同じ業種なのに、なぜあの会社だけ利益が残るのか
同じ業界で、似たような規模。それなのに、利益がしっかり残る会社と、いつも資金繰りに追われる会社があります。
経営者なら、一度は感じたことがあるはずです。「業界の平均がこのくらいなら、うちもこんなものか」と。
決算書を同業他社と見比べて、平均並みだと分かると、どこか安心する。そんな瞬間は珍しくありません。
ですが、その「平均で納得する」気持ちこそ、利益が残らない最初の入り口かもしれません。
業種を選んだ時点で、利益率の「相場」は決まっているのか
利益率とは、売上に対して利益がどれだけ残るかの割合です。
この利益率には、業種ごとの「相場」があります。公的な統計を見ても、利益率は業種によってはっきり違います。情報通信業や不動産業は高めに、飲食・小売・卸売は低めになりやすい傾向です(出典:中小企業庁・財務省の業種別データ)。
つまり、どの業種を選ぶかで、利益率のおおよその水準は、最初からかなり決まってしまう。
では、その相場に、ただ従うしかないのでしょうか。
この問いに、ベンチャーネットは「いいえ」と答えます。中小企業経営に長く向き合ってきた岡本吏郎先生の考え方にも、同じ視点があります。
相場は決まっている。その相場の「外」に出る道はある。それが、この記事でお伝えしたいことです。
「平均の山」と「異常値」とは
ここで、数字のばらつき方を、一枚の絵で思い浮かべてみてください。
ある業種の会社を利益率の順に並べると、多くの会社は「平均のあたり」に集まります。とても高い会社と、とても低い会社は、どちらも少数です。
この、真ん中がふくらんだ山の形を、統計では「正規分布」と呼びます。平均の近くに多くが集まり、両端へいくほど数が減る分布のことです。
そして、この山のいちばん右の端——上位5%ほどの位置に立つ会社は、平均から大きく外れています。統計では、こうした平均から大きく離れた値を「異常値」と呼びます。
図1:ある業種の会社を利益率の順に並べると、多くは平均のあたりに密集する。その右端、上位5%に立つ会社は、平均から大きく外れた「異常値」になる。
念のため申し添えると、現実の利益率は、きれいな左右対称の山にはなりません。ですが「多くが平均に密集し、ごく一部だけが大きく外れて高い」という形は共通しています。
だからこそ、上位5%は意味を持ちます。そこは、平均的な会社の群れから完全に抜け出した場所です。業種の相場が低くても、その業種の上位5%に入れば、利益率は平均的な会社とはまるで違う水準になります。
平均改善ではなく、異常値を狙う
多くの会社は、利益を増やそうとするとき「平均より少し上」を目指します。少しずつコストを削り、売上を伸ばし、業界平均を上回ろうとする。健全な努力です。
ですが、平均に近づく改善をどれだけ積み重ねても、たどり着くのは「平均より少し良い会社」までです。山の真ん中から、端までは届きません。
異常値は、平均の延長線上にはないからです。
上位5%という端に飛び出すには、「平均と同じことを上手にやる」のではなく、「平均とは違うことをやる」必要があります。やり方ではなく、戦い方そのものを変える。つまり、構造から変えるということです。
ここに、逆説が一つあります。規模を追って、商品も顧客も広く手を広げるほど、会社は「平均の山」の中心に近づいていきます。あれもこれもできる会社は、裏を返せば「どれも平均的な会社」になりやすいのです。
平均から飛び出すための方向は、その逆にあります。
異常値は狙って設計できる——その一つが「小さくなる」
異常値は、運や才能で決まるものではありません。狙って設計できます。
その設計の中心に、ベンチャーネットが置いているのが「小さくなる」という選択です。
ここでいう「小さくなる」は、売上を減らすことではありません。戦う土俵を、意図して狭く絞ることです。
- 誰にでも売るのをやめ、深く応えられる相手に絞る
- 何でもやるのをやめ、自社が抜きん出られる一点に絞る
土俵を狭く絞ると、その中での密度が上がります。専門性が深まり、顧客との関係が濃くなる。その密度こそが、平均の山から抜け出す力になります。
図2:平均へ近づく「改善」は、平均の山に埋もれていく。端へ飛び出す「異常値」は、土俵を狭く絞る「小さくなる」という選択から生まれる。
正直に申し上げると、これは楽な道ではありません。「小さくなる」とは、これまで追ってきた規模や、取れていた仕事の一部を、自ら手放すことでもあります。手放す勇気が要ります。撤退もまた、立派な戦略です。
絞った先で何を強みにするか、どの市場なら勝てるのか、自社はどんな「生き方」で戦うのか。その設計の道筋は、この先の記事で順に掘り下げていきます。
- 小ささを武器に変える考え方(「小さいことは戦略である」)
- 戦う一点をどう絞り込むか(ニッチ戦略)
- 量で攻めるか、質で攻めるか(r戦略とK戦略)
- 自社の本当の課題を見極める
- 勝てる市場をどう選ぶか
なお、利益率そのものの計算や読み方は、別記事「利益率の計算方法と読み解き方」で整理しています。本記事は、その数字を「どこへ向けるか」という照準の話です。
まとめ:どの「端」を目指すか
業種を選んだ時点で、利益率の相場は、おおよそ決まります。
ですが、相場に従って「平均並み」で納得する必要はありません。同じ業種の中でも、上位5%という端に立てば、平均的な会社とはまるで違う景色が見えます。
平均に近づく改善ではなく、端へ飛び出す設計。それが、儲かる会社になるための照準です。
そしてベンチャーネット自身も、その異常値に近づくために「小さくなる」という戦略を選んでいます。広く薄くではなく、狭く深く。自分たちが信じる薬を、自分たちで飲んでいるということです。
正直に言えば、まだ道の途中です。それでも土俵を絞ったことで、関わる相手に前より深く応えられるようになった手応えがあります。少なくとも、相場に流されてはいません。
だからこそ、お伝えできることがあります。冒頭の「うちもこんなものか」を、「うちは、どの端を、どこまで絞って目指すのか」に変えてみてください。その端を一緒に見極めるところから、儲かる化は始まります。

