとめて扱うNetSuiteの機能です。
SuitePeople 米国給与の位置づけ
NetSuiteの人事の領域は「SuitePeople」と呼ばれ、3つで構成されています(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。
| 構成 | 中身 |
|---|---|
| SuitePeople HR | 従業員の情報・休暇・人事評価・組織図などの人事管理 |
| SuitePeople Workforce Management | シフトの作成、勤怠の記録、賃金の計算 |
| SuitePeople 米国給与(US Payroll) | 米国の従業員の給与計算 |
US Payrollの特徴は、給与計算が会計と地続きであることです。
給与のデータは、総勘定元帳にリアルタイムで反映されます。
(出典:Oracle NetSuite公式「SuitePeople Payroll」、2026年9月確認)
NetSuite本体は、世界220地域・44,000社以上で使われています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
HR全体は、NetSuite SuitePeople(HR)とはで解説しています。
US Payrollでできること
Oracleのヘルプは、US Payrollを「フルサービス型の給与の仕組み」と説明しています。
| 業務 | できること |
|---|---|
| 給与計算 | 支給の総額から税・控除を引き、手取りまでを計算する。確定の前にプレビューで差を見られる |
| 税の納付と申告 | 連邦・州・地方の給与税を納付し、四半期・年次の申告を行う。納付は各地域が決めた周期で行われる |
| 振込 | 従業員の口座へ直接振り込む。従業員が自分で最大10口座まで設定できる |
| 年末の書類 | W-2・940・941・W-2C・1099-NEC、ACAのフォーム(1095-C・1094-C) |
| つながり | 勤怠・歩合・経費のデータを給与に反映し、結果を会計に反映する |
出典:Oracle NetSuiteのヘルプ「SuitePeople U.S. Payroll」(2026年9月確認)
出典:Oracle NetSuite公式「SuitePeople Payroll」(2026年9月確認)
支払いの周期は、週・半月・月などに対応しています。
税務当局から申告や納付の問い合わせがあれば、US Payrollの側が対応するとヘルプにあります。
ただし、401(k)や健康保険などの税以外の負債は支払いません(ヘルプのFAQ)。
これらの支払いは、別に段取りが要ります。
使うための条件
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| 対象の税 | 米国の連邦・州・地方の給与税だけ |
| OneWorldを使う場合 | 固有のEIN(米国の雇用主の識別番号)を持つ米国の子会社だけで給与を回せる |
| 働く場所と住む場所 | 米国に住み国外で働く人、国外に住み米国で働く人は対象外 |
出典:Oracle NetSuiteのヘルプ(2026年9月確認)。
日本企業が見落としやすいのは、3行目です。
日本と米国を行き来する社員は、住む場所と働く場所の組み合わせで、対象かどうかが変わります。
日本の給与計算には使えない
日本の給与計算に欠かせない、次の処理は対象外です。
- 社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)の計算と控除
- 所得税の源泉徴収と年末調整
- 住民税の特別徴収
- 各種の社会保険の届出
給与の計算は、税率も社会保険の仕組みも、国ごとに大きく違います。
US Payrollは、米国の制度に合わせて作られた機能です。
この点を取り違えたまま検討を進めると、後で設計のやり直しになります。
日本企業はどう組むか
米国以外の国の給与の記録|Paycheck Journal
NetSuiteには、Paycheck Journalという機能もあります。
ヘルプでは、米国以外の国の従業員の給与データを記録する機能と説明されています。
- NetSuiteのパートナーが、外部の給与の仕組みと連携するために使う前提
- パートナーの給与の仕組みなしに、利用者が直接使うことは想定されていない
- US Payrollとは独立しており、同じアカウントで両方を有効にできる
ヘルプには、OneWorldでの組み合わせの例もあります。
米国の子会社はUS Payroll、米国以外の子会社はPaycheck Journalで記録する形です。
(出典:Oracle NetSuiteのヘルプ「Paycheck Journal Feature」、2026年9月確認)
拠点ごとの組み方
| 拠点 | NetSuiteでの給与の扱い | 現実的な組み方 |
|---|---|---|
| 米国 | US Payrollで対応 | NetSuiteの中で計算から税・振込まで行う |
| 日本 | 給与計算は対象外 | 国内の給与システムで計算し、人件費の仕訳をNetSuiteの会計に取り込む |
| その他の国 | 給与計算は対象外 | 現地の仕組みで計算し、Paycheck Journalや仕訳の取込でNetSuiteに記録する |
計算は各国の制度に合う仕組みで行う。
人件費の結果はNetSuiteに集める。
連結の数字は、OneWorldで見られます。
詳しくはNetSuiteのグローバル展開機能をご覧ください。
日本の会社から見た3つの段階
- (a)いま使えること:米国の子会社の給与は、US Payrollで計算から税・振込まで行える
- (b)開発で補うこと:日本やほかの国の給与の結果を、仕訳の取込やPaycheck Journalの連携でNetSuiteに集める
- (c)順次提供されること:日本の給与計算がNetSuiteの標準に加わる予定は、公式の情報では見つかりませんでした。今後の変化は、リリースノートとアカウントの担当で追ってください
日本の給与・勤怠の選び方は、NetSuiteとOdooの人事・勤怠・給与で扱っています。
判断の物差し|米国の給与をどこで計算するか
| 選択肢 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|
| 米国はUS Payroll | 米国子会社をOneWorldで管理し、固有のEINがある | 税以外の負債の支払いは別に段取りが要る |
| 米国も現地の給与サービス+仕訳の取込 | 米国の従業員が少なく、現地の会計事務所に任せている | 取込の形と時期を決める |
| AIでのスクラッチ開発で給与を作る | おすすめしにくい | 税や社会保険の制度の変更を追い続け、正しさの保証も自社で負う |
| いまは入れない | 米国の拠点が立ち上げ前で、人数も未定 | 進出の計画に合わせて検討の時期を決める |
日本の拠点は、どの選択肢でも国内の給与システム+仕訳の連携です。
部門・拠点の区分を、NetSuiteとそろえておきます。
US Payrollを使うかは米国の人数と会計を管理する場所で決まります。
米国が数名なら、仕組みを増やすより、現地の給与サービスの結果を取り込むほうが合う場合もあります。
組み方の費用と期間を大きく動かすのは、連携の数です。
取り込む国と仕組みが増えるほど、連携の開発が増えます。
導入費用の全体の考え方は、NetSuiteの料金・費用で扱っています。
これから進出する会社と、いま米国に拠点がある会社
これから米国に進出する会社は、次の3点を先に固めます。
- 米国の子会社を作るか。EINはいつ取れるか
- 最初の1年の米国の人数と、日本からの出向者の住む場所・働く場所
- 人件費を、どの区分(拠点・部門・案件)で見たいか
いま米国に拠点がある会社は、契約の節目が見直しの機会です。
現地の給与サービスを更新する前に、US Payrollと比べてみてください。
NetSuiteの更新の前には、人件費の仕訳が手作業になっていないかを見直します。
米国の人数が増えてきたら、給与と会計を同じ基盤に寄せる価値も上がります。
よくある3つの失敗
失敗1:日本の給与もNetSuiteで回せると思い込む
起きること:導入の途中で日本の給与計算が対象外と分かり、設計をやり直す。
原因:「給与の機能がある」ことと「自国の制度に対応している」ことを、分けて見なかった。
避け方:拠点ごとに給与を計算する仕組みを最初に表で決めます(第5章の表)。
失敗2:出向者・行き来する社員を後回しにする
起きること:米国で働く人の一部がUS Payrollの対象外だと、稼働の直前に分かる。
原因:住む場所と働く場所の組み合わせによる条件を、早い段階で当てはめなかった。
避け方:対象の社員を住む場所と働く場所で分けて一覧にします。
失敗3:人件費の区分が拠点ごとにばらばら
起きること:各国の給与の結果をNetSuiteに取り込んでも、部門や案件の区分が合わず比べられない。
原因:給与の仕組みを選ぶ前に、会計で見たい区分を決めていなかった。
避け方:NetSuiteで見たい人件費の区分を先に決めます。
各国の仕組みの出力は、その区分にそろえます。
3つの失敗と避け方を図にまとめると、次のとおりです。
ベンチャーネットならこう見る|「計算は国ごと、数字は1か所」を誰が回すか
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、給与の相談を「計算は国ごと、数字は1か所」の型で組み立てます。
計算は、各国の制度に合う仕組みに任せる。
NetSuiteには、同じ区分にそろえた人件費の結果だけを集める。
この型で難しいのは、米国の機能ではありません。
各国の結果を、毎月だれがNetSuiteに入れるか。
つまり、仕組みと仕組みのあいだの流れです。
役割を3つに分ける
| 担い手 | 受け持つこと |
|---|---|
| 日本オラクル | ライセンス、トレーニング、製品のサポート |
| ベンチャーネット | 要件定義、設定、各国の給与の仕組みとの連携開発、保守、PM(Oracleとの調整を含む) |
| 自社 | 見たい人件費の区分を決める。各国の給与の担当とのやり取り |
ベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入より、他システムとの連携が多くを占めます。
要件を伺うのは、営業ではなく導入コンサルタントです。
常駐はせず、国内のチームがリモートで進めます。
「NetSuiteで日本の給与は計算できない」。
この点も、見積もりの前にお伝えします。
最初の打ち合わせで伺うのは、次の3つです。
- 拠点の数と各拠点の人数
- 米国の子会社の固有のEINと国をまたいで働く社員の有無
- 経営者が見たい人件費の区分
仕訳の取込や連携の作り込みは、ベンチャーネットの「NetSuiteリブート」で支援しています。
今日できること|拠点ごとの給与の棚卸し
1時間で、次の表を埋めてみてください。
| 拠点と人数 | いま給与を計算している仕組み | 会計への反映の方法 | 国をまたぐ社員 |
|---|---|---|---|
| (例)米国子会社・12名 | 現地の給与サービス | 月末に手入力 | 出向者2名 |
「会計への反映の方法」が手入力の行は、連携で手間を減らせる候補です。
「国をまたぐ社員」がいる行は、US Payrollの条件に当てはめてみてください。
よくある質問
Q1. NetSuiteで日本の従業員の給与計算はできますか
できません。
US Payrollは、米国の連邦・州・地方の給与税だけに対応しています。
日本は国内の給与システムで計算し、結果をNetSuiteの会計に取り込みます(第4章・第5章)。
Q2. US Payrollを使う条件はありますか
OneWorldでは固有のEINを持つ米国の子会社が対象です。
米国に住み国外で働く人、国外に住み米国で働く人は対象外です(第3章)。
Q3. 米国以外の海外の拠点の給与はどうなりますか
現地の給与の仕組みで計算しNetSuiteに記録します。
NetSuiteには、米国以外の給与データを記録するPaycheck Journalがあります。
パートナーの給与の仕組みと組み合わせて使う前提の機能です(第5章)。
Q4. 401(k)や健康保険の支払いもUS Payrollで行えますか
税以外の負債は支払われません。
ヘルプのFAQにそう書かれています。
別に支払いの段取りが要ります(第2章)。
Q5. 日本の給与システムとNetSuiteを連携できますか
人件費の仕訳を取り込む形で連携できます。
先に、NetSuiteで見たい部門・拠点の区分をそろえておくと、取り込んだ後に比べやすくなります(第8章・第9章)。
Q6. 米国の従業員が数名でもUS Payrollを使うべきですか
米国の人数と会計を管理する場所で決めます。
現地の給与サービスの結果を取り込むほうが合う場合もあります(第6章)。
まとめ:給与は国ごとに計算し、数字は1か所に
- US Payrollは、米国の連邦・州・地方の給与税だけに対応するフルサービス型の給与
- 日本の社会保険・源泉徴収・年末調整・住民税には使えない
- OneWorldでは固有のEINを持つ米国の子会社が対象。国をまたいで働く人は対象外の場合がある
- 米国以外の給与は、Paycheck JournalなどでNetSuiteに記録できる
- 成否を分けるのは、人件費の区分と各国の結果を集める流れ
「日本の給与もNetSuiteで」という期待は、そのままでは叶いません。
代わりに、拠点ごとの給与の全体像を1枚の表にしてください。
その表が、組み方を決める出発点になります。
もう少し詳しく知りたい方へ
米国・日本・その他の国の給与と会計をどうつなぐかは、拠点の構成で変わります。
進出の前の段階からでも、ご相談をお受けしています。
- 海外の拠点の管理とOneWorldの進め方を知りたい方:NetSuiteで進める海外展開
- 給与システムとの連携や会計への集約を作り込みたい方:NetSuiteの開発・カスタマイズ(NetSuiteリブート)
- 自社の拠点の構成の整理から相談したい方:お問い合わせ

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