NetSuiteのSupply Planning(MRP)とは|Time-Phased Planningからの移行と所要量計算の進化

NetSuiteで在庫や生産の計画をどう回すか、悩んでいないでしょうか。

「発注のタイミングが属人的」「欠品と過剰在庫を繰り返す」——こうした課題の解決を支える機能が、NetSuiteのSupply Planning(MRP)です。

この記事では、Supply Planning(MRP)の基礎から、旧来のTime-Phased Planningとの違いまでを整理します。

あわせて、新規導入と移行それぞれの進め方も、実務目線で解説します。

この記事で分かること

  • NetSuiteのSupply Planning(MRP)が何を計算し、何ができる機能なのか
  • 旧Time-Phased Planningとの違いと、後継となった背景
  • 新規で始める場合・既存から移行する場合、それぞれの進め方
  • 供給計画でつまずきやすい失敗パターンと回避策

読了の目安:約8分

目次

NetSuiteのSupply Planning(MRP)とは

NetSuiteのSupply Planning(MRP)は、需要に対して「何を・いつ・どれだけ」供給すべきかを計算する機能です。

ここで言うMRPとは「Material Requirements Planning(資材所要量計画)」の略です。

需要予測や受注情報をもとに、必要な発注量・製造量を割り出し、購買オーダーや作業オーダーの提案を自動で作成します。

需要計画・供給計画・受注のなかでの位置づけ

NetSuiteでは、計画の流れを大きく3つの段階で捉えると理解しやすくなります。

  • 需要計画(Demand Planning):将来の需要を予測する段階
  • 供給計画(Supply Planning / MRP):予測に対して供給を計画する段階
  • 受注・出荷:実際の注文を処理する段階

Supply Planning(MRP)は、この真ん中に位置します。

「どれだけ売れそうか」という需要の見通しを受け取り、「ではどれだけ仕入れ・作るべきか」に変換する役割です。

なぜ今、Supply Planning(MRP)なのか —— Time-Phased Planningの後継

NetSuiteには、かつてTime-Phased Planningという計画方式がありました。

現在、Oracleはこの方式の後継として、Supply Planning(MRP)を位置づけています。

Oracle公式の見解

Oracleの公式ヘルプでは、次のように案内されています。

  • Supply Planning(MRP)はTime-Phased Planningを置き換えるもの
  • より多くの機能と、より良いパフォーマンスを提供する
  • 新規顧客はSupply Planning(MRP)を使うべき
  • 既存顧客もTime-Phased PlanningからMRPへの移行を計画すべき

出典:Oracle NetSuite Applications Suite(公式ヘルプ、2026年時点)

つまり、これから計画機能を使う企業はMRPが標準です。

すでにTime-Phased Planningを使っている企業も、移行を視野に入れる段階に来ています。

「なぜ今か」を考える

在庫を取り巻く環境は、年々厳しくなっています。

調達リードタイムの不安定さ、人手不足、需要の変動。

こうした変化に手作業やExcelで対応し続けるのは、限界があります。

供給計画を仕組みで回せる状態にしておくことは、変化に強い経営の土台になります。

後継方式であるMRPが用意された今は、計画の仕組みを見直す良いタイミングと言えます。

Time-Phased PlanningとSupply Planning(MRP)の違い

両者の違いを、確認できている範囲で整理します。

比較軸Time-Phased Planning(旧)Supply Planning(MRP)(後継)
位置づけ従来方式後継方式。新規推奨・既存も移行を計画
計画基準の設定アイテム単位が中心プラン単位で期間・対象・拠点・ルールを設定可能
What-if(仮説検討)複数の仮説プランを作り比較できる
計画作業の画面Planners Workbenchで注意点を可視化・一括処理
需給の紐づけマルチレベル・ペギングで多段BOMを追跡
供給の引当供給アロケーションで優先度順に引当
複数拠点・配送計画限定的マルチロケーション計画・DRPに対応

表内の「—」は、MRP側で強化された機能を示します。

旧方式が使えなくなるわけではありませんが、機能とパフォーマンスの面でMRPが上回る、という整理です。

Supply Planning(MRP)でできること

MRPの主要な機能を、実務の視点で見ていきます。

Planners Workbench(計画作業の司令塔)

Planners Workbenchは、計画担当者のための作業画面です。

品目・拠点・期間をまたいで、供給と需要の状況を一覧できます。

不足や過剰が起きそうな箇所が浮き彫りになり、注意すべき提案を見落としにくくなります。

提案されたオーダーは、個別にも一括でも承認・確定できます。

マルチレベル・ペギング(需給のつながりを追う)

ペギングとは、需要と供給を紐づけて追跡する仕組みです。

マルチレベル・ペギングでは、多段階のBOM(部品表)をまたいで、需要がどこから来ているかをたどれます。

「この部品の不足は、どの受注が原因か」を可視化でき、ボトルネックの特定に役立ちます。

供給アロケーション(限られた在庫を優先度順に)

供給アロケーションは、限られた在庫や入荷予定を、優先度の高い需要に割り当てる機能です。

すでに受け取った在庫だけでなく、購買オーダー・作業オーダー・転送オーダーで入荷予定の在庫も対象にできます。

これにより、ある注文を「いつ充足できるか」を見極めやすくなります。

なお、こうした引当の考え方は、受注に対する供給可能性(ATP的な観点)を判断する場面でも活きてきます。

マルチロケーション計画・DRP

複数の倉庫や生産拠点を持つ企業では、拠点ごとに計画が必要です。

MRPは、品目と拠点の組み合わせで計画を立てられます。

さらにDRP(Distribution Requirements Planning=流通所要量計画)により、拠点間の供給も調整できます。

製造業だけでなく、複数拠点を持つ卸・小売にも有効な仕組みです。

【新規で始める方へ】Supply Planning(MRP)導入の進め方

これからMRPを使い始める場合、機能の前にデータの準備が重要になります。

まず整えるべき「土台のデータ」

MRPは、登録されたデータをもとに計算します。

そのため、次のデータの精度が計画の質を左右します。

  • 品目ごとのリードタイム(発注から入荷までの日数)
  • 安全在庫の基準
  • BOM(部品表)の正確さ

これらが曖昧なままだと、計算結果も信頼できません。

小さく始めて広げる

最初から全品目を対象にすると、確認すべき提案が膨大になります。

主要な品目・拠点から始め、運用に慣れてから対象を広げるのが現実的です。

土台を整え、小さく回し、徐々に広げる。この順序が定着につながります。

【既存ユーザーの方へ】Time-Phased Planningからの移行の考え方

すでにTime-Phased Planningを使っている場合、移行をどう考えればよいでしょうか。

いつ移行を検討すべきか

Oracleは既存顧客にも移行計画を推奨しています。

ただし、「公式が推奨しているから今すぐ」と機能比較だけで判断するのは早計です。

判断の起点は、あくまで自社の課題にあります。

  • 計画の精度や速度に不満があるか
  • 複数拠点の計画やWhat-if検討が必要になっているか
  • 現行の運用が属人的になっていないか

こうした課題が見えているなら、移行の検討に値します。

移行時に確認したいこと

移行では、現行の設定やデータの引き継ぎが論点になります。

品目ごとの補充方法の設定や、計画パラメータの整理が必要です。

自社だけで進めにくい場合は、パートナーと一緒に移行計画を立てるのが安全です。

移行は「機能の置き換え」ではなく、「計画運用の見直し」の機会と捉えると、効果を引き出しやすくなります。

導入・移行でつまずく失敗パターンと回避策

Supply Planning(MRP)は、入れれば在庫が最適化される「魔法の機能」ではありません。

計画の精度は、土台となるデータと運用ルールで決まります。

ここでは、ベンチャーネットが現場で見てきた、供給計画でつまずきやすい3つのパターンと回避策を共有します。新規で始める方にも、移行を考える方にも共通する内容です。

失敗①:パラメータが未整備のまま計画を回してしまう

よくある症状

リードタイムや安全在庫、BOMが曖昧なまま、とりあえずMRPを動かしてしまうケースです。

なぜつまずくか

MRPは、登録されたデータをもとに所要量を計算します。

つまり、入力データが不正確なら、出てくるオーダー提案も信頼できません。

「提案された発注量が現実と合わない」という状態になり、現場が提案を無視し始めます。

どう回避するか

まず、品目ごとのリードタイム・安全在庫・BOMを点検することから始めましょう。

計画機能を入れる前に、土台のデータを整える。順番を逆にしないことが大切です。

失敗②:一度に全機能・全品目へ展開してしまう

よくある症状

「せっかくなら全品目をMRPで」と、最初から対象を広げすぎるケースです。

なぜつまずくか

Planners Workbenchには、計画結果や注意すべき項目が一覧で表示されます。

対象が多すぎると、確認すべき提案やアラートが膨大になります。

結果、現場が処理しきれず、計画運用そのものが形骸化してしまいます。

どう回避するか

主要な品目・主要な拠点から、段階的に始めるのが現実的です。

運用に慣れてから対象を広げる。この順序が、定着への近道になります。

失敗③:計画運用が「現場任せ」で定着しない

よくある症状

MRPの設定は終わったものの、その後の運用ルールを決めていないケースです。

なぜつまずくか

MRPは、action/exception(推奨・例外)メッセージを出します。

「この発注を前倒しすべき」「この作業オーダーは取り消すべき」といった示唆です。

ところが、誰がいつこれをレビューするかが決まっていないと、メッセージは放置されます。

最終的に「結局Excelのほうが早い」と、元の運用に逆戻りしてしまいます。

どう回避するか

計画運用を、担当・頻度・判断基準までルール化しましょう。

システムを入れることがゴールではありません。

現場で計画が回り始めて、はじめて投資が成果に変わります。

一人でこれらをすべて整えるのは、簡単ではありません。

ベンチャーネットは、土台となるデータの点検から計画運用の定着まで、お客様と一緒に進める伴走支援を行っています。

なお、ERP導入全般でつまずきやすいポイントは、関連記事「ERP導入はなぜ失敗するのか」もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Supply Planning(MRP)とTime-Phased Planningはどう違いますか?

MRPは、Time-Phased Planningの後継として用意された方式です。

プラン単位での計画設定、What-if検討、Planners Workbench、ペギング、供給アロケーションなど、機能が拡張されています。Oracleは新規顧客にMRPを推奨しています。

既存でTime-Phased Planningを使っています。今すぐ移行が必要ですか?

Oracleは既存顧客にも移行計画を推奨しています。

ただし、移行のタイミングは自社の課題から判断するのが現実的です。計画の精度や速度、複数拠点対応に課題があるなら、検討に値します。

MRPを入れれば在庫は自動で最適化されますか?

自動的に最適化される「魔法の機能」ではありません。

リードタイム・安全在庫・BOMといった土台データの精度が、計画の質を決めます。まずデータを整えることが先決です。

製造業以外(卸・小売)でもMRPは使えますか?

使えます。

MRPは品目と拠点の組み合わせで計画を立てられ、DRP(流通所要量計画)にも対応します。複数拠点を持つ卸・小売の在庫計画にも有効です。

導入や移行の相談はどこにすればよいですか?

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットでは、供給計画の導入・移行に関するご相談を承っています。

自社の在庫・生産の課題にMRPがどう効くのかを整理する段階から、伴走支援が可能です。

まとめ —— 計画は「現場任せ」にしない

NetSuiteのSupply Planning(MRP)は、需要に対する供給を仕組みで計画する機能です。

Time-Phased Planningの後継として、多くの機能が強化されています。

計画基準の設定、What-if検討、ペギング、供給アロケーション、マルチロケーション計画などです。

ただし、機能を入れるだけでは成果は出ません。

リードタイムや安全在庫といった土台のデータを整え、計画運用のルールを決める。

ここまで設計してはじめて、供給計画は経営に効く仕組みになります。

計画は、現場任せにしないこと。

「自社の在庫・生産の課題に、MRPがどう効くのか整理したい」——そんな段階からでも、お気軽にご相談ください。

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NetSuite導入・移行のご相談

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、供給計画の設計から定着まで伴走支援を行っています。

※本記事のNetSuite機能に関する記述は、Oracle NetSuite公式ヘルプ(2026年時点)に基づきます。製品仕様は更新される場合があるため、最新情報は公式情報および認定パートナーにご確認ください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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