「DXできている中小企業は2.8%」をどう読むか|2026年版中小企業白書が示した現在地と、次の一段

2026年版の中小企業白書に、こんな数字があります。

デジタル化によってビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる。そう答えた中小企業は、2.8%。

100社のうち、3社に届きません。

この数字を見て、多くの経営者の方はこう思うはずです。「では、うちは残りの97%のほうか」と。

そのとおりです。そして、それは問題ではありません。

この記事は、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが書いています。危機感をあおるためのものではありません。2.8%という数字を、自社の位置を知るための目盛りとして使えるように整理します。

なお本記事は、2026年4月24日に閣議決定された2026年版中小企業白書・小規模企業白書の公表内容にもとづいています。

この記事で分かること

  • 「2.8%」が何を指しているのか(定義を正確に)
  • 同じ数字から成立する、2つの読み方
  • 白書が示した「効果が出ている会社」の共通点
  • 段階4を目指す前に、いま確かめるべきこと

読了時間の目安:約13分

目次

2026年版中小企業白書が示した、ひとつの数字

まず、数字そのものと、その定義を正確に押さえます。定義を飛ばすと、この数字は必ず誤読されます。

2.8%が指しているもの

中小企業白書には、毎年、中小企業のデジタル化の取組段階を尋ねた調査が載っています。

そのうち最上位にあたる段階4は、次のように定義されています。

「デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態」

ここに該当すると答えた事業者が、2.8%でした(出典:2026年版中小企業白書・小規模企業白書)。

「デジタル化していない97%」ではありません

ここが最も誤解されやすい点です。

2.8%以外の企業が、デジタルを使っていないわけではありません。会計ソフトも、クラウドストレージも、勤怠管理も、多くの会社ですでに動いています。

段階4が問うているのは、ツールの有無ではありません。ビジネスモデルそのものが変わったかどうかです。

売り方が変わった。提供する価値が変わった。競争の土俵が変わった。そこまで到達したかを尋ねています。

この水準で「はい」と答えられる会社が少ないのは、当然とも言えます。

白書全体のテーマ

2026年版の中小企業白書は、第2部のテーマを「『強い中小企業』に向けた『稼ぐ力』の強化」としています。

冒頭には、こう書かれています。

経営環境の転換期において現状維持は最大のリスク

(出典:2026年版中小企業白書・小規模企業白書)

強い言葉です。ただし、これを「すぐに段階4へ飛べ」という意味に読むと、行き先を誤ります。この点は、あとで詳しく扱います。

この数字は、増えるどころか減っている

もう一つ、押さえておきたい事実があります。

3年の推移

段階4と答えた企業の割合は、次のように推移しています。

調査年段階4と回答した割合
2023年6.9%
2024年3.2%
2026年版2.8%

(出典:2026年版中小企業白書・小規模企業白書)

増えていません。減っています。しかも、3年で半分以下です。

減った理由は、本記事では扱いません

なぜ減ったのか。ここには複数の解釈がありえます。

ただ、本記事はその分析には立ち入りません。DXが進まない理由の構造については、DXが進まない本当の理由とはで詳しく整理しているためです。

本記事で扱うのは、この数字をどう読み、自社の判断にどう使うかです。

ひとつだけ確かなことがあります。この数字は、簡単には上がらないということです。

同じ数字から、2つの読み方ができる

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

2.8%という数字からは、正反対に見える2つの読み方が、同時に成立します。

読み方A:97%はまだ到達していない

まだ、ほとんどの会社が到達していない領域です。

つまり、いま動けば少数派に入れる余地が、まだ十分に残っています。

すでに全員が到達している領域であれば、達成しても差になりません。到達している会社が少ないからこそ、そこには意味があります。

前向きに読むなら、これは開いている扉です。

読み方B:しかも、年々減っている

一方で、数字は減り続けています。

これは、この水準に到達することが本当に難しいということを示しています。

裏を返せば、苦戦しているのは自社だけではないということです。

「うちだけが遅れているのではないか」。そう感じている経営者は多いのですが、数字はそれを否定しています。多くの会社が同じところで足踏みしています。

AとBは、両方とも正しい

どちらか一方だけを読むと、判断を誤ります。

  • Aだけ読むと、簡単に到達できると誤解する
  • Bだけ読むと、やっても無駄だと諦める

扉は開いているが、くぐるのは簡単ではない。 これが、この数字の正確な意味です。

焦る必要はありません。同時に、諦める必要もありません。

97%側にいることは、恥ではない

ここは、はっきりお伝えしておきたい部分です。

定義の水準が、そもそも高い

繰り返しになりますが、段階4は「ビジネスモデルの変革や競争力強化」を問うています。

業務が効率化された、という水準ではありません。会社の稼ぎ方そのものが変わったかを尋ねています。

この問いに「はい」と即答できる経営者は、そう多くないはずです。 自社を正確に見ている経営者ほど、慎重に答えます。

数字が低いことには、そういう側面もあります。

数字は、順位表ではありません

白書の数値は、企業を並べて評価するためのものではありません。

自社がいまどのあたりにいるのかを知るための、地図の目盛りです。

ベンチャーネットは、この数字を使ってお客様を急がせるつもりはありません。「遅れていますよ」と言うために数字を持ち出す仕事のやり方を、私たちは取りません。

お客様と対等な関係でいるために、数字は共通の物差しとして使うべきものだと考えています。

「現状維持は最大のリスク」の正しい読み方

白書の言葉に戻ります。現状維持がリスクである、という指摘です。

これは、段階4へ飛べという意味ではありません。

いまいる場所から一段も動かないことが問題だ、という意味です。段階2にいる会社が段階3に進むことも、立派な前進です。

目指すべきは段階4ではなく、次の一段です。 ここを取り違えると、目標が高すぎて何も始まりません。

白書が示した、効果が出ている会社の共通点

では、前に進んでいる会社は何をしているのか。白書には、それを示すデータもあります。

労働生産性の3つの型

白書は、労働生産性の動きを3つの型に分けています。

状態
① 効率的成長型従業員数が増えても、それを上回る率で付加価値額が増えている
② 効率化型従業員数が減りつつ、付加価値額は増えている
③ 非効率的成長型付加価値額は増えているが、それを上回る率で従業員数が増えている

(出典:2026年版中小企業白書・小規模企業白書)

③は、一見すると成長しています。しかし人を増やした分ほどは稼げていない状態です。

取り組んだ会社は、③から①へ移動している

白書によれば、次の取り組みを行った企業は、③非効率的成長型から①効率的成長型へ移動する傾向が見られます。

  • 省力化投資
  • AI活用
  • ITツールの活用(デジタル化)

(出典:2026年版中小企業白書・小規模企業白書)

段階4に到達していなくても、こうした取り組みには効果が出ている。これは97%側の会社にとって重要な事実です。

いきなりビジネスモデルを変えなくても、生産性の型は変えられます。

効果を高めるのは、ツールではなく運用

さらに重要な指摘があります。

白書はITツールについて、導入するだけでは足りないと示しています。研修や勉強会を実施すること、そして特定の部門にとどめず部門間連携を進めることで、より高い効果が得られる可能性があります。

(出典:2026年版中小企業白書・小規模企業白書)

つまり、差がつくのはツールの選定ではありません。入れたあとにどう使うかです。

これは、私たちが現場で感じていることとも一致します。同じ仕組みを入れても、成果には大きな差が出ます。分かれ目は、たいてい導入後の運用にあります。

AIについては、まだ入り口の段階

AI活用の状況にも触れられています。

省力化投資のうち、AIを活用している企業は全体の約3割でした。そしてAIを活用していない理由の最多は、「活用する業務のイメージができていない」でした。

(出典:2026年版中小企業白書・小規模企業白書)

技術が難しいからではありません。使いどころが見えないから使っていない、という状態です。

なお2026年版では、AX(AIトランスフォーメーション)という表現も用いられています。デジタルの次の話が、すでに始まっています。

投資額そのものは、まだ低い水準

もう一点。設備投資に占めるソフトウェア投資の比率は、中小企業では上昇傾向にあるものの、大企業と比べると低い水準で推移しています

(出典:2026年版中小企業白書・小規模企業白書)

上がってはいるが、まだ差がある。この構造も、あわせて押さえておく価値があります。

数字の読み違え──よくある4つのつまずき

ここからは、白書のような統計を経営判断に使うときのつまずきを整理します。

これは、読み違えた会社を批判するためのものではありません。統計は扱いが難しく、誰でも踏む種類の落とし穴があります。だから先にお伝えしておきたいのです。

つまずき①:「2.8%」を目標にしてしまう

よくある現象

  • 「段階4を目指す」を経営目標に掲げる
  • いまの段階を確認しないまま、ビジネスモデル変革の議論を始める
  • 議論が抽象的なまま止まり、何も動かない

なぜ失敗するか

段階は飛び越えられないためです。

デジタルツールへの移行が終わっていない会社が、いきなりビジネスモデルの変革を目指しても、土台がありません。

どう回避するか

まず、自社がいまどの段階にいるかを確認してください。

紙や口頭が中心なのか。ツールは入っているが業務ごとにバラバラなのか。データが揃って分析ができる状態なのか。

現在地が分かれば、次の一段は自動的に決まります。

つまずき②:数字を、社内を急がせる道具に使う

よくある現象

  • 「うちは97%側だ」と会議で強調する
  • 現場に危機感を持たせようとして、統計を持ち出す
  • 現場が萎縮し、提案が出てこなくなる

なぜ失敗するか

統計は、責任の所在を示すものではないためです。

97%という数字は、業界全体の構造を表しています。特定の担当者や部門の努力不足を示すものではありません。

責める材料に使うと、現場は数字そのものを警戒するようになります。

どう回避するか

数字は、現在地の共有に使ってください。

「私たちはここにいる。次はここへ行く」。この使い方なら、数字は前に進む道具になります。

つまずき③:定義を確認せずに引用する

よくある現象

  • 「DXできている企業は2.8%」とだけ社内資料に書く
  • 段階4の定義を確認しないまま議論が進む
  • 「うちは会計ソフトを入れているから大丈夫」といった話とかみ合わなくなる

なぜ失敗するか

段階4は、ツールの有無ではなくビジネスモデルの変革を問うています。

定義を共有しないまま数字だけ流通させると、参加者ごとに違うものを想像したまま議論が進みます。

どう回避するか

数字を引用するときは、必ず定義とセットにしてください。

社内資料であれば、一行で足ります。「段階4=デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態」。これがあるだけで、議論の精度が変わります。

つまずき④:白書を読んで終わりにしてしまう

よくある現象

  • 経営者が内容を把握したが、社内では共有されていない
  • 数字だけ記憶に残り、根拠となった調査の中身は残らない
  • 翌年の白書が出ると、前年の話は忘れられる

なぜ失敗するか

外部の統計は、自社の判断材料に変換して初めて意味を持つためです。

どう回避するか

社内資料に、4行だけ書き残してください。

出典と年版、数字、定義、自社の現在地の見立て。この4つがあれば、翌年の白書と比較できます。統計は、並べて初めて傾向が見えます。

四つに共通するもの

四つを並べると、共通点が見えてきます。

いずれも、統計を「評価」として受け取っていることから生じています。

白書は、企業を採点するための資料ではありません。全体の傾向を知り、自社の位置を測るための資料です。

ベンチャーネットは、お客様と対等な関係で仕事をしたいと考えています。数字で急がせることも、不安をあおることもしません。

いまどこにいて、次にどこへ行くのか。それを一緒に確かめるところから、ご一緒させてください。

段階4を目指す前に、いまの一段を確かめる

現実的な進め方を整理します。

まず、現在地を言葉にする

次の質問に答えてみてください。

  • 主要な業務で、紙や口頭でのやり取りが残っているものはどれか
  • 部門ごとに別々のシステムやExcelで管理しているデータはどれか
  • 経営の数字を出すのに、集計作業がどのくらい必要か

三つ目で時間がかかるなら、データが分散している状態です。多くの会社がここにいます。

次の一段は、たいてい「つなぐ」こと

ツールは入っているが、データが分かれている。この状態から次に進むのは、つなぐことです。

販売の数字と在庫の数字と会計の数字が、同じ場所で同じ数値として見える。ここに到達すると、分析が現実的になります。

白書が示した「③非効率的成長型から①効率的成長型へ」の移動も、多くはこの段階で起きています。

完璧を目指す必要はありません。一つの領域から数字が揃う状態をつくり、動かしながら広げていくほうが確実です。

入れた後の運用を、最初から計画に入れる

白書が示していたとおり、効果を高めるのは研修と部門間連携です。

導入計画を立てるときに、次の3点を最初から入れてください。

  • 誰に、いつ、どういう研修を行うか
  • どの部門とどの部門をつなぐか
  • 効果をいつ、何で測るか

導入の予算だけを組み、運用の予算を組まない。 これが、成果が出ない会社に共通する形です。

急ぐ必要のない会社もあります

正直に申し上げると、いま急いで動く必要のない会社もあります。

  • 目の前の業務そのものに、優先度の高い課題がある
  • 直近で事業の方向性が変わる可能性がある
  • 判断できる立場の人が、いま関与できない

該当する場合は、現在地の確認だけ済ませて構いません。順番が違うだけで、方向が間違っているわけではありません。

よくある質問

Q1. うちは97%側だと思いますが、遅れているということですか

段階4に該当していないという意味では、そのとおりです。

ただし、それは97社が同じ状態だということでもあります。業界全体の構造であって、自社だけの問題ではありません。

大事なのは順位ではなく、いまの段階から次の一段に進めるかどうかです。

Q2. 2.8%を目指すべきですか

いいえ、目標にはしないほうがよいと考えています。

段階4はビジネスモデルの変革を指しています。土台が整っていない状態で目標に掲げても、議論が抽象的になって止まります。

まず現在地を確認し、次の一段を目標にしてください。結果として段階4に近づくことはありますが、順序が逆です。

Q3. なぜ2.8%まで減ってしまったのですか

減少の理由については、本記事では扱っていません。複数の解釈がありうるためです。

DXが進まない理由の構造については、DXが進まない本当の理由とはで整理しています。

Q4. ツールを入れれば、生産性は上がりますか

白書のデータでは、ITツール活用や省力化投資に取り組んだ企業に、生産性の型が改善する傾向が見られます。

ただし白書は同時に、研修や勉強会の実施、部門間連携によって効果が高まるとも示しています。

つまり、入れるだけでは足りません。入れた後をどう設計するかで差がつきます。

Q5. AIから始めるべきですか、それともデータの整理からですか

白書では、AIを活用していない理由の最多が「活用する業務のイメージができていない」でした。

使いどころが見えないのは、多くの場合、自社のデータが揃っていないためです。何が課題かが数字で見えないと、AIに何をさせるかも決まりません。

順序としては、データを揃えるほうが先になることが多いと考えています。

まとめ:2.8%は、目標ではなく地図の目盛り

ここまで、2026年版中小企業白書が示した数字と、その読み方を見てきました。

最後に、いちばんお伝えしたいことを書きます。

2.8%は、目指すべき目標ではありません。自社がどこにいるかを測るための、地図の目盛りです。

97%側にいることは、恥ではありません。定義の水準がそもそも高く、自社を正確に見ている経営者ほど、慎重に答えるからです。

一方で、動かないことにはリスクがあります。白書が言う「現状維持は最大のリスク」とは、段階4へ飛べという意味ではなく、いまいる場所から一段も動かないことが問題だという意味です。

扉は開いているが、くぐるのは簡単ではない。だから、次の一段だけを選ぶ。

これが、この数字の現実的な使い方だと考えています。

そして白書のデータは、一段進むだけでも生産性の型が変わりうることを示しています。ビジネスモデルの変革を待つ必要はありません。

ただし、これは情報システムの案件ではありません。どの業務から手をつけ、どこまでをつなぐか。これは経営の判断です。ERPの導入も同じで、ITプロジェクトではなく経営プロジェクトとして扱うほうがうまくいきます。

まずは、自社の現在地を言葉にしてみてください。紙が残っている業務、データが分かれている領域、数字を出すのにかかる時間。

そこから先の進め方については、一緒に考えさせてください。急ぐ必要がないと判断したときには、そのようにお伝えします。

もう少し詳しく知りたい方へ

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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