なぜ日本の中小企業は生産性が上がらないのか?真因とNetSuiteによる解決策

60.1ドル。

2024年の日本の、1時間あたりの労働生産性です。

OECD加盟38カ国中28位。主要先進7カ国(G7)の中では、最も低い状況が続いています。

(出典:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2025」、2026年9月確認)

労働生産性とは、働いた量(人数や時間)に対して、どれだけの成果を生んだかを示す指標です。

成果には、ふつう付加価値(売上から外から買ったものの費用を引いた額)を使います。

中小企業の生産性が上がらない根っこは、働き方やツールの不足よりも、社内のデータが分断されていることにあります。

では、データをつなげば、中小企業の生産性はどこから変わり始めるのか。

全社を一度に変える必要はありません。最初の一周は、90日で回せます。

目次

この記事で分かること

  • 日本の労働生産性の現状
  • 生産性を下げる4つの要因と、その共通の根っこ
  • データを統合すると、生産性の何が変わるか
  • ERP(基幹業務をまとめる仕組み)が向く会社・まだ早い会社
  • 生産性を上げようとして失敗する3つのパターン

日本の労働生産性の現状

日本の労働生産性は、国際的に見て長く低い水準にあります。

2024年の数字を、日本生産性本部の調査で並べます。

項目日本
時間当たり労働生産性(2024年)60.1ドル(5,720円)
OECD加盟国中の順位38カ国中28位
G7内での位置づけ最下位

出典:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2025」(2026年9月確認)

日本企業の99.7%は中小企業です(2021年6月時点。出典:中小企業庁公式、2026年9月確認)。

中小企業の生産性は、日本経済全体の生産性を大きく左右します。

国全体の課題として中小企業の生産性が語られるのは、このためです。

労働生産性の計算式と、自社の数字の出し方は、労働生産性とは?で扱っています。

生産性を下げる4つの要因

中小企業の現場では、次の4つの要因がよく見られます。

要因現場で起きていること
長時間労働への依存時間をかければ成果が出る、という前提が残っている
アナログな管理紙の申請と承認、手作業の集計が続いている
評価制度のずれ残業の多さが評価され、短時間で成果を出す人が報われにくい
裁量の小ささ現場が自分で判断できず、決めるのに時間がかかる

どれも、生産性を下げる要因です。

ただ、4つを並べると、共通する「根っこ」が見えてきます。

真因は「データの分断」

会計は会計ソフト、販売は販売管理ソフト、在庫は別のExcel。

生産性が上がらない会社では、社内のデータがばらばらに散らばっています。

データが分断されていると、次のことが起きます。

  • 判断が遅れる:「今どうなっているか」を集めるのに時間がかかり、判断が後手に回る
  • どんぶり経営になる:部門や商品ごとの損益が見えず、勘で決める
  • 入力が重なる:同じ情報を何度も入力し、転記とすり合わせの作業が増える

前章の4つの要因も、元をたどればここにつながります。

現場に裁量を渡したくても、判断の材料となる数字が手元になければ渡せません。

評価制度を変えたくても、成果を測る数字がそろわなければ、時間で測るしかない。

アナログな管理が残るのも、必要なデータが1か所にないからです。

生産性を下げる4つの要因と、共通の根っこ 長時間労働への依存、アナログな管理、評価制度のずれ、裁量の小ささ。4つの要因は、どれも社内のデータの分断につながっている。 4つの要因と、共通の根っこ 長時間労働 への依存 アナログな 管理 評価制度の ずれ 裁量の 小ささ 根っこ:データの分断 会計・販売・在庫が 別々の場所にある 判断の遅れ・どんぶり経営・ 入力の重なりを生む
生産性を下げる4つの要因と、共通の根っこ

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、企業の変革は「データの統合」から始まると考えています。

ばらばらのデータを1つにまとめることが、生産性を上げる出発点です。

データの統合が生産性を高める仕組み

NetSuiteとは

NetSuiteは、Oracleが提供するクラウド型のERPです。

会計・販売・在庫・購買などの基幹業務を、1つの仕組みでまとめて管理します。

世界220地域・44,000社以上で利用されています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。

Oracleの説明では、NetSuiteの各機能は共通のデータベースを持ちます。

情報はリアルタイムに更新され、権限のある利用者が部門をまたいで使えます。

受注から入金、購買から支払までの流れも、再入力や書き出しなしに進められるとされています。

(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)

NetSuiteの要は、機能の多さではありません。

ばらばらだったデータを1か所に統合することにあります。

ツールの足し方で、効果が変わる

観点ツールを個別に導入会計ソフト+販売管理を連携データ統合型のERP(NetSuiteなど)
データの置き場所部門ごとにばらばら2〜3か所。連携で補う1か所
経営の判断集めるのに時間がかかる連携の範囲なら早い権限に応じてすぐに見られる
業務の重なり同じ入力をくり返す連携の外で手作業が残る入力は原則1回
向く会社部門が少なく、業務が単純業務が安定し、拠点が少ない部門・拠点・品目が増えてきた

データが統合されると、次のことができるようになります。

  • 業務の効率化:受注から請求、会計までをつなぎ、転記や二重の入力を減らす
  • 早い経営判断:売上・利益率・在庫・資金の動きを、ダッシュボードで見る
  • 権限の設定:役割に応じて見られる範囲を分け、現場に適切な裁量を持たせる
  • 場所を選ばない働き方:クラウドなので、どこからでも同じデータを使える

ダッシュボードとは、重要な数字を1画面にまとめて表示する機能のことです。

Oracleは、社員・管理職・経営層それぞれに必要な情報を示す、役割ごとのダッシュボードを用意していると説明しています。

業務改善の進め方は、NetSuiteで実現する業務改善で扱っています。

ERPが向く会社・まだ早い会社

データの統合が効きやすいのは、次のような会社です。

  • 会計・販売・在庫のソフトが別々で、月末の数字合わせに数日かかる
  • 同じ情報を、2つ以上のシステムやExcelに入力している
  • 部門・商品・拠点ごとの損益を、すぐに出せない
  • 拠点や事業が増え、社長が1人で全体を見られなくなってきた

逆に、事業が1つで、会計ソフトと少しのExcelで数字がすぐにそろう会社は、まだ早い段階です。

業務の流れが決まっていない会社や、経営者が導入に関わる時間を取れない会社も同じです。

この段階なら、いまは入れないという判断も正しい選択です。

まず業務の流れを書き出し、ムダな作業を減らすところから始めます。

統合の方法も、NetSuiteだけではありません。

アプリ単位で小さく始めるならOdoo、国内の帳票を重視するなら国産ERPが候補になります。

1つの業務だけを効率化したいなら、AIを使ったスクラッチ開発も選べます。

選び方は、ERP・クラウドERPを徹底比較で扱っています。

向く会社とまだ早い会社の分かれ目を図にすると、次のとおりです。

ERPが向く会社・まだ早い会社 会計ソフトと少しのExcelで数字がすぐにそろう会社は、まだ早い段階で、いまは入れないのも正しい選択。業務の流れを書き出してムダを減らす。そろわない会社は、NetSuite・Odoo・国産ERP・AIスクラッチ開発から統合の方法を選ぶ。 ERPが向く会社・まだ早い会社会計ソフトと少しのExcelで、数字がすぐにそろうかそろうそろわないいまは入れない業務の流れを書き出し、ムダな作業を減らす統合の方法を選ぶNetSuite・Odoo・国産ERP・AIスクラッチ開発業務の流れが決まっていない会社も、まだ早い
ERPが向く会社・まだ早い会社

これから選ぶ会社、いまのシステムを見直す会社

これからERPを選ぶなら、最初に決めるのは製品ではなく外したいボトルネックです。

「月次決算に10営業日かかる」「在庫の数が合わない」など、1つか2つに絞ります。

中小企業での使いどころは、NetSuiteは中小企業でも使える?で扱っています。

いまのシステムがあるのに上がらないなら、原因はたいてい次のどれかです。

  • システムの外で、Excelの集計や転記が残っている
  • 使っていない機能のために、保守の費用を払い続けている
  • 古いやり方に合わせた作り込みが重なり、変えにくくなっている

保守の期限や更新が近いなら、入れ替えを考える好機です。

ただし、今のやり方をそのまま移すと、同じ問題が新しいシステムに引き継がれます。

使いこなせていないだけなら、入れ替えより運用の見直しが先です。

その判断は、NetSuiteが使いにくい・活用できていないと感じたらも参考になります。

生産性を上げようとして失敗する3つのパターン

ERPを入れた会社が、すべて生産性を上げられるわけではありません。

つまずきやすい点は、次の3つです。

失敗1:目的が「生産性の向上」だけで、具体性がない

起きること:「DXのため」「効率化のため」とだけ言って導入を進める。

導入の後も、効果が出たのかどうかを測れない。

原因:何を、どれだけ良くするのかが決まっていない。

目的があいまいだと、要る機能を見極められず、使わない機能に投資してしまう。

避け方:「月次決算を5営業日短くする」のように、測れる目標を先に決めます。

外したいボトルネックを1つ、言葉にしてから始めます。

失敗2:今のやり方を、そのままシステムに移す

起きること:紙やExcelの手順を、そのままシステムで再現しようとする。

作り込みが重なり、前より使いにくくなる。

原因:「業務は変えたくない」という思いが強く、非効率なやり方が残っている。

属人化したやり方を、誰も説明できない。

避け方:「Fit to Standard」という考え方を取り入れます。

業務を、システムの標準の機能に合わせていく発想です。

このときに、本当に必要な業務と惰性で続けている業務を仕分けます。

業務の書き出し方は、ERP導入前にやるべき業務フロー可視化で扱っています。

失敗3:ツールを入れたら終わり、と考える

起きること:本番の稼働日をゴールにしている。

操作の研修や定着の取り組みに予算を割かず、現場がExcelに戻る。

原因:ERPの本当のゴールは、稼働日ではなく、現場に定着して業務が回り始めた日です。

ここを軽く見ると、生産性は元のままです。

避け方:稼働後3〜6か月の定着の計画を、最初から組み込みます。

操作の研修、マニュアルの整備、運用のルールの文書化が要ります。

3つに共通するのは、ERPの導入を「ITのプロジェクト」として扱ってしまうことです。

導入は、業務の流れを見直し、部門の壁を取り払い、会社のデータを1本につなぐ取り組みです。

ERPはITのプロジェクトではなく経営のプロジェクト。

経営者が責任者として関わり、「なぜ生産性を上げるのか」を自分の言葉で語れることが欠かせません。

ERPの失敗の全体像は、ERP導入はなぜ失敗するのかで扱っています。

ベンチャーネットならこう見る

ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。

生産性の相談では、製品の話より先に、データがいくつの場所にあるかを数えます。

会計・販売・在庫・勤怠。その数字が、経営者の手元に何日遅れで届くか。

そのうえで、2つの型で進めます。

型1:最短90日の1周目は「1業務・1KPI」

全社を一度に変えようとすると、データの統合も業務の見直しも終わりません。

最初の1周は、最短90日で、1つの業務と1つのKPI(重要な業績指標)に絞ります。

たとえば「月末の売上集計」と「締めにかかる日数」です。

統合しないと解けない課題かどうかも、ここで分かります。

いまのソフトの連携や運用の見直しで足りるなら、ERPはおすすめしません。

統合が要る場合も、課題の大きい領域から始め、動かしながら広げます。

型2:守り→攻め→次へ

データがつながった後の道のりは、3段で考えます。

定着の先の3段階:守り→攻め→次へ 守りは業務が回ること、攻めはデータで打つこと、次へは経営が変わること。 定着の先の3段階守り|業務が回る在庫・販売・会計を1つにし、日々の業務を安定させる攻め|データで打つ売れ筋・在庫の分析、営業作業の自動化、生成AIでの集計次へ|経営が変わるKPI、管理会計、上場に向けた内部統制
定着の先の3段階:守り→攻め→次へ

守りでは、在庫・販売・会計が1つになり、転記と数字合わせが減ります。

攻めでは、そろったデータで売れ筋や在庫を分析し、生成AIでの集計にも使えます。

次へでは、KPIや管理会計で部門ごとの成果を測り、評価や裁量の渡し方まで変えられます。

第2章の「評価制度のずれ」と「裁量の小ささ」が解けるのは、この3段目です。

時間ではなく、成果の数字で人を見られるようになるからです。

導入を任せきりにせず、二人三脚で進めたい方は、伴走型のNetSuite導入支援とは?もご覧ください。

今日できること|「時間が消えている作業」を書き出す

1時間で、次の表を埋めてみてください。

作業担当月の時間(見込み)同じ情報の入力回数
(例)月末の売上集計経理16時間2回(販売管理とExcel)

書き出すのは、転記・集計・照合・確認待ちの作業です。

入力回数が2回以上の作業が、データの分断で生まれている時間です。

合計の時間がいちばん大きい作業が、90日の1周目の候補になります。

よくある質問

Q1. NetSuiteを導入すれば、生産性は上がりますか

導入だけでは上がりません。

NetSuiteは、データを統合して判断を速くする仕組みです。

効果が出るのは、業務の見直しとセットで進めた場合です。

第7章の3つの失敗を避けることが近道になります。

Q2. 中小企業でも導入できますか

導入できます。

最初から全機能を使う必要はありません。

会計や販売管理など、課題の大きい領域から始めるのが現実的です。

すべてを整えてから始めるより、まず回すことを優先します。

Q3. 情シスの担当が1人しかいなくても運用できますか

運用できます。

クラウドのERPなので、サーバーの保守やシステムの更新はベンダー側が担います。

1人でも回せることを前提に、要件を絞ることが肝心です。

Q4. 何から始めればよいですか

自社のボトルネックを1つに絞ることから始めます。

第9章の表で、時間が消えている作業を書き出してください。

いちばん時間の大きい作業を1つ選び、その業務と1つのKPIで最初の90日を回します。

Q5. 生産性の向上に、補助金は使えますか

デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)の対象になる場合があります。

対象のツールや枠、申請の時期は年度ごとに変わります。

使い方は、デジタル化・AI導入補助金でNetSuiteを導入する方法で扱っています。

Q6. 人を増やせば、生産性の問題は解決しますか

分断されたデータのままでは解決しにくいです。

転記や集計の作業が残ったままだと、人を増やしても、同じ作業をする人が増えるだけです。

先に作業を減らし、そのうえで人を配置するほうが、1人あたりの成果は上がります。

まとめ

  • 日本の時間当たり労働生産性は60.1ドルで、G7の中で最も低い
  • 生産性を下げる4つの要因の根っこは、社内のデータの分断
  • データを統合すると、判断の速さ・入力の重なり・現場の裁量が変わる
  • まだ早い会社はいまは入れないも選択肢。業務の書き出しから始める
  • 始めるなら、最短90日で1業務・1KPI。その先に守り→攻め→次へがある

60.1ドルは、日本全体の平均です。

自社の数字を変える一歩は、時間が消えている作業を1つ見つけることから始まります。

もう少し詳しく知りたい方へ

自社のボトルネックの整理から、ご相談をお受けしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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