会計監査・内部統制の負担を減らすには?クラウドERP「NetSuite」による効率化と進め方

「監査は、期末に経理ががんばれば乗り切れる」

毎年そうしてきた会社ほど、同じ慌て方を繰り返します。

会計監査とは、会社の財務諸表が会計基準に沿って正しく作られているかを、第三者が確かめることです。

監査の時期になると、証憑の準備と監査人への回答で、経理の通常業務が止まります。

ただ、この負担は、直前のがんばりでは減りません。

日々の記録がそのまま証拠として残るかどうかで決まります。

では、記録が証拠として残る仕組みは、システムを入れれば手に入るのか。

答えは「半分だけ」です。

目次

この記事で分かること

  • 監査対応が重くなる3つの理由
  • NetSuiteのシステムノート・監査証跡・期間のロックでできること
  • 監査対応のやり方の比べ方と、向く会社・向かない会社
  • 導入の費用を左右するものと、よくある失敗3つ

会計監査と内部統制の基本

会計監査では、監査人が経理の処理と内部統制を確かめ、財務諸表が適正かについて意見を出します。

投資家や金融機関は、その財務諸表をもとに判断します。

内部統制とは、業務が正しく行われるよう社内に設けるルールと仕組みです。

承認の手続きや、見られる範囲の制限などが含まれます。

上場会社等には、内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX)があります。

金融商品取引法にもとづき、2008年4月1日以後に始まる事業年度から、内部統制の「評価」と「監査」が義務付けられています(出典:金融庁、2026年9月確認)。

上場を目指す会社は、上場前からこの準備が要ります。

IPOの内部統制は、IPOで求められる内部統制とはで扱っています。

監査対応が重くなる3つの理由

理由起きること監査で困ること
データの分散証憑が紙・Excel・複数のシステムに散らばる資料を探し、突き合わせるのに時間がかかる
手作業への依存集計・転記を人が行う転記ミスが見つかり、追加の質問が増える
記録の属人化誰がいつ承認したかが残らない統制が働いていると説明できない

3つとも、システムの持ち方の問題です。

データを1か所にまとめ、記録が自動で残る仕組みがあれば、負担は軽くできます。

ERPは、会計・販売・在庫などの業務を1つの仕組みで管理するシステムです。

その選択肢の1つが、クラウドERPのNetSuiteです。

NetSuiteで監査対応を支える3つの機能

システムノート|変更の記録が消せない形で残る

NetSuiteは、記録の変更をシステムノートで追います。

変更の日時、変更した人、変更した項目、変更前と変更後の値が記録されます。

Oracleのヘルプには、システムノートはどの利用者・スクリプト・アプリも編集できないと書かれています。

会社情報や機能の有効化など、財務に影響する設定の変更も記録されます(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

取引の監査証跡|誰が・いつ・何をしたかを一覧に

監査証跡とは、「いつ・誰が・どんな処理をしたか」を後からたどれる記録です。

NetSuiteの取引の監査証跡(Transaction Audit Trail)では、取引の作成・変更・削除を一覧にできます。

利用者・期間・勘定・金額などで絞り込めます(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

監査人から「この期間に変更された取引は」と聞かれたとき、すぐに答えられます。

期間のロック|締めた月を動かさない

期間締めのチェックリストでは、買掛金・売掛金をロックし、全体をロックしてから、期間を閉じます。

閉じた期間には、総勘定元帳への記帳ができなくなります。

NetSuiteで締めた月を動かさない順番 買掛金・売掛金をロックし、全体をロックしてから、期間を閉じる。閉じた期間には総勘定元帳への記帳ができない。ただし期間の制限を超える権限を持つ人は例外になる。 締めた月を動かさない順番 1 買掛金・売掛金をロック 2 全体をロック 3 期間を閉じる 総勘定元帳への記帳ができなくなる 例外:期間の制限を超える権限 誰に渡すかが、統制の設計になる
NetSuiteで締めた月を動かさない順番

ただし、期間の制限を超える権限を持つ人は例外です(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

この権限を誰に渡すかは、統制の設計そのものです。

冒頭で「半分だけ」と書いたのは、この点です。

機能は記録を残しますが、誰に何を許すかは、会社が決めるしかありません。

承認の流れはNetSuiteの承認ワークフロー実装ガイド、権限の設計はNetSuiteの権限・ロール設計で扱っています。

監査人のよくある依頼と、NetSuiteの記録

監査人のよくある依頼使う記録事前に決めておくこと
期末の後に修正した仕訳を見せてほしい取引の監査証跡(期間・変更で絞り込む)期末の後の修正を誰が承認するか
締めた月の数字が動いていないか期間のロックの状態と、例外の権限を持つ人例外の権限を渡す人と、その理由
勘定科目や設定を変えた記録はあるかシステムノート(設定の変更)設定を変えられる人の範囲
取引の承認は誰がしたか承認の流れの記録金額ごとの承認者

「事前に決めておくこと」の列が空いているなら、そこが統制の穴です。

リモートでの監査

クラウドERPのため、監査人用のアクセス権を渡せば、監査人が自分のPCから確かめられます。

ロールの権限で「見るだけ(編集しない)」の水準を選び、制限で見られる記録の範囲を絞れます(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。

資料の郵送や、現地に出向く負担が減ります。

監査対応のやり方を比べる

やり方中身向く会社注意点
A. 会計ソフト+Excel監査の前に資料を集めて整える監査の対象外で、取引が少ない直前に負担が集中する
B. 会計ソフト+周辺システム販売や経費を別のシステムで持ち、連携する業務ごとに合う製品を使いたい連携の境目で記録が途切れやすい
C. ERPで一元化取引・承認・変更の記録を1つの仕組みに持つ監査・上場準備・拠点の増加がある導入の設計と運用のルールづくりが要る

記録が1か所にそろうと、AIの使い道も広がります。

締めた後の変更や、承認を飛ばした取引を洗い出す、といった点検です。

Aのように記録が散らばっていると、この点検から始められません。

判断の物差し

NetSuiteが向いている会社

  • 上場を目指している、または監査法人の監査を受けている
  • 拠点や子会社が増え、データが散らばり始めている
  • 承認や変更の記録を、人の記憶ではなく仕組みで残したい

NetSuiteが向いていない会社

  • 監査の対象ではなく、取引の件数も少ない
  • 経理が1〜2人で、いまの会計ソフトで困っていない
  • 統制のルールがまだ決まっておらず、システムに載せる中身がない

NetSuite以外が合う場合

  • いまは入れない:監査の予定がなく課題が小さいなら、会計ソフトの権限と承認の設定の見直しで足りることもある
  • 国産ERP:日本の帳票や監査の実務に合わせた画面を重く見る会社
  • Odoo・AIスクラッチ開発:費用を抑えたい会社、独自の業務が多い会社。変更の記録を消せない形で残す設計を個別に見る

判断の順番を図にすると、次のとおりです。

監査対応でERPに進むかの判断 上場を目指している、または監査法人の監査を受けているかを問う。いいえで課題が小さいなら、いまは入れず会計ソフトの権限と承認の設定を見直す。はいなら、承認と権限のルールが文書になっているかを問い、なっていなければ先にルールを文書にし、なっていればERPで一元化する。 監査対応、ERPに進むかの判断 問い1 上場を目指している、 または監査法人の 監査を受けている いいえ 課題が小さいなら いまは入れない 会計ソフトの権限 と承認を見直す はい 問い2 承認と権限のルールが 文書になっている いいえ 先にルールを 文書にする はい ERPで一元化する 取引・承認・変更の記録を1つの仕組みに
監査対応でERPに進むかの判断

これから選ぶ会社と、いま使っている会社

これから選ぶ会社は、機能の一覧より先に、監査人がどの記録を求めるかを聞いてください。

その記録が自動で残るかを、デモで試します。

NetSuiteの価格は、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

構成で変わり、数百万円規模になることもあります。

導入の費用は、導入の中身で開きます。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットの例を挙げます。

ベンチャーネットが支援したNetSuite導入の費用では、3名程度・購買と販売だけの事例が1.5か月・150万円程度でした。

100名程度で外部システムとの連携開発を含めた事例は、1.5年・2億円程度(うち開発約7割)です。

差を生むのは、機能範囲・開発(特に外部連携)・社内の体制・ユーザー数の4つ。

4つの事例の全体は、NetSuiteの料金・費用で紹介しています。

いまNetSuiteを使っている会社は、次を点検します。

  • 期間の制限を超える権限を、何人が持っているか
  • 管理者の権限を持つ人が、多すぎないか
  • システムノートや監査証跡を、定期的に見ているか
いまNetSuiteを使っている会社の点検3項目 期間の制限を超える権限を何人が持っているか、管理者の権限を持つ人が多すぎないか、システムノートや監査証跡を定期的に見ているか、の3つを確かめる。 いまNetSuiteを使っている会社の点検 期間の制限を超える権限を、 何人が持っているか 管理者の権限を持つ人が、 多すぎないか システムノートや監査証跡を、 定期的に見ているか 例外の権限を誰に渡すかは、統制の設計そのもの
いまNetSuiteを使っている会社の点検3項目

ほかのシステムを使っている会社は、保守の期限と、上場や監査の予定を並べて見てください。

よくある失敗3つ

失敗1:監査の直前にまとめて準備する

起きること:毎年、期末に経理が疲れ切り、同じ慌て方を繰り返す。

原因:監査対応を年に一度の行事と考え、日々の記録を証拠の形で残していない。

避け方:取引の入力と承認の時点で、証拠が残る仕組みにします。

月次の締めで期間をロックする習慣をつけると、期末の作業が軽くなります。

失敗2:システムを入れれば統制ができると考える

起きること:承認の流れは作ったが、例外の権限を持つ人が多く、統制が働いていると説明できない。

原因:承認や権限のルールを決めないまま、設定だけを進めた。

避け方:誰が何を承認し誰が何を直せるかを先に文書にします。

システムはそのルールを実行する道具として設定します。

失敗3:監査対応を経理だけに任せる

起きること:経理に負担が偏り、全社の統制がよくならない。

原因:監査を「経理の仕事」と考え、経営層が関わっていない。

避け方:経営層・経理・顧問税理士・監査人が一度そろって話す場を持ちます。

システムの検討は、その場をつくるよいきっかけになります。

ベンチャーネットならこう見る

ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。

監査対応の相談では、2つの型で考えます。

型1:ルールが先、設定が後|ベストプラクティスを自社で試してから入れる

Oracleには、承認や権限の設定のベストプラクティスがあります。

ベンチャーネットは、それをそのまま入れず、自社の環境で試してから入れます。

監査人が求める記録と、社内の承認のルールに合うかを、稼働の前に見るためです。

要件を伺うのは、営業ではなく導入コンサルタントです。

「誰が何を承認し、誰が何を直せるか」を、設定の言葉に置き換えるところから担います。

役割は、次のように分かれます。

担い手担うこと
自社承認と権限のルールを決める。監査人と話す
ベンチャーネット要件定義・設定・カスタマイズ・保守・PM
日本オラクルライセンス・トレーニング・製品サポート

型2:守り→攻め→次へ

監査対応の効率化は、守りで終わりません。

  • 守り:記録が自動で残り、締めた月が動かない。監査の準備が軽くなる
  • 攻め:そろった記録で、経営が見たい数字をすぐに出す
  • 次へ:KPI、管理会計、上場に向けた内部統制へ広げる
定着の先の3段階:守り→攻め→次へ 守りは業務が回ること、攻めはデータで打つこと、次へは経営が変わること。 定着の先の3段階守り|業務が回る在庫・販売・会計を1つにし、日々の業務を安定させる攻め|データで打つ売れ筋・在庫の分析、営業作業の自動化、生成AIでの集計次へ|経営が変わるKPI、管理会計、上場に向けた内部統制
定着の先の3段階:守り→攻め→次へ

最初の打ち合わせで伺うのは、次の3つです。

  • 監査人が毎年求める資料は何で、どこから集めているか
  • 紙・Excel・システムの境目のどこで、記録が途切れるか
  • 承認と権限のルールは、文書になっているか

いまの会計ソフトの設定の見直しで済むなら、それを先にお勧めします。

今日できること|監査人の質問を書き出す(1時間)

昨年の監査で受けた質問と依頼を、思い出せる範囲で書き出してください。

質問・依頼資料の置き場所集めるのにかかった時間
(例)期末後に修正した仕訳の一覧会計ソフトとExcel半日

※表の中身は、説明のための架空の例です。

時間がかかった項目が、記録が途切れている場所です。

そこから手をつけると、効果が見えやすくなります。

よくある質問

Q1. NetSuiteを入れると、監査の準備は楽になりますか

資料を集める手間は減らせます。

記録が1か所にそろう分、資料を探す時間が短くなります。

どこまで楽になるかは、いまの業務の持ち方で変わります。

Q2. 内部統制はシステムだけで完結しますか

完結しません。

承認や権限はシステムで仕組みにできます。

どんなルールにするかは、業務の側で決める必要があります。

Q3. 変更の記録は改ざんされませんか

システムノートは利用者もスクリプトも編集できないとされています。

ただし、期間の制限を超える権限などを誰に渡すかで、統制の強さは変わります。

Q4. リモートでの監査に対応できますか

監査人が遠隔で確かめられます。

見せる範囲を絞った、見るだけのアクセス権を用意しておくと安心です。

Q5. 上場の予定がない会社にも意味はありますか

記録が残る仕組みは経営にも役立ちます。

承認や変更の記録は、社内の不正やミスの予防になります。

取引が少なく課題も小さいなら、いまの会計ソフトの設定の見直しで足りることもあります。

Q6. 日本の会計実務にも対応していますか

対応できますが日本特有の要件は事前の確認が必要です。

詳しくはNetSuiteで財務会計を行う前に確認すべき3つのことで扱っています。

Q7. 導入の費用はどのくらいかかりますか

導入の中身で大きく変わります。

ベンチャーネットの支援例では、NetSuite導入の費用は150万円程度から2億円程度まで幅がありました(第6章)。

まとめ|監査対応は、日々の記録の残し方で決まる

  • 会計監査は、財務諸表が正しいかを第三者が確かめること
  • 負担が重くなる理由は、データの分散・手作業・属人化の3つ
  • NetSuiteでは、システムノート・取引の監査証跡・期間のロックで記録を残せる
  • 機能が担うのは半分。ルールを先に決めるのが残りの半分
  • 守りの整備は、攻めの経営と上場の準備の土台になる

期末にがんばる前に、昨年の監査で時間がかかった依頼を1つ選んでください。

その記録が、日々の業務のどこで途切れているか。そこが最初に直す場所です。

もう少し詳しく知りたい方へ

「どこから一元化すべきか」の見極めから、ご相談をお受けしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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