NetSuiteのグローバル展開機能|OneWorld・多通貨・多言語・海外拠点管理の全機能解説

「海外子会社が2つ目になる。そろそろOneWorldにすべきか」

グループの経理やCFO、海外展開を進める経営者から、よく受ける問いです。

NetSuite OneWorldとは、本社と国内外の子会社を1つのERPで管理するための、NetSuiteのグローバル対応の仕組みです。

子会社ごとの通貨と税務を持ちながら、グループ全体の数字を親会社の通貨でまとめて見られます。

OneWorldが効くのは、拠点が増えていく会社です。

拠点が増えるたびに現地で会計ソフトを選び直し、連結のたびに手で突き合わせる。

その負担を、1つのデータベースで断ち切れるからです。

一方、拠点が1つで増やす予定もない会社には、別の形が合うこともあります。

では、まだ拠点が1つの会社は、いま何を決めておけばよいのか。

答えは、機能の一覧ではなく「グループの形」の決め方にあります。

基幹システムをめぐる海外展開の落とし穴は、中小企業の海外進出で見落としがちな「基幹システム」の落とし穴で扱っています。

目次

この記事で分かること

  • 海外展開でERPに求められる4つの要件
  • OneWorldの子会社の階層・多通貨・連結・会社間取引の考え方
  • 各国の税や会計への対応で、聞いておくこと
  • 単一ERP・2層ERPなど4つの形と、選び方の流れ
  • 費用の目安と、導入の役割分担

言葉の整理:連結決算は、親会社と子会社をひとつの会社とみなしてまとめる決算です。会社間取引(インターカンパニー取引)は、グループの会社同士の取引を指します。

海外展開でERPに求められる4つの要件

#要件見る点
①多通貨拠点ごとの現地通貨と、本社の通貨を両方扱えるか
②多言語現地の社員が母語で操作し、本社が日本語で見られるか
③拠点の統合・連結会社間取引を消去し、連結の数字を組めるか
④現地の法規制各国の会計・税・監査の要件にどう対応するか

4つのうち1つが欠けても、運用はどこかで手作業に戻ります。

  • 多通貨に対応しても、会社間取引の消去ができなければ、連結のたびに手で突き合わせる
  • 連結が得意でも、現地の法規制に合わなければ、現地で別の会計ソフトを併用する

別のソフトを併用すると、同じデータが二重に存在する状態になります。

要件は、拠点が増えるほど効いてくる

1拠点なら、現地でExcelや簡易な会計ソフトを使っても何とか回ります。

2拠点、3拠点と増えると、拠点ごとに違うシステムの寄せ集めになる。

連結のたびに、経理の部門が疲れていきます。

「最初は本社のシステムを海外でも使おうとした」

「現地ごとに合うものを選んだ」

どちらの形でも、拠点が増えるにつれて回らなくなる傾向があります。

海外拠点が1つのうちに将来の形を決めておくと後戻りの費用が小さくなります。

NetSuite OneWorldとは何か

通常のNetSuiteは、1つの法人での運用が前提です。

OneWorldは、複数の法人・拠点・通貨・言語を1つのERPで管理できるように広げた形です。

主な対応範囲

項目内容
利用世界220地域・44,000社以上(NetSuite全体)
通貨190通貨
言語27言語
税のレポートVAT・GST・源泉徴収税のレポート機能

(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点。OneWorld製品ページ、2026年9月確認)

公式ヘルプにある、OneWorldの基本

Oracleのヘルプでは、OneWorldの基本を次のように説明しています。

  • 国内と海外の子会社を、1つの階層の形で管理する
  • 子会社は、税と規制の上でそれぞれ独立した法人として扱う
  • 子会社ごとに、税務の管轄と基本通貨(その会社が帳簿をつける通貨)を持つ
  • 子会社は、自社の基本通貨で取引を記録する
  • 複数の子会社のデータを、親会社の通貨で連結の帳票にまとめられる
  • 各子会社・親会社・最上位の親会社の、それぞれの通貨で報告できる

(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ「OneWorld Overview」、2026年9月確認)

子会社は現地通貨で記帳し、本社は同じデータを親会社の通貨で見る。

グループ全体の状況を早くつかめることが、OneWorldが選ばれる主な理由です。

子会社は現地通貨で記帳し、親会社の通貨で連結する 子会社はそれぞれ税務の管轄と基本通貨を持ち、自社の基本通貨で取引を記録する。親会社は同じデータを親会社の通貨で連結の帳票にまとめる。始める前の前提は、最上位の親会社による100%保有と、OneWorldへの移行は元に戻せないこと。 OneWorldの基本の形 親会社 親会社の通貨で連結の帳票 子会社A 基本通貨で記帳 子会社B 基本通貨で記帳 子会社C 基本通貨で記帳 子会社ごとに、税務の管轄と基本通貨を持つ 始める前の2つの前提 ・最上位の親会社が100%保有する形 ・OneWorldへの移行は元に戻せない
子会社は現地通貨で記帳し、親会社の通貨で連結する

始める前に知っておきたい2つの前提

同じヘルプには、見落としやすい前提も書かれています。

  • 100%保有が前提:最上位の親会社がすべての子会社を100%保有する形が前提。合弁やフランチャイズなど共同で持つ会社は、より専門的な会計の扱いが要る
  • 移行は元に戻せない:既存のNetSuiteのアカウントもOneWorldに移行できる。ただし一度きりの移行で、元には戻せない

(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ「OneWorld Overview」、2026年9月確認)

合弁の会社が多いグループは、設計の前に扱いを専門家と詰めておきます。

いまは通常のNetSuiteで、将来OneWorldに移る会社は、移る時期を計画に入れておきましょう。

多通貨|190通貨と連結の換算

海外展開で最初にぶつかるのが、通貨の壁です。

多通貨の機能の中身

機能内容
対応通貨数190通貨
為替レート自動の取得と、期末の評価替えに対応
為替差損益取引の時点と決済の時点の差を計算
取引時のレートの保持取引が発生した時のレートを残す
連結用の為替レート子会社と親会社の基本通貨の間のレートを、期間ごとに持つ

受注・出荷・入金の時点で、為替レートは違います。

これを追えないと、売上の実際の金額が後から分からなくなります。

為替差損益の処理は、NetSuiteの為替差損益で扱っています。

連結用の為替レートは3種類

子会社と親会社の基本通貨が違う場合、連結用の為替レートの表を持てます。

レートは、会計期間・子会社・会計帳簿ごとに、次の3種類です。

(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ「Consolidated Exchange Rate」、2026年9月確認)

種類一般的な使いどころ
Current(期末のレート)貸借対照表の資産・負債
Average(期中平均のレート)損益計算書の収益・費用
Historical(取引時のレート)資本など

右の列は、換算の一般的な考え方です。

どの科目にどのレートを使うかは、会社の会計方針で決まります。

監査法人・会計士と決めておきます。

多通貨への対応の3段階

段階対応内容海外展開での限界
1. 単一通貨日本円だけ海外の取引は別のソフトで
2. 限られた外貨日本円+一部の外貨拠点が増えると限界
3. 多通貨+連結多数の通貨+連結の換算拠点が増えても同じ仕組みで

OneWorldは段階3にあたります。

段階1や2のERPで海外拠点を回すと、Excelや別のソフトで補うことになり、二重の管理が生まれます。

為替の影響を、決算を待たずにつかむ

為替が大きく動くと、海外子会社の円に直した業績も大きく動きます。

子会社の数字が同じデータベースにあれば、為替を反映した連結の数字をダッシュボードで見られます。

四半期の決算を待たずに、影響の大きさがつかめるわけです。

為替の予約(ヘッジ)や、子会社への送金の時期の判断に役立ちます。

ただし、どのレートで評価した数字かは、使う前に見ておきます。

期中の数字は、期末の決算の数字と一致しないことがあるためです。

多言語|27言語の画面と現地での定着

「現地の社員が、本社のシステムを使えない」。この問題は、意外と深刻です。

項目内容
画面の言語27言語(日本語・英語・中国語・フランス語・ドイツ語など)
利用者ごとの切替各利用者が自分の言語を選べる
データ表示の言語が違っても、データベースは1つ

たとえば、ベトナムの拠点の社員はベトナム語で操作します。

本社の管理者は、同じデータを日本語で見る。

両者が見ているのは、同じ1件のデータです。

日本語のマニュアルを読まないと操作できない状態が続くと、次のことが起きます。

  • 現地の社員が操作を覚えず、日本人の駐在員に頼る
  • 駐在員が帰任すると、操作できる人がいなくなる
  • 現地ではExcelで管理し、月末に駐在員がERPに写す二重の作業が定着する

各拠点が同じERPを使えば、勘定科目・承認の流れ・入力の決まりを本社がまとめて決められます。

多言語の画面は、本社の統制と現地の業務を両立させる土台になります。

海外拠点の管理|子会社の階層と会社間取引

子会社(サブシダイアリー)の階層

OneWorldでは、本社・地域統括会社・各国の子会社を、サブシダイアリー(子会社)の階層で管理します。

階層役割OneWorldでの扱い
親会社最上位の連結の対象最上位の子会社として登録
地域統括会社例:アジア統括親会社の下に置く
各国の子会社各国の現地法人地域統括会社の下に置く

階層を1つのERPに持たせると、どの階層からも上と下の数字を集計できます。

会社間取引の消去

連結決算では、グループ内の取引を消去する必要があります。

手で行えば、膨大な突き合わせの作業になります。

Oracleのヘルプでは、次の仕組みが説明されています。

  • 子会社を持つ会社の下に、消去用の子会社を作る
  • 消去の仕訳は、この消去用の子会社に計上する
  • Automated Intercompany Managementの機能を有効にすると、消去の仕訳を自動で作れる

(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ「Elimination Subsidiaries」、2026年9月確認)

たとえば、次のような流れを設計します。

  • 本社が子会社に商品を販売する → 子会社で仕入を計上する → 連結で両方を消去する
  • 子会社Aが子会社Bに経費を付け替える → 両方に対応する仕訳を作る → 連結で消去する

1つ目の流れと消去の仕組みを図にすると、次のとおりです。

会社間取引を連結で消去する流れ 本社が子会社に商品を販売し、子会社で仕入を計上し、連結で両方を消去する。消去の仕訳は消去用の子会社に計上し、Automated Intercompany Managementを有効にすると自動で作れる。 会社間取引を消去する流れ 本社が子会社に商品を販売 子会社で仕入を計上 連結で両方を消去 消去の仕組み(公式ヘルプ) ・仕訳は消去用の子会社に計上する ・Automated Intercompany Management  を有効にすると、仕訳を自動で作れる どこまで自動にするかは、設計で決める
会社間取引を連結で消去する流れ

どこまで自動にし、どこを人が見るかは、設計で決めます。

連結決算の進め方は、グループ連結決算をNetSuiteで効率化で扱っています。

現地の法規制|各国の会計・税・監査

海外展開のERPで見落とされやすいのが、現地の法規制への対応です。

国ごとに、次のような要件が違います。

  • 会計基準:IFRS、米国の会計基準、各国の基準
  • 税制:付加価値税の税率と計算、源泉徴収、移転価格税制
  • 監査:監査の証跡の保存期間、電子保存の要件、法定帳簿の様式
  • 書類:請求書・領収書に必ず書く事項

対応しないまま運用すると、現地の監査で指摘を受け、直すのに時間と費用がかかります。

しかも現地の要件は、制度の改正で毎年のように変わることがあります。

一度合わせて終わりではなく、改正に追いつく体制まで含めて考えます。

OneWorldで国ごとに聞くこと

OneWorldの製品ページでは、VAT・GST・源泉徴収税のレポートや、会社間取引の税務上の影響の記録が紹介されています。

(出典:NetSuite公式サイト OneWorld製品ページ、2026年9月確認)

ただし、国ごとの対応の範囲は同じではありません。

進出する国ごとに、次の点を聞きます。

聞くこと聞く相手と方法
その国の税の計算と申告の様式に対応しているかアカウント担当・支援する会社に、国名を挙げて聞く
法定の帳簿や請求書の様式に合うか現地の会計事務所と一緒に、様式を見比べる
税制の改正にどう追いつくか標準の更新で対応するか、個別の設定や開発が要るか

源泉徴収税の扱いは、NetSuiteの源泉徴収税で扱っています。

複数の会計基準で見たい場合

「同じ取引を、現地の基準とIFRSの両方で見たい」という要望は多くあります。

ここで使うのが、マルチブック会計です。1つの取引から、複数の基準の帳簿を作る機能を指します。

Oracleのヘルプでは、1組の取引から複数の会計の記録を持てる機能で、OneWorldでのみ使えると説明しています。

(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ「Multi-Book Accounting Overview」、2026年9月確認)

OneWorldとの関係は、NetSuiteマルチブック導入の進め方で扱っています。

海外展開のERPの形と、判断の物差し

4つの形を比べる

形中身向く会社注意点
A. 単一ERP本社も海外子会社もOneWorld拠点の間の業務をそろえたい本社の業務も変える覚悟が要る
B. 2層ERP本社は今のERP、海外子会社にOneWorld本社のERPを替えたくない本社との連携の設計が要る
C. 現地ソフト+連結の仕組み拠点ごとの会計ソフトから数字を集める拠点が少なく、取引も単純勘定科目の対応づけが毎回要る
D. 拠点ごとに別のERP拠点ごとに合うERPを選ぶ拠点が完全に独立して動く連結の負荷が大きい

AやBでグループのデータが1つのデータベースにそろうと、AIで拠点を横断して見るのも楽になります。

Dのようにデータがばらばらだと、AIにも渡しにくくなります。

2層ERPは、本社にSAPなどの大きなERPがある会社でよく採られる形です。

海外子会社を早く立ち上げつつ、本社のERPは残せます。

詳しくは2層ERP(Two-Tier ERP)とはをご覧ください。

形の選び方|2つの問いで分ける

海外展開のERPの形を選ぶ流れ 3年後に拠点が増えないなら現地ソフトと連結の仕組みも比べる。増えるなら、本社のERPを替える場合は単一ERP(OneWorld)、残す場合は2層ERPを比べる。合弁が多い場合は会計の扱いを先に専門家と詰める。 海外展開のERPの形を選ぶ 問1|3年後に拠点は増えるか 増えない 現地ソフト+ 連結の仕組みも比べる 増える|問2 本社のERPを替えるか 替える 単一ERP OneWorld 残す 2層ERP 子会社のみ どの形でも先に決める 子会社の階層と勘定科目・保有の割合 合弁が多い場合は会計の扱いを先に専門家と詰める
海外展開のERPの形を選ぶ流れ

問いは2つです。

まず、3年後に拠点が増えるか。増えないなら、現地ソフトと連結の仕組みで足りることもあります。

増えるなら、次に本社のERPを替えるか残すか。替えるなら単一ERP、残すなら2層ERPを比べます。

どの形を選んでも、子会社の階層・勘定科目・保有の割合は先に決めておきます。

OneWorldが合う会社

  • 海外子会社が2法人以上ある、または1〜2年のうちに増える計画がある
  • 現地通貨と本社の通貨の換算を、毎月手作業で行っている
  • 連結決算の準備に、毎四半期で何週間もかかっている
  • 海外のM&Aを考えており、買収先のシステムの統合(PMI)も視野にある

別の道が合う会社

状況合う道
海外拠点が1つで、当面増やす予定がない現地の会計ソフト+本社での連結の仕組み
本社のERPを替えたくない2層ERP(本社は今のまま)
本社が日本の会計ソフトで、海外拠点の会計を日本からまとめて見たいmultibookのような海外拠点向けの仕組み
小さな規模から、世界共通の製品で始めたいSAP Business Oneも比べる
費用を抑え、自由に作り替えたいOdooも比べる
合弁の会社が多く、100%保有の前提に合わない会計の扱いを先に専門家と詰める

どれが優れているかではなく、拠点の数・増え方・本社の体制で合う形が変わります。

比べ方は、ERP・クラウドERPの比較とmultibookとNetSuiteの違いで扱っています。

「いまは入れない」も、立派な判断です。

その場合も、勘定科目と子会社の階層の形だけは、将来に備えて決めておきます。

費用の考え方

NetSuiteの費用は、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

モジュール・ユーザー数・オプションで変わり、OneWorldの構成や拠点の数でも変わります。

中堅企業で複数のモジュールを使う場合、数百万円規模になることもあります。

導入の費用は、さらに幅が出ます。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが、支援したNetSuite導入の費用を並べました。

3名程度・1.5か月の150万円程度から、100名程度・1.5年の2億円程度(うち開発約7割)まで開いています。

差を生むのは、機能範囲・開発(特に外部連携)・社内の体制・ユーザー数の4つです。

2層ERPで本社のERPとつなぐなら、この「開発」が重くなります。

4事例の詳細はNetSuiteの料金にまとめています。

これから海外に出る会社と、すでに拠点がある会社

これから海外に出る会社

冒頭の問いへの答えは、ここにあります。

最初の拠点を立ち上げる時点で、グループ全体の形を決めておくことです。

  1. 3年後の拠点の数と国を、仮でよいので書き出す
  2. 子会社の階層(地域統括会社を置くか)を決める
  3. 勘定科目を、本社と子会社でそろえる
  4. 本社のERPを替えるか残すか(単一ERPか2層ERPか)を決める
  5. 進出する国の税と帳簿の要件を、要件定義に最初から入れる

決めておく5つを図にすると、次のとおりです。

最初の拠点で決めておく5つ 3年後の拠点の数と国を書き出す、子会社の階層を決める、勘定科目を本社と子会社でそろえる、本社のERPを替えるか残すかを決める、国の税と帳簿の要件を要件定義に入れる。全部を最初に作り込む必要はない。 最初の拠点で決めておく5つ 3年後の拠点の数と国を書き出す 子会社の階層を決める 勘定科目を本社と子会社でそろえる 本社のERPを替えるか残すかを決める 国の税と帳簿の要件を要件定義に入れる 全部を最初に作り込む必要はない
最初の拠点で決めておく5つ(これから海外に出る会社)

全部を最初に作り込む必要はありません。

1拠点で動かしながら、次の拠点に同じ仕組みを広げられる形にしておけば十分です。

導入の期間の考え方は、NetSuiteの導入期間で扱っています。

すでに海外拠点があり、見直しを考えている会社

拠点ごとにソフトが違い、連結がつらい。あるいは、現地のシステムの保守が切れる。

こうした会社は、次の順番で考えます。

  • 連結にかかる時間を測る:四半期ごとに、何人で何日かかっているか
  • 拠点ごとの負担を比べる:データ集めに一番時間がかかる拠点はどこか
  • 一度に替えるか拠点ごとに替えるか:負担の大きい拠点から順に移す道もある

通常のNetSuiteを使っている会社は、OneWorldへの移行も選択肢です。

ただし移行は元に戻せないため、子会社の階層の設計を先に固めます。

M&Aで拠点が増えた会社は、M&A後のPMI完全ガイドもご覧ください。

よくある3つの失敗

失敗1:本社のERPを広げて済まそうとして止まる

起きること:本社のERPに海外の機能を足そうとしたら、ライセンスの追加と改修の見積もりが想定を大きく超える。計画が止まり、海外は別のソフトのまま。

原因:本社のERPは、本社の業務に合わせて作られていることが多い。後から海外向けのライセンス・各国の機能・改修・多通貨を足すと、費用が積み上がる。

避け方:最初の検討で、「本社のERPを広げる」と「海外子会社だけ別のERPで立ち上げる(2層ERP)」を並べます。

比べるのは費用だけでなく、立ち上げの速さもです。

失敗2:拠点ごとに別のERPを入れて、連結が崩れる

起きること:本社は日本のERP、米国は現地の会計ソフト、東南アジアは別のソフト。連結のたびに手で突き合わせ、月次決算が遅れる。

原因:拠点ごとに見れば正しい選択だった。現地の社員に慣れがあり、費用も安い。しかしグループで見ると、勘定科目の対応づけ・為替の換算・会社間取引の消去が手作業になる。

避け方:最初の海外拠点の時点で、グループ全体のERPの形を決めます。

「各拠点で動いている」と「グループで数字を使えている」は、別の話です。

失敗3:現地の法規制への対応を後回しにして、稼働後に手戻りする

起きること:まず本社をERPに乗せ、海外は「稼働してから順次」とした。いざ広げる段で、税や帳簿の対応に追加の設定や開発が要ると分かる。

原因:国内の導入では、会計の基準も税も日本のものが前提になっている。海外では、現地の要件は選べるオプションではなく運用の前提。

避け方:海外展開の計画があるなら、現地の要件を要件定義の初日から入れます。

稼働前なら設計の話で済みますが、稼働後だとマスタの組み替えやデータの再分類になります。

ベンチャーネットならこう見る

海外展開のERPは、ITの計画である以上に経営の計画です。

事業計画・組織・人の配置・統制の設計が絡むため、経営層が判断に関わる必要があります。

ベンチャーネットは、2つの型で整理します。

型1:国ごとの要件を「標準に合わせる/開発する/残す」に分ける

進出する国の税と帳簿の要件は、国名を挙げて一つずつ仕分けます。

  • 標準に合わせる:標準の機能と更新で対応できる要件
  • 開発する:個別の設定や開発で補う要件
  • 残す:現地の会計事務所や現地の仕組みに任せる要件

「開発する」が増えるほど、費用も、税制改正のたびの手当ても重くなります。

「残す」を選ぶなら、本社への報告の方法を決めておきます。

型2:役割を4者で分ける

担い手担うこと
日本オラクルライセンス・トレーニング・製品サポート
ベンチャーネット要件定義・設定・カスタマイズ・アドオン開発・保守・PM
現地の会計事務所法定の帳簿・申告の様式の確認
自社(本社と現地)業務の整理、データの準備、受入テスト

国内でERPを入れた経験があっても、海外拠点の導入は論点の質が違います。

現地の商習慣・税制に詳しい人、現地の言葉での研修、本社と現地の業務をつなぐ設計の力が要ります。

これをすべて社内でまかなえる中堅企業は、多くありません。

ベンチャーネットのPMには、発注する会社側のPM業務や、Oracleとの調整も含みます。

本社の既存システムとの連携も担うため、2層ERPの設計も同じ机で話せます。

契約は請負契約に対応(準委任も相談可)。常駐はせず、国内のチームがリモートで進めます。

現地の法定の様式は、現地の会計事務所と組んで詰めていく形です。

パートナーの選び方は、ERP導入はなぜ失敗するのかでも触れています。

最初の打ち合わせで伺うのは、次の3つです。

  • 3年後の拠点の数と国
  • 子会社はすべて100%保有か
  • 本社のERPを替えるか、残すか

全部を一度にそろえる必要はありません。

1拠点で動かしながら、次の拠点に広げる。

その順番のほうが、結果として早くまとまります。

今日できること|1時間で「拠点の地図」を作る

いまの拠点と、3年以内に予定する拠点の分だけ、次の表を埋めてください。

拠点(国)保有の割合・基本通貨いまの会計ソフトと報告の方法連結にかかる日数
(例)ベトナム子会社100%・ベトナムドン現地のソフト、月末にExcelで送付5日

会計ソフトがばらばらで、連結の日数が長い拠点ほど、見直しの効果は大きくなります。

保有の割合が100%でない拠点は、設計の前に扱いを詰める対象です。

よくある質問

Q1. OneWorldは通常のNetSuiteと何が違うのですか

複数の法人を1つのERPで管理できる点です。

子会社の階層、子会社ごとの基本通貨と税務の管轄、連結の帳票、会社間取引の消去が使えます。

海外子会社を持つ会社や、1〜2年のうちに持つ予定の会社は、最初から検討する価値があります。

Q2. 何か国の拠点があればOneWorldが必要ですか

厳密な基準はありませんが通貨の違う法人が2つ以上なら検討の価値があります。

拠点が1つでも、2拠点目の計画があるなら、先に形を決めておくと後戻りが減ります(第8章)。

Q3. 本社のERPを残して、海外拠点だけにOneWorldを入れられますか

できます。

2層ERPと呼ばれる形です。

本社のERPとの連携を設計すれば、必要なデータをやり取りできます。

Q4. 何通貨・何言語に対応していますか

190通貨と27言語です。

NetSuite全体では、世界220地域・44,000社以上で使われています(Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。

Q5. 今の通常のNetSuiteから、OneWorldに移れますか

移れますが一度きりの移行で元には戻せません。

子会社の階層と勘定科目の設計を先に固めてから移ります。

Q6. 現地の税制の改正には、どう追いつきますか

国ごとに対応の範囲が違うため国名を挙げて聞いてください。

標準の更新で対応するもの、設定で対応するもの、開発が要るものがあります。

現地の会計事務所とも一緒に見ます(第10章の型1)。

Q7. 費用と導入の期間の目安は

ライセンスはミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

構成によっては数百万円規模になることもあります。

導入の費用と期間は、機能範囲・開発・社内の体制・ユーザー数で変わります(7-5)。

2拠点目からは1拠点目の設計を使い回せるため、立ち上げが短くなる傾向があります。

Q8. 現地の基準とIFRSの両方で数字を見られますか

マルチブック会計で1つの取引から複数の基準の帳簿を作れます。

マルチブック会計は、OneWorldでのみ使える機能です。

どの基準の帳簿を何冊持つかは、監査法人・会計士と決めます。

詳しくはNetSuiteマルチブック会計完全ガイドをご覧ください。

まとめ|NetSuiteで海外展開を進めるために

  • 海外展開のERPには、多通貨・多言語・拠点の統合・法規制の4つの要件がある
  • OneWorldは、子会社ごとの基本通貨と税務の管轄を持ち、親会社の通貨で連結できる
  • 連結用の為替レートは3種類。会社間取引の消去は自動にできる
  • 100%保有が前提で、既存のアカウントからの移行は元に戻せない
  • 形は「拠点が増えるか」「本社のERPを替えるか」の2つの問いで選ぶ

「そろそろOneWorldにすべきか」。

その答えは、機能の比較より先に、3年後の拠点の地図から出てきます。

まずは第11章の表を、いまの拠点の分だけ埋めてみてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

「海外展開のERPの方向性に確信が持てない」段階こそ、ご相談ください。

本社のERPを広げるか、OneWorldにするか、ほかの形にするかを、第三者の立場で一緒に比べます。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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