製造現場の生産実績を、いまだに紙やExcelで集めていませんか。
作業実績や不良の数を後からまとめて転記するやり方には、入力ミスや集計の遅れがつきものです。現場の数字が経営に届くまで、何日もかかることもあります。
NetSuite Manufacturing Mobileは、こうした課題に対する純正の機能です。製造現場の実績を、モバイルスキャナでその場で収集できます。
この記事では、Manufacturing Mobileのライセンス・できること・設定の流れを整理します。執筆は、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットがお届けします。
この記事で分かること
- Manufacturing Mobileを使うために、どのライセンスが必要か(Advanced Manufacturingは不要)
- 作業実績・ロット/シリアル・スクラップなど、現場でできること
- Manufacturing Mobile・SCM Mobile・WMSの役割の違い
- 導入・設定の流れと、現場でつまずきやすいポイント
読了の目安:約8分
NetSuite Manufacturing Mobileとは
NetSuite Manufacturing Mobile(マニュファクチャリング モバイル)は、NetSuite純正のSuiteApp(拡張機能)です。製造現場の生産実績を、モバイルスキャナで収集できます。
ERP(Enterprise Resource Planning:基幹業務を統合管理するシステム)の専門知識が少なくても使えます。現場のオペレーター向けに設計されています。これは公式にうたわれている特長です。
具体的には、次のような作業を現場の端末で行えます。
- 作業指図に対する完了数・不合格数の報告
- スクラップ(不良・廃棄)数量の記録
- ロット・シリアル番号の読み取り
- 作業時間や設備の稼働時間の記録
これらの実績が、リアルタイムでNetSuite本体に反映されます。紙からの転記が不要になり、現場の数字がすぐに経営に届きます。
ライセンスはどうなる?(Advanced Manufacturing・WMSは不要)
最初に多くの方が気にするのが、ライセンスです。
結論から言うと、別途のライセンス購入は不要です。Advanced ManufacturingライセンスやWMSライセンスを買い足す必要はありません。
NetSuiteのManufacturing機能を購入すると、Manufacturing Mobileは自動的に付属します。Assembly and Work Order(組立・作業指図)のライセンスがあれば十分です。Manufacturing MobileとSCM Mobileのバンドルをセットアップできます。
つまり、製造に必要な基本ライセンスの範囲で、スキャナによる実績収集を始められます。
なお、最終的なライセンス構成や費用は、利用するモジュール・ユーザー数・必要なオプションによって変動します。概算もパートナー経由でOracle営業とともに対応します。
Manufacturing Mobileでできること
Manufacturing Mobileで現場が行える代表的な操作を整理します。
作業実績の収集
作業指図のオペレーションを開始したあと、完了数・不合格数・スクラップ数を報告できます。
生産の進み具合が、リアルタイムでNetSuiteに反映されます。
スクラップ(不良・廃棄)の記録と理由コード
NetSuite 2023.2以降、消費量・生産量に加えて、スクラップ数量を記録できます。
スクラップを記録する際は、監督者があらかじめ定義した理由リストから理由を選びます。これにより、不良の発生理由をデータとして蓄積できます。
スクラップ数量を含めると、作業指図の実際のコストをより正確に把握できます。
ロット・シリアルの捕捉
Manufacturing Mobileは、ロットやシリアルの有無にかかわらず使えます。
ロット管理品・シリアル管理品では、番号をスキャンまたは入力して作業を進められます。トレーサビリティ(追跡可能性)の確保に役立ちます。
作業者・労務時間の記録
シフト(作業時間)を設定し、作業者ごとの労務時間を記録できます。
設備の稼働時間や、稼働していないダウンタイムの理由も記録できます。これにより、現場の稼働状況を可視化できます。
Manufacturing Mobile・SCM Mobile・WMSの役割整理
「Manufacturing Mobile」「SCM Mobile」「WMS」は、名前が似ていて混同されがちです。役割を整理します。
| 軸 | Manufacturing Mobile | SCM Mobile | NetSuite WMS |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 製造現場の生産実績 | 入出庫・在庫移動などの供給網 | 倉庫業務全般 |
| 代表的な操作 | 作業実績・WIP・スクラップ・労務時間 | 受領・在庫移動・ピッキングなど | ピック/パック/シップなどの高度な倉庫運用 |
| 必要ライセンス | Assembly & Work Orderで利用可 | 同上(同一スキャナで併用可) | WMSライセンス |
| こんな時に | 製造現場の実績をスキャナで集めたい | 在庫移動を効率化したい | 倉庫運用を高度化したい |
ポイントは、Manufacturing MobileとSCM Mobileは、同じスキャナで製造活動と倉庫活動の両方を扱える点です。
製造現場の実績収集から始めたい場合は、Manufacturing Mobileが出発点になります。倉庫運用を本格的に高度化したい場合は、WMSライセンスの検討に進みます。
目的に応じて、段階的に広げていく考え方が現実的です。
導入・設定の流れ
Manufacturing Mobileの導入は、大きく次の流れで進みます。ここでは詳細手順ではなく、全体像を示します。
- Manufacturing機能の有効化:製造に必要な基本機能を有効にする
- バンドルのインストール:SCM MobileとManufacturing Mobileのバンドルを導入する
- 初期設定:作業区、理由コード、シフト、ロット運用などを設定する
- 現場運用の設計:現場の作業フローに合わせてスキャン手順を組み立てる
- 本稼働と定着:現場での試行を経て、運用を定着させる
ここで一つ、お伝えしておきたいことがあります。
バンドルのインストール自体は、数分で完了します。難しい作業ではありません。
ですが、現場が実際に使いこなせる状態にするのは、3番目と4番目の設定・設計の部分です。ここに、それぞれの企業の業務に応じた判断が必要になります。
次の章で、この設計を省いたときに起きやすいつまずきを見ていきます。
製造現場へのスキャナ導入で、つまずく典型パターン
Manufacturing Mobileは、入れれば自動的に現場が回るわけではありません。
ここでお伝えするのは、売り込みのためではありません。同じつまずきを避けてほしいからです。
製造現場のデジタル化で見られる、典型的なつまずきを4つ挙げます。
パターン1:スキャナを入れたのに、現場が紙運用に戻る
よくある現象
- 紙の日報がいつまでも並行で残っている
- スキャン入力が「後でまとめて」になりがち
- 結局、転記作業が二重になっている
なぜ起きるのか
スキャン操作が、現場の実際の作業手順と噛み合っていないからです。
「動かす順番」を機能ありきで決めてしまうと、現場は使いにくさを感じます。すると、慣れた紙に戻ります。
どう避けるか
現場の作業の流れを先に整理し、その流れにスキャン手順を合わせます。
ベンチャーネットでは、機能の設定より先に、現場の動線づくりから一緒に考えます。
パターン2:スクラップの理由が「その他」ばかりになる
よくある現象
- 不良やスクラップの理由が記録されない
- 理由欄が「その他」で埋まっている
- 後から原因分析ができない
なぜ起きるのか
スクラップ理由のコードが、現場の言葉で整理されていないからです。
Manufacturing Mobileでは、スクラップ数量を記録できます。理由は、監督者があらかじめ定義したリストから選ぶしくみです(NetSuite 2023.2以降)。
このリストが現場の実感に合っていないと、選ばれなくなります。
どう避けるか
理由コードは、現場が実際に使う言葉で設計します。
ベンチャーネットでは、理由コードの設計を現場の方と一緒に行います。
パターン3:ロット・シリアルの運用ルールが曖昧で、追跡できない
よくある現象
- データは溜まるのに、いざという時に追えない
- ロットの単位が人によってバラバラ
- どこで付番するかが決まっていない
なぜ起きるのか
機能としては対応していても、運用ルールが未設計だからです。
Manufacturing Mobileは、ロットやシリアルの有無にかかわらず使えます。ただし、付番の粒度やタイミングは、企業ごとに決める必要があります。
どう避けるか
トレースの目的から逆算して、ロット・シリアルの運用ルールを決めます。
ベンチャーネットでは、追跡したい範囲を起点にルールを設計します。
パターン4:「現場でも使える」を過信して、設計を省く
よくある現象
- ライセンスを入れれば終わり、と考えてしまう
- 初期設定が中途半端なまま本稼働する
- しばらくして「思ったほど使えない」となる
なぜ起きるのか
「機能が使えること」と「使える状態にすること」を、同じものと考えてしまうからです。
確かにManufacturing Mobileは、ERPの専門知識が少ない現場の方でも使えるよう設計されています。これは公式にうたわれた特長です。
ですが、誰でも使える状態にするまでの初期設計は、別の仕事です。作業区の設定、理由コード、ロット運用、現場フロー。ここには判断が要ります。
どう避けるか
機能の手軽さと、初期設計の重要さを分けて考えます。
ベンチャーネットは、この初期設計から運用定着まで伴走します。一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. Advanced Manufacturingライセンスは必要ですか?
不要です。
NetSuiteのManufacturing機能を購入すれば、Manufacturing Mobileは自動的に付属します。Assembly and Work Orderのライセンスがあれば利用できます。Advanced ManufacturingライセンスやWMSライセンスを別途購入する必要はありません。
Q2. 既存のモバイル端末・スキャナで使えますか?
Manufacturing Mobileは、モバイルスキャナやタブレットで現場の実績を収集する仕組みです。
利用できる端末の条件は環境によって異なります。お手持ちの端末で使えるかは、導入前に確認することをおすすめします。
Q3. ロット管理品・シリアル管理品でも使えますか?
使えます。
Manufacturing Mobileは、ロットやシリアルの有無にかかわらず利用できます。ロット・シリアル管理品では、番号を読み取って作業を進められます。
Q4. WMS(倉庫管理)とは何が違いますか?
Manufacturing Mobileは製造現場の生産実績、WMSは倉庫業務全般を主な対象とします。
ただし、Manufacturing MobileとSCM Mobileは、同じスキャナで製造活動と倉庫活動の両方を扱えます。詳しくは本文の役割整理の表をご覧ください。
まとめ:機能は現場で使える。使える状態にする設計を、一緒に
NetSuite Manufacturing Mobileは、製造現場の生産実績をスキャナで収集できる純正機能です。
Advanced Manufacturingライセンスは不要で、製造の基本ライセンスの範囲で始められます。作業実績・スクラップ・ロット/シリアル・労務時間まで、現場の数字をその場でデータにできます。
そして大切なのは、機能が「現場でも使える」ことと、現場が「使える状態にする」ことは別だという点です。
理由コードの設計、ロットの運用ルール、現場の作業フロー。ここには、それぞれの企業に応じた判断が要ります。この部分は、一社だけで進めると見落としが生まれやすいところです。
ベンチャーネットは、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)として、製造現場へのスキャナ導入を、初期設計から運用定着まで伴走します。
「自社の現場でどう使えるか相談したい」という段階で構いません。お気軽にお問い合わせください。
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出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ(docs.oracle.com)/NetSuite 2023.2リリースノート
