クラウドERP NetSuite を導入し、お客様の受発注業務を刷新、大幅な業務改革を実現!

株式会社南海エクスプレスは1950年に前身会社が創業して以来、南海電鉄グループの国際物流事業を展開している。現在では、顧客荷主企業から、物流に関わる情報システムの提案や運営の一部も任されている。今回の取組みでは、クラウドERPであるNetSuiteを活用し、輸入食品の販売事業を手掛ける顧客企業の受発注業務の刷新と商品在庫管理業務の効率化を目指した。これにより、自社の販売店舗や物流センターにおける在庫状況が可視化され、受発注時に発生していた店舗間の在庫確認などの調整業務を効率化することに成功した。

取材協力者:

  • 株式会社南海エクスプレス ITイノベーション推進部の皆様

1.取組みの背景と課題

株式会社南海エクスプレス(以下、当社)では、 顧客企業が輸入し日本国内で販売する食品を、自社物流センターで荷捌きや流通加工を行った上で、顧客自社店舗や全国の販売先へ出荷する業務を委託されている。顧客企業において、従来利用していたオンプレミス型の販売管理システムをNetSuiteへとリプレイスすることとなった。また、リプレイスに際しては下記3つの課題を解決することが求められた。

課題1:在庫管理、販売管理業務が効率的ではない(顧客企業の本部課題)
顧客企業の本部では、自社の各販売店舗から寄せられる出荷依頼や欠品連絡をとりまとめたうえで、納期通知や配送処理依頼を行っていた。こうした業務の多くは自動化されておらず、手動での作業が大半であったことから、業務効率化の観点から改善が求められていた。

課題2:物流システム、および各店舗の在庫状況が見えにくい(顧客企業の各店舗課題)
顧客企業では、売れ筋の商品に対して各店舗からの発注が集中した場合、商品配分量の変更や店舗間での在庫移動といった調整業務が発生していた。特に、消費者から要望がある場合には、店舗の担当者が別の店舗に電話やメールで在庫の有無を問い合わせ、在庫がある場合は融通してもらうという業務が発生していた。また、店舗側からは既存システム内の在庫状況が見えない状態であった。在庫の管理は店舗ごとにエクセルで行っていたという経緯もあり、各店舗の担当者の負担が高くなっていたとのこと。

課題3:物流管理システムでの在庫引当(南海エクスプレスの課題)
上記2つの課題に加えて、当社のシステム運用についても課題があった。具体的には、顧客企業から寄せられる配送依頼に対して、物流システムの担当者が手動で引当処理を実施していた。しかし、顧客企業の店舗数や取扱商品の増加によって担当者の負担が増していたため、自動化する必要があると感じていた。また、将来的なトランザクション増加を見据え、システムへのデータ入力や照会作業なども合理的に行う必要が出てきた。

NetSuite導入前の課題(2022年5月時点)
NetSuite導入前の課題(2022年5月時点)

2.NetSuiteを選択した理由

これら3つの課題を解決するために、既存の物流管理システムをNetSuiteへと移行することを決定した。なお、NetSuiteを選択した理由としては、下記が挙げられる。

【海外取引業務に対応した機能とリーズナブルな金額体系】

輸入食品販売を手掛ける顧客企業では、海外との取引が頻繁に発生する。そのため、外貨での売買管理機能は必須であった。また、食品という商品の性質上、在庫の賞味期限を管理する機能も必要とされた。こうしたニーズに応えつつ豊富な実績があるERPを探していくなかで、NetSuiteに注目した。NetSuiteは、豊富な機能や柔軟なカスタマイズ性を備え、国内外での導入実績も豊富なクラウド型ERPシステムであることから、NetSuiteを選択するに至った。

アドバンスド在庫管理機能
アドバンスド在庫管理機能
アドバンスド在庫管理機能では、在庫ごとに有効期限の設定が可能である。当機能を活用し、顧客在庫(輸入食品)の賞味期限を管理している。
海外からの商品の受入・輸送
海外からの商品の受入・輸送

【各店舗からのアクセスが容易なクラウド環境】

既存の物流管理システムはオンプレミス型であり、なおかつ本社と店舗および店舗間での情報共有が難しい仕様であった。一方、クラウドERPであるNetSuiteならば、本社・店舗のいずれからでも一元化された情報にアクセスできるため、物流在庫・店舗在庫ともに共有される。

クラウドERPの利点
クラウドERPの利点
NetSuite(ネットスイート)とは
NetSuite(ネットスイート)とは

【クラウドERPとして長年の実績】

NetSuiteは、他社製品よりも早くからクラウドに取り組んでおり、グローバルで豊富な実績を有する。日本国内においても、昨今のクラウド化の潮流にのり、順調にユーザー数を増やしている。

3.取組みの内容・成果

葛西ロジスティクスセンター(関東) 
葛西ロジスティクスセンター(関東) 

【サポートを(株)ベンチャーネットに依頼】

NetSuiteの導入に際して(株)ベンチャーネットに対してご支援を依頼した。理由としては、「伴走型の支援をリーズナブルに受けられる」という点が挙げられる。当初は、運用ノウハウの習得という観点から、NetSuiteの機能や構造を把握した上で、各種パラメータ設定なども可能な限り当社が手掛けたいと考えていた。しかし、日本オラクル(株)からご紹介をいただいた複数のNetSuiteパートナーでは、導入作業のすべてを一任するというパターンが多く、伴走型支援を望む当社のニーズと合致していなかった。

また、今回のように複数の要件が絡むケースでは、要件定義作業に時間を要することが多い。一任型のパートナーで用いられる人月単位での契約では、費用がかさむというリスクがある。その中で、(株)ベンチャーネットの採用するチケット制での契約方式に魅力を感じた。必要な時期に必要なだけリソースを確保できるため、「南海エクスプレスが主体となって導入を進め、わからないところはパートナーへ支援を求めたい」という当社のニーズに合致していた。また、導入フェーズの進捗に応じて契約形態を選べることも魅力的に映った。

【マスタースケジュールの設定】

プロジェクト期間は約1年とした。具体的には、クラウドERPの選定およびベンダーの決定までを3ヶ月とし、その後の導入から環境以降までを約9ヶ月で実施する計画である。

マスタースケジュールの設定においては、最終フェーズの調整に注力した。最終フェーズは年末年始の繁忙期と重なるためである。この時期はクリスマスや年末年始の贈答に関する需要から、顧客企業の業務量が増える。そのため、スケジュールに余裕を持たせることを念頭に置いた。また、在庫数量の正確性を担保するために、本番稼働に先んじてテスト運用を行う店舗を選定し、データ移行を行った。さらに、万が一に備え、旧システムと新システムを並行して稼働させる期間を設けた。

NetSuite導入 マスタースケジュール
NetSuite導入 マスタースケジュール

【カスタマイズ:当社物流管理システムとNetSuiteのデータ連携】

今回の課題の一つとして、当社が持つ既存システムの発注データを自動連携することがあった。導入前は、顧客企業からの配送要求に対して、手作業でデータの登録を行っていた。

この点を改善するためにNetSuite内でスクリプトを開発し、API連携によって注文書・在庫移動トランザクションデータを既存システムと連携させることにした。データ連携によって在庫移動の情報を同期させるためである。データ連携仕様の定義については、データ項目やタイミング、実現方法についてさまざまなパターンを想定し、開発工数と運用面の安定性を考慮して決定した。

また、上記以外に大きなカスタマイズは発生しなかったことから、本プロジェクトにおけるNetSuiteの適合性が再確認された。

Nankai Transport International(S)PTE LTD シンガポール
Nankai Transport International(S)PTE LTD シンガポール

【顧客企業との協力体制】

今回のプロジェクトでは、顧客企業様の利便性向上とともに、当社内の業務効率化も期待されていた。2社間でゴールが共有されていたことから、プロジェクトメンバー間の協力関係がスムーズに構築された。

具体的には、顧客企業側で、顧客マスター・商品マスターなどのデータクレンジングを率先して行っていただいたことで、通常であれば多大な工数を要する作業を短期間で完了することができた。また、受入テストにおいては顧客企業の店舗における動作確認テストを、ユーザートレーニングにおいてはサンドボックス環境(テスト環境)構築へのデータ移行など、幅広くご協力いただくことができた。さらに、運用マニュアルの作成やレビューなどにも積極的にご参加いただくなど、企業の枠を超えた協力体制がプロジェクトの成功につながった。

【スケジュール通り完了できた要因】

本プロジェクトは、当初計画したマスタースケジュール通りに完了した。スケジュールの遅延が発生しなかった要因としては、以下3つが挙げられる。

・課題が明確であったこと
・顧客企業とゴールを共有できたこと
・上記2点によって顧客企業からの協力を得やすくなったこと

また、NetSuite導入パートナーの(株)ベンチャーネットの方々とのコミュニケーションがスムーズに進んだことも成功要因のひとつだと考えられる。コロナ禍中のプロジェクトであったため、コミュニケーションの大半はオンラインで行われたが、コミュニケーションに支障をきたすケースは極めて少なかった。

NetSuite導入後の成果(2023年3月時点)
NetSuite導入後の成果(2023年3月時点)

【NetSuite導入後の成果】

導入後は、当初掲げられた3つの課題すべてに対し、改善効果が確認された。

課題1については、本社の担当者を介さずに、直接各店舗から納入する流れに変更し、本社での取りまとめ業務を省くことができた。また、顧客企業内の直営店以外の店舗(外販の協力店)に関しては、受注~配送~請求までの一連の流れをシステム化することで、業務が簡素化された。

課題2についても、在庫状況の可視化が進んだ。特に顧客企業の直営店に関しては、店舗内の在庫をNetSuiteで管理することで、他店の在庫や物流在庫も見えるようになった。これにより、欠品が減り、手作業で行っていた調整業務がなくなり、効率化が図れた。

3つ目の当社課題についても、手作業のデータ連携、配送データ登録、ステータスの更新などについて自動化が達成できた。また、自動化に伴い、担当者の業務負荷の低減やミスの減少が確認できている。さらに、顧客企業の海外への発注業務も旧システムからNetSuiteに移行したことで、有効在庫が自動で見えるようになり、発注作業をタイムリーに行う事ができるようになった。 

4.NetSuiteの魅力

【標準機能が充実している】

既存の物流管理システムでは、業務に必要な機能を手組み(スクラッチ開発)で作り上げてきた。しかし、NetSuiteでは業務に必要な機能の大半が標準で搭載されている。標準機能を有効活用することで、スクラッチ開発の工数が削減できた。また、ベンダーが動作を保証している標準機能を提供できるため、顧客企業のユーザーに安心して使っていただけた。

【テスト環境を迅速かつ安価に構築できる】

テスト環境の構築にコストや手間がかからない点もNetSuiteの魅力だと感じている。 一般的なオンプレミス型システムの場合、テスト環境の構築には専用のサーバーやユーザーライセンスの調達などが必要とされる。一方、NetSuiteではこうしたコストや手間を省くことができる。ユーザー自身が安価かつ迅速にサンドボックス(テスト環境)を立ち上げられるからだ。

5.今後のチャレンジについて

今回は、顧客企業の基幹業務を中心にスコープを設定し、リプレイスを行ってきた。今後は在庫管理や管理会計など、NetSuiteが持つ豊富な機能を活用することも検討していきたい。引き続き、(株)ベンチャーネットの協力を仰ぎたいと考えている。

6. (株)ベンチャーネット持田から

今回のプロジェクトが無事に完了できたのも、南海エクスプレス ITイノベーション推進部の皆様や顧客企業様のご努力の賜物だと認識しております。私達も今回のプロジェクトで業界の知見を学ばせていただけたことに大変感謝しております。今後ともよろしくお願い致します。
おかげ様で、プロジェクト開始当時は初めてのNetSuite導入支援のお客様でしたが、現在ではすでに10社以上の実績となり、様々な経験を積むことが出来ました。引き続き、NetSuiteの新機能、他社でのベストプラクティスを元に、業務効率化のお手伝いさせていただければと思います。