額に飾った理念と、今日の判断は、つながっていますか
ミッション。ビジョン。会社の壁に、立派な言葉が掲げてある。
多くの経営者が、それを持っています。けれど、こう感じることはないでしょうか。
「あの言葉と、毎日の判断は、本当につながっているだろうか」と。
理念は理念。現場の意思決定は意思決定。気づけば、二つが別々に動いている。
新しい経営手法や便利なツールの情報は、いくらでも手に入ります。けれど、それらを追いかけるほど、足元が落ち着かない。そんな感覚です。
この記事では、ベンチャーネットが「バーチャル経営」の土台に置いている、ミッションとビジョンの話をします。ただし、自社の理念を披露するためではありません。読み終えたあなたが、自社の「なぜ」を見つめ直すきっかけになれば、と思って書いています。
手法より先に、「なぜ存在するのか」がある
経営の情報は、手法やノウハウに偏りがちです。やり方の話は語りやすい。けれど、その手前にある「なぜ自社は存在するのか」は、語るのが難しい。
ベンチャーネットは、経営学者ドラッカーの考え方を学び、実践してきました。ドラッカーは、成果を上げる組織は「問い」を持っていると言います。自社の使命は何か。顧客は誰か。その顧客にとっての価値は何か。自社にとっての成果は何か。そして、計画は何か。
このうち、いちばん先に来るのが「使命は何か」です。手法やビジネスモデルは、その下段にあります。順番が逆になると、立派なやり方を手に入れても、何のためにやっているのかが曖昧になります。
図:経営の優先順位。まず「なぜ存在するのか(使命)」を問い、その下に手法、さらにツールが決まる。順番が逆になると、何のためにやっているのかが曖昧になる。
では、使命とは何でしょうか。ドラッカーの定義をベンチャーネットなりに言い換えると、こうなります。
使命とは、「誰に対して、どのような貢献をするか」である。
売上の規模や、会社の大きさではありません。まず問うべきは、貢献の中身です。
ここが定まっていない経営は、いずれ息切れします。今うまくいっているとしても、それは時流に恵まれているだけかもしれない。ベンチャーネットは、そう自分にも問いかけながら経営をしてきました。
ベンチャーネットの「存在する理由」を、語り直す
では、ベンチャーネット自身の使命は何か。ここで、原点まで戻ります。
代表の持田は、新卒で入った会社で、ある日ふと気づいたといいます。通勤電車から見る景色が、30年後も同じかもしれない、と。
うまくできた構造の中で守られて働くことは、悪いことではありません。けれど、それは本当に自分の人生を自分で歩いていると言えるのか。構造の中で動くより、構造そのものを設計したい——そう気づいて、26歳でゼロから起業しました。お客様もゼロ、社員もゼロ。退路を断っての出発でした。
何ができるかを探すなかで、最初に扱ったのがSEOでした。そこから、営業の自動化、マーケティングの自動化、経営の自動化へ。振り返れば、ベンチャーネットは一貫して「経営の自動化」の進化に関わり続けてきました。20年の歩みそのものが、いちばんの証拠になっています。
この20年で、ひとつだけ変えなかったことがあります。
「システム導入を、ゴールにしない」
システムを入れること自体が目的ではありません。経営をよくしたい、成長したい。その先にある成果がゴールです。だからベンチャーネットは「伴走」という言葉を使います。導入して終わりではなく、一緒に走り続ける。
この歩みから生まれた使命とビジョンを、いまの言葉で表すと、こうなります。
ミッション:挑戦する経営者のために、時代の荒波を越える「舟」をつくり続ける。
ビジョン:各カテゴリでNo.1となる「強い中堅・中小企業」が、深化と探索を繰り返せる環境をつくる。
深化とは、いまの強みを磨くこと。探索とは、新しい可能性を試すこと。その両方を回し続けられる会社を増やす。それがベンチャーネットの目指す景色です。
理念を、明日の判断につなぐ
ミッションやビジョンは、額に飾って終わりではありません。明日の判断に落ちて、はじめて意味を持ちます。
ベンチャーネットが大切にしているのは、理念を「Tシャツに書けるくらい簡潔に」し、そのうえで日々の仕事に具体化することです。きれいな言葉を作ることがゴールになると、かえって現場と乖離します。立派な理念を掲げること自体は、目的ではありません。
バーチャル経営では、この具体化を3つのステップで進めます。
- 見える化:データを一元化し、「なんとなく経営」を終わらせる
- わかる化:数字の意味を、人が判断できる形に変える
- 儲かる化:生まれた余白を、新しい価値の原資にする
この順番で、理念は日々の意思決定とつながっていきます。
ベンチャーネットが守っている姿勢も、シンプルです。ITの言葉ではなく、経営の言葉で話す。そして、新しいやり方は、まず自社で試す。手ごたえがあったものだけを、お客様に届ける。
理念は飾りではなく、判断の基準です。迷ったとき、立ち返る場所がある。その一点が、経営の足取りを変えていきます。
では、御社は、なぜ存在しているのか
ここまで、ベンチャーネットの話をしてきました。けれど、本当に考えていただきたいのは、あなたの会社のことです。
御社は、なぜ存在しているのでしょうか。誰に対して、どのような貢献をする会社なのでしょうか。
ひとつ、自分に問う方法があります。自社の使命を言葉にしてみて、それを口にしたとき、自分自身がワクワクできるか。腹の中に、嘘はつけません。ワクワクできないなら、できるところまで考え直す。それだけのことです。
「うちには、語れるような立派な理念なんてない」。そう感じるかもしれません。けれど、それは、まだ言葉にしていないだけです。
いちばん大事な理由ほど、自分には当たり前になりすぎて、見えなくなっています。だからこそ、外からの問いが効きます。
存在する理由は、新しく作るものではなく、すでにある歩みの中から見つけ直すものです。これまでの選択も、語り直すなかで意味が変わります。かつて回り道に見えた経験が、いまの強みの源だった、と気づくことがある。語り直しは、いつからでも始められます。
次に読む——理念を、経営の変革へ
ミッション・ビジョンは、出発点です。ここから先は、それを実際の経営にどう落とすかの話になります。
- 理念を「経営構造そのものの変革」につなげる考え方は、終-1「コーポレートトランスフォーメーションとは」へ。
- 変わり続ける経営の姿は、終-3「バーチャルトランスフォーメーションへ」で扱います。
- そして、その変革を一人で抱えないための「伴走」については、終-4「ベンチャーネットエンジンという伴走」へ。
自社の「なぜ」を、ひとりで言葉にするのは難しいものです。存在する理由は、対話のなかで輪郭が見えてきます。もし「うちの使命を、いちど整理してみたい」と感じたら、その問いを一緒に考えるところから始めさせてください。

