在庫は、形を変えた現金です。多く持ちすぎれば資金が寝て、足りなければ販売の機会を逃します。
その在庫を適正に保つ出発点が、需要予測です。「これから何が、どれくらい売れそうか」を見立てる工程です。
NetSuiteの需要予測には、4つの予測手法があります。ただ、どの商品にどの手法が合うかは、商品の売れ方によって変わります。
この記事では、4つの手法の違いと、SKU(商品の最小管理単位)ごとの選び方を整理します。手法選びでつまずきやすいポイントも、あわせてお伝えします。
この記事で分かること
- NetSuiteの需要予測で使える4つの手法の違い
- 商品の売れ方(SKUの需要パターン)に応じた手法の選び方
- 手法選びでよくある3つの失敗と、その回避策
- 需要予測を始めるために必要な準備
読了の目安:約7分
NetSuiteの需要予測とは何か
NetSuiteの需要予測は、過去の販売データや商談情報をもとに、将来の在庫需要を見立てる機能です。需要計画(Demand Planning)と呼ばれる仕組みの中核にあたります。
すなわち、勘や経験だけに頼らず、データに基づいて「いつ・何を・どれだけ」用意すべきかを考えられるようになります。
予測した需要は、その先の供給計画につながります。発注書・製造指図・拠点間の在庫移動といった具体的な手配の土台になる、という位置づけです。
需要予測を使うには、前提となる機能があります。NetSuiteの「Advanced Inventory Management(高度な在庫管理)」を有効にしておく必要があります。
また、予測の精度は、もとになる履歴データの量と質に左右されます。商品ごとの販売履歴やリードタイムが整っているほど、予測は安定します。
需要予測の4つの手法をひと目で比較
NetSuiteの需要予測には、4つの手法があります(出典:Oracle NetSuite公式)。まず全体像を表で見てみましょう。
| 手法 | 仕組み(ざっくり) | 向く商品(SKU) | 推奨する履歴期間 | 設定の手間 |
|---|---|---|---|---|
| 移動平均 | 過去の販売を平均し、将来へ伸ばす | 安定して売れる定番品 | 3〜6か月 | 低 |
| 線形回帰 | 過去の傾向(増加・減少)を直線で延長する | 伸びている/縮んでいる商品 | 6〜12か月 | 低 |
| 季節平均 | 季節ごとの山と谷を、翌年に反映する | 季節で売れ方が変わる商品 | 12〜24か月 | 中 |
| 販売予測ベース | 販売実績ではなく、CRMの商談・見積を使う | 受注型・新商品 | 履歴は不問 | 中 |
ポイントは、4つの中から「自社にとっての1つ」を選ぶのではない、という点です。
商品の売れ方はSKUごとに違います。そのため、手法もSKUごとに割り当てるのが基本です。次の章から、それぞれの手法を見ていきます。
移動平均:安定して売れる定番品に
移動平均は、過去の販売数を平均して、その水準を将来に伸ばす手法です。最もシンプルで、設定の手間も少なめです。
向いているのは、年間を通して安定して売れる定番品です。たとえば消耗品や、需要の波が小さい標準部品などが当てはまります。
一方で、移動平均は売れ方の変化を平らにならします。そのため、季節商品や急成長中の商品には向きません。山と谷が予測に出てこないからです。
推奨される履歴期間は、3〜6か月程度です。比較的短い履歴でも始められるのが利点です。
線形回帰:伸びている/縮んでいる商品に
線形回帰は、過去の販売データから傾向を読み取り、その流れを直線で将来に延長する手法です。
向いているのは、売上が右肩上がり、または右肩下がりの商品です。成長期の新しい商品や、徐々に終売へ向かう商品が当てはまります。
移動平均との違いは、変化の「向き」をとらえる点にあります。単なる平均ではなく、増えているのか減っているのかを予測に反映します。
推奨される履歴期間は、6〜12か月程度です。傾向を読み取るために、移動平均より少し長めの履歴があると安定します。
季節平均:季節で売れ方が変わる商品に
季節平均は、過去の季節ごとの山と谷のパターンを読み取り、翌年の同じ時期に反映する手法です。
向いているのは、季節によって売れ方が大きく変わる商品です。たとえば、夏物・冬物の商品や、特定の時期に需要が集中する商品です。
この手法の強みは、繁忙期と閑散期の差をあらかじめ織り込める点にあります。移動平均では平らにならされてしまう山谷を、しっかりとらえます。
ただし、季節のパターンを読み取るには、最低でも1年、できれば2年分の履歴が必要です。推奨される履歴期間は12〜24か月程度です。
履歴がまだ足りない季節商品は、当面は移動平均や線形回帰で運用し、1年分のデータが揃ってから季節平均に切り替える、という進め方もあります。
販売予測ベース:受注型・新商品に
販売予測ベース(Sales Forecast)は、過去の販売実績ではなく、CRMの商談や見積データを使って需要を見立てる手法です。
向いているのは、受注を起点に動く商品や、まだ販売履歴がない新商品です。たとえば、商談のパイプラインで需要が見えるBtoB商材が当てはまります。
ほかの3手法は、いずれも過去の販売実績を使います。販売予測ベースだけは、未来に向けた商談情報を使う点が大きく異なります。
そのため、履歴が乏しくても予測を立てられるのが利点です。販売実績が貯まってきたら、移動平均などの実績ベースの手法に移行する、という選択もできます。
SKUの需要パターン別・手法の選び方
ここまでの内容を、選び方の視点で整理します。手法選びは、商品の売れ方を見極めることから始まります。
自社のSKUを、次の4つの売れ方で分類してみてください。
- 安定して売れる定番品 → 移動平均
- 伸びている/縮んでいる商品 → 線形回帰
- 季節で売れ方が変わる商品 → 季節平均
- 受注型・履歴がない新商品 → 販売予測ベース
すべての商品を同じ手法にまとめないことが、選び方の要点です。商品の振る舞いに、手法を合わせていきます。
とはいえ、自社のSKUが実際どの売れ方に当てはまるかは、見分けが難しいこともあります。安定しているように見えて、ゆるやかな季節性が隠れている商品もあるからです。
ベンチャーネットでは、SKUごとの需要パターンの見極めから、手法の割り当てまでを一緒に整理しています。「どの商品にどの手法か」の最初の設計が、その後の予測精度を左右します。
手法選びでよくある3つの失敗と回避策
需要予測は、手法を選んで終わりではありません。選び方を誤ると、予測が体系的に外れ続けます。ここでは、現場でよく見られる3つの失敗と、その回避策を整理します。
これは「うまくできていない会社」を指摘するためのものではありません。多くの企業が同じところでつまずくからこそ、先にお伝えしておきたい話です。
失敗1:すべてのSKUに移動平均を一律で当てる
よくある現象は、次の3つです。
- とりあえず全商品を移動平均に設定した
- 季節商品なのに、山と谷が予測に出てこない
- 伸びている商品でも、予測がいつも実績に追いつかない
なぜ失敗するのか。移動平均は「安定して売れる定番品」に向いた手法です。季節品や成長中の商品に当てると、変動が平らにならされてしまいます。結果として、繁忙期の欠品や、閑散期の過剰在庫を招きます。
回避策はシンプルです。まずSKUを需要のパターンで分類し、それから手法を割り当てます。「全部まとめて1つの手法」ではなく、「商品の振る舞いに手法を合わせる」という順番です。
失敗2:最初から全SKUの完璧な設定を目指す
よくある現象は、次の3つです。
- 全商品の履歴を整え終わってから始めようとする
- パラメータの最適値を議論し続けて、運用が始まらない
- 「完璧なデータが揃うまで待つ」が口ぐせになっている
なぜ失敗するのか。需要予測は、一度設定すれば終わりではありません。動かして、ずれを見て、直していくものです。完璧を目指すほど着手が遅れ、いつまでも予測が経営に活きません。
ベンチャーネットがお伝えしているのは、「完璧より、まず回す」という考え方です。動かす商品を主要なものに絞り、運用しながら精度を上げていきます。
失敗3:予測を入れただけで、発注や在庫判断につなげない
よくある現象は、次の3つです。
- 予測の数字は出るが、発注は結局これまでの勘で決めている
- 予測と実際の発注がつながっていない
- 予測機能を入れたのに、在庫は減っていない
なぜ失敗するのか。需要予測は、それ単体では在庫を減らしません。予測が供給計画や発注の判断につながって、はじめて在庫=キャッシュの改善に効きます。
需要予測は、情シスの設定作業ではなく、在庫という資金をどう守るかという経営の話です。ベンチャーネットでは、予測から供給計画、発注までの流れを業務に組み込むところまで、一緒に設計していきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 履歴データが少ない新商品は、どの手法を使えばいいですか?
販売予測ベースが第一の候補です。過去の実績がなくても、商談や見積から需要を見立てられます。
似た既存商品の販売パターンを参照する方法もあります。履歴が貯まってきたら、移動平均や季節平均など実績ベースの手法に移行していくとよいでしょう。
Q2. 一度決めた手法は、途中で変えられますか?
はい、変えられます。手法はSKU単位で設定でき、いつでも見直せます。
むしろ、需要の振る舞いは時間とともに変わるものです。新商品が定番品になったり、季節性が現れたりします。定期的に見直す前提で運用するのが現実的です。
Q3. 全SKUに同じ手法でまとめてはいけないのですか?
おすすめしません。商品ごとに売れ方が違うためです。
一律の設定は、一部の商品では合っても、ほかの商品では予測が体系的に外れる原因になります。手間はかかりますが、SKUを売れ方で分類して手法を割り当てるのが、精度への近道です。
Q4. 需要予測を始めるには、何を準備すればいいですか?
まず、NetSuiteの「Advanced Inventory Management(高度な在庫管理)」を有効にする必要があります。
そのうえで、商品ごとの販売履歴やリードタイムなど、予測のもとになるデータを整えます。準備の段階でつまずきやすいので、最初の設計は経験者と進めると安心です。
まとめ:手法選びは手段、目的は在庫を経営に効かせること
NetSuiteの需要予測には、4つの手法があります。移動平均・線形回帰・季節平均・販売予測ベースです。
大切なのは、どれか1つを選ぶことではありません。商品の売れ方に応じて、SKUごとに使い分けることです。
そして、手法選びはあくまで手段です。本当の目的は、予測を発注や在庫の判断につなげ、在庫という現金を経営に効かせることにあります。
とはいえ、自社のSKUをどう分類し、どの手法を割り当てるかは、一人で見極めるのが難しい部分でもあります。
ベンチャーネットは、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)として、需要予測の設計から運用までを伴走します。「どの商品にどの手法か」でお悩みのときは、お気軽にご相談ください。一緒に考えさせてください。
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