成果は「構造」が創る

できる人が一人いると、現場は回ります。けれど、その人が辞めた翌月に数字が崩れた。そんな経験はないでしょうか。ベンチャーネットも、多くの中小企業の現場で、同じ場面を何度も見てきました。

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「あの人がいないと回らない」という不安

「あの案件は、あの人にしか分からない」「見積もりは、ベテランの勘でなんとかなっている」。こうした“できる人頼み”は、決して悪いことではありません。むしろ、その人の頑張りが会社を支えてきた証拠です。

ただ、ひとつ気になることがあります。その人が休んだ日、長く現場を離れた月、会社はどうなるでしょうか。

成果が特定の誰かに乗っている組織は、その人が抜けた瞬間に揺らぎます。人を増やしても、なぜか売上が思ったほど伸びない。頑張っているのに、成果が安定しない——その不安の正体を、この記事では一緒に考えていきます。

なぜ、頑張っても成果が安定しないのか

ここで、見方を少し変えてみます。成果が安定しないのは、社員の能力が足りないからでしょうか。ベンチャーネットは、そうではないと考えています。

組織の成果は、誰か一人の飛び抜けた力ではなく、働く人たちの行動の積み上げで決まります。たとえば30人の会社で、エース一人がどれだけ頑張っても、その人が出せる成果は全体の一部にすぎません。一人で全体を背負うには、どうしても限界があるのです。

だから「できる人に、もっと頑張ってもらう」という打ち手は、どこかで頭打ちになります。成果を出し続けている会社ほど、個人の頑張りだけに頼らない“別の何か”を持っています。それが「仕組み」です。

ここで言う仕組み化とは、特定の人の勘や経験に頼っていた仕事を、誰がやっても一定の成果を出せる形に整えること。いわば、経営に“再現性”を持たせる取り組みです。難しく構える必要はありません。

そう考えると、見えてくることがあります。頑張っても成果が安定しないのは、人の問題ではなく、成果が一人に集中してしまう“構造”の問題なのかもしれません。次は、その構造の話をします。

成果は「構造」が創る

ベンチャーネットがたどり着いた答えは、シンプルです。成果は、できる個人の頑張りではなく、その頑張りが乗る“構造”が生む。経営者の本当の仕事は、人をもっと頑張らせることではなく、誰がやっても成果が出る構造を整えることにあります。

ここで言う構造とは、難しいものではありません。仕事の流れ、役割の決め方、数字の見方。会社を動かしている“仕組みのつながり”のことです。たとえば、ビジネスモデルを9つの箱に分けて一枚の絵にすると、会社の構造は急に扱えるものになります(BMIA・小山龍介氏に学んだ考え方です)。バラバラに見えていた現場が、一枚の地図の上に並ぶからです。

構造が整うと、成果の出方が変わります。一人のスターに頼る組織は、その人の力ぶんしか伸びません。けれど、誰がやっても一定の成果が出る仕組みがあれば、成果は関わる人数ぶんだけ積み上がっていきます。成果が「人」ではなく「構造」に乗るとは、こういう状態のことです。

図1 成果は「人」ではなく「構造」に乗る 属人に頼る エース 成果 その人ぶんで 頭打ちになる 構造に乗せる 仕組み 成果 誰がやっても 人数ぶん積み上がる

属人に頼る組織は一人ぶんで頭打ちになり、構造に成果が乗る組織は、関わる人数ぶんだけ積み上がっていく。

誤解してほしくないのは、これは「個人の力をなくす」話ではない、ということです。むしろ逆です。できる人の優れたやり方を、その人だけのものにせず、誰もが使える形に翻訳していく。属人的な強さを、構造の中に取り込んでいく——それが、強い会社のやっていることでした。

そしてもうひとつ。構造は、一度つくって終わりではありません。箱と箱がつながり、好循環で回り始めて、はじめて“強い”構造になります。では、その構造を、ベンチャーネットは実際にどう整えていくのでしょうか。

では、構造はどう整えるのか

構造を整えると言っても、いきなり大がかりな改革をする必要はありません。ベンチャーネットが現場で大事にしているのは、次のような順序です。

まず、理想と現状のあいだのギャップから「どこが詰まっているか」を見つけ、できる人のやり方を言葉にします。頭の中の暗黙知を、誰が読んでも同じ意味になる言葉に変える。ここが出発点です。

次に、その決めごとを“使われる”状態にします。仕組みがうまくいかない一番の理由は、立派なルールがないことではなく、作ったルールが実行されないことだからです。「なぜこれをやるのか」を腹落ちさせ、進み具合を見える形にし、結果を一緒に確かめる場をつくります。

そして、目標と結果のズレを振り返り、原因を“仕組み”の側から見ていく。最後に、誰がその仕組みを回すのかをはっきりさせ、思いきって任せる。「自分がいないと回らない」状態を、少しずつ手放していくのです。

ここで大事なのは、仕組みは作った瞬間がゴールではない、ということです。回り続ける仕組みをどう設計するか——そこに、本当の難しさがあります。

図2 仕組みは作って終わりではない 見つける 言葉にする 根づかせる 振り返る 任せる 小さく回し、回り続ける構造にしていく

詰まりを見つけ、言葉にし、根づかせ、振り返り、任せる。一度きりで終わらせず、小さく回しながら「回り続ける構造」にしていく。

属人化した業務を標準化し、システムに落とし込んでいく具体的な進め方は、別の記事でくわしく扱っています〔→内部リンク:業務標準化・ERP導入の実務記事〕。この記事では、その手前にある「なぜ構造に手を入れるのか」という考え方をお伝えできれば十分です。

構造に向き合うとき、つまずきやすいこと

正直にお伝えすると、構造づくりは、いつもなめらかに進むわけではありません。よくあるつまずきを、先にお話ししておきます。

ひとつは、「仕組み化すると、ルールでがんじがらめになるのでは」という不安です。けれど、仕組みの目的は縛ることではありません。むしろ逆で、毎回ゼロから考えなくていい状態をつくり、人がもっと頭を使うべき仕事に時間を回すためのものです。窮屈にするための仕組みなら、どこかで設計を間違えています。

もうひとつ、見落としやすいのが「誰を責めるか」の順番です。決めたことが守られないと、つい「あの人のやる気の問題だ」と考えたくなります。けれどベンチャーネットは、うまくいかない時、まず疑うのは人ではなく仕組みのほうだと考えています。伝え方は十分だったか、そもそも実行できる設計だったか。人を責める前に見るべき場所が、たいてい仕組みの側にあるのです。

「感覚や経験がものを言う仕事は、仕組みにできないのでは」と思われるかもしれません。たしかに、すべてを型にはめることはできません。けれど、できる人の判断の“勘どころ”を少しずつ言葉にしていけば、丸ごとは無理でも、再現できる部分は確実に増えていきます。

一気に完成形をつくる必要はありません。小さく整え、回しながら直していく。その繰り返しのなかで、会社は少しずつ「人が変わっても回る」状態に近づいていきます。

「強い人」より「強い構造」を

最初の問いに戻ります。「あの人がいないと回らない」という不安。その正体は、社員の能力不足ではありませんでした。成果が一人に集中してしまう構造のほうに、原因があったのです。

だとすれば、希望もそこにあります。構造を整えれば、経営者は、すべてを一人で抱えなくてよくなります。エースが抜けても崩れない。人を責めなくていい。頑張りに頼りきらなくても、成果は積み上がっていく。会社を、そういう状態に近づけていけます。

次に気になるのは、「では、自社のどの構造に手を入れればいいのか」でしょう。その問いには、ここから先の記事でお答えしていきます。

  • 付加価値は、どの構造から生まれるのか〔→3-3〕
  • 整えた構造を、ビジネスモデルとして描き直すには〔→5-1/3-6〕

そういえば、「人を増やさずに売上を伸ばす」という話も、根は同じでした。人手不足は、根性ではなく、仕事の構造で解く〔→1-4〕。

とはいえ、自社の構造を自分たちだけで見極めるのは、簡単ではありません。日々その中で働いているほど、かえって全体が見えにくくなるものです。もし「うちの構造は、いまどうなっているのだろう」と気になったら、その地図を一緒に描く相手として、ベンチャーネットを思い出してもらえたらうれしいです。

成果は、構造が創る。強い人を探し続けるより、強い構造をつくるほうへ。その一歩を、ここから始めてみませんか。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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