パートナービジネスとは?7つの形態と、ERPパートナービジネスの始め方・向く会社

月に一度の顧問先との面談。

社長が「月末の締めに、また1週間かかった」とこぼします。

税理士は、原因が会計と販売のシステムの分断にあると気づいている。

けれど、自分の領域ではないから、そこから先に踏み込めません。

パートナービジネスとは、他社の商品・サービスを自社の顧客に紹介・販売し、提供元から報酬を得る経営モデルです。

ERPやクラウドの業務ソフトの領域では、「ERPパートナービジネス」という形が広がっています。

形態は1つではなく、関わりの深さが違う7つがあります。

どれが合うかは、自社の顧客接点・業界知識・体制で決まります。

似た声は、ほかの業種からも届きます。

  • 「業務改革は提案できたが、基幹システムがボトルネックで止まっている」(経営コンサル)
  • 「基幹の刷新の相談が来たが、自社にERPの体制がないから見送った」(IT企業)

気づいているのに届けられない。

では、この状態を、本業を圧迫せずに解くにはどうすればよいのか。

目次

この記事で分かること

  • パートナービジネスの定義と、販売代理店・アライアンスとの違い
  • 7つの形態の違いと、自社に合う形態の選び方
  • 向いている会社・向いていない会社
  • ERP(NetSuite)でパートナーになるときの選択肢と、紹介先の導入の質の見方
  • 紹介を一度で終わらせない「見える化・わかる化・儲かる化」の役割分担

パートナービジネスとは

形式的に言えば、パートナービジネスは販売代理の契約にもとづく協業です。

ただ実態は、もっと幅広い意味を持ちます。

販売代理だけでなく、技術提携・OEM供給・コンサルティングの協業など、複数の形が含まれます。

販売代理店との違い

観点販売代理店パートナービジネス
関係性売る側と売られる側対等(価値を一緒につくる)
商材の捉え方売れ筋の商品の取り扱い自社の顧客への価値を高める手段
報酬の構造販売手数料が中心紹介料・継続の報酬・サポートの報酬など
期間短期の取引が中心中長期の関係

販売代理店は、自社の販売力を他社の製品に振り向けます。

パートナービジネスは、自社の顧客への価値を、他社の製品で深めます。

向きが逆なのです。

アライアンス・ジョイントベンチャーとの違い

概念主な目的資本関係期間
パートナービジネス商材の販売・紹介を通じた相互の利益なし中長期(更新型)
アライアンス戦略的な業務提携・市場の開拓なし、または一部出資長期
ジョイントベンチャー共同で新会社をつくり、新事業を立ち上げる共同出資長期(事業の継続が前提)

この記事のパートナービジネスは、資本関係を伴わない協業です。

アライアンスより軽く、ジョイントベンチャーより手軽に始められます。

三者で成り立つビジネス

パートナービジネスは、基本的に3者で成り立ちます。

  • メーカー(ベンダー):商品・サービスを開発・提供する
  • パートナー:自社の顧客に商材を紹介・推奨する
  • 顧客:パートナーの紹介を通じて商材を購入する

3者が補い合う関係になっているかどうかで、成否が分かれます。

メーカーは顧客との接点を、パートナーは商材と専門の知見を、顧客は課題の解決を得る。

どこか1者だけが得をする形は、長続きしません。

ERPのパートナービジネスの特徴

特徴中身紹介する側への影響
検討の期間が長い情報の収集から契約まで、数か月以上かかることが多い報酬の確定までに時間がかかる
金額が大きい初期の費用と毎年の利用料がかかる報酬の額も大きくなりやすい
使う期間が長い一度入れると、長く使い続ける導入の質が、紹介者の評判に長く影響する
会社全体に関わる経理・営業・倉庫など多くの部署が使う経営者の判断が欠かせない

ERPの紹介は、一度の取引ではなく長い付き合いの始まりです。

パートナービジネスが広がっている理由

自社だけでは解けない課題が増えた

中堅・中小企業の経営課題は、以前より複合化しています。

人手不足、原材料の高騰、為替の変動、DX、サイバーセキュリティ、ESGへの対応。

1つの専門の会社が、すべてに応えるのは現実的ではありません。

だから、自社の専門と他社の専門を組み合わせて顧客の価値を高める発想が、業界を問わず要るようになりました。

既存の顧客基盤を収益の資産に変える

新しい顧客を獲得するより、既存の顧客に追加の価値を届けるほうが、一般に費用を抑えやすいものです。

既存の顧客基盤を持つ会社にとって、パートナービジネスはその手段になります。

固定費を増やさずに提供価値を広げる

自社で新規事業を立ち上げると、採用・教育・システム投資など固定費が増えます。

パートナービジネスなら、売れた分だけ報酬が発生する変動費型の収益の経路を持てます。

たとえば会計事務所が、自社でERPの導入の部門を立ち上げるとします。

コンサルタントの採用と育成、製品の資格の取得、導入の品質の管理まで、自社で抱えることになります。

紹介のプログラムを使えば、こうした固定費を持たずに、顧問先の課題の解決に関われます。

AIの時代に、紹介の価値はどう変わるか

製品の情報や比較は、AIを使えば誰でもすぐに集められるようになりました。

「どの製品があるか」を教えるだけの役割は、価値が下がっていきます。

一方で、次のことはAIだけでは難しいままです。

  • 顧客の会社の事情や、経営者の考えを踏まえて、いま検討すべきかを見極める
  • 顧客が信頼している人から、信頼できる相手を紹介する
  • 導入の後も、顧客と一緒に数字を読み、改善を続ける

パートナービジネスの価値は、情報の提供から信頼と文脈の提供へと移りつつあります。

顧客をよく知る会社ほど、この変化は追い風になります。

役割の変わり方を図にすると、次のとおりです。

AIの時代の紹介の価値:情報から信頼と文脈へ 製品の情報や比較はAIで誰でも集められ、教えるだけの役割は価値が下がる。検討の時期の見極め、信頼できる相手の紹介、導入後の改善の伴走はAIだけでは難しく、価値は信頼と文脈の提供へ移る。 AIの時代に、紹介の価値はどう変わるか これまで|情報の提供 「どの製品があるか」を教える AIで誰でも集められ、価値が下がる これから|信頼と文脈の提供 ・事情を踏まえ、いま検討すべきかを見極める ・信頼している人から、信頼できる相手を紹介 ・導入の後も一緒に数字を読み、改善を続ける 顧客をよく知る会社ほど、追い風になる
AIの時代の紹介の価値:情報から信頼と文脈へ

パートナービジネスの7つの形態

関わりの深さと収益の形の違いで、代表的な7つの形態があります。

形態役割収益の形合う会社(始めるハードル)
ディストリビューター仕入れて二次販売仕入差益卸売業・商社(高:在庫・販売網)
リセラー(再販)自社の販売チャネルで再販販売手数料販社・商社(中:販売チャネル)
SIer商材を自社のサービスに組み込み実装サービス料+紹介料IT系のSI企業(高:技術力)
OEMパートナー自社のブランドで提供利益のマージン製造業・大手企業(高:ブランド力)
コンサルティングパートナー課題の分析+商材の提案+導入支援コンサル料+紹介料コンサル・税理士法人(中:専門の知見)
テクノロジーパートナー商材と自社技術を連携・統合ライセンス料・連携料ソフトウェア開発企業(高:技術の連携力)
三者連携型(紹介専業)顧客の紹介のみ。商談以降はベンダーが担う紹介の報酬既存の顧客を持つ会社(低:運用の負担が小さい)

SIer(システムインテグレーター)は、システムの設計から構築・運用までを請け負う会社のことです。

OEMは、他社の製品を自社のブランドで提供することです。

各形態の特徴

  • ディストリビューター:特定の地域・市場で商材を扱う。在庫を持つのが前提で、販売網と資金力が要る
  • リセラー:既存の販売チャネルで再販する。販売の力が活きる一方、商材の深い理解と提案の力が求められる
  • SIer:ERPやCRMなどを自社のプロジェクトに組み込む。技術力と実装力が問われる。AIが実装の一部を補うほど、設計の力が差になる
  • OEMパートナー:ブランド力と品質保証の体制が要るため、ある程度の事業規模が必要
  • コンサルティングパートナー:経営課題を分析し、解決策として商材を提案する。分析はAIで速くなるぶん、判断と信頼が差になる
  • テクノロジーパートナー:自社技術と商材を連携させ、統合したソリューションを提供する
  • 三者連携型(紹介専業):顧客の紹介だけに専念し、商談・提案・契約・導入・サポートはベンダーが担う。顧客との信頼関係は、AIで置き換えにくい

「紹介」と「販売代理」の違い

  • 販売代理:パートナーが顧客と直接契約・販売する。営業の活動が要る
  • 紹介専業:パートナーは信頼できる選択肢として商材を紹介する。顧客との関係を活かす

紹介専業の強みは、既存の顧客との信頼関係をそのまま活かせることです。

販売のスキルや営業の組織を、新しく作る必要はありません。

メリットとデメリット

中身形態による違い
メリット① 顧客の生涯価値が上がる既存の顧客に新しい商材を届け、LTV(顧客が取引の全期間にもたらす利益)が伸びるどの形態でも得られる
メリット② 固定費を増やさない売れた分だけ報酬が発生する変動費型の収益紹介専業で最も大きい
メリット③ 顧客との関係が深まる「この会社に相談すれば解決策が見つかる」と認識される提案に関わる形態ほど大きい
デメリット① 学ぶ手間商材の特徴・想定する顧客・他社製品との違いを学ぶ時間が要る販売代理・SIerで大きい
デメリット② 体制の負担専任の担当者や研修が要ることがある販売代理・ディストリビューターで大きい
デメリット③ ベンダーへの依存ベンダーの価格改定や製品の終了の影響を直接受けるどの形態でも起きる

デメリットの多くは、選ぶ形態によって軽くできます。

紹介専業なら、学ぶ手間と体制の負担は小さく済みます。

ベンダーへの依存は、補い合う複数のベンダーと関係を持つことで分散できます。

問うべきは「メリットがあるか」ではありません。

自社の経営資源とリスクの許容度に最も合う形態は何かです。

報酬の考え方|架空の数字で比べる

紹介の報酬は、多くの場合「初年度のライセンス料の何%」で決まります。

次の表は、報酬率の違いを比べる架空の例です。

前提(架空)報酬率10%の場合報酬率25%の場合
顧客の初年度のライセンス料が1,000万円100万円250万円
顧客の初年度のライセンス料が300万円30万円75万円

※表の金額は説明用の架空の例です。実際のライセンス料は、顧客の構成で大きく変わります。

率だけでなく、次の点も必ず確かめます。

  • 報酬の対象は、初年度だけか、更新の年も含むか
  • 導入のサービスや追加の購入は、対象に入るか
  • 報酬がいつ、どの時点(契約・入金)で確定するか

判断の物差し|向いている会社・向いていない会社

顧客接点と業界知識で見る

成果は、顧客接点の質と業界知識の深さで大きく変わります。

業界知識が深い業界知識が浅い
顧客接点が強い◎ 最も合う(SI・コンサル・税理士・会計事務所)○ 合う(既存の顧客基盤を持つ商社・販社)
顧客接点が弱い○ 合う(専門技術の企業・研究機関)△ 準備の期間が要る

表の右下(どちらも弱い)に当てはまるなら、急がないでください。

まず特定の業界に絞り、顧客との接点を作るところから始めます。

  • SIer・ITコンサル:顧客のシステムと業務の課題を日常的に把握している
  • 税理士法人・会計事務所:月次の面談で顧客の経営の状況を継続して把握している
  • 経営コンサル・士業のネットワーク:顧客の経営層に直接会える

形態の選び方

自社の強み合いやすい形態
技術力・実装力SIer/テクノロジーパートナー
専門の知見・課題の分析力コンサルティングパートナー
既存の顧客基盤はあるが、運用の余力が限られる三者連携型(紹介専業)
販売チャネル・在庫の管理力ディストリビューター/リセラー
ブランド力・製造力OEMパートナー

向いていない会社・慎重に考えたい場合

  • 顧客に中立の立場を求められる:紹介料を受け取ることが、顧客の信頼を損ねる恐れがある。受け取る場合は顧客に開示し、所属する団体の規程も確かめる
  • 紹介した後のフォローに時間を割けない:紹介専業でも、顧客からの最初の問い合わせは紹介者に来やすい
  • 商材の良し悪しを自分で判断できない:合わない顧客に勧めると、本業の信頼まで失う
  • 顧客の課題がERPの規模ではない:会計ソフトと表計算で足りる顧客に、ERPを勧めるべきではない

4つを図にすると、次のとおりです。

パートナービジネスを慎重に考えたい4つの場合 中立の立場を求められる、紹介後のフォローに時間を割けない、商材の良し悪しを判断できない、顧客の課題がERPの規模ではない、の4つ。最後の点がいちばん効く。 慎重に考えたい4つの場合 ① 中立の立場を求められる 紹介料は顧客に開示し、団体の規程も確かめる ② 紹介後のフォローに時間を割けない 最初の問い合わせは紹介者に来やすい ③ 商材の良し悪しを判断できない 合わない顧客に勧めると本業の信頼まで失う ④ 顧客の課題がERPの規模ではない 会計ソフトと表計算で足りるなら勧めない 「いまは入れない」と言える関係が長く続く
パートナービジネスを慎重に考えたい4つの場合

最後の点が、いちばん効きます。

紹介する側が「いまは入れない」と言える関係こそが、長く続くパートナーの条件です。

士業の方が特に気をつけたいこと

税理士・会計士の方は、顧問先から中立の助言者として信頼されています。

その信頼があるから紹介が生きる一方、扱いを誤ると本業に響きます。

  • 紹介は、顧問先の課題の解決策の一つとして示す。ERPありきで話さない
  • 紹介料の有無と、紹介先との関係を、顧問先に伝える
  • 導入の判断は、顧問先の経営者に委ねる
  • 所属する団体の規程で、紹介料の扱いに決まりがないかを確かめる

この4点を守れば、紹介は顧問の価値を広げる手段になります。

ERP・クラウドの領域で広がる理由

顧客のライフイベントに合わせて提案できる

ERPの検討は、顧客の会社の節目で急に進むことがあります。

ライフイベント起きる課題パートナーが気づけるサイン
上場(IPO)の準備内部統制・会計の基盤の整備監査法人の紹介の依頼、内部統制の相談
事業承継・世代交代新しい経営者がシステムを刷新事業承継の相談の増加
M&A(売却側)本社のシステムから切り出して独立して動かすカーブアウト・事業の分離の相談
M&A(買収側)買収した事業を統合する基盤が要るM&Aのチームが関わる案件
基幹システムの保守切れ入れ替えの時期「システムが古い」という声
海外展開・多拠点化いまのシステムでは多通貨・多拠点に対応できない海外子会社の設立、為替の相談

SIer・コンサル・税理士法人など、顧客に最も近い立場の会社は、こうした節目を早く察知できます。

ERPパートナービジネスが広がる理由は、ここにあります。

顧客の節目に気づくための5つの質問

ふだんの面談で、次のような質問をしてみてください。

どれも、売り込みではなく、顧客の状況を知るための質問です。

質問気づけること
月末の締めに、何日かかっていますか会計と販売のデータが分かれている
同じ数字を、複数の表に入力していませんか二重入力と属人化
いまのシステムの保守は、いつまでですか入れ替えの時期
拠点や子会社を増やす予定はありますか多拠点・多通貨への対応
5年後、会社をどうしたいですか上場・承継・M&Aの意向

答えに困りごとが出てきても、すぐに製品を勧める必要はありません。

「そうした相談に乗れる会社を知っています」と伝え、顧客が望めば紹介する。

この順番が、紹介者の信頼を守ります。

M&Aの後の統合は、「M&A後のPMI完全ガイド」で扱っています。

NetSuiteがパートナーにとって扱いやすい理由

NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上に使われているクラウドERPです(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。

パートナーの立場から見ると、次の点で幅広い顧客に提案しやすい製品です。

  • 業種:製造業・卸売業・小売業・サービス業などに対応
  • 規模:中堅企業から大企業まで、段階的に広げられる
  • AI:組み込みのAIと、外部のAIとの連携の両方に取り組んでいる
  • 海外:多通貨・多言語・多拠点に対応

一方で、国内中心で日本の商習慣を標準のまま使いたい顧客には、国産ERPが合うこともあります。

費用を抑えて小さく始めたい顧客には、Odoo(アプリを組み合わせるオープンソースのERP)が候補になります。

顧客に合う製品を選べる立場を保てるかどうかも、パートナー選びの大事な観点です。

もう一つ、紹介する側が知っておきたいことがあります。

同じNetSuiteでも、導入の質は導入を担う会社によって変わります。

紹介先を選ぶときは、製品だけでなく、導入会社の進め方や導入後の支援の体制も見てください。

見る観点は、「NetSuiteパートナーの選び方」で扱っています。

NetSuiteでパートナーになるときの選択肢

Oracle NetSuiteの公式プログラム

Oracle NetSuiteの日本語の公式サイトでは、次のパートナープログラムが紹介されています(2026年9月確認)。

プログラム公式サイトの説明の要旨
ソリューションプロバイダーライセンスの販売から導入・サポートまでを包括的に提供
システムインテグレーター向け(Alliance Partner)専門的な財務・コンサルティングのサービスを提供
開発者向け(SuiteCloud Developer Network)NetSuiteを拡張するアプリケーションを開発
BPOパートナー業務の外部委託のサービスを提供
お客様紹介プログラムNetSuiteを見込み客に紹介し、紹介料を受け取る
公認会計士向けプログラム会計事務所が、NetSuiteを使う顧客にサービスを提供

BPOは、業務の一部を外部の会社に委託することです。

公式の紹介プログラムは「SuiteReferralプログラム」です。

Oracle NetSuiteの日本語の公式サイトでは、次のように説明されています(2026年9月確認)。

  • 報酬は初年度のライセンス料の10%
  • 会員になる費用はかからない
  • 紹介した会社への販売・導入・サービスの費用はNetSuiteが負担する
  • アップセル・サポート・導入のサービス・研修は、報酬の対象外

最新の条件は、申し込みの前にOracleに確認してください。

公式のプログラムは、関わりの深さで向く会社が分かれます。

ライセンスの販売から導入・サポートまで自社で担えるなら、ソリューションプロバイダーが候補です。

ソリューションプロバイダーの契約の費用は公式サイトに載っていないため、Oracleに聞きます。

導入の技術やコンサルティングに強みがあれば、Alliance Partnerが候補になります。

顧客の紹介だけに専念したいなら、公式の紹介プログラムと、パートナー各社の紹介プログラムを比べます。

比べるときは、報酬の率だけでなく、6-4のチェックリストの項目もあわせて見ます。

導入のパートナーの種類は、「NetSuite導入はパートナー経由が有利な理由」でも扱っています。

ERPパートナーの3つの関わり方

類型役割特徴
紹介パートナー顧客の紹介に専念し、商談以降はベンダーが担う運用の負担が小さく、本業を圧迫しにくい
取次パートナー紹介+一部の契約の手続きを支える関わりも収益も中程度
販売代理パートナー自社で営業・契約・導入まで行う関わりが深く、収益も大きいが、学ぶ量も多い

紹介から導入までの流れと、関わり方ごとの役割

段階紹介パートナー取次パートナー販売代理パートナー
顧客の課題に気づく担う担う担う
ベンダーに紹介する担う担う-(自社で進める)
ヒアリング・デモベンダーベンダー(同席することも)担う
提案・見積ベンダーベンダー担う
契約の手続きベンダー一部を支える担う
導入・データ移行ベンダーベンダー担う(または導入会社に委託)
導入後のサポートベンダーベンダー担う

表の上から2行だけを担うのが紹介パートナーです。

本業への影響が最も小さい代わりに、顧客の導入の質はベンダーに委ねることになります。

だからこそ、紹介先のベンダーの導入の質を、紹介する前に見ておく必要があります。

プログラムを選ぶ前のチェックリスト

確かめること見る理由
報酬の率と対象(初年度・更新・サービス)同じ率でも、対象で受け取る額が変わる
報酬が確定する時点と支払の時期資金の計画に関わる
紹介した顧客の扱い(誰の顧客として扱われるか)自社の本業の取引との関係が決まる
顧客からの問い合わせの窓口本業を圧迫しないかが分かる
導入がうまくいかなかったときの対応紹介者の信頼に直結する
紹介の進み具合を共有してもらえるか顧客に聞かれたときに答えられる
契約の期間と解約の条件方針が変わったときの動きやすさ

見落とされがちなのが「進み具合の共有」です。

顧客から「あの件、どうなった?」と聞かれて答えられないと、紹介者の信頼が下がります。

ベンチャーネットの販売取次パートナープログラム

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットも、紹介パートナー型のプログラムを運営しています。

名前は、NetSuite販売取次パートナープログラムです。

項目内容
費用登録費・年会費はなし
報酬初年度のライセンスの25%
パートナーの役割自社の顧客への紹介に専念
ベンチャーネットの役割商談(ヒアリング・デモ・提案資料)、導入(要件の整理・設定・データ移行・運用支援)、導入後のサポートと問い合わせの対応

紹介パートナーが気にするのは、6-3で見たとおり、紹介した後の導入の質です。

ベンチャーネットの場合、役割の分け方は次のとおりです。

  • 日本オラクル:ライセンス・トレーニング・製品サポート
  • ベンチャーネット:要件定義・設定・カスタマイズ・アドオン開発・保守・PM(発注元のPM業務やOracleとの調整を含む)
  • 紹介パートナー:顧客の節目に気づき、信頼できる相手につなぐ
紹介から導入後までの役割分担 紹介パートナーは顧客の節目に気づいてつなぐ。ベンチャーネットは要件定義・設定・カスタマイズ・アドオン開発・保守・PMを担い、要件は導入コンサルタントが聞く。日本オラクルはライセンス・トレーニング・製品サポートを担う。 紹介から導入後までの役割分担 紹介パートナー 顧客の節目に気づく 信頼できる相手につなぐ ベンチャーネット 要件定義・設定・カスタマイズ アドオン開発・保守・PM 要件は営業ではなく導入コンサルタントが聞く 日本オラクル ライセンス・トレーニング 製品サポート ベンチャーネットのプログラムの場合
紹介から導入後までの役割分担

顧客の要件を聞くのは、営業ではなく導入コンサルタントです。

紹介者から聞いた顧客の事情が、伝言ゲームで薄まらないようにするためです。

PMを兼ねるコンサルタントが提案からカットオーバー(本番の稼働)まで一貫して担当し、週次の定例と課題管理表で進み具合を文書で共有します。

6-4の「進み具合の共有」は、この仕組みで答えます。

契約は請負契約に対応しています(準委任も相談可)。

仕事の多くは、ゼロからの導入より、他社のあとの引き継ぎ・立て直しと、他システムとの連携です。

紹介した顧客がすでに別のシステムを使っていても、つなぎ込みから相談できます。

ベンチャーネットは、日本オラクル主催の「Oracle NetSuite AI Hackathon 2025」で優秀賞を受賞しています。

受賞したのは「経営データの見える化・わかる化・動ける化エンジン」です。

このプログラムが合わない場合もあります。

  • 導入やサポートまで自社で担い、収益を大きくしたい → 公式のソリューションプロバイダーやAlliance Partnerが候補
  • 顧客に対して、特定の導入会社と関係を持たない立場を守りたい → 紹介のプログラムに参加しない判断もある
  • 顧客の多くがERPの規模ではない → いまは情報の交換にとどめる

パートナーの類型は、次の5つで整理しています。

  • 会計士・税理士法人
  • M&A・事業承継のコンサル
  • 経営コンサルティング
  • 基幹の刷新の相談は来るがERPの体制がないIT企業
  • 営業代行・マーケティング支援の会社

日本オラクルの責任者が語る市場の状況

日本オラクルの渋谷由貴氏(執行役員 NetSuite事業統括 日本代表 カントリーマネージャー)の発言を紹介します。

出典は、PartnerLabのインタビュー記事「パートナーがパートナーを呼ぶ世界」です。

渋谷氏は、次の趣旨を語っています。

  • 検討の期間が長かった日本の企業が、ようやく本格的な導入に動き出している
  • 需要に対して、導入を支える人材と体制が、まだ十分とは言えない

同じインタビューで渋谷氏は、ベンチャーネットの紹介プログラムの条件を「いいとこ取り」と評しています。

いずれも、公式の発表ではなく、インタビューでの発言です。

これから始める会社と、いまのパートナー契約を見直す会社

これからパートナービジネスを始める会社

最初にやるのは、プログラム選びではありません。

自社の顧客のうちERPの検討が始まりそうな会社の数を数えることです。

第5章の表のライフイベントに当てはまる顧客を、名前を出さずに数えます。

数が少なければ、急いで始める必要はありません。

数があれば、第4章の表で、自社に合う形態を選びます。

始める前に、社内で次の3つを決めておくと、紹介が動き出しやすくなります。

  • 窓口の担当者:顧客の相談を受け、紹介先とやり取りする人を1人決める
  • 紹介の基準:どんな状態の顧客なら紹介するか(第5章の節目など)を決める
  • 顧客への説明:紹介先の会社の説明と、紹介料の有無を伝える文面を用意する

紹介の基準がないと、担当者ごとに判断が分かれます。

合わない顧客への紹介が起きるのは、たいていここからです。

すでにベンダーのパートナーで、見直しを考えている会社

契約したが、紹介の実績がほとんどない。

紹介した顧客の問い合わせが、自社に集まっている。

1社のベンダーの方針の変更に、収益が振り回されている。

こうした状態が続いているなら、契約の更新の時期が見直しの好機です。

  1. 過去1〜2年の紹介の件数と、成約・報酬の実績を書き出す
  2. 紹介した顧客からの問い合わせが、自社にどれだけ来たかを書き出す
  3. 報酬に対して、自社が使った時間が見合っているかを見る
  4. 見合っていなければ、関わり方を軽くする(販売代理から紹介へ)か、補い合う別のベンダーと並行する

競合する製品ではなく、補い合う製品で並べるのが基本です。

よくある3つの失敗

失敗1:パートナーを表面の情報で選び、数を集める

起きること:契約しても紹介が生まれず、顧客の満足度も下がり、撤退する。

原因:「顧客数が多いから」「知名度があるから」で選び、補い合う関係かを確かめなかった。パートナーは販売の経路ではなく、顧客に最も近い意思決定の支援者だという前提が抜けていた。

避け方:自社の強み・弱みを言葉にし、相手が普段相手にしている顧客層と課題が、商材と一致するかを見ます。

数より、数社との深い関係を優先します。

失敗2:契約した後の教育と支援がない

起きること:半年たっても紹介がゼロ。パートナーが「商材の何が強みか」を説明できない。

原因:パートナーにとって、商材は数ある選択肢の一つにすぎない。提案する自信がない商材は、優先順位が下がる。

ベンダーの側が「資料は渡したから、あとは紹介を待つだけ」と考えていることも少なくありません。

避け方:商材の特徴・想定する顧客・他社製品との違いを、体系立てて共有します。

勉強会や商談への同行で、「提案できる状態」を作ります。

教育は費用ではなく、投資と考えます。

失敗3:役割分担とベンダーへの依存の管理が曖昧

起きること:「紹介しただけ」のつもりが、顧客からの問い合わせが集まる。トラブルの責任の所在が分からない。ベンダーの価格改定や方針の変更で、収益が急に落ちる。

原因:顧客は「信頼している人に勧められたから契約した」と考えるため、問題が起きると紹介者に連絡する。1社のベンダーへの依存度も高かった。

避け方:契約の段階で、自社が対応する範囲とベンダーが対応する範囲を明文化します。

顧客にも事前に「導入後のサポートはベンダーが担当」と伝えます。

報酬の体系・責任の範囲・禁止事項は、契約書に書きます。

売上に占める1社のベンダーの比率を意識し、コンサルや運用の支援など自社独自の付加価値も併せ持ちます。

ベンチャーネットも、NetSuiteのほかにOdoo・AIスクラッチ開発を扱い、独自の最適化やAI連携の仕組みを開発しています。

ベンダーの標準機能だけに頼らない価値を持つことが、依存のリスクを下げる対策です。

3つの失敗は、どれも契約の前に防げます。

6-4のチェックリストを、契約の前に相手と一緒に埋めてください。

パートナー営業の仕組みは、「パートナーセールスの仕組みと始め方」で扱っています。

紹介を一度で終わらせない|見える化・わかる化・儲かる化

パートナービジネスを「販売の経路を増やすこと」と捉えると、長続きしません。

パートナーが「売ってあげる」立場に立つと、商材は数ある選択肢の一つに埋もれます。

自社の顧客に価値を届けるための選択肢として商材を捉えたとき、提案の質が変わります。

ERPの領域では、導入の後に「データは見えるようになった。でも業績は変わらない」という声を聞くことがあります。

システムを入れただけでは、利益は出ません。

ベンチャーネットは、顧客に届ける価値を3つの段階で整理しています。

見える化・わかる化・儲かる化と担い手 見える化は同じ画面で今の数字を見る段階でERPが担う。わかる化は採算を誰でも読める形にする段階で経営に近いパートナーが担う。儲かる化はデータで経営判断する段階でベンダーの運用支援が担う。 顧客に届ける価値の3段階 ① 見える化 同じ画面で今の数字を見る 担う:ERP(NetSuiteなど) ② わかる化 採算を誰でも読める形にする 担う:経営に近いパートナー ③ 儲かる化 データで経営判断する 担う:ベンダー(運用・改善の支援)
見える化・わかる化・儲かる化と担い手
段階何が起きるか主に担う人
① 見える化経営者も現場も、同じダッシュボードで今の数字を見られるERP(NetSuiteなど)
② わかる化部門ごと・案件ごとの採算が、誰でも読める形になる。数字の言葉が社内でそろう経営に近いパートナー(税理士・コンサルなど)
③ 儲かる化データに裏づけられた経営判断ができる。AIを使う土台も整うベンダー(運用・改善の支援)

①の見える化は、システムを入れれば実現します。

②のわかる化には、数字を経営の言葉に翻訳する人が要ります。

税理士やコンサルなど、経営に近いパートナーが力を発揮するのはここです。

③の儲かる化には、改善を実装し続ける運用の支援が要ります。

紹介が単発で終わるのは、②と③の役割が設計されていないからです。

導入の後の役割分担は、たとえば次のように決めておきます。

場面顧客紹介したパートナーベンダー
月次の数字の確認数字を見て判断する数字の意味を一緒に読む数字が正しく出る仕組みを保つ
課題が見つかったとき優先順位を決める経営の視点で助言する設定や機能で改善する
事業の節目方針を決める節目に気づき、つなぐ仕組みの拡張を提案する

3者が集まる場を、四半期に一度でも持てれば、紹介は一度の取引で終わりません。

冒頭の税理士が「踏み込めない」と感じていた先は、まさにこの②の役割です。

ベンチャーネットならこう見る|関わり方は最後に決める

ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。

パートナーの候補の方と話すとき、報酬や関わり方の話から入りません。

先にそこから入ると、顧客に合うかどうかより、紹介の件数に目が向きがちだからです。

最初に伺うのは、次の3つです。

  1. 顧客のどんな節目に立ち会うことが多いか(第5章の表)
  2. その節目で顧客にERPが本当に要るか:要らない顧客には勧めない。要るなら、NetSuite・国産ERP・Odooのどれが合いそうかを顧客の条件で考える
  3. わかる化の役割を担えるか:導入の後、顧客と一緒に数字を読む時間を取れるか

紹介・取次・販売代理のどの関わり方にするかは、この3つの後に決めます。

3つ目に「難しい」と答える会社でも構いません。

その場合は、紹介パートナーとして節目に気づく役割に絞るのが合っています。

顧問先の多くが会計ソフトと表計算で十分に回っている税理士法人なら、急いで始める必要はありません。

まず情報の交換から始め、顧問先に節目が来たときに相談できる関係を作っておくだけでも十分です。

今日できること|顧客の「節目」を数える

1時間で、次の表を埋めてみてください。

顧客の名前は書かなくて構いません。

節目当てはまる顧客の数いつ頃か自社がすでに相談を受けているか
上場の準備
事業承継
M&A(売る・買う)
基幹システムの保守切れ
海外展開・多拠点化

数が1件もなければ、いまはパートナービジネスを急ぐ時期ではありません。

2〜3件以上あれば、第4章の表で自社に合う形態を選ぶ段階です。

時間が余れば、紹介先の候補も同じ物差しで見ておきます。

観点候補A候補B
扱う製品は1つか、複数か
顧客に「いまは入れない」と言える姿勢か
要件を聞くのは営業か、導入コンサルタントか
紹介の進み具合を共有してくれるか

複数の製品を扱い、顧客に合わないときに止められる相手ほど、紹介者の信頼を守りやすくなります。

よくある質問

Q1. パートナービジネスとは何ですか?

他社の商品・サービスを自社の顧客に紹介・販売して報酬を得る経営モデルです。

販売代理店との違いは、対等に価値を一緒につくる関係であることです(第1章)。

Q2. ERPパートナービジネスとは何ですか?

ERP製品の紹介・販売・導入に関わる経営モデルです。

上場の準備・事業承継・M&A・保守切れなど、顧客の節目に合わせて提案できるのが特徴です(第5章)。

Q3. 何から始めればよいですか?

自社の顧客のうち節目を迎えそうな会社を数えることから始めます。

数があれば、運用の負担が小さい紹介専業の形から始める選択肢があります(第11章)。

Q4. NetSuiteのパートナーになるには、どんな方法がありますか?

Oracle公式のプログラムとパートナー各社の紹介のプログラムがあります。

公式には、ソリューションプロバイダー・Alliance・開発者向け・BPO・お客様紹介・公認会計士向けがあります。

公式サイトでは、紹介の報酬は初年度のライセンス料の10%とされています(第6章)。

Q5. 紹介料を受け取ると、顧客の信頼を損ねませんか?

受け取ることを顧客に開示すれば信頼を保ちやすくなります。

士業の方は、所属する団体の規程も確かめてください。

合わない顧客には勧めない姿勢が、何より信頼を守ります(第4章)。

Q6. 紹介した顧客が導入しなかった場合はどうなりますか?

多くの紹介のプログラムでは報酬は発生しません。

報酬が確定する時点は、プログラムの契約で確かめてください(3-4)。

導入しない判断が顧客にとって正しければ、紹介者の信頼はむしろ高まります。

Q7. 紹介した後の導入の質は、どう見ればよいですか?

要件を誰が聞くかと進み具合の共有の仕方を見ます。

営業が聞いた要件を導入担当に伝える形だと、顧客の事情が薄まりやすくなります。

週次の定例や課題管理表など、進み具合を文書で共有する仕組みがあるかも聞いてください(6-4・6-5)。

まとめ

  • パートナービジネスは、自社の顧客への価値を他社の力で広げる経営モデル
  • 7つの形態があり、自社の顧客接点・業界知識・体制で選ぶ
  • 紹介専業は始めやすいが、中立性やフォローの負担などの注意点もある
  • ERPの領域では、顧客の節目に気づける会社ほど成果が出やすい
  • 紹介先は、報酬の率だけでなく導入の質と進み具合の共有で選ぶ
  • 「見える化」で止めず、わかる化・儲かる化の役割分担で顧客の成果まで届ける

冒頭の税理士が気づいていた、顧問先の締めの遅れ。

それを「自分の領域ではない」で終わらせない方法が、パートナービジネスです。

まずは、節目を迎えそうな顧問先・顧客の数を数えてみてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットのNetSuite販売取次パートナープログラムの詳細は、下記でご案内しています。

すぐに案件がなくても、情報交換からのご相談を歓迎しています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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